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※長文です<br /><br />14:00。<br /><br />その腕時計の表示を、13:00へと変更したところで、状況は何も変わらない。<br /><br />時差を調整し、日本時間から北京時間へと合わせたところで、あと5分で、次の搭乗ゲートが閉まるという状況は変わらない。<br /><br />時計を合わせるという作業を最後に残し、その他、必要なことはすべて終わらせていた。<br /><br />ラゲッジスペースに入れていたカバンもすでに降ろしている。<br /><br />数分前に着陸した飛行機は、気圧を調整し、ドアが開くのを待っている。<br /><br />北京でパリへのトランジットの時間がギリギリ・・・というか、絶望的であることを知った際、<br /><br />せめてもの気休めに、飛行機の座席を前のほうに手配しなおしてもらっていたが、必要なかったようだ。<br /><br />飛行機が着陸態勢に入るというアナウンスの少し前、飛行機の後部の座席のほうから、<br /><br />徐々に、徐々に、前方に人が集まりだし、空席へと案内されて着席するのが見て取れた。<br /><br />要は、僕と同じく、今回の飛行機の遅延により、乗り換えが絶望的な人々が、飛行機の前方へと集められている。<br /><br />少しでも、早く飛行機を降りれるように、、、、という、飛行機側の配慮。<br /><br />ゆっくりと休憩できたであろう(←)、乗務員はそういう手はずは良かった。<br /><br />そうか、、、、そうだよな。。。。。<br /><br />一人旅であるが故、周囲が他人ばかりであったが故、誰ともこの不安や怒りを共有することができなかったが、何も、この状況にあるのは僕だけではないはず。<br /><br />改めて確認したところ、この飛行機の中に、「パリ行き」の人々が、僕以外にも、34人いるらしい。<br /><br />その人たちを全員置き去りにして、次の便が先に行く、、、、ということは、ちょっと考えにくい。。。。<br /><br />と、「日本」で、「日本人」のスタッフが言ってくれた。<br /><br />それが、せめてもの救い。<br /><br />ただ、ここは「中国」で、「中国人」のスタッフが指揮を執る。<br /><br />それが、何よりもの懸念。<br /><br />日本の常識なんて通用しない。<br /><br />飛行機が離陸を迎え、機内のモニターに、次の乗り継ぎ案内が表示される。<br /><br />15:00 ロンドン<br />15:40 デリー<br /><br />など。<br /><br />13:00の時点で、13:35のパリ行きは、表示されていなかった(←爆<br /><br />もう無理、、、、ということなのだろうか。<br /><br />僕の向かいの席には、白人の老婆が案内されてきた。<br /><br />ひどくおびえた様子で固唾をのんでいる。<br /><br />この人も、パリに行くんだろうか。<br /><br />全く何の戦力にも解決にもならないが、同じような境遇の人がいることで、どこか気が楽になった気がする。<br /><br />「Excuse me? Where is your next destination?」<br /><br />老婆に話しかけてみるも、驚いた様子で答は帰ってこない。<br /><br />ああ、英語が通じないのか。。。<br /><br />フランス語はとっさに出てこないので、とりあえず、「パリ?」と聞いてみたところ、<br /><br />「Oui,oui....」と神妙そうな笑顔でうなずいた。<br /><br />上品な、優しそうなマダム(老婆)だ。<br /><br />「Entendu。Est-ce que vous allez en Paris?<br /><br /> Moi, aussi....Mais Je n&#39;ai pas temps...」<br /><br />パリに行くんですよね?僕もです。時間がない。。。。<br /><br />ごく簡単な表現に過ぎないが、ネイティブ相手にフランス語をしゃべったのは初めて(フランス語検定3級)<br /><br />通じたのか通じなかったのは分からないが、老婆も大仰に顔をしかめては、腕時計をたたくジェスチャーをした。<br /><br />周囲には他にも日本人や、英語を話す人(アメリカ人)などが10人ほどいて、<br /><br />お互いに、「パリ?」