2016/09/03 - 2016/09/04
107位(同エリア451件中)
群青さん
5つの温泉街の総称である奥飛騨温泉郷は、湧出量も日本で3本の指に入るほどの豊富さ。
湯の性質も幅広く、かけ流し露天風呂も数多くあちこちに点在しているとのことで、どの地域のどの宿に泊まろうかかなり思案した。
雄大な自然に抱かれるような露天風呂の宿も捨てがたいし、日本家屋を移築したムード溢れる和風旅館にも惹かれる。
でも、旅するイチバンの楽しみを味わえるのは、僕にとっては温泉と食事。
その観点から宿探しをしていくうちに、自然とこの宿に集約されていったような感じ。
*この文章は以前ブログに書いたものをフォートラベルに転載しました
- 旅行の満足度
- 5.0
- ホテル
- 4.5
- グルメ
- 5.0
- 交通
- 3.5
- 同行者
- 友人
- 交通手段
- 自家用車
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
(画像は借り物)
奥飛騨湯菜の宿 白雲荘
16時をちょっと回った頃合いに到着したら、気配を察したようで建物から支配人さんが出迎えに出てくれた。
宿外観の写真を撮る機会を逸したまま、まずはチェックイン。
「今回は”生たまごメインのメニューで宜しいですね!」
早々に支配人さんからの強烈なジャブ。
うろたえる友人。
背後にいた僕は
「あぁ、これがこの宿名物の支配人さんのトークなのね」
とニヤニヤしながら聞いていたら、友人もやっとジョークを言われている事に気づいたらしく・・・(笑)
(理由は後にわかると思います) -
館内はすべて絨毯が敷かれ、そのまま移動できる。
ラウンジロビー付近にはちょこんと囲炉裏や腰かけ、その奥には手作りのハーブティーが入ったポットも設えられている。
部屋は2階。
全8室のこじんまりとした宿。 -
階段を上がって2階はこんな感じ。
-
階段を上がってすぐの右手壁際には・・・
貸切風呂予約案内板なるものまで用意されている。
何とこの宿、宿泊は8室なのに、露天風呂2つと内湯3つも兼ね備えている贅沢さ。
夜9時までの時間帯については、チェックイン後に空いている貸切風呂の予約をこの案内板に貼っていくだけで完了。
それ以降の時間帯は、開いていれば何度でも自由に温泉を堪能できる仕組み。
5つも風呂があるのだから、まずどこかは空いているのがステキ!
早速、支配人さんが夕食前の時間帯までに2ヶ所ほど埋めてくださったのだが・・・
どうも自分、さっき入ってきたひらゆの森で湯あたりしたっぽい。
どうしようもないほど体がズドンと重だるく、夕食前に2つも風呂に入ったら間違いなく翌日は観光なんて無理だろうなぁ~ -
案内されたのは和室10畳の部屋。
シンプルで素朴な設えの角部屋。
まずは水分補給して体調を整えて、せっかくだから露天風呂だけ入りに行くことに。 -
貸切露天風呂「多季の湯」
この宿は、エリア的には新穂高温泉エリアと栃尾温泉エリアの中間点。
で、栃尾温泉の源泉と鎌田温泉の源泉の両方を使用し、贅沢にもかけ流し状態で使用しているとの事。 -
源泉の温度がやや高く、そのままでは入るのが大変なため、沢水で調節して入ってくれ!とのこと。
本来の温泉好きの人が聞いたら間違いなく怒るだろうなぁ!とは思うものの、僕らの場合はそこまで”源泉原理主義者”でもないので、少しだけ温度調節させていただき、気持ちよく湯を楽しんだ。
やや硫黄の香りが漂う単純温泉は無色透明でサラッとした湯あたり。
先程の平湯温泉のようなダメージ感はなく、これだったらペース配分さえ間違えなければのんびりと入れそうだ
まださほど館内も賑わっていなかったため、支配人さんが予約してくれたもう一つの内湯を見に行くことに。 -
貸切内湯 檜風呂 葉の湯
飛騨檜を用いた内湯には畳が敷かれている。
とりあえず僕は写真撮影だけ済ませ、部屋に戻ることに。
利用した友人曰く
「とても気持ち良かったよ~!畳敷きはイイネ!!」
と言うので、僕は結局、夕食後に入りに出向いた。 -
夕食は18時からにした。
1階にある食事処「ciel bleu」は畳敷きの個室スタイル。
しかも掘りごたつ形式なので、足を降ろせる快適さ!
これで背もたれのある座卓だったらもっと嬉しいのだが・・・
かつては和風旅館として利用されていたこの宿も、経営母体が変わり全面リフォームを施し、今のようなスタイルの宿に変わったのだとか。
これでホントにフレンチの夕食なの?
