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列車がスターリングを出ると窓の外には穏やかな田園風景が広がった。起伏のある農地は丘の間際まで続き、良く耕された畑や、緑豊かな牧草をのんびりと食む羊や牛の姿が目に入った。<br />列車の窓から風格のある建物が見えて来た。駅名の表示にはpitlochry ピトロッホリーと書かれていた。ロンドンの生活に疲れ切っていた夏目漱石が心身ともに癒された町だったと聞いていた。<br /> <br /> ~ピトロクリの谷は秋の真下にある。十月の日が、眼に入る野と林を温かい色に染めた中に、人が寝たり起きたりしている。<br />十月の日は静かな谷の空気を包んで、じかには地にも落ちて来ぬ。と言って、山向こうへ逃げても行かぬ。<br />風のない村の上にいつでも落ち着いて、凝と動かずに霞んでいる。その間に野と林の色が次第に変わって来る。<br />酸いものがいつの間にか甘くなる様に、谷全体に時代が附く。ピトロクリの谷は、此の時百年の昔し、二百年の昔しにかへって、安々と寂びて仕舞ふ。~<br />「現代日本文学全集第19編 夏目漱石」より<br /><br />列車には本を読んでいる飼い主の婦人の足元に、大きな犬が顎を床につけておとなしく寝て居たり、積み込まれた自転車に柔らかい春の陽が射していたりした。<br /><br />ニュートンモアは4月の末だというのに窓の外は冬が舞い戻ってきたような雪景色が展開した。アヴィモアと言う駅を過ぎ、ようやくインヴァネスに着いた。<br /><br />ネス湖ツアーのバスの運転手さんが熱を入れて語った物語がジャコバイトの反乱の様子だった。バスを走らせている間、語り続けた。スコットランド人にとっては見過ごすことのできないものなのだろう、しかし、その熱意は伝わるが、英語はねぇ、半分も解りませーん。

スターリングからインヴァネスへ

32いいね!

2015/04/21 - 2015/04/23

10位(同エリア106件中)

8

3

pedaru

pedaruさん

列車がスターリングを出ると窓の外には穏やかな田園風景が広がった。起伏のある農地は丘の間際まで続き、良く耕された畑や、緑豊かな牧草をのんびりと食む羊や牛の姿が目に入った。
列車の窓から風格のある建物が見えて来た。駅名の表示にはpitlochry ピトロッホリーと書かれていた。ロンドンの生活に疲れ切っていた夏目漱石が心身ともに癒された町だったと聞いていた。
 
 ~ピトロクリの谷は秋の真下にある。十月の日が、眼に入る野と林を温かい色に染めた中に、人が寝たり起きたりしている。
十月の日は静かな谷の空気を包んで、じかには地にも落ちて来ぬ。と言って、山向こうへ逃げても行かぬ。
風のない村の上にいつでも落ち着いて、凝と動かずに霞んでいる。その間に野と林の色が次第に変わって来る。
酸いものがいつの間にか甘くなる様に、谷全体に時代が附く。ピトロクリの谷は、此の時百年の昔し、二百年の昔しにかへって、安々と寂びて仕舞ふ。~
「現代日本文学全集第19編 夏目漱石」より

列車には本を読んでいる飼い主の婦人の足元に、大きな犬が顎を床につけておとなしく寝て居たり、積み込まれた自転車に柔らかい春の陽が射していたりした。

ニュートンモアは4月の末だというのに窓の外は冬が舞い戻ってきたような雪景色が展開した。アヴィモアと言う駅を過ぎ、ようやくインヴァネスに着いた。

ネス湖ツアーのバスの運転手さんが熱を入れて語った物語がジャコバイトの反乱の様子だった。バスを走らせている間、語り続けた。スコットランド人にとっては見過ごすことのできないものなのだろう、しかし、その熱意は伝わるが、英語はねぇ、半分も解りませーん。

同行者
一人旅
交通手段
観光バス 徒歩
航空会社
ブリティッシュエアウェイズ
旅行の手配内容
個別手配
32いいね!