「イエス」「ミートゥー・・・」などと苦笑いしながら、ドアが開くのを待っている。<br /><br />誰しもが思うことは同じだろう。<br /><br />自分はパリに行けるのだろうか。。。。<br /><br />僕もそう。<br /><br />こんなにも、仲間、同志がいたんだね。。。。<br /><br />いわば、僕らは運命共同体。<br /><br />同じ船の旅人さ。<br /><br />そう、ペキン → パリ。<br /><br />結成! ペ → パ 同盟軍!!<br /><br />どうか、みんなが無事にパリにたどり着けますように。<br /><br />そして、ようやく、ドアが開いた。<br /><br />それがスタートの笛の音であるかのように、<br /><br />皆、我先にと、走り出す。<br /><br />解散! ペッパー同盟軍!<br /><br />目指すは次の搭乗ゲート、E51。<br /><br />我ら【パリへ連なる者】<br /><br />皆、生きてまた会おうぞ!<br /><br />運命は残酷だ。<br /><br />されど、飛行機に遅れるな。<br /><br />パリが戦わぬ者に、微笑むことなど、決してないのだから。<br /><br />ボーディングブリッジを駆け降りると、空港スタッフが待機しており、<br /><br />走り去る僕を呼び止めては、肩に「エアチャイナ」のシールを付けてくれた。<br /><br />なるほど、これが、「乗り継ぎマジヤバイ」のシールか!<br /><br />これを見せると、少しくらい行列を抜かしても文句は言われず、優先的に手続きをしてくれるという伝説のアイテム!<br /><br />だけど、肩って見えにくい!<br /><br />僕はすぐに外すと、そのまま顔に貼り付けた。<br /><br />さしずめ、ユニバの誕生日シール!<br /><br />これをつけていると、スタッフが笑顔で声をかけてくれる。<br /><br />ハッピーバースデー♪ ?<br /><br />いんにゃ、ハリーアップ!!!!ってな。<br /><br />経験者は分かると思うが、海外の空港って、本気で広い。<br /><br />日ごろの運動不足のせいか。。。。<br /><br />この切羽詰まった状況だというのに、僕はたかが500mほど走った程度で、息が上がり切り、体力の限界を迎えてしまう。<br /><br />そりゃ、ジョギングのペースならいくらでも走れるけど、<br /><br />中国の空気の中、<br /><br />4キロほどはあるトートバッグをかつぎながら、<br /><br />全力ダッシュって、<br /><br />そりゃ体力持たないって。。。<br /><br />それにな、<br /><br />どう見ても、<br /><br />僕が先頭(←爆<br /><br />その場で立ち止まり、少しだけ息を整える。<br /><br />顔が汗だくになり、シールがはがれそうなので、改めて腕に付け直した。<br /><br />改めて見回しても、前にも、後ろにも、、、、、誰もいない。<br /><br />僕が先頭。<br /><br />余りに誰もいないので、もしかしたら後のメンバーは、空港が直接用意した特別のバスとかで移動してもらえているのではないかと少し不安になったくらい。<br /><br />が、息を整えつつ少し待つと、はるか後方に、同じくえっちらおっちら走ってる白人のオッサンが視界に入り、<br /><br />その後ろにも各自思い思いのペースでパリへ向かう人々の姿が散見された。<br /><br />そうだよな、さっきの老婆も含め、全員が健脚ってわけでもないんだろうし、走れない人も当然いるだろう。<br /><br />ただ、他人の心配をしている余裕はなく、僕は少しだけ歩いたのち、また再び全力で走りだす。<br /><br />全力とはいえ、今の状況だとジョギング程度のペースでしかないのだが。。。<br /><br />検疫検査場、乗継審査場と、幸いにもほとんど人はおらず、<br /><br />中国人の審査官も、焦っている僕に配慮してか、特に仕事をする気がないのか、ほぼ素通りで通してくれた。<br /><br />そしてエスカレーターを飛び降り、保安検査場。<br /><br />最大の難所!<br /><br />日本とは比べ物にならないほど、荷物のチェックが厳しい!<br /><br />そして長蛇の列。