嵐山・嵯峨野・太秦・桂旅行記(ブログ) 一覧に戻る
 紅葉の名所としてことに有名なのが京都・嵐山である。もともと嵐山というのは渡月橋の向かいの山のことだが、景勝地・観光地としての嵐山は渡月橋の東西の地域をそう呼んでいる。ゆえに嵯峨野も化野(あだしの)も小倉山もすべて嵐山ということになる。あまりににも有名なので小生も若い頃に何度か行ったことがある。今回は比較的知られていない”鈴虫寺”をメインに訪ねてみることにした。場所は南禅寺とは反対側の西南に位置する。<br /> ここへのアクセス方法はいくつかあるが、大阪方面からは阪急京都線を使い、途中桂駅で乗り換えるのがよい。桂駅から阪急嵐山駅へは7分で着くのである。以前、京都駅からバスで行くと1時間以上もかかってしまった。アクセスはよく調べるべきだとそのとき思った。<br /> さて鈴虫寺とは俗称である。正式には妙徳山・華厳時という。臨済宗の禅寺なのである。鈴虫寺と呼ばれる由来は、寺内にて鈴虫が鳴いていることによる。1年中いつ行っても鈴虫が鳴いているのである。江戸享保年間に、台巌和尚が鈴虫の音色を聞くうち開眼なさったことに起源を発している。それ以来この寺では鈴虫を年間を通して養育している。寺の部屋ごとに、卵やさなぎ、幼虫、成虫と分けて育てているのである。もちろんすべての部屋はエアコンで湿度と温度を管理している。この努力により鈴虫は1年中鳴いているのである。鈴虫の音色を聴くために全国から観光客が押し寄せている。この寺には鈴虫以外にもうひとつ観光客が押し寄せる理由がある。「幸福地蔵菩薩」という”ひとつ”だけならどんなお願いでも必ず聞いてくれるお地蔵様が鎮座しているのである。よって全国から悩める大人たちが大挙して訪れる。<br /> 今は紅葉シーズンである。この季節、観光客が殺到するのは間違いない。そこで小生は朝3時に起きて開門と同時に寺に入れば比較的すいているだろうと考えて出発したのである。開門は9時である。<br /> クルマで途中まで行き、日根野からJRと阪急電車を乗り継いで鈴虫寺に向かった。着いたのは8時半。阪急嵐山駅を降りると、そこからタクシーで鈴虫寺に向かった。しかし、すでに山門には10名ほどの観光客が開門を待っていた。<br /> 15分ほど待って9時に中に入った。後ろを見ると続々と悩める観光客たちが押し寄せてきている。受付で拝観料500円を払うと本殿に通された。お茶とお菓子が用意された机に座り、ここで住職の説法を聞くのである。鈴虫は住職の目の前に巣箱ごと置かれ、その鳴き声を聞きながら説法を聞くのである。<br /> お話はイソップ童話の『アリとキリギリス』、”ありのままに生きよ”というお話しであった。アリにはアリの”生き方”があり、キリギリスにはキリギリスの”生き方”がある。アリとキリギリスを比べるのではなく、人も他人と較べてはいけない。それぞれの”生き方”をすればいいというのである。おおよそそんなお話しであったと思う。もちろんこの話の途中には鈴虫寺の謂れや幸福地蔵のお話しなども含まれていたことは云うまでもない。<br /> 説法が終わったあとは庭園を鑑賞した。俗に、”奈良は仏像”、”京都は庭園”と云われるようにこの鈴虫寺の庭園も見事であった。<br /> 明け方に雨が降った。そのせいで苔の緑や木々の葉の雨露が陽に打たれて鮮やかに煌めいていた。いいお話しのあとで、心が洗われる思いがした。<br /> 訪れた日は火曜日である。日曜・祭日の雑踏を避けたのは幸いだった。タクシーの運転手の話しによると、この日曜・祭日は人混みでタクシーなどは走れなくなるという。<br /> 年金暮らしの小生としては毎日が休日なので火曜日に行くことで正解であった。年金暮らしも時にはいいことがある。<br /><br /> 鈴虫寺を出ると、あとは、竹の寺で有名な地蔵院、渡月橋を渡ると嵯峨野・二尊院や化野(あだしの)念仏寺、最後に清凉寺を廻って帰路に就いた。<br /> この中で気に入ったのが竹の寺と呼ばれている地蔵院である。この寺は一休さんが生まれた寺として有名である。一休さんの来歴を詳しく書くことはここでは省くが細川頼之公建立の寺なのである。細川氏といえば元総理大臣・細川護熙である。この寺はその元総理のご先祖様に当たる方が創建されたのである。系図を寺のパンフレットから再録しておく。<br /> <br /> 細川頼之ーー>頼元ーー>満元ーー>持之ーー>勝元(龍安寺開基)ーー>(8代略)ーー>細川幽斎ーー>忠興(妻・細<br /><br />川ガラシャ)ーー>忠利(熊本藩祖)ーー>(13代略)ーー>護貞ーー>細川護熙(元総理大臣)となる。<br /><br /> また寺内には、細川護熙の筆になる屏風絵「簫淞八景」が収まっている。書院に収められたこの絵を背景にして、目の前に方丈庭園を望むことができる。美しい庭園を眺めていると自分も殿様になったような気分で心がやすらぐ。しかし決して大きな寺ではない。箱庭のような小さな寺である。それがまたここちよいのである。そんな小さな寺であったことを最後に記しておく。<br /> これがボクの嵐山の休日であった。<br /><br /><br />

