五島列島　祈りの島上五島教会めぐりの旅

2020/03/17 - 2020/03/18

キリスト教禁教期の日本において、社会的には普通に生活をしながら、ひそかに信仰を続けた「潜伏キリシタン」
宣教師も不在なのに、どうして200年以上にも渡って秘かに伝承することが出来たのか…　海を渡り離島に移住された方はどんな暮らしをされ…　そして沈黙の下にどのような想いを抱えていらっしゃったのか…　宗教をもたない私には想像もつきませんが、その断片だけでも知りたいと思いました。
五島列島には、世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の12の構成資産のうち4つの集落があります。
福江島を出た船は、いよいよ上五島へ上陸し、14の教会を巡ります。
奈良尾港でレンタカーを借りて、翌日有川港で返却をして、船で佐世保へ渡りました。
奈留島、久賀島も訪れたかったのですが、定期船を使っての移動は日程的に不可能で諦めました。通常ならば、チャーター便を使用して福江島発着の日帰りツアーが出ているのですが、コロナ禍の影響で残念ながらかないませんでした。いつか奈留島、久賀島へ…
福江島の旅行記：
https://ssl.4travel.jp/tcs/t/editalbum/edit/11616839/

エリア 五島列島(長崎)

• 旅行の満足度: 5.0

• 同行者: カップル・夫婦
• 旅行の手配内容: 個別手配

福江島から出港したフェリーは…

キラキラした海を渡り…

上五島の奈良尾港ターミナルに到着しましたよ。
上を見上げると船長さんのお姿が。

上五島での教会巡りは高井旅教会から始まります

高井旅教会 寺・神社・教会

高井旅海水浴場を見下ろす高台に建つ教会は、
海を渡ってやってきた私達を優しく迎えてくれるかのようでした。

次に訪れたのは福見教会です。

福見教会 寺・神社・教会

ここ福見の信者さんは大村藩外海から移り住んだキリシタンを先祖としていて、五島崩れの際には信仰を守るため 部落をあげて離村しましたが、迫害の時代が終わり、再び福見の地に戻り、教会を建立されたのだそうです。

更に車を走らせると、
小さな入江の対岸に浮かぶように教会が見えてきました。

この地区は明治初め「五島崩れ」と言われる迫害が激しかったところであり…

桐教会 寺・神社・教会

激しい弾圧を経験した信徒たちの「五島で一番美しい聖堂を造りたい」との願いが形になった教会です。

桐教会 寺・神社・教会

教会から反対側を見下ろすと、ここにも美しい入江がありました。

若松大橋を渡ると…

若松大橋 名所・史跡

また美しい入江に出会いました。
長崎県の海岸線の総延長は、なんと全国の12％を占めるそうです。

山道を辿って着いた龍観山展望所からは、西海国立公園の風景を一望し、若松大橋の全景を見渡すことが出来ます。

龍観山展望所 名所・史跡

中ノ浦教会を訪問します

中ノ浦教会 寺・神社・教会

教会の中は一年中、可憐な椿の花が咲いています

＊お写真をお借りしました

海辺の中ノ浦教会は、絵画のような佇まい

中ノ浦教会 寺・神社・教会

美しい砂浜にやってきました。

蛤浜海水浴場 ビーチ

この光景をカメラに収めようとしたけれど…

蛤浜海水浴場 ビーチ

この海の美しさを写し撮ることなど出来はしないから…

蛤浜でひろった貝殻を…

ティッシュにくるんでそっとポケットに忍ばせた。
どこまでも続く波紋とともに…

ランチは有川港近くの五島うどんの里「うどん茶屋 遊麺三昧」さんで。

うどん茶屋 遊麺三昧 グルメ・レストラン

私は地魚のすり身揚げのおうどん
夫は名物の地獄焚きうどん
細くてつるつると喉ごしのよいおうどんです。
おだしはあごだし。

教会巡りを続けましょう。
入江の向こうに見えているのは教会でしょうか…

キリストさまが手を広げて迎えてくれています

大曽教会 寺・神社・教会

静かに拝観いたします

教会建築の父といわれた鉄川與助氏が大正５年に建設された煉瓦造りの教会です。

大曽教会 寺・神社・教会

次に向かうは冷水教会ですが…

教会前のバス停の時刻表は真っ白…　どういうことでしょう。
時々路線バスとはすれ違うから　廃路線になったわけではなさそう。
この後も気になって他のバス停の時刻表を見てみましたが、やはり真っ白なのでした。