<br /><br />これに並んでいると、30分くらいはかかりそう。<br /><br />えーい!このシールが目に入らぬか!<br /><br />僕はちょっと前に話題になった柴犬みたいな右フックのポーズでシールをアピールするも、保安場の係員も多忙なようで、こちらに気づいてくれない。<br /><br />だとすればしょうがない、列に割り込むしかない。<br /><br />そうなんだが。。。。<br /><br />中国人は平気で列に割り込むらしいが、僕は正直、そういう輩を本気で毛嫌いしている。<br /><br />だからいざ自分がその立場になったところで、どうしても図々しくも割り込んでいくことができなかった。<br /><br />日本人として自己主張が弱いところだろうか。。。<br /><br />僕が弱弱しく、「Excuse me...」と声をかけようとしていると、<br /><br />さっき遥かに後ろにいた白人のオッサンが、<br /><br />「Sorry, I have no time!!!!」と叫びながら、テキサスの暴れ馬のごとく、めちゃくちゃに列に突っ込んできた笑<br /><br />さすが白人、中国人にも負けない自己主張!笑<br /><br />乗るしかない!このビッグダディに!<br /><br />「Me, too!!!!」<br /><br />抜かれはしたものの、その後ろ、二番手となって、列に突っ込む。<br /><br />テキサスおやじ、日本人の僕、周囲の中国人、という多国籍紛争地域みたいになっているが、意外にも中国人はおとなしく、先に行かせてくれた。<br /><br />「We have no time!」と繰り返し叫びつつ突進する白人のオッサンに気圧されたか。<br /><br />・・・・ん?<br /><br />We・・・・?<br /><br />オッサン、一人だよな。<br /><br />Weって。。。。?<br /><br />まさか・・・。<br /><br />僕は胸に熱いものがこみあげてくるのを感じた。<br /><br />オッサン、いや、ダディ!<br /><br />今だけは、あんたを父親と呼ぶことにするぜ、持ってるパスポート全く違うけど!<br /><br />二人で、「We have no time!」を連呼しながら、「30人抜かし」くらいをして、気が付けば保安検査の最前列まで割り込んだ爆<br /><br />そしてそのままノータイムで保安検査を受けるオッサン。<br /><br />その後ろで慌ててベルトを外す僕。<br /><br />いや、ほんま、申し訳ない。。。どんだけ抜かしただろう。。。。<br /><br />「I&#39;m sorry...Time is limited.....」<br /><br />ベルトを外し、順番を待つ間に、最後に抜かした男性に声をかける。<br /><br />見ると、その手には韓国のパスポート。<br /><br />「ミアナムニダ・・・・ピヘンギ ヌジョソ シガニ オプソヨ。。。。」<br />(ごめんなさい。。。。飛行機が遅れて時間がありません。。。)<br /><br />苦笑いしながら韓国語で謝る(ハングル検定3級)<br /><br />おじさんはちょっとびっくりしたような表情になったが、すぐに満面の笑顔で、<br /><br />「No problem, No problem」<br /><br />と英語で言ってくれた。<br /><br />ありがとう、おじさん!<br /><br />僕の発音の悪さから、自分も韓国語で返したら通じないだろうと一瞬で見抜くその洞察眼!<br /><br />こういうとき、いろんな言葉が分かると便利。<br /><br />実用性は全くないものの、片言でも、自国の言葉で謝られると、人間、許す気になるみたい笑<br /><br />そうやって、世界一厳しい中国の手荷物検査を終え、再び走り出す。<br /><br />目指すはE51搭乗ゲート。<br /><br />つーか、北京首都国際空港って、エアチャイナのハブ空港だろ?<br /><br />なんでこんな搭乗ゲート遠いねん!<br /><br />LCC並みかよ!<br /><br />ようやく、「E49-E55」の案内板のある階段を降り、僕がE51を探してきょろきょろしていると、少し先から、「Hey!」と声がかかる。<br /><br />声の方向を見ると、ダディ!<br /><br />そしてその上には、E51の看板!<br /><br />ダディ~~~~~~~~!!!