2018/05/24 - 2018/05/25
2位(同エリア1642件中)
montsaintmichelさん
- montsaintmichelさんTOP
- 旅行記389冊
- クチコミ0件
- Q&A回答0件
- 3,368,842アクセス
- フォロワー169人
日本屈指の観光地「江の島」から徒歩圏内にある水族館です。湘南 片瀬海岸に面し、江の島や富士山が臨める絶好のロケーションに佇み、通称「えのすい」と親しみを込めて呼ばれています。
2004年に旧江ノ島水族館をリニューアルオープンしたもので、館内では591種類2万8千匹もの海の生き物が観察できます。
展示のコンセプトは、「エデュテインメント」です。エデュケーションとエンターテインメントを組み合わせた造語で、「わくわくドキドキ大冒険水族館」をキャッチフレーズに、遊びながら学ぶことのできる水族館として驚きや感動を届けています。
最大の特徴は、「相模湾」の縮図を展示していることです。相模湾は、暖流と寒流がぶつかる外洋の近くにあり、深海・岩場・砂浜・干潟といった様々な環境が狭い空間に展開されています。
また、60年の歳月をかけて培ったクラゲの飼育研究と展示手法を最大限に活した「クラゲファンタジーホール」も癒しの空間です。
比較的規模の小さな水族館ですが、年間来場者数は170万人あり、日本の水族館では4位と健闘しています。また、年間パスポート保持者が8万人もいるというのは、リピート率の高さの証左です。その魅力に迫りたいと思います。
新江ノ島水族館のHPです。
http://www.enosui.com/
展示マップです。
http://ybxxqt234.secure.ne.jp/map_exhibition.html
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 新幹線 JRローカル 私鉄
-
エントランス
鎌倉旅行でここだけは絶対に外せないと思っていた、「新江ノ島水族館」に到着です。
エントランスのゲートには、他の水族館ではお目にかかれない「クラゲ」のオブジェが湘南の風に揺らいでいます。クラゲ展示の先駆けという矜持が込められています。 -
相模湾ゾーン
館内最初の展示は「相模湾ゾーン」です。ここには、身近な相模湾の海が再現されています。この水槽は小さく見えますが、実は階下の1階まで続く大水槽の一部です。
「えのすい」にはジンベイザメや世界に一匹だけという「客寄せパンダ」もなく、巨大水槽もありません。そんな現実と正面から向き合い、アイデアだけで来場者数を増やしたのは旭山動物園やUSJにも似た発想です。
例えば、展示方法では臨場感をクローズアップしています。順路に沿って進むと、相模湾から太平洋へ遷移する様子が自然に伝わるような水槽配置になっています。また、大水槽のガラスには角度を付け、壁が観客に迫ってくるように設計されています。そのため、水槽の前に立つと、あたかも海中にいるかのように臨場感が高まります。 -
岩礁水槽
この水槽の主役は、江の島海岸の岩礁に茂るアラメやカジメなどの海藻類です。そして脇役は、海藻の間にじっと身を潜める魚たちです。海底の樹海に迷い込んだかのようで、海藻が穏やかになびく姿を見ているだけで和みます。海藻の人工飼育は非常に難しく、こうした美しい姿を展示できるのは並大抵の努力ではないと思います。
海藻は、海のうねりで体を揺らしながら海中のミネラル分を吸収し、太陽エネルギーによる光合成で成長します。ここでは、海藻を棲み家とする者、産卵に訪れる者、海藻を食べる者、そしてそれらの小魚を餌にする者など、様々な生物たちの日常的な食物連鎖がドラマチックに展開されています。 -
カゴカキダイ
阪神タイガースを彷彿とさせるストライプと色合いがユニークな海水魚で、体長は20cm程です。眼の上から背びれにかけて極端に盛り上がり、この形が肩の盛り上がった「駕篭かき」を思わせることが、名の由来です
余談ですが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのUSJも、かつての「えのすい」同様に来場者数の減少に頭を抱えた時代がありました。当時は予算が少なく、ハリーポッターのような大規模施設を造る余裕がありませんでした。そこで考えたのは、無いものねだりをせずに今あるものをフル活用することでした。例えば、ジェットコースターの座席を進行方向と逆向きに設置しました。それが人気を博し、今や常設の人気アトラクションになっています。
最近、USJは、入場者数もうなぎ上りのため設備等の安全対策が追いついていおらず、トラブル続きですが…。慢心は、凋落への第一歩ですよ!