嵐山の休日

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2018/11/05 - 2018/11/05

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nakaohideki

nakaohidekiさん

 紅葉の名所としてことに有名なのが京都・嵐山である。もともと嵐山というのは渡月橋の向かいの山のことだが、景勝地・観光地としての嵐山は渡月橋の東西の地域をそう呼んでいる。ゆえに嵯峨野も化野(あだしの)も小倉山もすべて嵐山ということになる。あまりににも有名なので小生も若い頃に何度か行ったことがある。今回は比較的知られていない”鈴虫寺”をメインに訪ねてみることにした。場所は南禅寺とは反対側の西南に位置する。
 ここへのアクセス方法はいくつかあるが、大阪方面からは阪急京都線を使い、途中桂駅で乗り換えるのがよい。桂駅から阪急嵐山駅へは7分で着くのである。以前、京都駅からバスで行くと1時間以上もかかってしまった。アクセスはよく調べるべきだとそのとき思った。
 さて鈴虫寺とは俗称である。正式には妙徳山・華厳時という。臨済宗の禅寺なのである。鈴虫寺と呼ばれる由来は、寺内にて鈴虫が鳴いていることによる。1年中いつ行っても鈴虫が鳴いているのである。江戸享保年間に、台巌和尚が鈴虫の音色を聞くうち開眼なさったことに起源を発している。それ以来この寺では鈴虫を年間を通して養育している。寺の部屋ごとに、卵やさなぎ、幼虫、成虫と分けて育てているのである。もちろんすべての部屋はエアコンで湿度と温度を管理している。この努力により鈴虫は1年中鳴いているのである。鈴虫の音色を聴くために全国から観光客が押し寄せている。この寺には鈴虫以外にもうひとつ観光客が押し寄せる理由がある。「幸福地蔵菩薩」という”ひとつ”だけならどんなお願いでも必ず聞いてくれるお地蔵様が鎮座しているのである。よって全国から悩める大人たちが大挙して訪れる。
 今は紅葉シーズンである。この季節、観光客が殺到するのは間違いない。そこで小生は朝3時に起きて開門と同時に寺に入れば比較的すいているだろうと考えて出発したのである。開門は9時である。
 クルマで途中まで行き、日根野からJRと阪急電車を乗り継いで鈴虫寺に向かった。着いたのは8時半。阪急嵐山駅を降りると、そこからタクシーで鈴虫寺に向かった。しかし、すでに山門には10名ほどの観光客が開門を待っていた。
 15分ほど待って9時に中に入った。後ろを見ると続々と悩める観光客たちが押し寄せてきている。受付で拝観料500円を払うと本殿に通された。お茶とお菓子が用意された机に座り、ここで住職の説法を聞くのである。鈴虫は住職の目の前に巣箱ごと置かれ、その鳴き声を聞きながら説法を聞くのである。
 お話はイソップ童話の『アリとキリギリス』、”ありのままに生きよ”というお話しであった。アリにはアリの”生き方”があり、キリギリスにはキリギリスの”生き方”がある。アリとキリギリスを比べるのではなく、人も他人と較べてはいけない。それぞれの”生き方”をすればいいというのである。おおよそそんなお話しであったと思う。もちろんこの話の途中には鈴虫寺の謂れや幸福地蔵のお話しなども含まれていたことは云うまでもない。
 説法が終わったあとは庭園を鑑賞した。俗に、”奈良は仏像”、”京都は庭園”と云われるようにこの鈴虫寺の庭園も見事であった。
 明け方に雨が降った。そのせいで苔の緑や木々の葉の雨露が陽に打たれて鮮やかに煌めいていた。いいお話しのあとで、心が洗われる思いがした。
 訪れた日は火曜日である。日曜・祭日の雑踏を避けたのは幸いだった。タクシーの運転手の話しによると、この日曜・祭日は人混みでタクシーなどは走れなくなるという。
 年金暮らしの小生としては毎日が休日なので火曜日に行くことで正解であった。年金暮らしも時にはいいことがある。