<br /><br />息を切らして立ち寄ると、笑顔で、スタッフのほうを指さされる。<br /><br />さっさと、チケットを切ってもらえと言わんばかりに。<br /><br />ってことは。。。。<br /><br />僕は震える手でチケットを差し出すと、無表情のスタッフが何事もなかったかのように、それを切り、<br /><br />そして、別の紙に何やらチェックを入れた。<br /><br />そしてその目の前には停車しているバス。<br /><br />空港の搭乗口から沖止めの飛行機までをつなぐ連絡バスだ。<br /><br />バスの入り口には、次の便名と、「PARIS」の文字が!!<br /><br />ま、間に合った。。。。。。。<br /><br />息を切らして乗り、すでに席についていた中国人の乗客に、<br /><br />「去巴黎的?」(パリに行く?)<br />「対」(うん)<br />「謝謝・・・・・」(どうも)<br /><br />今日、英語以外を使いすぎだ。。。。<br /><br />席はまだ少し空きがあったけど、とてもじゃないが座る気にはなれなかった。<br /><br />足が疲れているのはもちろんだが、全身が汗だくすぎる。。。。<br /><br />ようやく息を整え、手荷物検査の後、3つしか穴の通っていないベルトをつなぎなおす。<br /><br />数分後、フランス人もしくはアメリカ人と思しきカップルが叫びながら乗車してきた。<br /><br />男「Yeah! I did it! I did it!  Unbelievale!」<br /><br />大興奮で叫んでいる。<br /><br />僕「From Kansai?」<br /><br />男「Yeah!」<br /><br />思わず二人でハイタッチする。<br /><br />どうでもいいけど、この人、今、「 I 」って言ったな。<br /><br />このカップルの絆は、さっきの僕とダディの絆以下らしい笑<br /><br />その後も、何組かの人が乗り込んできてはお互いにハイタッチする。<br /><br />ダディも、遅れてきたワイフとサンと一緒に乗ってきた。<br /><br />あれ? ダディ、僕以外にもサンがいたの?<br /><br />あんた、家族をほったらかしてあんだけ全力ダッシュしたのかよwww<br /><br />って一瞬思ったけど、むしろ自分が先に着いたうえで、スタッフに、「ファミリーが後から来るから待っててくれ」って伝えてくれたんだろう。<br /><br />なんという大きな愛。<br /><br />ありがとう、ファミリーを代表して、お礼を言うよ!<br /><br />そのバスはしばらくして走りだしたけど、飛行機に乗り込んだ後も、当面は離陸せず、次のバスを待っていたようだ。<br /><br />結果的に、おそらく一番歩みが遅かったであろう老婆を含め、全員が飛行機に搭乗できたと思われる。<br /><br />つまり、13:05にゲートクローズはせず、先発便が遅れた分、しっかりと待っていてくれたらしい。<br /><br />まあ、他社の便の遅れなら待たないだろうけど、自社の便の遅れだからな。。。。<br /><br />その飛行機の200人くらいの乗客のうち、30人以上が遅れるんだから、さすがに待つか。。。<br /><br />その程度の常識は中国でも通用してくれたのか。。。<br /><br />結論言うと、走らなくてもよかったな。。。。爆<br /><br />パリは戦わないものにも微笑んでくれたんだな。。。。<br /><br />普段、他人の心配なんてあまりしない僕だが、最終的に老婆が乗ってきたのを見ると、どこかほっとしたのを感じた。<br /><br />我ら、ペッパー同盟、よくぞみんな無事で。。。。。<br /><br />目頭が熱くなっただけではなく、さらに言えば、汗だく、息切れ、という、<br /><br />今から11時間、飛行機に缶詰という、それまでの人生で最長のフライトに臨む身としては、コンディションは最悪だったが、<br /><br />なんとか、無事にパリへ向けて飛び立てたようだ。<br /><br />これからの11時間のフライトよりも、このわずか30分足らずの乗り継ぎのほうが、はるかに時間がかかったように感じられる。<br /><br />よかった。。。。<br /><br />ヨーロッパの旅行なのに、なぜか毛沢東の写真がアップされることにならなくて本当に良かった。。。。<br /><br />