一方、TDSは、2022年度を目途に2500億円を投じて8つ目の新エリアを設けることを発表しました。『アナと雪の女王』の他、『塔の上のラプンツェル』や『ピーターパン』をテーマにしたアトラクションも併設されます。
現在、TDLとTDSで年間3000万人を集客していますが、インバウンドも含めて園内の混雑が深刻な問題になっており、顧客満足度の低下も指摘されています。エリアの拡張と新コンテンツの導入で来園者を呼び込むと共に、面積拡張による混雑感の緩和を狙うようですが、これらを両立できる計算に狂いはないのか、疑問な所もありますが…。 -
サクラマスの稚魚
川魚のジャンプ水槽の隣にある小さな水槽では、サクラマスの幼魚が飼育されています。
サクラマスは、羨ましいことに2つの人生を選択することができます。海に下って巨大になる「サクラマス」と、川で一生を過ごす渓流の女王「ヤマメ」のいずれか一方です。ヤマメとサクラマスは、幼魚の時代までは同じですが、成長すると外見が大きく違ってきます。ヤマメは30cm程にしか成長しませんが、サクラマスは70cm程にまでなります。体色もヤマメには体側に小判型のパーマークと呼ばれる斑点が数個並んでいますが、サクラマスはこの斑点が消えて全身銀色になります。
ヤマメは相模湾に注ぐ川に自然分布しています。西湘を境に、西側は亜種のアマゴに切り替わっていきます。同様にサクラマスも相模湾に生息していることが、三浦半島の先端にある毘沙門湾で捕獲されたことで確認されました。
因みに、このサクラマスは大変美味な魚で、富山名産「鱒寿司」にはサクラマスが使われています。 -
岩礁水槽
「海中のアジサイ」と称されるのが「イソギンチャク」です。ここでは目にも鮮やかなオレンジ色のアジサイが満開です。
イソギンチャクは、触手に刺胞毒を持ち、それで魚などを捕獲して餌にします。しかし、カクレクマノミは、イソギンチャクの毒に耐性を持ち、その特徴を利用してイソギンチャクを棲み家にして身を守っています。ですから、カクレクマノミ以外の魚が触手に触れると、毒でしびれ、捕食されてしまいます。これも立派な共生です。 -
アゴアマダイ(相模湾ゾーン 相模湾キッズ水槽)
スズキ目・アゴアマダイ科の体長10cm程の小魚です。世界で4属63種、日本ではアゴアマダイ属とカエルアマダイ属の2属8種が知られています。
海底に巣穴を掘り、そこから出入りしたり、このように顔だけを覗かせるひょうきんな動きから、特にダイバーの間で人気があり、英語で「Jawfish (ジョーフィッシュ=顎の魚)」の名で親しまれています。目はカエルのように大きく、頭はつるんとしており、顔だけを出した姿はとても愛嬌があります。
また、繁殖期には、雄は口の中に卵をいっぱい抱える「口内保育」を行います。
ここに展示されているアゴアマダイは、珊瑚礁の浅い海に棲む他のアゴアマダイ科と比べると大変稀な種だそうです。
その理由には、2つあります。
①死ぬと体色がすぐにあせてしまう。
②生息水深が50m以上で、人が手軽に潜水することができない深場に棲んでいる。
これらのことから、近年まで生きている姿がほとんど記録されたことがなく、謎のベールに包まれた魚でした。生きている姿を見ること自体が大変貴重なことだそうです。 -
ダンゴウオ(相模湾ゾーン 相模湾キッズ水槽)
カサゴ目・カジカ亜目に属し、ダンゴウオやホテイウオなど6属28種が確認されています。寒冷の海を好み、北日本を中心に10種程が確認されています。吸盤状の腹びれで岩などに張り付いて生活し、小エビや小ガニなどを食べます。大きさは、成魚でも1~2cmです。岩や海藻などに似せるため、体色は茶、緑、赤と様々なバリエーションがあります。お団子を彷彿とさせるその愛らしい姿は、ダイバーの間では「冬のアイドル」と呼ばれる程です。また、幼魚の頭には白い輪状の模様があり、ダイバーの間では「天使の輪」と呼ばれ、可愛がられています。 -
カタクチイワシの幼魚「カエリ」
世界初のカタクチイワシの繁殖展示「シラスサイエンス」です。カタクチイワシは成長するにつれ、シラス(稚魚)→カエリ(幼魚)→カタクチイワシと呼び名が変わります。
湘南 江の島の特産品であり透明に輝く神秘的な「シラス」は、カタクチイワシやマイワシの稚魚です。2014年、えのすいは、「シラス」の生体の常設展示を世界で初めて行いました。
「シラス」はとてもデリケートな魚のため、海から水族館に移動させて展示するのは困難と言うのが常識でした。しかし、数々の困難を乗り越え、繁殖の難しい「シラス」を何世代にも亘り代を重ねて飼育する累代繁殖に成功しています。 -
カタクチイワシ
名の由来は、上顎だけが長く、下顎が目立たないため、「片方だけの口」で「カタクチ」と呼ばれます。
カタクチイワシから卵を産ませ、卵をふ化、育成、おなじみのシラスからカエリの姿へ、そして鱗を持つカタクチイワシに成長する過程を学べる展示です。
世界唯一ここでしか見られない水槽です。 -
相模湾大水槽
館内の水槽で最大規模のものです。水深6.5mの水槽には、90種類2万匹の相模湾で見られる生物に限定した展示がなされています。
