2018/09/27 - 2018/09/27
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たびたびさん
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富山はこれまでも何度かは来ているのですが、意外に市街の建物は新しくて、街を歩いていても歴史といったものはあまり感じない。富山藩10万石の城下町ということで立派な城跡があるのですが、それも佐々成政の城ではなく、加賀藩の支城といったイメージですから、富山の固有の臭いはあまりしないかなと思います。
一方で、越中と言えば歴史的には薬売りが有名。加賀藩第3代藩主前田利常が隠居する際、次男の利次に富山10万石、三男の利治に大聖寺7万石の分封を願い出てこれが認められて立藩した富山藩ですが、富山藩2代藩主、前田正甫の陣頭指揮により独自の産業振興が行われたんですね。売薬の他には製紙やお茶。新田開発も積極的だったようですし、例えば、鱒寿司なんかも3代利興の頃に遡ると言われます。
しかし、これまで富山市周辺でその辺りにあまりきちんと触れる機会がなかったのは寂しいところ。探索の範囲が少し狭かったのかなと思い直して、対象範囲を広げてみると。。ありました、ありました。金岡邸に、薬の関係ではないのですが、内山邸。ともに、豊かな富山の地域経済を象徴する旧家であり、結果として、富山のかつての繁栄を偲ばせるにはこれを外してどうするとでも言った感じ。これでやっとディープな富山に触れた気持ちになりました。
ちなみに、越中の売薬がそれまでの山岳修験者による修験売薬から藩主導の振興政策となったのはある事件がきっかけ。それは、江戸城腹痛事件と言われるもの。元禄三年(1690年)、富山藩二代藩主、前田正甫は、将軍綱吉に歳暮の挨拶と病気回復の報告をするため、江戸城大広間で謁見の順を待っていました。その時、陸奥国三春の当主、秋田信濃守が激しい腹痛を起こし、大騒動に。そこに駆け寄った正甫が丸薬を与えると一気に腹痛が治まり、これが大評判となったというのです。
二日目以降は立山黒部アルペンルートの予定。初日は、その前の富山市の街歩きです。
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東京駅から、朝一の新幹線で富山駅に到着。
ますのすし本舗 源は富山市内にいくつかありますが、富山駅を降りてすぐの売り場が便利です。 -
朝飯も兼ねて、いただいたのは、ますぶり小箱850円。
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イチオシ
鱒鮨と鰤鮨が半分ずつ入っているので食べ比べしました。結果からいうとたいした違いはないというか、ほとんど違いはない。魚が何であれ、仕上がるとほとんど同じ味わいになるような。。濃い味の酢飯を固めて、魚の香りはむしろ添え物的。その辺りも、鱒鮨の鱒鮨たる所以なのかなと思います。
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甘いものも欲しくなって。
七越は、富山駅ビル内のとやマルシェにある七越焼き(今川焼)のお店。富山は登山客も多い街なので、ここも朝早くからやっていました。 -
のとやマルシェはます寿司とか富山湾の海鮮とかが目立っているので、ちょっと脇役っぽい感じだったのですが、ここの七越焼きは超本格派。餡子のしっかりした甘さとか堂々としたもの。店舗の見た目の軽さが惜しいような気がします。
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ここから、富山地方鉄道で金岡邸に向かいます。
ちなみに、富山地方鉄道は、富山市と富山県側のアルペンルートの入口、立山を結ぶ路線。電鉄富山駅ではアルペンルートの切符も扱っていて、本来は明日の切符をここで買っておきたいところなんですが、当日じゃないとダメ。では、早朝買えるかというと、始発の5時25分の時間はまだ窓口が開いていないんですよね。できれば改善してもらいたいなあと思います。 -
東新庄駅に到着して、金岡邸はここから歩きます。
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金岡邸の向かいに小さなお菓子屋さんを発見。いしばし旭堂です。ここも気になる。やっぱり寄ってみましょう。
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声をかけるとおばあちゃんが出てきて応対してくれます。
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いただいたのは、大福。
ピンクと緑の二種類があって、桜の印の焼き印。見るからに個性的で楽しいデザイン。お餅が口の中で餡子と溶けあう感じも手作り感いっぱいです。 -
イチオシ
さて、落ち着いたところで。これが金岡邸。
かつての富山の薬種商のお屋敷を県が整備して公開しています。 -
富山で有名な全国をまわる薬売りですが、その薬の原料を仕入れるのがこの薬種商。とやまの薬売りの親分といったところでしょうか。
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建物は江戸末期に建てられたもの。通りから入ると中はすぐに広いたな。帳場があって、たなの後ろの壁には一面に薬箪笥。小さな引手でびっしりと埋め尽くされていて、これは薬屋さんの独特の光景ですよね。
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ここから、さらに邸宅の奥へと進みます。
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展示室には、こまごまとした薬の製品のほか、
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この浮世絵や紙風船といったものは、売薬のおまけ。
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イチオシ
それでも、鮮やかな色彩と
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構図の面白さなど。見ていて飽きない楽しさを感じます。
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これは紙風船です。
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日本外史とか、幕末に流行した書籍も伝えられていて、薬だけではなく、世の中の情勢にも敏感で勉強熱心だった家柄が窺われます。
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襖の書画の趣味も
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イチオシ
高雅な印象だし、
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この奥には
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歌の展示ですが、ここが文化の交流にも一役買っていた名残りも。