と、若干不思議な気分に包まれる。 -
「今宵のお飲み物は何にいたしましょうか?」
色白で銀縁メガネの実直そうなガタイのいい男性が尋ねてきた。
食事の給仕をしてくれる人のようだ。
ワインのことは全て友人にお任せなので、2人の会話を聞いていたのだが、どうもこの男性、只者っぽくない
最初に選んだのはこれ。
コドニュー・クラシコというスペインのカヴァ。
スッキリとした辛口のスパークリングワインで、気分も体もシャキッと生き返るかのよう。
これで間違いなく食欲が喚起され、今宵は美味しい食事を堪能できそうだ! -
今宵のメニュー構成
-
お野菜のブーケのトライアングル
-
パン2種類(全粒粉)
と運ばれてきて、暮れゆく奥飛騨の空を見つつ歓談しながらの食事。 -
海の幸山の幸 季節のあしらえ
奥飛騨産サーモンの下には伊豆近海産のスズキ、さらにその下の土台部分は白桃
驚くような取り合わせなんだけど、絶品の美味しさ。
何これ?何なの??この宿???
食事処の各室に目配りを利かせ絶妙のタイミングでやって来る給仕の男性に
「ホント食事が美味しいですね~」
と感想を述べてしまうほど。
こちらの質問にも即答で、これまた素晴らしい対応。
料理長の組み立てたメニューに対する理解度が給仕する人たち全員に共有されてなきゃ、こんな風に即座に的確に返答できない筈なので、その一点だけとってもこの宿のポテンシャルの高さが窺えるのだ。
美味しい料理と1本目のボトルを空にして、次、何を頼もうか?
白・赤をそれぞれグラスで注文するか?
それともボトルでどちらか1本頼んでしまうか? -
頼りになるのは給仕の男性。
この後に出てくるメニューを勘案して、最適のボトル1本を選んでもらうようお願いし、運ばれてきたのがこれ。
コート・デュ・ローヌ ブラン
あまりにも理詰めで説得力溢れる論理でこのワインを持ってきたので、友人はこの給仕さんに興味を持ったよう。
どうも本職はソムリエらしく、今宵はこの宿が満室で手が足りないために助っ人としてやって来たのだと言う。
どうりでワインに通じているわけだ!
僕には2人の会話が断片的にしか理解できなかったけれど、こういう風に論理を組み立ててワインを選ぶんだ~!という断片のようなものが垣間見えて、そのやり取りを見られてとても勉強になった。 -
お野菜のポタージュスープ
パッと見てわかる、カボチャのポタージュ!
これまた絶品。
パンで拭きながら余すところなく頂きました
ここまででも十分な水準なのに、メイン料理はこの後。
お箸で食べられるフレンチということで、肩も凝らず食事を楽しむことに専念できることはとても素晴らしいこと。
この水準が、奥飛騨温泉郷の、外観のやや古ぼけた和風旅館で提供されるのだから・・・
何と奥深いことだろう。 -
獲れたて産地直送の魚介料理
ちょっとデジカメの明度を落としたせいで、ややわかりにくい解像度になってしまったのだが
オマールエビ、それにサワラ
もうホントどうかしているわ、この宿!!
と贅沢な悲鳴を上げたくなる程。 -
お口直しシャーベット
「さてここでクイズです!一体このシャーベットは何が原料だと思いますか?」
先程のソムリエさんが悪戯っぽい微笑を浮かべつつテーブルにそれを置いてから、そのまま部屋を後にする。
確かに、今まで食べてきた数々の美味しいディナーの余韻を上手に拭うような清涼感。
かといって柑橘系といったような単純さとは程遠く・・・
確かにこの味はどこかで接しているはずなのに、でも答えが思い浮かんでこない。
僕らかなり酔っぱらってる???
ソムリエさんが次にやって来た時に、真っ先に聞いたのがその答え。
僕らは降参なので・・・
なんと、八角!!!
どうりで・・・
杏仁豆腐の風味づけとしても用いられていますものね~
恐れ入りました。 -
いよいよ、メインディッシュ
事前に3つの中から選んでからディナーが始まったのだが、その際に支配人さんから
「一皿ずつ別の料理を選んで分けて食べられるとより楽しめますよ~!」
と言われたので、友人とは別の料理をセレクト。
本日のジビエ料理 素材に合わせたソースで (友人の一皿)
鹿肉なのだそうだ! -
国産黒毛和牛のステーキ 2種のソース
ワインソースと和風ソース
やっぱ、デジカメの明度を落とし過ぎた
半分ずつ切り分けてシェアして食べて美味しかったのだが、食べ終わってから改めてメニューを見て気づいた。
3種類のメインディッシュの残りもう1つが「国産和牛ほほ肉の柔らか煮込み(お一人は是非オススメ)」と書いてあるじゃないですか・・・
マズったね~、やっぱちゃんと目を通さないとネ。
やらかした感じ、自分。
かなりの満腹感。
友人は長距離ドライブのハンドルをずっと握っていてくれたためか、美味しい食事とワインにご機嫌で、やや眠気を催した様子。
おーい、まだ寝るなよ!