 鈴虫寺を出ると、あとは、竹の寺で有名な地蔵院、渡月橋を渡ると嵯峨野・二尊院や化野(あだしの)念仏寺、最後に清凉寺を廻って帰路に就いた。
 この中で気に入ったのが竹の寺と呼ばれている地蔵院である。この寺は一休さんが生まれた寺として有名である。一休さんの来歴を詳しく書くことはここでは省くが細川頼之公建立の寺なのである。細川氏といえば元総理大臣・細川護熙である。この寺はその元総理のご先祖様に当たる方が創建されたのである。系図を寺のパンフレットから再録しておく。
 
 細川頼之ーー>頼元ーー>満元ーー>持之ーー>勝元(龍安寺開基)ーー>(8代略)ーー>細川幽斎ーー>忠興(妻・細

川ガラシャ)ーー>忠利(熊本藩祖)ーー>(13代略)ーー>護貞ーー>細川護熙(元総理大臣)となる。

 また寺内には、細川護熙の筆になる屏風絵「簫淞八景」が収まっている。書院に収められたこの絵を背景にして、目の前に方丈庭園を望むことができる。美しい庭園を眺めていると自分も殿様になったような気分で心がやすらぐ。しかし決して大きな寺ではない。箱庭のような小さな寺である。それがまたここちよいのである。そんな小さな寺であったことを最後に記しておく。
 これがボクの嵐山の休日であった。


旅行の満足度
4.5
同行者
カップル・夫婦
一人あたり費用
1万円未満
交通手段
JRローカル 私鉄 自家用車 徒歩

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  • 鈴虫寺の山門、入り口。<br />

    鈴虫寺の山門、入り口。

  • 受付の前には色ずくもみじも。<br />

    受付の前には色ずくもみじも。

  • 雨上がりの庭園が美しい!<br />

    雨上がりの庭園が美しい!

  • 幸福地蔵さま。ひとつだけならどんな願い事でもきいてくれる。<br />

    幸福地蔵さま。ひとつだけならどんな願い事でもきいてくれる。

  • ねがいを聞いてくれる理由はその足元にある。このお地蔵様は草鞋を履いているのである。各家に歩いてやってきてくれて願いを叶えてくれるのである。<br />御礼参りに来る人も大勢いる。<br />

    ねがいを聞いてくれる理由はその足元にある。このお地蔵様は草鞋を履いているのである。各家に歩いてやってきてくれて願いを叶えてくれるのである。
    御礼参りに来る人も大勢いる。