地方の酒蔵でこのように文化の拠点となっていたところとかがありますが、ここもそんな感じ。文化人をもてなして、そこからも商売のネタを探し出す。そこまで具体的なものでもないかもしれませんが、地域を代表する豊かで伝統のある旧家には、拒まなければいろんな人がやってくるのは道理ですからね。 -
これが居住区の玄関。
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あれが表門。
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表門から玄関を振り返るとこんな風です。
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さらに客座敷の方に向かいまして、
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座敷から眺める内庭もすっきりシンプルな美しさ。
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客座敷はそれなりの広さがありますが、
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イチオシ
過度な広さではない。気持ちの良い落ち着いた空間といった感じです。
無理をせず、自然体の趣きというところでしょう。 -
順路の最後の方では
薬の製造に使われた道具や生薬原料など。 -
製薬は家内生産で大規模なものではなく、
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とにかく種類の多さで勝負するといったことなんでしょう。そこに伝統の強みと創意工夫の余地が生まれる。勉強熱心、研究熱心の姿勢が育まれるのは当然のことのように思います。
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これは北前船。売薬は行商ですから、人が運ぶもの。しかし、北前船で運ばれるものもそれなりにあったのかも。多様な販路も想像されました。
さて、以上で金岡邸はおしまいです。 -
再び富山市街に戻ってきて。
ところで、富山県にはます寿司のお店が大小たくさんありますが、特に、小規模な店は量産が出来ないので、それぞれが個性ある味を競っています。 -
扇一はそんな中からネットの評判が良かったので、前日に予約をして訪ねました。
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イチオシ
なるほど、肉厚のますは贅沢な感じ。さすがです。
しかし、味の方はどうかというと、濃いめの酢味に堅く固めた酢飯の味わいとか意外に個性がない。大手のような普通のます寿司という範疇からは出ていないように思いました。
私の中でのナンバーワンは高岡市の高田屋なんですが、そこはしばらく変わらないかなという感じです。 -
売薬の関係では廣貫堂資料館というのもありまして。
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これは、富山市内にある製薬メーカー廣貫堂の敷地内。
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富山の薬売りの歴史とそれに関連した資料をコンパクトかつ美しく展示しています。
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”置き薬をして使った分だけ、代金を払う”の置き薬を入れた木の引き出し箱はけっこうな大きさ。
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イチオシ
これも一般家庭で使われていたサイズだそうですが、医療機関もまだまだ充実していなかった時期ですから、これだけ大きいとこれが頼りという安心感は確かにあったかもしれません。
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ここでも売薬のおまけは、欠かせない展示品です。
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和美ベーカリーは、電車通り沿いの小さなパン屋さん。「アイス最中あります」の看板に引かれて寄ってみました。
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そのアイス最中なんですが、女将さんの言う「うちのはあっさりしていますから」の言葉通り。本当にあっさりした爽やかなうまさ。富山の意外な名物と言っても過言ではないような気がします。
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ホテルくれはインは、富山市街中心部。総曲輪のほど近くにある安宿。今日は、ここで泊まります。荷物を預かってもらおうと立ち寄りました。
ここは場所もほどほど便利がいいし、寝るだけなら何の問題もなし。管理人の明るいおじさんが部屋の説明とかテキパキやってくれて、ちょっと心が和みました。翌日5時ころ出発したんですが、もう起きていて、とってもがんばってます。 -
改めて、ここからは市街中心部の街歩き。
北陸銀行本店は、通りに面していて、間口の広い建物は国の有形文化財です。 -
一方で、もう一つの見どころは、一階窓口の片隅に設置された金融歴史資料館。
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かつての内装や広告に使われた棟方志功のカレンダーとかは、売薬のおまけにも似た楽しさ。品数は少ないですが、それなりの歴史は伝わります。
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富山中央通のアーケード街に入って、これはGALERIEMILLET。
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通りに面したショーウインドーには、所蔵絵画のレプリカが飾ってあって、ちょっといい感じ。そして、また実物を拝見すると当然さらにいい。
ミレーというと牧歌的な絵画を想像しますが、それだけではない。まだ若い頃の作品で、洒落た美しい色彩を基調とした人物画とか初めて拝見しましたが、これはオールドマスターの気風を彷彿とさせるもの。私の中でミレーの新しい世界が広がったように感じました。一見の価値ありの美術館です。 -
ここから、予定にはなかったんですが、豪農の館 内山邸を訪ねます。富山駅からバスで行くことになるんですが、本数が限られるし、あちこち回りたいタイプの私にとってはけっこうハードルが高い。しかし、金岡邸があまりにもよかったので、今回はその流れの中で外せないかなと思った次第。
しかし、最寄のバス停からも意外に遠い。そういう意味でもアクセスはいいとは言えませんね。 -
ところで、司馬遼太郎は、街道を行くの鹿児島の旅で、地方の旧家は地域の伝統や文化を継承していく役割を果たしていて、鹿児島は明治以降、その旧家がなくなってしまったため、かつての鹿児島の気風を感じられなくなってしまったと。その旧家の匂いを沈壽官で感じて、記したものですが、そういう意味では旧家を訪ねることは、その地域の風土を知る早道でもあるわけです。
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なるほど、この邸宅も広大ですねえ。