海中の世界を再現する工夫も半端ではありません。自然環境に近づけるための造波装置や、本物さながらの偽岩を配し、よりリアルに再現しています。ここまで水槽内をつくりこんでいる水族館は珍しいそうです。
そして水槽内でひときわ目立つのが8千匹のマイワシの大群です。今でこそ水族館の定番になっていますが、このイワシの群れを日本で初めて展示したのが「えのすい」でした。
しかし、悠々と単調に回遊させるだけでは飽きてしまいます。水槽内には意図的にイワシの天敵となるサメやエイを共生させ、自分たちの身を守る防御行動のひとつ「集団行動」を再現させ、鑑賞者を飽きさせない工夫を凝らしています。 -
相模湾大水槽
解説員とダイバーによる魚を紹介するイベントもあります。えのすいで働いている飼育員たちを「トリーター」と呼ぶのも特徴的です。何故、トリーターと呼ばれているかと言えば、「生物を飼育(treat)し、お客さまをおもてなし(treat)する」という意味が込められているからです。
「えのすい」の前身「江ノ島水族館」は1954年に日本における近代的水族館 第1号として誕生しました。映画会社 日活の社長がドライブの途中で片瀬海岸西浜に立ち寄った際、「この地に相応しい水族館をつくりたい」と考えたのがきかっけでした。戦前の水族館は、水温を一定に保つ技術がなく、「春~秋まで」といった季節限定の営業でした。しかし、「江ノ島水族館」は最新技術を導入し、通年オープンすることに成功しました。
しかし、年月の経過により建物は老朽化し、珍魚や人気のある生物を展示することでなんとかカバーしてきましたが、来場者数はジリ貧状態でした。そこで、過去の栄光を取り戻そうと「新江ノ島水族館」をリニューアルオープンさせたのです。
初年度の来場者数は180万人と見事に再生を果たしましたが、その後は再びジリ貧になり、2013年は130万人に低迷しました。しかし、翌年にはV字回復し、来場者数は172万人になりました。その勢いは衰えることなく、年々伸び続けています。 -
相模湾大水槽
V字回復の陰には、「えのすい」の戦略がありました。「えのすい」のオープンの翌年、満を持して「沖縄 美ら海水族館」がオープンしました。しかし、「大規模水槽にジンベイザメやマンタが泳ぐのが売り」と判っていたため、それとバッティングしない戦略を練ったのです。「江の島でしか出来ないことは何か」を問い、その答えが「相模湾に生息する生物」でした。相模湾には日本近海に生息する魚の3割に当たる1500種がいます。また、水族館の前にある相模湾はイワシの漁場であり、大水槽の主役に他ではあり得ない「イワシ」を大抜擢したのです。前代未聞の挑戦でしたが、無限に形を変える群れの姿が話題を呼び、現在は様々な水族館で真似られる程になりました。しかし、イワシの寿命は数年しかなく、大水槽の中のボリューム感を維持するために定期的に補充する努力が日夜続けられていることも忘れてはなりません。 -
相模湾大水槽
かつての水族館では、珍しい生物、世界に一匹だけといった「客寄せパンダ」が注目されました。しかし、現在はそうした時代ではなく、アイデアで勝負する時代に変化してきています。魚屋さんに並ぶイワシでも、プレゼンの方法を工夫すれば「おもしろい」と感じてもらえるのです。
また、「ナイトアクアリウム」という新感覚の発想も奏功しました。2014年から、夜の水族館を舞台にプロジェクションマッピングを駆使したイベントを企画しています。今では多くの水族館で催されていますが、そのルーツも「えのすい」でした。また、今や水族館に不可欠の「イルカショー」や「イワシの群泳」、「クラゲの常設展示」などのルーツを辿れば、どれも「新・旧江ノ島水族館」発のアイデアばかりです。 -
「太平洋」ゾーン 逗子沖
お花畑を彷彿とさせる水槽です。お花畑を舞う蝶や花びらのように、キンギョハナダイやサクラダイなどのカラフルな魚たちが悠々と行きかいます。
珊瑚礁と言えば、南方の暖かい海をイメージしますが、「えのすい」とは目と鼻の先にある「逗子沖」にも珊瑚礁が見られます。その理由は、日本近海を流れる暖流のひとつ「黒潮」の影響を受けるためです。世界でも有名なほど強く、速い暖流「黒潮」は、太陽光が燦燦と降り注ぐ明るい環境が海底に広がるのが特徴です。
目にも鮮やかな珊瑚礁群です。多彩な魚の姿も愉しめますが、ここでは不思議な形をしたカラフルな珊瑚礁が見所です。オレンジ色の「イソギンチャク」のような外観をした「ジュウジキサンゴ」や「イボヤギ」は、説明がなければ珊瑚とは思えません。 -
「太平洋」ゾーン
相模湾は、北から流れる寒流「親潮」と南から流れる暖流「黒潮」の2つの潮の影響を受け、海洋生物が多様に生息する豊な海です。
北洋の冷たい海~南洋の美しい珊瑚礁の海まで旅をしながら、地球環境と生命の多様性を実感することができます。 -
「太平洋」ゾーン カクレクマノミ
映画『ファインディング・ニモ』のモデルとして大ブレイクし、一躍人気者の座に駆け上がりました。
