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 鎌倉市内であれ、横浜市内であれ、浪の飾り瓦が上がるお宅は本当に少ない。それが、今日二度目の町ブラで自性院に向かう手前に少し高台にあるお屋敷の表門に浪の飾り瓦が上がっていることに気が付いて、お話を伺ってみることにした。<br /> このお宅はかつて名主を務めた家である。南側の道路に向かって表門の前に表玄関があり、上大岡駅側にも玄関がある。いずれも入母屋屋根の玄関で、大小2つの玄関を設けるのは江戸時代からのしきたりに従っているのだろう。しかも、小玄関には表門の飾り瓦とは意匠の異なる浪の飾り瓦が上がっている。今の時代に玄関が2つある民家など本当に珍しいし、表門以外の建物にも飾り瓦が上がっている民家も初めてのことだ。<br /> 土蔵は元文年間(1736年~1741年)に建てられ、関東大震災(大正12年(1923年))では瓦を葺き替え、近年にも壁を修繕しているが、柱などの屋台骨は約280年のままだという。それにしても大正時代には瓦葺きの土蔵だったとは。<br /> 家屋敷には4本の楠の巨木や、信じられないほど幹が太い百日紅(さるすべり)の古木、江戸時代に植えたと思われる2本のカシの木、明治になって植えられたと思われる銀杏の木、江戸時代に植えられたと思われる幹が本当に太いもみじの木、二股になったサワラヒバの古木など、この家の歴史を伝えるように、江戸時代からの屋敷林や庭木が多くある。また、横浜市指定の名木古木は地主が申請すると市の担当者が調査にやって来るのだということを知った。したがって、地主が申請しなければ指定されることはないのだ。<br /> また、綱島の飯田家(https://4travel.jp/travelogue/10761643)とも親戚だという。あるいは、ご先祖さまの中には菩提寺の自性院に僧侶となって入った人や金沢区にある龍華寺(https://4travel.jp/travelogue/10739376)に僧侶となって入った人がいるのだという。親王や皇族、あるいは大名の姫などが、僧侶や尼として寺に入ることは知ってはいたが、このように地方では地方の有力者の子供を僧侶にして寺に入れていたようだ。寺の旦那の子供を寺の僧侶としたなら、その寺ではより多くの援助を得られるようになるであろう。<br /> 最後に表玄関を見せて頂いた。その時の印象は鎌倉山にある扇湖山荘(https://4travel.jp/travelogue/11475988)の母屋を見た時と同じ印象だ。国登録有形文化財になっていなくても、良いものは分かり、違いが伝わってくるのだ。贅を尽くした表玄関。障子なども今ではないものだ。また、欅の大黒柱もできるだけ太くするのも感激してしまう。<br /> お米は新潟県阿賀野市の生産者(農家)から送って頂いており、奥さんは「本当に美味しいお米です。でも一度も会ったことがないんですよ。ぜひ会いに行きたいものです。」と笑顔で言う。阿賀野市は阿賀野川流域の農村部にあり、白鳥で有名な瓢湖がある市で、阿賀野川のさらに下流には「豪農の館」と呼ばれる、周りをお堀で囲まれた3町歩の家屋敷に1,200坪の建坪の家が建っている名所があることも伝えておいた。それにしても、すごもりでスーパーに出掛け、お米を買い出しした人も多かったであろう。しかし、TBSのドラマ「下町ロケット」のように、新潟(の殿村家)のお米を心待ちにしている人もいることを実感したことも付け加えておきたい。<br />(表紙写真は小玄関に浪の飾り瓦が上がるお宅)

玄関にも浪の飾り瓦が上がるお宅(横浜市港南区大久保2)