ここは私の知っている世界とは別の世界なのかも…

冷水教会 寺・神社・教会

閉ざされた扉の中に　神聖な光景が見えた気がしたけれど…

教会横の坂を昇り、振り返ると静かな青い海が広がっていました。

冷水教会 寺・神社・教会

円錐形の巨大な岩が付き出しているこの場所は、矢堅目公園
トトロ岩とも呼ばれています。

矢堅目展望所 公園・植物園

湾の向かいに赤い崖が見えます。
後で行ってみましょう。

赤ダキ断崖 自然・景勝地

奈摩湾を望む丘のうえに建つ煉瓦造りの聖堂は青砂ヶ浦天主堂
こちらの教会も鉄川與助氏の作で、国の重要文化財に指定されています。

青砂ヶ浦天主堂 寺・神社・教会

鉄川與助氏は、大工の修行中にフランス人のペリュー牧師と出会い、多くの教会を設計・建設されました。教会建築の父と呼ばれる方ですが、生涯、仏教徒を貫かれたそうです。

青砂ヶ浦天主堂 寺・神社・教会

信者の方が教会の中を案内して下さいました。

春分と秋分の日には…

青砂ヶ浦天主堂 寺・神社・教会

正面のステンドグラスと入口上の丸窓より太陽の光が差し込み、祭壇と人物像を美しく照らすように設計されているそうです。信者の方がお写真を見せて下さいました。

車を更に島の北端に向けて走らせると
崖に貼りつくように建つ木造の教会に出会いました。
江袋教会です。

江袋教会 寺・神社・教会

海を見下ろして建つ鐘塔のシルエットは
いつまでも見ていたい幻想的な風景でした。

シンプルなフォルムが美しい米山教会

米山教会 寺・神社・教会

この場所は上五島の最北端。
海の向こうには小値賀島や野崎島が見えます
野崎島の集落跡も世界文化遺産の構成資産となっています。

来た道を帰っていくと左手の半島の山中に白い建物が見えてきました。

あれは赤波江教会のようです。
あんな切り立った山深い斜面にキリシタンの方は隠れ住んでいたのでしょうか…

赤波江教会 寺・神社・教会

夕陽をみるために、赤ダキ断崖が見える場所にきました。

火山の噴火により、火口の周囲に積もった土が波によって削られ、現れた山の断面です。夕陽に照らされ、赤い土がより一層赤く輝いています。

赤ダキ断崖 自然・景勝地

西の果てに沈んでゆく太陽は…

その日の終わりの光で　水面を薄紫に染めて…

この世界にひたひたと広がってゆく
未知なる恐れをしばし忘れさせてくれるのでした。

私の住む世界は　なんて優しい色で満ちているのだろう。

今宵のお宿はマルゲリータ

五島列島リゾートホテル マルゲリータ 温泉

船をモチーフにした白壁は…

緩やかな螺旋を描き…

藍色に包まれた夜の帳が降りたなら…

華やかな宴が始まったのでした。

空と海の十字路 グルメ・レストラン

そして島の夜は静かに更けてゆきました。

夜が明けました
お部屋からは朝日が見えます。
今日はゆったり12時チェックアウトなので
もうひと眠り…

次に目が覚めた時は、もうすっかり明るくなっていました

五島列島リゾートホテル マルゲリータ 温泉

おなかすいたなぁ…

空と海の十字路で…

朝ごはんをいただきましょう。

空と海の十字路ってなんて素敵なネーミングかしら。
教会の十字架ともかけているのですね、きっと…

空と海の十字路 グルメ・レストラン

私は洋食、夫は和食
サイドメニューは好きなものを好きなだけ…

おなかいっぱいになったので、動物さんの後についていってみたら…

光溢れるロビーへ
ここも十字架がいっぱい並んでいるかの様な空間

五島列島リゾートホテル マルゲリータ 温泉

海をみながら朝から温泉　極楽極楽…

名残惜しいけれど…

そろそろ出発の時刻が近づいてきました。

清潔で海と緑がみえる部屋…

スタッフのホスピタリティ

吹き抜けのロビー

センスの良い調度品

島にある教会の数と同じ29室の…

とても気持ちの良いホテルでした。

五島列島リゾートホテル マルゲリータ 温泉

今日も教会めぐりに出かけましょう。

ホテルの庭越しに十字架が見えます
今日の教会巡りは…

曽根教会から…
