2011/05/24 - 2011/05/26
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OE-343さん
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(この旅行記には写真がありません。当時撮影した写真が入ったSDカードを搭載したままの壊れたデジタルカメラが、今も青森の知人の倉庫で保管されているためです。プログラムなど資料も段ボールの中です。表紙は東京公演のチラシです。)
2011年5月25日、私は前日に札幌に行くことを決めて、札幌にいました。
この5月25日に、グスタフ・レオンハルトが札幌で演奏会をすると知ったのはもう少し前でしたが、具体的に行こうと考え始めたのが直前で、決めたのは前日でした。
歴史的チェンバロ演奏を復興させたレオンハルトは私にとっても非常に重要な存在でした。レオンハルトの演奏するブランデンブルク協奏曲の演奏は、アリス・アーノンクールのバッハのヴァイオリン協奏曲と共に、私を古楽器演奏の世界に連れて行ったレコーディングです。そして、CDの解説を読んでいるうちに、「いつかは聴きたい」と。さらに私は、ピアノではなくチェンバロを弾きたいと思うようになり、チェンバロ奏者になりたい、と思っていました。
それで、CDに書いてる生年を見るとずいぶんお年寄りになってるはず。家にある古いCDの写真では演奏家としてピークの頃の姿で元気そうですが。。。
そうしてるうちに、震災から2ヶ月後というのに、来日するというではないですか。
前の年に莫大な費用をかけてアーノンクール聴きに行ったこともあり、迷っていましたが。。。。
札幌公演の前日、5月24日の昼頃に、やっぱり無理してでも行こうと思い立ち、着の身着のまま、17時52分頃に青森県黒石市のバス停を出発する秋北バスの青森行き高速バスで出発しました。(いすゞスーパークルーザーでした。)
青森駅では、とりあえず函館までの割引切符を購入して乗車しました。札幌までの切符がなかったからです。
19時前の割と遅い時間のスーパー白鳥に乗って、函館には夜の9時前に到着。
5年前に1週間お世話になった駅前の「キクヤホテル」と言う、1泊3000円で朝食付の小さなビジネスホテルに宿泊しました。
翌朝、朝食のパンを食べに行ったら、5年前に私が宿泊していたことをホテルの人が覚えていました。ゆで卵をもらった記憶があります。
前日、ほとんど窓口も閉まって函館駅で、函館から札幌へ向かうツインクルプラザのパックツアーのチラシをもらっていました。
斜め読みしながら、演奏会会場のキタラがある中島公園近くに、ノボテルホテル札幌があることを発見。ずいぶんと妥当な値段でお安かったので、朝10時にツインクルプラザが開店すると同時にそちらに入り、当日にもかかわらず格安パッケージを購入。
パックなので購入には20分くらいかかります。しかし、帰り道のキハ183系で運転される北斗の展望席まで確保できました。
そしてチケット受け取ったらそのままホームに向かって、10時40分発のスーパー北斗に乗車しました。
キハ281系ではなく、普段はおおぞらに運用されている283系が運用されていました。
そしてほどなくして出発し、私にとって初めての高速ディーゼル特急の旅となりました
大沼付近では、湖の上を滑るが如く振り子を聞かせて130キロで飛ばしていました。北海道の特急列車がまだ最高の輝きにあった頃の話です。
この頃は、車内販売で長万部の蟹飯の事前受付もやっていました。今は事前受付すらやめてしまって客に丸投げしていると言う、お金がないから稼がなきゃいけない、と言うことではなくてお金がないから仕事をしません、と言う発想になってしまったJR北海道ですが、この頃はまだまだやる気があったんです。
それで、かにめしを注文し、長万部駅を出発したら車内販売員が持ってきてくれました。
その後も、凄まじいスピードで走る283系の特急に乗車したから、少しずつ景色が変わるのを見ているうちにあっという間に札幌に到着しました。
地下鉄南北線に乗って中島公園へ向かい、ホテルに荷物を置きました。
ノボテルはワルシャワでも宿泊したことがありますが、設備的には日本のホテルに近かったです
前の日に電話で予約した入場券をホールで受け取り、近くのコンビニで飲み物などを買って、ホテルの部屋で休憩しました。
この頃は、煎じ薬を飲んでいませんでしたので、非常に首が痛く、こんな旅行ができたことすら信じられません。ホテルでずっと横になって首を休めていました
その後、開演が近づくと、再び起き上がってホールのレストランでとりあえず1000円台のメニューを食べて、客席に入りました、