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やっぱり、少し?無理をしてでも来た甲斐はあったようです。
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豪農の館 内山邸は、金岡邸と並んで最近公開された映画「散り椿」のロケ地ということで、ちょっとホットなスポットのようですね。
映画「散り椿」
http://chiritsubaki.jp/about.html -
ここは入口です。この感じからして、金岡邸より一回りか二回り大きいですね。
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想像以上にスケールが大きいのですが、不思議のここでもその豪壮さを過度とは感じない。
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むしろほどよい心地よさを感じます。
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展示からは歴代の当主が小学校を寄付して地域への貢献に尽くしたり、
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漢籍を収集して保存に努めたり。
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歴代当主のクレバーさがそこはかと感じられるような気がしました。
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つまり、豪農と言っても、ただの豪農ではない。
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江戸初期神通川の荒廃地を開拓し、
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イチオシ
富山藩の十村役も務めた家柄。
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開拓事業は藩のお声がかりだったはずですし、
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イチオシ
十村役というのは加賀藩の制度でもありますが、
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これは一向宗に目を光らせながら領内を円滑に統治するための要となる制度。
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藩主がたまにはお忍びで訪れたりするほどの関係だったはずですから、
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想像するに余りある位置付けでしょう。
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そのうえ、内山家では代々文人も輩出している。
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社会的な役割を果たしつつ、
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自らの趣味や教養にも傾注していくという
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理想的なバランスも備えています。
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イチオシ
その辺りが決して華美にならず、
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むしろつつましやかで
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清々しい印象すら与えている。
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なんでしょうねえ。
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旧家、名家の重みって半端なものではない。そう感じます。
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こちらの蔵の展示は
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邸内の四季折々の華。
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梅園があったり、
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こっちの漆喰の倉も長屋みたいな形。
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入ると
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当時使っていた食器類です。
高級感まではないですが、やっぱり悪くないですね。 -
これは漢籍を保存していた蔵。
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限られますが、一端を展示しています。
新潟にも豪農の館がありまして、規模とか迫力で言えば新潟の方がすごいんですが、ちょっと財力に任せて造りましたみたいなところがあって、こちらのようにじわっとくるような感動はない。
ざっくりした印象ですが、結局、富山人の気風は勤勉さ、実直さでしょうか。富山を加賀藩の延長線上で考えると華やかな金沢に対して富山の地味さみたいに映りかねないんですが、それはやっぱり違う。もう少し根っこがある伝統のような気がします。 -
市街に戻ってきて、最後は国文学館へ。
富山に文学のイメージはありませんでしたが、地元の生んだ多くの文学者を紹介する高志の国文学館は、想像以上に立派な施設。 -
そして、その源流となったのが大伴家持とくれば説得力がありますね。
ただ、家持がいたのは高岡市の伏木。富山市ではないのですが、広く富山県と捉えれば、ここにこんな施設があってもおかしくはないでしょう。
北前船と大伴家持。伏木の旅の感動もまた思い出してしまいました。
参考まで:https://4travel.jp/travelogue/11240422 -
ほか、漫画家、里中満智子の大伴家持関連の作品展示も面白い企画。里中満智子は地元の出身ではありませんが、万葉集にも造詣が深く、思いが強い。令和になって、新たな発信をしてもらえればとも思います。
さて、これで富山市内の初日は終了。明日からは立山黒部アルペンルートに向かいます。
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この旅行記へのコメント (3)
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- toc blancさん 2019/05/16 12:17:06
- 投票をありがとうございました
- 金岡邸、いらしたんですね!