クマノミの仲間たちは、毒性を持つイソギンチャクを棲み家としています。大きなイソギンチャクには複数のクマノミが同居しますが、その中で一番大きい個体が雌で、二番目がその夫になる雄だそうです。そして、雌が死ぬと、夫だった雄が突如雌に性転換します。また、三番目に大きかった個体が性成熟し、その夫になります。それ以外は成熟していない「子供」のままだそうです。
実際に映画のようにクマノミの父親は子育てに献身的で雌抜きで卵の世話をするそうですが、お母さんがいなくなった「ニモ」のお父さんは、本来なら性転換して雌になるはずなのですが…。そこまでリアルにしていないところが、ディズニーのよさかもしれません。 -
「太平洋」ゾーン チンアナゴ
砂から出たり入ったりを繰り返すへんてこりんな魚「チンアナゴ」も人気です。
下半身を砂で固めた穴に入れ、上半身だけを水中に出している姿がキュートな魚です。しかも群れで皆同じ方向を向いているため、一層ユーモラスです。テッポウエビも同じ方向を向いています。水流に乗って流れてくるプランクトンを食べるため、皆同じ方向を向いているにすぎないのですが…。 -
「太平洋」ゾーン オイランヨウジウオ(花魁楊枝魚)
硬骨魚網・トゲウオ目・ヨウジウオ科に属し、太平洋やインド洋、日本では伊豆以南の太平洋沿岸などに生息します。
尾びれのナルトのような模様と、茶色と黄色の縞模様が特徴です。生態は、タツノオトシゴと同じように雄が卵を守り育てます。ストロー状の小さな口を持ち、細く華奢に見えますが、動物プランクトンや小さな甲殻類を食す肉食系です。 -
クラゲファンタジーホール
60年間の年月を経て培われた飼育研究と展示手法が最大限に活かされた、「クラゲファンタジーホール」も人気です。ホールは、部屋全体がクラゲの体内をイメージした半円ドーム状の空間となっており、照明演出によって幻想的な世界が創られています。
壁面に13基、中央に1基のアクアリウムが配置され、14種類のクラゲが常設展示されています。(展示されるクラゲは時季により変動します)
中央にあるスノードームのような球体水槽「クラゲ・プラネット(クラゲの惑星)」は、クラゲをより美しく展示するために考案された水槽です。中には小さな水クラゲが浮遊しており、光の効果でとても幻想的に魅せ、癒し効果があります。何故、このように均等に舞っているかと言うと、内部の水流が工夫されているからです。浮遊感満天の神秘的なクラゲは、時間を忘れて見入ってしまうほどです。 -
クラゲファンタジーホール クラゲショー「海月(くらげ)の宇宙(そら)」
壁と天井にプロジェクションマッピングで江の島の海が映し出されます。ナレーションと共に周囲の海面が一斉に迫り上がり、巨大なクラゲの体内に抱かれた観客を海中へと誘います。
クラゲが海を漂うのは、僅かな期間に限られます。ふ化した幼生「プラヌラ」は岩に付着し、イソギンチャクのような姿の「ポリプ」になります。やがて何層にも体がくびれて「ストロビラ」という皿を重ねた形に変化し、そして一枚ずつ剥がれて浮遊し、ちびクラゲの「エフィラ」になります。
クラゲは、「刺胞動物」という括りの生物に属し、脳も心臓もありません。神経と筋肉、消化器官、生殖器官だけでできていますが、それら全体が心臓の役割を果たします。餌を追いかけて捕まえる生物には脳が不可欠ですが、クラゲは水流に身を任せて周りのプランクトンを食べればよいため、脳は不要です。
また、クラゲの成分の大半は水です。ですから、死後は海水に還元されます。一方、すり潰しても再生する生命力の強さも持ち合わせています。 -
クラゲファンタジーホール クラゲショー「海月の宇宙」
毎時10分に開催される10分間のクラゲショーは、3Dプロジェクションマッピングを採用した幻想的なショーです。耳に心地よい音楽と360度の壁が織り成す3D映像、生態を詳しく説明するナレーションの声が調和し、美しい世界感を演出しています。 -
キャノンボールジェリー
「水中を漂う幻想的な姿に癒される」と最近人気なのがクラゲの展示です。世界には約3千種類、日本には約600種のクラゲが生息しています。こうした身近な存在のクラゲの展示は海外の模倣かと思っていましたが、「えのすい」では前身の旧江ノ島水族館の開館と同時にクラゲの飼育・展示を行なってきました。
そのきっかけは、昭和天皇に由来します。昭和天皇は、相模湾周辺でヒドロ虫類などの海洋生物研究を修められてきました。「えのすい」には葉山の御用邸に近いという立地的な好条件もあり、御静養の折、ご一家でしばしば水族館まで足を伸ばされたことから、クラゲの展示に踏み切ったそうです。 -
キャノンボールジェリー
名の由来は、「キャノンボール(大砲の弾)」を彷彿とさせる形に因みます。
南米の東岸を中心に太平洋・大西洋の数箇所で確認されている根口クラゲの仲間です。この展示個体は、2017年にパリ水族館よりポリプを譲り受け、えのすいにて育てられたものです。 -
パシフィックシーネットル