文圧で語るヨーロッパ旅行記 その2 パリへ連なる者

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2019/04/29 - 2019/05/06

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たくや

たくやさん

※長文です

14:00。

その腕時計の表示を、13:00へと変更したところで、状況は何も変わらない。

時差を調整し、日本時間から北京時間へと合わせたところで、あと5分で、次の搭乗ゲートが閉まるという状況は変わらない。

時計を合わせるという作業を最後に残し、その他、必要なことはすべて終わらせていた。

ラゲッジスペースに入れていたカバンもすでに降ろしている。

数分前に着陸した飛行機は、気圧を調整し、ドアが開くのを待っている。

北京でパリへのトランジットの時間がギリギリ・・・というか、絶望的であることを知った際、

せめてもの気休めに、飛行機の座席を前のほうに手配しなおしてもらっていたが、必要なかったようだ。

飛行機が着陸態勢に入るというアナウンスの少し前、飛行機の後部の座席のほうから、

徐々に、徐々に、前方に人が集まりだし、空席へと案内されて着席するのが見て取れた。

要は、僕と同じく、今回の飛行機の遅延により、乗り換えが絶望的な人々が、飛行機の前方へと集められている。

少しでも、早く飛行機を降りれるように、、、、という、飛行機側の配慮。

ゆっくりと休憩できたであろう(←)、乗務員はそういう手はずは良かった。

そうか、、、、そうだよな。。。。。

一人旅であるが故、周囲が他人ばかりであったが故、誰ともこの不安や怒りを共有することができなかったが、何も、この状況にあるのは僕だけではないはず。

改めて確認したところ、この飛行機の中に、「パリ行き」の人々が、僕以外にも、34人いるらしい。

その人たちを全員置き去りにして、次の便が先に行く、、、、ということは、ちょっと考えにくい。。。。

と、「日本」で、「日本人」のスタッフが言ってくれた。

それが、せめてもの救い。

ただ、ここは「中国」で、「中国人」のスタッフが指揮を執る。

それが、何よりもの懸念。

日本の常識なんて通用しない。

飛行機が離陸を迎え、機内のモニターに、次の乗り継ぎ案内が表示される。

15:00 ロンドン
15:40 デリー

など。

13:00の時点で、13:35のパリ行きは、表示されていなかった(←爆

もう無理、、、、ということなのだろうか。

僕の向かいの席には、白人の老婆が案内されてきた。

ひどくおびえた様子で固唾をのんでいる。

この人も、パリに行くんだろうか。

全く何の戦力にも解決にもならないが、同じような境遇の人がいることで、どこか気が楽になった気がする。

「Excuse me? Where is your next destination?」

老婆に話しかけてみるも、驚いた様子で答は帰ってこない。

ああ、英語が通じないのか。。。

フランス語はとっさに出てこないので、とりあえず、「パリ?」と聞いてみたところ、

「Oui,oui....」と神妙そうな笑顔でうなずいた。

上品な、優しそうなマダム(老婆)だ。

「Entendu。Est-ce que vous allez en Paris?

 Moi, aussi....Mais Je n'ai pas temps...」

パリに行くんですよね?僕もです。時間がない。。。。

ごく簡単な表現に過ぎないが、ネイティブ相手にフランス語をしゃべったのは初めて(フランス語検定3級)

通じたのか通じなかったのは分からないが、老婆も大仰に顔をしかめては、腕時計をたたくジェスチャーをした。

周囲には他にも日本人や、英語を話す人(アメリカ人)などが10人ほどいて、

お互いに、「パリ?」「イエス」「ミートゥー・・・」などと苦笑いしながら、ドアが開くのを待っている。

誰しもが思うことは同じだろう。

自分はパリに行けるのだろうか。。。。

僕もそう。

こんなにも、仲間、同志がいたんだね。。。。

いわば、僕らは運命共同体。

同じ船の旅人さ。

そう、ペキン → パリ。

結成! ペ → パ 同盟軍!!