ジャコウ鹿の 剥製があったと記憶していますが....
富山駅は駅下をLRTが通過できるよう工事の真っ最中ですよね
最近、ゆっくり訪問していないので
行きたくなりました
- たびたびさん からの返信 2019/05/17 09:22:00
- RE: 投票をありがとうございました
- 富山は富山市ガラス美術館に今度移転、新装された富山県美術館など、箱物の充実が目立っているような気がしますが、財政に比較的余裕があるんでしょうか。金岡邸がこんなにしっかり保存されているのも、そうした背景があるのかもしれません。地元の熱意も大切ですが、お金もやっぱり必要ですからね。
たびたび
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- うふふ♪♪さん 2019/05/05 02:23:51
- たびたびさん、お久しぶりです。 うふふ♪♪です。
- たびたびさんへ☆
随分、ご無沙汰してしまって、すみません💦💦
たびたびさんは、うふふ♪♪のページにマメにいらして下さっているというのに・・
相変わらずの病床でした💧
うふふ♪♪のなにわ食い意地紀行4&5・神戸編全編・元旦旅行記・
カムバックモルディブ編2&6の旅行記と、
ぶどう亭のクチコミに、
ご訪問と投票をありがとうございます!
たびたびさんの今回の訪問地は富山!
うふふ♪♪は以前、初めての1人旅のとき、富山辺りの電車内で、小さな子が母親に、
「ますの寿司食べたい~💦💦」と駄々をこねていて、
やっとこさ買ってもらえたら、と言うか、母が重い腰を上げて買おうとしたら、
売り切れになっていて、それ以来”富山の鱒の寿司”は心に刻み込まれています(笑)。
たびたびさんのお薦めは”高岡市の高田屋”ですネ!
忘れないようにしなくては!!
”富山の薬売り”が有名になった”江戸城腹痛事件”、面白かったです。
そんな話があったのですか。
金岡邸、ものすごく立派ですね。
しかし、表向きはたとえ豪商でもやっぱり商家の佇まい。
元・商売人の娘としては、受けてしまいました(笑)。
内山邸、室内の飾りがすごいですね。
欄間のすごいこと! 藍色の土壁もいいです。この色って北陸独特ですよね。
鹿や扇の描かれた板には、もう何をかいわんやです(苦笑)。
いつもながら、地元のパン屋さんや和菓子屋さんを訪れるたびたびさん、
いいですね~☆☆
「7」の文字が浮き上がった”七越焼き”、可愛い♪
関西では、大判焼きか回転焼きっていうんですよ。
初めて”今川焼き”というものを読んだときは、(これはなんだろ??)と、
全然、別のお饅頭か何かを想像しました(笑)。
しかも”今川焼き”には白あんもあるとかで、後年更にビックリ!
(同じくドラえもんが食べている”どら焼き”なるものはなんぞや??
と、長年の疑問でした。 絵からしたら”三笠饅頭”に見えたのですが・・苦笑。)
桜の焼き印が入った大福も可愛かったですネ💕
今回も、ぎっしり現地の魅力をあますところなく伝えた
たびたびさんの旅行記を楽しませていただきました!
ありがとうございます♪♪
うふふ♪♪
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