食事終わってねーし。 -
特製燻製茶漬け(岐阜県産米使用)
燻製の魚が何かわからず尋ねると、ワラサだと言う。
ずっとフレンチが続いてきて、〆の部分にほんの一口、こういった和風のものが出てくる演出の巧みさ。
ニクいね、この料理人は(ニヤリ)! -
食後のデザートは
抹茶のブリュレ、オレンジアイス、果物。 -
ほろ苦いコーヒー
御馳走様でした。
ここ最近、どこかに旅した時は日本料理ベースの食事が多かったので、こんな風に本格的な洋風メニューは久しぶり。
ナイフ・フォークを使わずに、手軽に美味しいフレンチを食べられて、ソムリエさんの真髄に触れることができて、どんだけこの宿はスゴイのじゃ
部屋に移動して布団を敷き(この宿はチェックイン後に従業員が入室しない仕組みなのでセルフ)、寛いでいるうちに友人は睡魔の世界の住人になっちまったので・・・
まだ全然眠くない僕は、タオルを持って内湯へといそいそ。
畳敷きの浴室って贅沢だわ~(笑)
檜風呂が風情を増して、湯あたりも柔らかく気持ちいいのなんの。
この広さを独り占めする殿様気分を満喫し、部屋に戻ってからも水分補給(冷水)しながら小1時間ほどテレビを見て過ごし、就寝することに。
翌朝。
山あいの宿は夜明けがわかりにくい。
気づけば6時近くまで寝てしまったようでちょっと時間を損した気分。
昨日入れなかったもう一つの露天風呂に朝湯しに。 -
貸切露天風呂 歌瀬の湯
名前に騙されちゃ危険だぜ!
湯の温度が高いので、決して打たせ湯しようなんて考えたらイケナイ。
ホント、この宿の温泉は柔らかくてなんて気持ちいいのだろう。
せっかくなので内湯ももう1箇所入ることに。
ホント、こういう部分に自分の貧乏性気質を感じるけど、せっかくだもんね~ -
貸切内湯 檜風呂 露の湯
ここもまた畳敷き、浴槽の広さも複数人入れるほどの大きさ。
シャンプーバーも設えられていて、アメニティーの面でもなかなかのもの。
女性などはこういった点へのこだわりが大きいから、そうしたニーズへの対応なんでしょうね、きっと。
昨夜あれだけしっかり食事を堪能して満腹だったのに、ぐっすり眠って朝から2箇所も温泉に浸かったら無性に空腹感を覚える。
朝食が待ち遠しい -
朝食を7時半からにして正解だった。
昨日の食事処で、ドリンクを選んで料理を待つ。
僕はりんごジュース。
やや癖のある味わい。 -
野菜にかかるドレッシングが絶品!美味し過ぎる~~
ミネストローネも野菜の滋味が溢れ、素材の新鮮さが直球ど真ん中を突いてくる感じ! -
パンは安定の旨さ!
-
選べるメイン料理は3種類から。
特製オムレツ(チーズ入り)
これは友人のメインディッシュ -
お豆腐のステーキ 山椒味噌ソース
これは僕のメインディッシュ
ちなみに選べるもう1つは「フライドエッグ(お好みの焼き加減で)」というもの。
僕が豆腐のステーキを選んだ理由。
生たまごが苦手だからなんですよね~!
それを知っていた友人が、予約の際に
「一人は生たまごがダメなので考慮願います」
と記してくれたらしいのだが、そこを逆手に取ったのが、あのチェックイン時の会話のラリー。
ユーモアあふれる支配人さんに一本取られたのが、素直で気の優しい友人。
でも、本当にありがとう! -
食後のデザート。
ホントという言葉を何度繰り返しても足りないくらい、心から良い宿に泊まった!と感じた。
料理、温泉の素晴らしさだけでなく、ここの宿の場合、スタッフの給仕に細かい心配り・心尽くしがなされていて、しかも押しつけがましくないのがステキ。
何を質問しても誰に質問しても同じ水準の答えが返って来る、日ごろからの賜物は一朝一夕に成り立つものではない。
プチ贅沢気分を味わえる、でも肩ひじ凝らない落ち着きの宿。
また今度は違う時期に訪れたいと、強く心に感じた1泊2日の楽しい時間だった。
(追記)
今改めて画像を見ていても涎が出てきてしまうほど(笑)、その料理の美味しさをくっきりと思いだせること宿。
今はもう泊まることができません。
というのも僕らの旅の翌年の2月いっぱいで、この宿「奥飛騨湯菜の宿 白雲荘」は営業を止めてしまったから・・・
奥飛騨温泉郷という、関東からも東海からも訪れるのに時間を要する場所で、しかも源泉の良さで売る宿が多く競合するこの地域。
冬は豪雪に覆われ、さぞ経営を維持していくことが難しい場所柄なことでしょう。
これだけ特色溢れる宿づくりを実行しながら、でも経営を持続することの難しさ。
本当に残念なことですが、いついつまでも記憶の中ではこの宿での美味しい一夜を鮮やかに思い出すことができるのです。
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