どうか、みんなが無事にパリにたどり着けますように。

そして、ようやく、ドアが開いた。

それがスタートの笛の音であるかのように、

皆、我先にと、走り出す。

解散! ペッパー同盟軍!

目指すは次の搭乗ゲート、E51。

我ら【パリへ連なる者】

皆、生きてまた会おうぞ!

運命は残酷だ。

されど、飛行機に遅れるな。

パリが戦わぬ者に、微笑むことなど、決してないのだから。

ボーディングブリッジを駆け降りると、空港スタッフが待機しており、

走り去る僕を呼び止めては、肩に「エアチャイナ」のシールを付けてくれた。

なるほど、これが、「乗り継ぎマジヤバイ」のシールか!

これを見せると、少しくらい行列を抜かしても文句は言われず、優先的に手続きをしてくれるという伝説のアイテム!

だけど、肩って見えにくい!

僕はすぐに外すと、そのまま顔に貼り付けた。

さしずめ、ユニバの誕生日シール!

これをつけていると、スタッフが笑顔で声をかけてくれる。

ハッピーバースデー♪ ?

いんにゃ、ハリーアップ!!!!ってな。

経験者は分かると思うが、海外の空港って、本気で広い。

日ごろの運動不足のせいか。。。。

この切羽詰まった状況だというのに、僕はたかが500mほど走った程度で、息が上がり切り、体力の限界を迎えてしまう。

そりゃ、ジョギングのペースならいくらでも走れるけど、

中国の空気の中、

4キロほどはあるトートバッグをかつぎながら、

全力ダッシュって、

そりゃ体力持たないって。。。

それにな、

どう見ても、

僕が先頭(←爆

その場で立ち止まり、少しだけ息を整える。

顔が汗だくになり、シールがはがれそうなので、改めて腕に付け直した。

改めて見回しても、前にも、後ろにも、、、、、誰もいない。

僕が先頭。

余りに誰もいないので、もしかしたら後のメンバーは、空港が直接用意した特別のバスとかで移動してもらえているのではないかと少し不安になったくらい。

が、息を整えつつ少し待つと、はるか後方に、同じくえっちらおっちら走ってる白人のオッサンが視界に入り、

その後ろにも各自思い思いのペースでパリへ向かう人々の姿が散見された。

そうだよな、さっきの老婆も含め、全員が健脚ってわけでもないんだろうし、走れない人も当然いるだろう。

ただ、他人の心配をしている余裕はなく、僕は少しだけ歩いたのち、また再び全力で走りだす。

全力とはいえ、今の状況だとジョギング程度のペースでしかないのだが。。。

検疫検査場、乗継審査場と、幸いにもほとんど人はおらず、

中国人の審査官も、焦っている僕に配慮してか、特に仕事をする気がないのか、ほぼ素通りで通してくれた。

そしてエスカレーターを飛び降り、保安検査場。

最大の難所!

日本とは比べ物にならないほど、荷物のチェックが厳しい!

そして長蛇の列。

これに並んでいると、30分くらいはかかりそう。

えーい!このシールが目に入らぬか!

僕はちょっと前に話題になった柴犬みたいな右フックのポーズでシールをアピールするも、保安場の係員も多忙なようで、こちらに気づいてくれない。

だとすればしょうがない、列に割り込むしかない。

そうなんだが。。。。

中国人は平気で列に割り込むらしいが、僕は正直、そういう輩を本気で毛嫌いしている。

だからいざ自分がその立場になったところで、どうしても図々しくも割り込んでいくことができなかった。

日本人として自己主張が弱いところだろうか。。。

僕が弱弱しく、「Excuse me...」と声をかけようとしていると、

さっき遥かに後ろにいた白人のオッサンが、

「Sorry, I have no time!!!!」と叫びながら、テキサスの暴れ馬のごとく、めちゃくちゃに列に突っ込んできた笑

さすが白人、中国人にも負けない自己主張!笑

乗るしかない!このビッグダディに!