この地も信仰を公にして迫害を受けた歴史があります。
明治14年に初代の教会堂が建てられました。

曽根教会 寺・神社・教会

こちらは丸尾教会
この地区も迫害の嵐を避けて外海地方から移住してきたキリシタンの子孫が暮らされています。

丸尾教会 寺・神社・教会

五島灘を望む丸尾の丘の上に建立された白亜の教会です。

次に向かうのは頭ケ島です
この場所にとても行ってみたかったので、気持ちが高まります。

青く澄んだ海に…

マーブル模様とオレンジ色の岩が映えます

これから向かう頭ヶ島の集落は、2018年世界文化遺産の構成資産となり、自家用車でのアクセスは禁止されています。

現在は定期便が廃止となった上五島空港でシャトルバスに乗り換えます。
頭ヶ島天主堂の見学は、
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター」へ事前連絡が必要です。
https://kyoukaigun.jp/reserve/list.php

空港の建物には、インフォメーションセンターがあり、ここで巡礼手帳を入手しました。

上五島空港 空港

頭ヶ島天主堂が見えてきました。

19世紀、外海地域から各地へ広がった潜伏キリシタンの一部は、
感染症の病気の人の療養地で人が近づかなかった頭ヶ島へと移り住みました。

頭ケ島天主堂 名所・史跡

頭ヶ島は、周囲が切り立った海岸地形のため舟が着けづらい場所であったことから…

秘かに信仰を続けていくためには、絶好の場所だったのです。

頭ケ島天主堂 名所・史跡

仏教徒の開拓指導者のもとで信仰をカモフラージュしつつ、ひそかに共同体を維持しましたが…

明治に入り、五島崩れといわれる捕縛が起き、頭が島のキリシタンも捕らえられてしまいました。

現在の教会堂は、迫害が終わり再び島へ戻り住んだ信者達が…

自ら切り出した砂岩を積み上げ作った石造りの聖堂です。

教会の傍にあるカトリック共同墓地から望む浜辺は…

頭ヶ島キリシタン墓地 名所・史跡

浜全体が埋葬場所でもありました。

頭ケ島を出て、旧鯛ノ浦教会に着きました。
美しい佇まいの旧聖堂のレンガ造の塔は、
原爆で崩壊した浦上天主堂の被爆レンガで一部作られているのだとか。
この教会にも清らかなルルドがありました。

旧鯛ノ浦教会 寺・神社・教会

教会のステンドグラスの誘惑に負けて…

旧鯛ノ浦教会 寺・神社・教会

覗き込んだ世界は蒼かった…

そんな私をマリア様は許して下さったかしら…

五島の教会を巡る旅もこれでおしまい…

有川港から船に乗って帰るとしましょう。

そうか…　ここは祈りに満ちた西の果てだったのだ。

夕陽が西の果ての海に沈む頃…

私の旅は終わったのでした。
長崎の大浦天主堂と日本26聖人記念館のお話は、またいつの日か書けたら…と思います。

この旅行記へのコメント （2）

• sanaboさん 2020/09/14 22:17:05

  空と海の十字路

  夏秋さん、こんばんは～
  
  ようやく朝晩、秋の気配が少しずつ感じられるようになりましたね。
  
  普通に生活をしながら密かに信仰を抱き続けたという「潜伏キリシタン」の人々…
  何が彼らをそうさせたのだろうかという思いとともに旅行記を拝見しました。
  
  細長い島国の日本なのに、長崎県がその12%もの海岸線を占めて
  いるとは驚きでした。それだけ入り江が多いということなのでしょうね。
  蛤浜の幾重にも連なる波紋とその先に見える海水のグラデーションカラーが
  なんとも美しくてしばし見入ってしまいました☆
  時々路線バスとすれ違うというのにバス停の時刻表が真っ白なのは
  凄く不思議～
  そう思っていたらトトロ岩が登場し、きっと路線バスに姿を変えた
  ネコバスだったんじゃないかしら…なぁんて思ったりして(^.^)
  そしてそして日没の薄紫色のお写真が美しいこと☆彡
  ご旅行された頃は誰もが未知の恐怖を心に抱いていましたから
  夏秋さんのコメントに共感を覚えました。
  