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この旅行記へのコメント (8)

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  • 前日光さん 2021/06/09 17:21:25
    曇りか雨の日ばかりでした!
    師匠、こんにちは
    車窓からのハイランドの様子、草を食む羊たち、ピトロッホリーの町、インヴァネス、アーカート城。。。
    もう17年も前のことになってしまいましたが、確かにこの辺を走ったのだったなぁと。

    ピトロッホリーは、師匠が表紙に書かれた所を、テレビの旅番組で俳優の柴俊夫さんが朗読されていたのです。
    まさに漱石が宿泊したその宿の窓辺に腰掛けて。
    それが忘れられずに、その宿を訪れました。
    漱石の部屋には泊まれませんでしたが、食堂からの景色は昔と変わりませんよと言われました。

    インヴァネスの町は到着時間の関係でゆっくり見学できず、すぐに宿に向かいました。
    インフォメーションでもらった地図には、その宿が載っていず、そこからはみ出した所にあると言われました。
    日は暮れるし曇天だし、旅先での不安はつのり。。。余裕のない旅情を味わいました。
    そして以前も言ったかもしれませんが、たぶんバスの運転手さんが力説するところのジャコバイトたちが戦ったカロデンの記念碑が見える辺りまで走ってしまい、これは来すぎたと判断して引き返す途中、親切な英国紳士によって、やっと宿まで辿り着いたのでした。
    そのホテル、この間グーグルで見たら、まだ同じ場所にあって、とてもうれしくなりました。
    インヴァネスの中心地から少し外れますが、A9から近いところに有りました。
    「ドロモシーホテル」と言うところで、今も評価が高いようでした。
    海外旅行は、目下厳しい状況にありますが、もし可能なら、このインヴァネスにまた行ってみたいと思いました。


    前日光

    pedaru

    pedaruさん からの返信 2021/06/10 05:42:41
    RE: 曇りか雨の日ばかりでした!

    前日光さん おはようございます。

    今でこそ海外をドライブで巡る人が多いですが、17年も前にカーナビもなしで、車を走らせるなんてかなりのチャレンジャーですね。これも愛する人と一緒だからこそできることですね。

    前日光さんは文学や歴史に造詣が深く、出雲を語るようにスコットランドも旅されたことと思います。お天気に恵まれない旅は、スコットランドらしさをさらに高めることでしょう。

    インヴァネスは美しい町と言う印象が強いのですが、これはネス川に懸かる橋の上から教会の尖塔や、情緒ある建物を見たからでしょうね。丘と川のある町ってそれだけで条件をそろえています。

    海外旅行は当分厳しいという話も聞きます。私は歳のことを思うと、海外はあきらめて、外国人が憧れる日本の良さを見直す旅に切り替えようかと思うこの頃です。

    pedaru
  • ふわっくまさん 2021/06/08 12:40:28
    ネッシー・・
    pedaruさん、こんにちは。
    ネッシー伝説のある湖は、こんなにオシャレな雰囲気が漂っていたのですね。
    スコットランド独特の牧場や周りの景色と見事に調和されている美しい建物など、またまた訪れてみたいところが増えました。

    インヴァネスでは、お城と墓場という対照的なところを訪れられて・・
    ・・天と地の対比、それも旅の醍醐味ですね。

    スターリングからの車窓で、雪山と白壁の家々もステキでした。
    ・・4月末というのに、肌寒そうでしたね。
    pedaru師匠の新作、ゆっくりと拝見させていただこうと思っています。
                   ふわっくま

    pedaru

    pedaruさん からの返信 2021/06/09 06:40:02
    RE: ネッシー・・

    ふわっくまさん おはようございます。

    お分かりのように、現在投稿している旅行記は以前の旅行記の焼き直しです。ですから写真も同じものがあるかもしれません、ただ、動画が未発表ですので投稿しています。

    前の旅行記では、ネッシーの姿を捏造しました、今回は悪ふざけはありません(笑)。

    5月も近いというのに列車の窓のそとが雪景色とは驚きました。内容の薄い旅行記を次から次へと発表していますので、コメントが追い付かないと悲鳴を上げている常連さんの声が聞こえる気がします。気が向いたときコメントを頂けるだけで嬉しいです。

    pedaru
  • yamayuri2001さん 2021/06/06 16:48:16
    ネス湖ツアーのバスの運転手さんの情熱が伝わりました。
    pedaruさん、こんにちは。
    漱石がロンドンの喧騒に疲れ果てて、田舎町で癒されたというのが
    分かる気がします。
    私は、ロンドン周辺しか行ったことがありません。
    でも、将来的に、イギリスの田舎を回ろうと思っていました。
    もう無理かもしれません・・・