「Me, too!!!!」

抜かれはしたものの、その後ろ、二番手となって、列に突っ込む。

テキサスおやじ、日本人の僕、周囲の中国人、という多国籍紛争地域みたいになっているが、意外にも中国人はおとなしく、先に行かせてくれた。

「We have no time!」と繰り返し叫びつつ突進する白人のオッサンに気圧されたか。

・・・・ん?

We・・・・?

オッサン、一人だよな。

Weって。。。。?

まさか・・・。

僕は胸に熱いものがこみあげてくるのを感じた。

オッサン、いや、ダディ!

今だけは、あんたを父親と呼ぶことにするぜ、持ってるパスポート全く違うけど!

二人で、「We have no time!」を連呼しながら、「30人抜かし」くらいをして、気が付けば保安検査の最前列まで割り込んだ爆

そしてそのままノータイムで保安検査を受けるオッサン。

その後ろで慌ててベルトを外す僕。

いや、ほんま、申し訳ない。。。どんだけ抜かしただろう。。。。

「I'm sorry...Time is limited.....」

ベルトを外し、順番を待つ間に、最後に抜かした男性に声をかける。

見ると、その手には韓国のパスポート。

「ミアナムニダ・・・・ピヘンギ ヌジョソ シガニ オプソヨ。。。。」
(ごめんなさい。。。。飛行機が遅れて時間がありません。。。)

苦笑いしながら韓国語で謝る(ハングル検定3級)

おじさんはちょっとびっくりしたような表情になったが、すぐに満面の笑顔で、

「No problem, No problem」

と英語で言ってくれた。

ありがとう、おじさん!

僕の発音の悪さから、自分も韓国語で返したら通じないだろうと一瞬で見抜くその洞察眼!

こういうとき、いろんな言葉が分かると便利。

実用性は全くないものの、片言でも、自国の言葉で謝られると、人間、許す気になるみたい笑

そうやって、世界一厳しい中国の手荷物検査を終え、再び走り出す。

目指すはE51搭乗ゲート。

つーか、北京首都国際空港って、エアチャイナのハブ空港だろ?

なんでこんな搭乗ゲート遠いねん!

LCC並みかよ!

ようやく、「E49-E55」の案内板のある階段を降り、僕がE51を探してきょろきょろしていると、少し先から、「Hey!」と声がかかる。

声の方向を見ると、ダディ!

そしてその上には、E51の看板!

ダディ~~~~~~~~!!!

息を切らして立ち寄ると、笑顔で、スタッフのほうを指さされる。

さっさと、チケットを切ってもらえと言わんばかりに。

ってことは。。。。

僕は震える手でチケットを差し出すと、無表情のスタッフが何事もなかったかのように、それを切り、

そして、別の紙に何やらチェックを入れた。

そしてその目の前には停車しているバス。

空港の搭乗口から沖止めの飛行機までをつなぐ連絡バスだ。

バスの入り口には、次の便名と、「PARIS」の文字が!!

ま、間に合った。。。。。。。

息を切らして乗り、すでに席についていた中国人の乗客に、

「去巴黎的?」(パリに行く?)
「対」(うん)
「謝謝・・・・・」(どうも)

今日、英語以外を使いすぎだ。。。。

席はまだ少し空きがあったけど、とてもじゃないが座る気にはなれなかった。

足が疲れているのはもちろんだが、全身が汗だくすぎる。。。。

ようやく息を整え、手荷物検査の後、3つしか穴の通っていないベルトをつなぎなおす。

数分後、フランス人もしくはアメリカ人と思しきカップルが叫びながら乗車してきた。

男「Yeah! I did it! I did it!  Unbelievale!」

大興奮で叫んでいる。

僕「From Kansai?」

男「Yeah!」

思わず二人でハイタッチする。

どうでもいいけど、この人、今、「 I 」って言ったな。

このカップルの絆は、さっきの僕とダディの絆以下らしい笑

その後も、何組かの人が乗り込んできてはお互いにハイタッチする。

ダディも、遅れてきたワイフとサンと一緒に乗ってきた。

あれ? ダディ、僕以外にもサンがいたの?