クラゲの展示を始めた頃は、1週間飼うのが関の山だったそうです。その後、クラゲ研究の第一人者 柿沼博士の下でクラゲを繁殖させる技術を学び、さらに研究飼育を続けました。やがて、1973年に人工飼育の難しいミズクラゲの一生を水槽内で再現することに成功し、常設展示に踏み切りました。1993年には、日本動物園水族館協会から海産無脊椎動物では初の古賀賞を授与されています。
一方、海外動向に目を向けると、1992年に米国モントレー湾水族館で「プラネット・オブ・ザ・ジェリー」というクラゲの企画展が開催され、人気を博しました。その人気は日本にも逆輸入され、現在のような盛況ぶりになったそうです。 -
パシフィックシーネットル
クラゲファンタジーホールの正面、一番大きな水槽でゆったりと浮遊しているのがパシフィックシーネットルです。名を直訳すると「太平洋の海の刺草(いらくさ)」です。
今から20年程前に米国モントレーベイ水族館からポリプを譲り受け、それ以来、ポリプからクラゲを育て、展示を続けています。
口クラゲ目・オキクラゲ科・ヤナギクラゲ属のクラゲで、北アメリカ大陸太平洋岸に生息します。 -
パシフィックシーネットル
全長2m、傘は最大で30cm以上にまで達し、「世界最大のクラゲ」とされます。傘からは24本の触手が伸び、口腕がリボンのようにクルクルしているのが最大の特徴です。
色が橙色なのは、光合成を行なう褐虫藻と共生しているからです。鮮やかな橙色は薄い表皮の色で、その下の中身は無色透明です。
因みに、見た目の美しさとは正反対に、猛毒を持つそうですので取り扱いには要注意です。 -
リクノリーザ・ルサーナ
意外なことに、クラゲはプランクトンの仲間であり、珊瑚に近い生物とされます。また、クラゲ自身プランクトンですが、その餌もプランクトンです。
えのすいでは、商品名「シーモンキー」で知られるアルテミア(ブライシュリンプ)というプランクトンを餌に与えています。その他、品種によって、小魚や別種のクラゲを餌としているケースもあるそうです。 -
リクノリーザ・ルサーナ
南米の大西洋岸で見られる根口クラゲの仲間です。
成長すると傘の縁が紫色になり、また傘の下にある口腕の周囲には多数の付属器が生えてきます。口腕部分には甲殻類の幼生が共生していることもあります。
展示個体は、山形県鶴岡市立加茂水族館よりポリプを譲り受け、2017年にえのすいで生まれ、育てられたものです。 -
アトランティックシーネットル
米国出身クラゲの仲間であり、アトランティックシーネットルが東海岸、パシフィックシーネットルが西海岸出身です。
それほど大きな個体ではなく、涼しげな半透明の摺りガラスのような白い体色に、少しオレンジ色が差したドレスの裾を彷彿とさせる華麗な口腕を持ちます。 -
サカサクラゲ
根口クラゲ目・サカサクラゲ科に属し、世界中の暖かい海、日本では九州以南の海に生息し、別名「マングローブジェリーフィッシュ」と呼ばれます。一見、イソギンチャクの様にも見えます。
海底の砂の上で逆さになって暮らす不可思議な風貌のクラゲです。このように逆さになって、落ちてくる餌をひたすら待ちます。「クラゲらしくないクラゲ」というインパクトが人気を集める理由です。
一方、褐虫藻と共生しているため、光合成により太陽光をエネルギーに変えることもできます。触手があり、カニ等を捕獲することもできますが、毒性が弱いため捕獲率が低く、光合成がメインのエネルギー源となっています。
2017年に米カリフォルニア工科大などの研究チームは、サカサクラゲが夜間は活動が鈍り、睡眠状態になることを発表しました。睡眠は、哺乳類だけでなく、昆虫などにも共通する生理現象ですが、その目的は脳を休めるためと考えられてきました。しかし、脳などの中枢神経系がないクラゲに睡眠が確認されたことで、通説が覆ると話題になっています。 -
ヤナギクラゲ
旗口クラゲ目・オキクラゲ科・ヤナギクラゲ属の寒流性のクラゲで、夏期に北海道東南部で多く見られます。
オレンジ色の差し色が入った半透明の傘に、長く伸びた白いリボン状の口腕、真紅の24本ある触手がユラユラ揺れて優美な舞を魅せますが、刺されると激痛が走るそうです。 -
アカクラゲ
オキクラゲ科・ヤナギクラゲ属で、日本近海の北海道以南に広く分布します。国際色豊かなクラゲファンタジーホールの中にあって、日本を代表するクラゲと言えます。海外の水族館では「ジャパニーズシーネットル」と紹介されています。
放射状の褐色のストライプ模様が16本入った傘に、鮮烈な40~56本の赤い触手とドレスのような口腕を長く伸ばし、浮遊感満天にふんわりと漂っています。
傘は最大で直径60cm程になり、触手も3m近くに達します。えのすいクラゲ繁殖第1号の祈念すべき種類のクラゲでもあり、また、クラゲサイエンスのレリーフもこのアカクラゲです。因みに、毒は比較的強く、刺されると強い痛みを感じます。アカクラゲの「アカ」は「危険の赤」に因むそうです。
このクラゲが乾燥すると毒を持った刺糸が舞い上がり、鼻に入るとくしゃみを引き起こすため、「ハクションクラゲ」とも呼ばれます。「日本一の兵」と称された戦国武将 真田幸村も、アカクラゲの乾燥粉末を使った目潰しで相手の目をくらましていたそうです。また、その赤いストライプ模様から「連隊旗クラゲ」とも呼ばれます。 -