  • 竹の寺「地蔵院」山門。<br />苔が美しい。

    竹の寺「地蔵院」山門。
    苔が美しい。

  • 山門の向こうに竹林が見える。<br />

    山門の向こうに竹林が見える。

  • 浄住寺山門前<br />

    浄住寺山門前

  • 桂川に架かる中之島橋。<br />桂川の中州、中之島へ渡る。<br />

    桂川に架かる中之島橋。
    桂川の中州、中之島へ渡る。

  • 中之島橋から桂川の流れ。<br />2年前の豪雨で水没した地域。<br />

    中之島橋から桂川の流れ。
    2年前の豪雨で水没した地域。

  • 中之島から渡月橋を望む。<br />

    中之島から渡月橋を望む。

  • 中之島の紅葉。渡月橋が見える。<br />

    中之島の紅葉。渡月橋が見える。

  • 渡月橋の上から嵐山を見る。<br /><br />

    渡月橋の上から嵐山を見る。

  • 渡月橋の上から桂川西岸の風景。台風被害から立ち直ったがまだ工事中のところもある。<br />

    渡月橋の上から桂川西岸の風景。台風被害から立ち直ったがまだ工事中のところもある。

  • 化野(あだしの)念仏寺の苔参道。<br />苔が美しい。<br />

    化野(あだしの)念仏寺の苔参道。
    苔が美しい。

  • 念仏寺もやや紅葉が見られる。<br />11月5日(火)現在。<br /><br />

    念仏寺もやや紅葉が見られる。
    11月5日(火)現在。

  • 念仏寺の由来となった8000体の無縁仏たち。<br />荘厳な気分になる。<br />

    念仏寺の由来となった8000体の無縁仏たち。
    荘厳な気分になる。

  • 8000体の無縁仏も苔庭に囲まれている。<br />

    8000体の無縁仏も苔庭に囲まれている。

  • 念仏寺の紅葉。<br />

    念仏寺の紅葉。

  • 二尊院入り口<br />門を入るとすぐ受付がある。<br />

    二尊院入り口
    門を入るとすぐ受付がある。

  • 小倉山・二尊院山門<br />

    小倉山・二尊院山門

  • 二尊院は嵯峨天皇の勅願により慈覚大師が834年に開山した。<br />参道のもみじはやや色づいている。<br />

    二尊院は嵯峨天皇の勅願により慈覚大師が834年に開山した。
    参道のもみじはやや色づいている。

  • 二尊院で一番美しい紅葉。<br />

    二尊院で一番美しい紅葉。

  • 裏の小倉山に登る。<br />ここには藤原定家が小倉山百人一首を編んだ時雨亭跡がある。<br />

    裏の小倉山に登る。
    ここには藤原定家が小倉山百人一首を編んだ時雨亭跡がある。

  • 時雨亭後方から京都右京区を望む。<br />

    時雨亭後方から京都右京区を望む。

  • 小倉山より京都市街右京区を望む。<br />

    小倉山より京都市街右京区を望む。

  • 二尊院山門<br /><br />

    二尊院山門

  • 小倉山の扁額。<br />

    小倉山の扁額。

  • 二尊院の紅葉。<br />色付き始めている。<br />

    二尊院の紅葉。
    色付き始めている。

  • 五台山・清凉寺山門。<br />徳川家が作っただけあって山門も大きい、<br />前を行く人力車が京都らしい。<br />

    五台山・清凉寺山門。
    徳川家が作っただけあって山門も大きい、
    前を行く人力車が京都らしい。

  • 清凉寺の境内。<br />堂内の宮殿は五代将軍綱吉と生母桂昌院の寄進によるもので豪華な寺となっている。<br />

    清凉寺の境内。
    堂内の宮殿は五代将軍綱吉と生母桂昌院の寄進によるもので豪華な寺となっている。

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この旅行記へのコメント (1)

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  • 多良さん 2018/11/18 23:21:22
    天気も味方してくれて^^
    nakaohidekiさん、ワタシの旅行記にコメントをいただきましてありがとうございました。

    お言葉に甘え、早速にお邪魔しました(汗)。

    実は、ワタシの旅行記を読んでいただいたと思うのですが、同時期にワタシも京都に旅行に行っていまして。。。^^。

    曇天模様でしたが、雨も降らず、快適に旅行が出来ましたね~♪

    なので、どこかで、すれ違ったかもしれませんね~(笑)。


    「本当の紅葉」を見たければ、11月末頃だよ~~~♪っとチケットの売り子さんに教わりました。

    分かってはいたのですが、メンバーの日程上仕方なくこの時期に行く羽目になったのですが、暑くも寒くもなく快適に旅行できたのはラッキーでした。

    ではでは~♪

              多良

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