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2020/06/05 - 2020/06/05

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ドクターキムル

ドクターキムルさん

 鎌倉市内であれ、横浜市内であれ、浪の飾り瓦が上がるお宅は本当に少ない。それが、今日二度目の町ブラで自性院に向かう手前に少し高台にあるお屋敷の表門に浪の飾り瓦が上がっていることに気が付いて、お話を伺ってみることにした。
 このお宅はかつて名主を務めた家である。南側の道路に向かって表門の前に表玄関があり、上大岡駅側にも玄関がある。いずれも入母屋屋根の玄関で、大小2つの玄関を設けるのは江戸時代からのしきたりに従っているのだろう。しかも、小玄関には表門の飾り瓦とは意匠の異なる浪の飾り瓦が上がっている。今の時代に玄関が2つある民家など本当に珍しいし、表門以外の建物にも飾り瓦が上がっている民家も初めてのことだ。
 土蔵は元文年間(1736年~1741年)に建てられ、関東大震災(大正12年(1923年))では瓦を葺き替え、近年にも壁を修繕しているが、柱などの屋台骨は約280年のままだという。それにしても大正時代には瓦葺きの土蔵だったとは。
 家屋敷には4本の楠の巨木や、信じられないほど幹が太い百日紅(さるすべり)の古木、江戸時代に植えたと思われる2本のカシの木、明治になって植えられたと思われる銀杏の木、江戸時代に植えられたと思われる幹が本当に太いもみじの木、二股になったサワラヒバの古木など、この家の歴史を伝えるように、江戸時代からの屋敷林や庭木が多くある。また、横浜市指定の名木古木は地主が申請すると市の担当者が調査にやって来るのだということを知った。したがって、地主が申請しなければ指定されることはないのだ。
 また、綱島の飯田家(https://4travel.jp/travelogue/10761643)とも親戚だという。あるいは、ご先祖さまの中には菩提寺の自性院に僧侶となって入った人や金沢区にある龍華寺(https://4travel.jp/travelogue/10739376)に僧侶となって入った人がいるのだという。親王や皇族、あるいは大名の姫などが、僧侶や尼として寺に入ることは知ってはいたが、このように地方では地方の有力者の子供を僧侶にして寺に入れていたようだ。寺の旦那の子供を寺の僧侶としたなら、その寺ではより多くの援助を得られるようになるであろう。
 最後に表玄関を見せて頂いた。その時の印象は鎌倉山にある扇湖山荘(https://4travel.jp/travelogue/11475988)の母屋を見た時と同じ印象だ。国登録有形文化財になっていなくても、良いものは分かり、違いが伝わってくるのだ。贅を尽くした表玄関。障子なども今ではないものだ。また、欅の大黒柱もできるだけ太くするのも感激してしまう。
 お米は新潟県阿賀野市の生産者(農家)から送って頂いており、奥さんは「本当に美味しいお米です。でも一度も会ったことがないんですよ。ぜひ会いに行きたいものです。」と笑顔で言う。阿賀野市は阿賀野川流域の農村部にあり、白鳥で有名な瓢湖がある市で、阿賀野川のさらに下流には「豪農の館」と呼ばれる、周りをお堀で囲まれた3町歩の家屋敷に1,200坪の建坪の家が建っている名所があることも伝えておいた。それにしても、すごもりでスーパーに出掛け、お米を買い出しした人も多かったであろう。しかし、TBSのドラマ「下町ロケット」のように、新潟(の殿村家)のお米を心待ちにしている人もいることを実感したことも付け加えておきたい。
(表紙写真は小玄関に浪の飾り瓦が上がるお宅)

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  • 表門。

    表門。

  • 表門。

    表門。

  • 表門に上がる浪の飾り瓦。これまでに横浜市内では表門に飾り瓦が上がっているのは6棟目である。しかし、戸塚の不動坂の齋藤家の屋敷が解体され2ダースの戸建ての分譲住宅になったので、実質、5棟目に当たる。

    表門に上がる浪の飾り瓦。これまでに横浜市内では表門に飾り瓦が上がっているのは6棟目である。しかし、戸塚の不動坂の齋藤家の屋敷が解体され2ダースの戸建ての分譲住宅になったので、実質、5棟目に当たる。