札幌キタラ小ホールには、ブルース・ケネディ製作のジャーマン2段チェンバロが常設されています。レオンハルトはそれを自分で調律して使いました。
曲目は以下の通り(企画元事務所のサイトに残っていました)
Programme Ⅱ Kennedy Ⅱ
ルルー: 組曲 ヘ長調 (プレリュード/アルマンド/クーラント/メヌエット/シャコンヌ)
G.Leroux: Suite in f major(1705) (Prelude, Allemande, Courante, Menuets, Chaconne)
J.C.バッハ: プレリューディウム ハ長調
(†1703)J.C.Bach: Praeludium in c major
フィッシャー: シャコンヌ ト長調
J.C.F.Fischer: Chaconne in g major
デュフリ: ロンドー、ラ・ダマンズィ、純真無垢な娘(鳩)、ラ・ミレティーナ、メヌエット、レ・グラース
J.Duphly: Rondeau, La Damanzy, Les Colombes, La Millettina, Menuets, Les Graces
J.S.バッハ: プレリュードとフーガ ホ長調 (平均律クラヴィーア第2巻より )
J.S.Bach: Prelude and Fugue in E major (Wtc.II)
Interval
J.S.バッハ: 組曲 ホ短調 「ラウテンヴェルクのための」BWV996(プレルーディオ/アルマンド/クーラント/サラバンド/ブーレ/ジーグ)
J.S.Bach: Suite in e minor “fur das Lautenwerk ” BWV996 (Preludio/Allemande/Courante/Sarabande/Bourree/Gigue)
J.S.バッハ: アリアと変奏 BWV989(1704?)
J.S.Bach: Aria variata BWV989(1704?)
私の家にあったレオンハルトのCDはみんなバッハの有名曲ばかりだったので、他のバロックの大作曲家たちは、名前は知っているけど曲を知らない、と言う状況でした。今回演奏されたバッハの組曲も、リュートチェンバロ(ラウテンヴェルク)のための作品で、私は、存在は知っていたけど知らない、と言う曲でした。
ちなみに、ラウテンヴェルクとはガット弦を張ったチェンバロです。普通のチェンバロは真鍮で作った弦を張るのですが、それを羊の腸のガット弦にするのです。実物が残っていないことから設計が非常に難しく、良い楽器の復元製作に成功した製作家もほとんどいません。
今回の演奏は真鍮弦を張った普通のチェンバロでした。
この8年後、レオンハルトの弟子である高名な演奏家のところで、実物のラウテンヴェルクを見るようなことになるとは想像もしていませんでした。
そういえば、レオンハルトが左手に手袋のようなもの(指先だけを出した手袋)をして演奏していたのが気になりました。
そもそも、今回の日本ツアー、80歳を超えた大巨匠にとってはありえない日程でした。
企画したアレグロミュージックのサイトに今でも予定表が出ています。
グスタフ・レオンハルト 2011年5月 日本公演スケジュール
GUSTAV LEONHARDT
■5月25日(水) 7:00p.m. 札幌コンサートホール小ホール <チェンバロ programmeII>
お申込み・お問合せ: 011-520-1234
■5月26日(木) 7:00p.m. 津田ホール <チェンバロ programmeIII>
お申込み・お問合せ:03-5216-7131 アレグロミュージック
■5月27日(金) 7:00p.m. 兵庫県立芸術文化センター小ホール <チェンバロ programmeII>
お問合せ: 0798-68-0255
■5月29日(日) 3:00p.m. 東京 明治学院大学チャペル <オルガン・リサイタル programmeⅣ>
お問合せ:03-5216-7131 アレグロミュージック
■5月30日(月) 7:00p.m. 東京文化会館小ホール <チェンバロ programmeI>
お申込み・お問合せ:03-5216-7131 アレグロミュージック
■5月31日(火) 7:00p.m. トッパンホール <チェンバロ programmeII>
お問合せ: 03-5840-2222 トッパンホール
札幌で夜演奏会をした後、翌日の午前からお昼の飛行機で東京に入ってそのまま別の楽器でコンサートです。休みなしの演奏会が続きます。使った楽器はギタルラと梅岡さんの楽器ですね。どうせなら日本にいる弟子たちの持っている銘器を使えばいいのでは。。。?