あんた、家族をほったらかしてあんだけ全力ダッシュしたのかよwww

って一瞬思ったけど、むしろ自分が先に着いたうえで、スタッフに、「ファミリーが後から来るから待っててくれ」って伝えてくれたんだろう。

なんという大きな愛。

ありがとう、ファミリーを代表して、お礼を言うよ!

そのバスはしばらくして走りだしたけど、飛行機に乗り込んだ後も、当面は離陸せず、次のバスを待っていたようだ。

結果的に、おそらく一番歩みが遅かったであろう老婆を含め、全員が飛行機に搭乗できたと思われる。

つまり、13:05にゲートクローズはせず、先発便が遅れた分、しっかりと待っていてくれたらしい。

まあ、他社の便の遅れなら待たないだろうけど、自社の便の遅れだからな。。。。

その飛行機の200人くらいの乗客のうち、30人以上が遅れるんだから、さすがに待つか。。。

その程度の常識は中国でも通用してくれたのか。。。

結論言うと、走らなくてもよかったな。。。。爆

パリは戦わないものにも微笑んでくれたんだな。。。。

普段、他人の心配なんてあまりしない僕だが、最終的に老婆が乗ってきたのを見ると、どこかほっとしたのを感じた。

我ら、ペッパー同盟、よくぞみんな無事で。。。。。

目頭が熱くなっただけではなく、さらに言えば、汗だく、息切れ、という、

今から11時間、飛行機に缶詰という、それまでの人生で最長のフライトに臨む身としては、コンディションは最悪だったが、

なんとか、無事にパリへ向けて飛び立てたようだ。

これからの11時間のフライトよりも、このわずか30分足らずの乗り継ぎのほうが、はるかに時間がかかったように感じられる。

よかった。。。。

ヨーロッパの旅行なのに、なぜか毛沢東の写真がアップされることにならなくて本当に良かった。。。。

同行者
一人旅
航空会社
中国国際航空

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この旅行記へのコメント (2)

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  • かめさん 2019/05/27 22:59:19
    5/7~5/16 関空~北京~パリ エアチャイナで行ってきました
    関空からのCA162便が遅れて大変だったみたいですね。
    全く同じ便で、5/7関空発5/16関空帰着で、フランスに行って来ました、
    北京での乗り継ぎ、詳しく書いています。遅れないというか、若干早く着きました。
    https://4travel.jp/travelogue/11495120
    3月にも、同ルート同じ便でフランスに行ってますが、遅れはありませんでした。
    この北京乗り継ぎも、旅行記あります。
    ただ、昨年の9月に西安~北京~関空に戻る際、台風21号による関空閉鎖で、北京で足止めをくらい、(あなた様は計画だけで終わりましたが)万里の長城・天安門広場の観光もしてきました。これも、旅行記に書いています。

    たくや

    たくやさん からの返信 2019/05/28 20:49:15
    RE: 5/7?5/16 関空?北京?パリ エアチャイナで行ってきました
    コメントありがとうございます。
    僕とは入れ違いのような感じですね。
    あまり遅れない便らしいんですが、今回は運が悪かったというか。。。

    おそらくヨーロッパ方面だと、人生で最初で最後の乗り継ぎのような気もしますし、レアケースだと思いますので、私もあまり知ったかぶりで語ることはしないように気を付けます。

    あくまで一つの経験談として・・・・(苦笑)




    > 関空からのCA162便が遅れて大変だったみたいですね。
    > 全く同じ便で、5/7関空発5/16関空帰着で、フランスに行って来ました、
    > 北京での乗り継ぎ、詳しく書いています。遅れないというか、若干早く着きました。
    > https://4travel.jp/travelogue/11495120
    > 3月にも、同ルート同じ便でフランスに行ってますが、遅れはありませんでした。
    > この北京乗り継ぎも、旅行記あります。
    > ただ、昨年の9月に西安?北京?関空に戻る際、台風21号による関空閉鎖で、北京で足止めをくらい、(あなた様は計画だけで終わりましたが)万里の長城・天安門広場の観光もしてきました。これも、旅行記に書いています。

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