  • 表門に上がる浪の飾り瓦。

    表門に上がる浪の飾り瓦。

  • 邸内。

    邸内。

  • 表門。禅宗様のような。

    表門。禅宗様のような。

  • 表門の棟上げ瓦には家紋が入っている。

    表門の棟上げ瓦には家紋が入っている。

  • 玄関に浪の飾り瓦が上がる。その先に4本の楠の巨木。

    玄関に浪の飾り瓦が上がる。その先に4本の楠の巨木。

  • 大玄関。

    大玄関。

  • 百日紅(さるすべり)の巨木。幹から倒れ込んだので、鉄筋コンクリート製の台で支えている。左の枝程度の太さの幹なら相当な古木になる。幹は信じられないほど太い。

    百日紅(さるすべり)の巨木。幹から倒れ込んだので、鉄筋コンクリート製の台で支えている。左の枝程度の太さの幹なら相当な古木になる。幹は信じられないほど太い。

  • 土蔵の屋根の上まで百日紅(さるすべり)の枝が伸びている。

    土蔵の屋根の上まで百日紅(さるすべり)の枝が伸びている。

  • 土蔵の屋根の上まで百日紅(さるすべり)の枝が伸びている。

    土蔵の屋根の上まで百日紅(さるすべり)の枝が伸びている。

  • 土蔵に百日紅(さるすべり)の木が倒れ掛かったのだそうだ。

    土蔵に百日紅(さるすべり)の木が倒れ掛かったのだそうだ。

  • 二股のサワラヒバ。

    二股のサワラヒバ。

  • もみじの古木。

    もみじの古木。

  • もみじの古木。

    もみじの古木。

  • サワラヒバ。

    サワラヒバ。

  • カヤの木。2本あるが、下野庭の織茂邸のカヤの木よりはかなり小さい。江戸時代になってから植えたカヤの木であろうか。

    カヤの木。2本あるが、下野庭の織茂邸のカヤの木よりはかなり小さい。江戸時代になってから植えたカヤの木であろうか。

  • 銀杏の木。根から芽が出て2本の銀杏の木になっているが、この元の幹くらいになるには100年も掛からないだろう。この場合には年数が掛かって生長したのであろう。

    銀杏の木。根から芽が出て2本の銀杏の木になっているが、この元の幹くらいになるには100年も掛からないだろう。この場合には年数が掛かって生長したのであろう。

  • 空き地にも楠。

    空き地にも楠。

  • 井戸。かなり昔から飲まずにいるという。

    井戸。かなり昔から飲まずにいるという。

  • 横井戸。丸い石の鉢で受けている。沸かして飲む横浜市の非常用飲料水に指定されている。

    横井戸。丸い石の鉢で受けている。沸かして飲む横浜市の非常用飲料水に指定されている。

  • 横井戸の配水管。

    横井戸の配水管。

  • 横井戸。崩れないように石垣を積んでいる。石の積み方が斜めだ。

    横井戸。崩れないように石垣を積んでいる。石の積み方が斜めだ。

  • 横井戸。

    横井戸。

  • 裏山に上る階段。4本の楠の巨木に通じている。

    裏山に上る階段。4本の楠の巨木に通じている。

  • 大玄関。障子に注目。また大黒柱は欅の10寸角。

    大玄関。障子に注目。また大黒柱は欅の10寸角。

  • 大玄関の障子。

    大玄関の障子。

  • 屋敷の石垣。石を斜めに積んでいる。

    屋敷の石垣。石を斜めに積んでいる。

  • 屋敷の石垣。石を斜めに積んでいる。表門に向かう石敷きの坂道。

    屋敷の石垣。石を斜めに積んでいる。表門に向かう石敷きの坂道。

  • 塀の間に土蔵。

    塀の間に土蔵。

  • ここの石垣は石を平に積んでいる。

    ここの石垣は石を平に積んでいる。

  • 斜向かいのお屋敷の石垣も石を斜めに積んでいる。

    斜向かいのお屋敷の石垣も石を斜めに積んでいる。

  • 斜向かいのお屋敷の石垣も石を斜めに積んでいる。

    斜向かいのお屋敷の石垣も石を斜めに積んでいる。

  • 4本の楠の巨木。

    4本の楠の巨木。

  • 4本の楠の巨木が神奈川県戦没者慰霊堂外苑の借景になっている。

    4本の楠の巨木が神奈川県戦没者慰霊堂外苑の借景になっている。

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