これってあり得ます?大病したことがある80歳の大先生にこれですよ。。。。
コンクールで優勝したばかりの20歳の学生じゃないんですよ。。。。
レオンハルトの方も契約交渉の時に一旦休みを入れろとか要求しなかったんでしょうが、だからといってこの日程を企画してしまう招聘元は理解できません。
この翌年、レオンハルトは亡くなっています。もちろん、こういった日程だからといってすぐに病気につながるわけでは無いですが、それほど体が弱っている大先生にこんな日程をさせるなんて信じられません。
それで、演奏の記憶ですが、実はあんまりありません。チェンバロの演奏会を聞くのも初めてだったし、とにかく「レオンハルトを生で聴けた」と言う感動に全て押しつぶされてしまった感じです。しかし、それこそが重要なのです。
札幌でチェンバロとかが好きそうな感じの高校生が会場内で話をしていました。「調律が電気の照明で狂う」とか。
その頃私も、モダン楽器をやっていて少しバロックに詳しい人とかの話を聞いて、レオンハルトの陰影豊かな演奏と言うものは、調律によるものだ、と思わされていました。
だからこそ、その世界に一歩でも近づくべく私が考えていたのは、チェンバロを手に入れることよりも、自分の持っているベヒシュタインのピアノを古典調律で調律したい、と言う思いでした。
しかし、その後、私が10年かけて自ら、そしてレオンハルトの弟子のチェンバロの名手の先生から学んだのは、調律のときの音律と言うものはその1つの要素に過ぎないのであって、もっと大事なのは楽器そのものの響きであり、そして何より演奏解釈であると言うことなのです。
この演奏会を聞いたときに、それを知っていれば、私の耳の運び方は随分と違ったものであったことでしょう。
演奏会終了後、ホテルに帰ってフラフラになりながらすぐ眠りました。
翌朝は、ノボテルで朝食を食べて、さらにゆったりと横になって休憩。そして、お昼頃になって、時計台を見学して札幌駅へ向かい、お弁当を購入してキハ183系で運転される特急北斗に乗って函館を持って向かいました。もちろん、183系の運用の列車を狙ってみたのです。そして展望席を確保しておりましたので、函館までの3時間50分、展望を楽しみ、国鉄型気動車による130キロ運転も体験しました。振り子車両と違ってカーブになると一気に減速をかけるのが183系で、そのおかげでエンジン音もかなり大きな感じでした。でも楽しかったです。
函館駅では、向かい側に青森へ向かう789系のスーパー白鳥が待っています。そのまま乗り継いで青森駅に到着しました。
私の、青函トンネルの特急列車最後の乗車となりました。
青森駅からは、黒石行きの路線バスに乗ろうかと考えていましたが、ホームの反対側に弘前行きの701系普通列車が止まっていたのでそのまま乗り込みました。浪岡でタクシーに乗ったらシートベルト着用を拒否されたので乗車をこちらから拒否して、仕方なく当初予定のバスの到着を待ってバスに乗り込みました。。。
行ってきました。よくぞ行ってきたという思いです。
今度は聴けないかも、死ぬかもしれない、と兎に角首が痛い中で親に介護してもらいながら無理して行ってきたのですが、翌年レオンハルトは引退を宣言し、数ヶ月後亡くなりました。
私が遂にチェンバロを弾くまでにはこれからさらに3年、そして、レオンハルトの弟子の方に出会うまでには、紆余曲折を経てさらに8年かかったのでした。
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レオンハルトのブランデンブルク協奏曲の録音
ユーチューブのリンクは、レオンハルトの弟子である渡邊順生氏の演奏する「ラウテンヴェルク」です。アメリカの製作家キース・ヒルが遂に実用できるラウテンヴェルクの再現に成功した楽器です。
https://youtu.be/4v0xRWKsSEw -
レオンハルトのブランデンブルク
https://youtu.be/Y9zL0ml6OR0
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