アマクサクラゲ
優雅にたなびく透明感のあるレースのような口腕が、天女の羽衣を彷彿とさせます。神奈川県より南の太平洋側、富山湾より南の日本海側に生息するクラゲで、熊本県の天草でよく見られることから、この名があります。
半球形の傘は直径6~10cm程で、よく観ると傘には放射線状の模様が32本入っています。皿を逆さにしたような扁平の傘がユニークです。
毒性は強めで、刺されると強い痛みを感じます。触手のみならず、傘の部分がブツブツしていますが、これは刺胞の塊ですので要注意です。 -
クリサオラ・プロカミア
2017年2に北里大学三宅研究室から譲り受けたポリプが起源の、えのすい生まれの個体です。
学名の「クリサオラ」は、「ヤナギクラゲ属」を指し、アカクラゲやパシフィックシーネットルなどと同じ仲間です。南太平洋や南大西洋、南米沿岸などで見られ、成長に伴って傘に赤茶色の放射状の模様が現れます。ゴージャスなフリル状の口腕がなんとも魅力的です。 -
ブラウンドットジェリー
タコクラゲの仲間で、黄色味を帯びた傘にある茶色のそばかすのような斑点がチャームポイントです。英名「ブラウンドットジェリー」は、ビジュアルそのままの命名です。
つるんとした傘にごま塩をふりかけたような模様を呈し、せわしなく小刻みに泳ぎ回る姿はどこか人工物のようにも思えます。
この種類のクラゲは、暖かい海にしか棲めないそうです。南国のリゾート地の海に浮遊しているのを見かけたら、それだけで癒やされること疑いなしです。 -
カブトクラゲ
一般的な刺胞細胞を持つ刺胞動物門ではなく、有櫛動物門・カブトクラゲ目・カブトクラゲ科に属すクラゲです。虹色に光り輝く、ネオンライトのような幻想的なクラゲです。
大きさは最大で10cm程、日本各地の沿岸域で通年確認され、相模湾周辺では秋に多く確認できます。名の由来は、その形が戦国大名が被っていた「兜」に似ていることに因みます。
特徴は、その生い立ちです。有櫛動物門に属すため、生活史も通常のクラゲ類とは異なり、ポリプ世代を持ちません。雌雄同体の成熟した個体が卵を形成し、その後体外へと放出します。放出した卵はその後分裂・変態を繰り返しフウセンクラゲ型幼生となり、その後成長するとお馴染みの姿となります。
実は、世界中で度々カブトクラゲの大量発生が発生しており、動物プランクトンや漁獲高を減少させる被害が相次いで報告されています。そんな背景もあり、国立環境研究所では「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定しています。実際の海では、嫌われ者の代表格のようです。 -
シンカイウリクラゲ
カブトクラゲ同様に有櫛動物の仲間で、刺胞や触手は持ちません。
飛行船を彷彿とさせる環体腔綱・ウリクラゲ目のクラゲは、体の表面にある櫛板(くしいた)と呼ばれる細かな繊毛を動かして浮遊します。櫛板が波打つように動き、そこに光が当たると反射してキラキラとイルミネーションのように光り輝きます。
シンカイウリクラゲは水深1000mという深海に生息し、ゆっくりと浮遊する様子は水中なのに何故か宇宙空間を彷彿とさせ神秘的です。 -
ギヤマンクラゲ
軟クラゲ目・マツバクラゲ科・ギヤマンクラゲ属で、湘南の春を代表するクラゲです。「ギヤマン」は、ポルトガル語で「ダイヤモンド」を意味します。透明感に溢れ、細い輪郭線しか見えず、ガラス細工のように繊細で、触れると壊れそうなくらい儚なげなクラゲです。
フワフワと水流に身を任せてたゆたうものもいれば、可愛らしくピョコピョコと向きを変えるものも、揺ら揺らと流されてゆくものもいます。変幻自在に浮遊する無色透明なジェリーに神秘的なオレンジ色の差し色が入った自然の造形には、畏怖の念しかありません。 -
タコクラゲ
エントランスにあったクラゲのオブジェのひとつでもあります。
名の由来は、棒状に伸びた脚(口腕)が8本あり、タコのように見えることに因みます。傘には白っぽい水玉模様が入り、その内部に「褐虫藻」を共生させ、それが光合成で得た栄養を利用するという生態の持ち主です。
一見、「タコ」と言うよりも「キノコ」を彷彿とさせます。傘の直径は最大でも20cm程の小型のクラゲです。生息地は、関東より南の暖かい海です。 -
ハナガサクラゲ
ヒドロ虫綱・淡水クラゲ目・ハナガサクラゲ科に属し、ブラジルやアルゼンチン、日本の中部~九州地方の沿岸で見られます。浮遊する姿の美しさは、和名の通り「花笠踊り」に喩えられます。
直径10~15cmの傘の内側に橙色の十文字型の生殖腺が見られ、外側には触手による黒ずんだ縞模様、傘の表面からは短い棒状の触手が飾りの様に生え、その触手先端付近は蛍光色を発しています。人間でも激痛を感じるほどの毒性を持っているそうです。
大阪大学永井教授らの研究グループは、ハナガサクラゲの触手から耐酸性で緑色の蛍光タンパク質Gamillusを開発しました。一般的な緑色蛍光タンパク質が酸性環境で蛍光を失うのに対し、Gamillusは酸性環境を含むほぼ全てのpH環境(pH4.5-9.0)で使用可能だそうです。生体分子の分解・リサイクルを行うオートファジーなど、酸性細胞小器官が関わる未知の生命現象を調べる分子ツールとしての活躍が期待されています。