    ネス湖も、雰囲気のある湖ですね。
    そこで、熱っぽく話しながら運転するドライバーさん!
    情熱が伝わります。

    pedaruさんの旅行先は、ありきたりではなく
    その土地を熟知しているような風景を紹介してくださって
    いつも、素晴らしいなと思います。

    イギリスに直接行くよりも VRの方が発達して
    居ながらにして、旅行した気分になる方が
    実際に渡航できる日よりも先かもしれませんね・・・

    12時間のフライトに耐えられるか・・・
    今や、私にとっての最大の難関は、それです・・・

    yamayuri2001

    pedaru

    pedaruさん からの返信 2021/06/08 05:03:46
    RE: ネス湖ツアーのバスの運転手さんの情熱が伝わりました。

    yamayuri2001さん おはようございます。

    ツアーのバスの運転手さんの語りは動画では音楽で消えてますが、走っている間ずーっと話続けていました。英語が堪能ならば聞いていて楽しいでしょうね。

    > pedaruさんの旅行先は、ありきたりではなく
    > その土地を熟知しているような風景を紹介してくださって
    > いつも、素晴らしいなと思います。

    嬉しいお言葉ありがとうございます。しかし実際はあまり詳しくなくて行き当たりばったりのことが多いのですよ。何の用意がなくても、どんな街でも何らかの見るべきものがありますね。

    > 12時間のフライトに耐えられるか・・・
    > 今や、私にとっての最大の難関は、それです・・・

    私にとっても時間、体力、そして経済(笑)との戦いです。お互い頑張りましょう。

    pedaru
  • cheriko330さん 2021/06/05 19:58:05
    インヴァネスもピトロッホリーも懐かしい.☆°
    常連のpedaruさんへ、こんばんは~☆彡

    ネス湖へは私は行っていないのですが、スターリングもインヴァネスも同じで
    嬉しいです。
    インヴァネスは駅から橋の辺りまでしか行っていません。あのホテル見覚えが
    あります。列車からの風景も段々と荒涼としてきて、好きなエニシダをたくさん
    見たのも覚えています。
    ピトロッホリーでは一泊して楽しめました。夏目漱石は静養で訪れたのも分かる
    気がしました。癒された様子が記されていたのですね。ピトロクリですね!

    今朝、テレビでこんなのやっていました。もしご覧になっていないなら是非に。

    https://www.nhk.or.jp/d-garage-mov/movie/90031-125.html

    北アイルランドのコーズウェイも同じですね。
    Youtubeも慣れてコメントも絶妙で、量産されていますね(*゚▽゚*)

    ご質問にお答えします。pedaruさんのように旅行記、三桁と行きたいところ
    ですが、まず無理ですね。とてもじゃないけど330歳まで生きたら、知らない
    人ばかりで・・・つまらなそう(-_-)
    330とは何てことない、我が愛犬だったラブラドールの誕生日なんです。
    cherikoも名前のcherryの愛称でした。忠犬で私が出かけると帰って来るまで
    垣根から私が行った方向に顔を出して待っててくれました。ある時はバス停
    まで私を後追いしたり、、、。良い思い出です。
    またおじゃましますね。続きも頑張ってください。

     cheriko330

    pedaru

    pedaruさん からの返信 2021/06/08 04:40:50
    Re: インヴァネスもピトロッホリーも懐かしい.☆°
    cheriko330さん おはようございます。

    インヴァネスもピトロッホリーも行かれたのですね。も一度英国に行く機会があればピトロにも行ってみたいと思います。あの聖堂を見ただけで行きたくなります。
    ご紹介ありがとうございました。日本の景色も繊細で素晴らしいのですが、世界にはこのような雄大な景色があるのですねー。
    今はさりげなくお話なさっておりますが、お別れは辛かったと思います。
    我が家には猫がいますが、比較にならないほど、犬は情が深いですね。
    猫を散歩させていて、犬の散歩の方と挨拶をしますが、犬も何てかわいいんだ、と感心します。
    思い出は尽きませんね。ペンネームの由来が分かって、今夜から安らかに眠れます(笑)。

    pedaru

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