  お泊りになったマルゲリータは素敵なコンセプトのホテルですね。
  「空と海の十字路」というネーミングも海に面した美しい立地と
  五島列島という歴史を背負った土地柄とを見事に言い表しているように
  感じられました。
  
  夏秋さんの綴られる文章が心地よく心に響き、独特な世界観を感じながら
  読ませていただきました。
  今回訪問が叶わなかった奈留島、久賀島へもまたいつか訪れる機会が
  ありますように☆
  
  コロナ太りしたのに夏痩せはせず、そして迎える食欲の秋！
  何とかせねばとジムに真面目に通い始めました。
  夏秋さんも季節の変わり目、体調管理にお気をつけ下さいね^^
  
  sanabo
  

  夏秋さん からの返信 2020/09/15 18:55:42

  RE: 空と海の十字路

  sanaboさん　こんにちは。
  
  いつも旅行記ご覧下さりありがとうございます。
  ほんとにようやく過ごしやすくなりましたね。秋大好き〜(^^♪
  
  > 細長い島国の日本なのに、長崎県がその12%もの海岸線を占めて
  > いるとは驚きでした。それだけ入り江が多いということなのでしょうね。
  
  流石、sanaboさん！細かなところまで読んで下さりありがとうございます。
  私もこの数字には驚くと共に、長きに渡り密かに潜伏出来た理由が少しみえたようにも感じました。
  車で海岸線を走ると、次々に小さな入江が現れ、そうした入江に隠れるように教会が建っていました。
  
  > 蛤浜の幾重にも連なる波紋とその先に見える海水のグラデーションカラーが
  > なんとも美しくてしばし見入ってしまいました☆
  
  あんな美しい海を見たのは初めてでした。
  去年の秋に訪れた沖縄の海よりずっときれいでした☆
  
  > トトロ岩が登場し、きっと路線バスに姿を変えた
  > ネコバスだったんじゃないかしら…なぁんて思ったりして(^.^)
  
  なるほど！　夏秋は、ジブリの世界に迷い込んでしまっていたというわけですね！？
  レンタカーじゃなくて、バス旅にしたら良かったわ('ω')ノ
  
  > そしてそして日没の薄紫色のお写真が美しいこと☆彡
  
  あの写真はカメラに「神秘的に夕陽を撮る」
  というなんとも便利なお助けモードがあって、
  それで撮ったらああなりました。夏秋の腕ではございませぬ。
  
  > ご旅行された頃は誰もが未知の恐怖を心に抱いていましたから
  > 夏秋さんのコメントに共感を覚えました。
  
  sanaboさんも楽しみにされていたご旅行がどうなるのか不安でいっぱいの時でしたよね…
  少しづつ恐怖の正体がわかってきて、気持ちは落ち着きましたが、
  はやく普通の世界に戻れることを願うばかりです。
  
  > 「空と海の十字路」というネーミングも海に面した美しい立地と
  > 五島列島という歴史を背負った土地柄とを見事に言い表しているように
  > 感じられました。
  
  sanaboさん　素晴らしい。
  私がぼんやりと感じていたことを、ばっちり文章にして下さいました。
  ホテルの口コミ書こうと思ったので、このままパクらさせて頂きます！(＾◇＾)
  
  > 今回訪問が叶わなかった奈留島、久賀島へもまたいつか訪れる機会が
  > ありますように☆
  
  ありがとうございます。いつの日か絶対訪れたいと思います。
  
  > コロナ太りしたのに夏痩せはせず、そして迎える食欲の秋！
  > 何とかせねばとジムに真面目に通い始めました。
  
  食欲の秋来ましたね〜
  しっかり食べて、運動したら免疫バッチリですね！　タンパク質大事！
  夏秋もジムに週３日通い、ヨガとダンスをしつつ、がっつり食べてます。
  
  どうぞお元気でお過ごしくださいね。
  
  夏秋