この神秘的な蛍光色を発する触手を見て生命科学への応用を思いつくとは、頭が下がります。 -
ハナガサクラゲ
ぼ~っと焦点もなく眺めているだけで、浮遊するクラゲの優雅で緩やかな旋律に同化してしまいます。水槽の中で奏でられる「形」と「色彩」と「動き」のシンフォニーは、飽きることがなく、時空の感覚を麻痺させます。原初地球において生命が誕生した母なる海の記憶を呼び覚ますかのようです。宇宙の塵から地球が生まれ、その地球で生命が誕生しました。クラゲを眺めていると癒されるのは、生命の元が宇宙空間を浮遊していた頃の太古の昔の記憶が甦るからかもしれません。鬱積するストレスですり減らし尖っていた心の角が、少し丸くなったような気がします。これも「クラゲの毒性」でしょうか? -
クリオネ・リマキナ
「クリオネ」という名前は、ギリシア神話に登場する文芸の女神たちムーサイの一柱「クレイオ」に由来します。「海の天使」を意味し、その姿が羽を広げた天使のようだからと「流氷の妖精」と呼ばれて一大ブームを巻き起こしました。
しかし、和名を聞くと興醒めです。和名は「ハダカカメガイ」と言い、巻貝の仲間です。しかし、半透明の外套膜に赤い内臓を持ち、貝殻はありません。巻貝は足を使って這って歩きますが、クリオネは足がひれのようになっており、その翼のような「翼足」を動かして浮遊生活をしています。 -
クリオネ・リマキナ
流氷が訪れる冬季シーズンには北海道では必ず話題にのぼるのが、クリオネです。通常は流氷の下で生息していますが、異常発生した時などは、オホーツク海沿岸の海岸で簡単に見られたりし、それがまたニュースになったりもします。
因みに、生息深度は水深0~600mと範囲が広く、深海でも確認されています。
赤く見えるのは生殖腺や中腸腺です。 -
片瀬海岸西浜
江の島が近くに臨めます。全長1km程続く長い砂浜と広々とした遠浅のビーチです。「東洋のマイアミビーチ」と言われる片瀬海岸西浜は、ご覧のように「海の家」の建設ラッシュが始まっています。工事用の重機や剥きだし骨組みが並ぶ浜辺は、湘南の初夏の風物詩です。夏本番はすぐそこまで迫っています!
因みに、今年の江ノ島近辺の海水浴場の海開き期間は、7月1日(日)~8月31日(金)のようです。例年の片瀬海岸西浜の海開き期間中の人出は、日本最大級の300万人以上だそうです。 -
「カワウソ ~木漏れ日のオアシス~」
コツメカワウソの生息環境を再現しており、その行動を様々な角度から観察できます。
カワウソ類では最小種とされ、手足の爪が小さいことから「コツメカワウソ」と呼ばれます。遊び好きな年頃ゆえ、とても活発です。また、つがいの結び付きは強く、一夫一婦で繁殖し、10数頭の家族で行動を共にします。
写真は、愛称「ミヤマ」と「ヤマト」とネーミングされた2歳の兄弟です。2頭で激しくじゃれ合い、一見すると取っ組み合いの喧嘩をしているようにも見えます。 -
「カワウソ ~木漏れ日のオアシス~」
こちらは、ハンモックで一人遊びをしている雌の「ミサキ」です。
「ミサキ」は、大阪府岬町の「みさき公園」生まれの1歳です。甘えん坊ですが好奇心旺盛で、トリーターが持ってくるブラシやホースなどで遊ぶ様子が可愛らしいです。 -
アシカショー
ひょうきんなアシカたちのパフォーマンスは、観衆の笑いを誘います。 -
イルカショー
「えのすい」の前身「江の島水族館」は、1957年に日本で初めて本格的なイルカショーを開催した「イルカショー」の先駆者です。これにより、魚類だけでなく鯨類等の水生生物を網羅した、日本の総合水族館の先駆けにもなりました。 -
イルカショー ハナゴンドウ「ビーナ」
鯨の仲間ですが、大きさはイルカと変わりません。和名は、「ハナ」+「ゴンドウ」に分解できます。ゴンドウとは「大きな頭」と言う意味で「巨頭」と書きます。ハナは「花」と書き、体に付いた傷が白く残るため、それが花模様に見えることに因みます。
実は、ハナゴンドウは、生まれた時は濃い灰色をしていますが、成長するにつれ徐々に体全体が白く退色し、同時に引っかき傷が白い痕として残ります。そして、成獣になると頭はほぼ真っ白になり、体も無数の傷跡で白く斑模様になり、まるで頭から白ペンキをかぶったような体色になります。
「ビーナ」はイルカたちほど芸達者ではないようで、超低空飛行ですがなんとかジャンプに成功し、拍手喝采です。 -
イルカショー
2015年、日本動物園水族館協会(JAZA)は、「追い込み漁」で捕獲されたイルカの購入を禁止することを決めました。これによって、イルカショーの存続が危ぶまれています。しかし、「えのすい」では、水族館にやってきた野生のイルカだけではなく、館内で生まれ育った館内4世・館内5世と呼ばれるイルカたちが沢山います。イルカの繁殖は簡単なことではないそうですが、5世までいる水族館は世界で唯一「えのすい」だけです。
このまま「館内イルカ」で世界中の水族館をリードしてくれるのかと思っていましたが、「えのすい」は断腸の思いで2017年にJAZAを脱会しました。
「えのすい」は、「調査捕鯨を目的とした追い込み漁は、水産庁が計画を立てて実施されてきた。水族館ではこれまで太地町と連絡しながら鯨類の繁殖研究に取り組んでおり、これからも引き続き実施する」とコメントしています。
少し残念な気持ちになりますが、館内で生ませて育てるのはそれだけ困難が伴うと言うことの証左と思います。世界の水族館の趨勢を見ながら、継続して「館内イルカ」の育成にも注力し、この分野でリーダーシップを発揮していただけたらと願います。 -
しんかい2000
えのすいのもうひとつのお目当てが、有人潜水調査船「しんかい2000」の実物展示です。
深海研究で世界をリードしている海洋科学技術センター(現: 海洋研究開発機構)が所有、運用をしていた日本初の深海用の有人潜水調査船です。名の通り、深度2000mまで潜航することができます。2017年に一般社団法人日本機械学会より「機械遺産 第87号」に認定されました。
全長9.3m、幅3m、高さ2.9m、重量24トンあります。
中速力は最大3ノット、通常の潜航時間は7時間です。
人類の歴史は、フロンティア精神の歴史といっても過言ではありません。未知なる世界を見たいという欲求が、科学者たちのチャレンジ精神を掻き立ててきました。暗黒の世界「深海」への憧れもそのひとつです。
世界の深海への挑戦の歴史は、紀元前から始まっていました。大帝国を築いたアレキサンダー大王が、ガラス製の樽に乗り込んで巨大生物を発見したとの伝説が残っています。20世紀になると、各国が競って深海調査のための機器を開発し、凌ぎを削る時代に突入しました。そんな中、海洋科学技術センターが起死回生の「しんかい2000」を開発し、ここから深海研究において日本が世界をリードする時代がスタートしました。現在は、深度6500mまで潜航可能な「しんかい6500」が後継しています。 -
しんかい2000
三菱重工神戸造船所で1981年に製作され、2002年まで1411回の潜航を行いました。現在は退役となり、安らかにその身を横たえた形で展示されています。因みに、記念すべき初潜航と最終潜航は、奇遇にもいずれも相模湾だったそうですから、里帰りと言えるのかもしれません。お疲れさまでした!
世界で一番深いマリアナ海溝は、10911mあります。世界最高峰のエベレストを海にそのままひっくり返しても届かない深さです。深海調査は生態系など未知の部分が多く、こうした実物を目の当たりにした若者たちが深海への憧れやロマンを抱いてくれればいいのですが…。 -
しんかい2000
こちらはコックピットの実物模型です。乗員は3名です(1名は研究者)。手前にはパイロット用のシートが一つありますが、他の2名はこの下に這いつくばるように乗るそうです。これは、現在の「しんかい6500」も同じだそうです。
パイロットの方の話では、潜行する時は時計回りに回転しながら沈下していくそうです。しかし、「理由は判らないが、100回に1回くらいは左回りの時もあった」という興味深い話があります。
旋回することに関しては、渦巻き現象が思い当たります。台風の渦巻きは地球の自転によって流れの方向が曲げられるもので、北半球では左巻きになります。このような現象を「コリオリの力」と言います。しかし、北半球なのに右回りというのは理屈に合いません。よくよく考えると、「しんかい2000」の規模では「コリオリの力」が影響するとは思えません。恐らく、機体の抵抗バランスと潮流との関係で回転方向が決まるのだと思います。 -
しんかい2000
上段は、深海魚「ラブカ」のホルマリン漬け標本です。
「ラブカ」は、カグラザメ目・ラブカ科に分類される深海ザメの一種ですが、サメには見えず、ウナギに似ているため日本では「ウナギザメ」とも呼ばれます。深度500~1000mの深海に生息しますが、駿河湾や相模湾などでは浅海に上がってくることもあるそうです。名の「ラブカ」は、「羅紗(のような手触り)+フカ(サメ)」に因んだものです。3億6千年前のサメの化石に似た原始的な特徴を持ち、生きた化石と言われています。
下段は、「ミツクリザメ」です。
19世紀に横浜で発見され、奇妙奇天烈な姿形から新科新属新種のサメと報告されました。顎が前方に飛び出し、歯が剥き出しになった恐ろしげな容貌と色素を欠いた桃色の体から、欧米では「goblin shark(悪魔のサメ)」と呼ばれています。日本では、長い鼻先(吻)から「テングザメ」とも呼ばれます。映画『ガメラ対深海怪獣ジグラ』に登場する「ジグラ」のモチーフとして採用された深海ザメです。
学名「Mitsukurina Owstoni」は、発見者アラン・オーストン (A. Owston) 博士と東京大学三崎臨海実験所の初代所長 箕作佳吉(みつくりかきち)博士に捧げられたものです。
獲物を捕らえる時に顎を突出す挙動は、サメ類に一般的なものですが、ミツクリザメはその能力を顕著に発達させ、他とは比較にならないほど高速で、はるか前方まで顎を突出して噛み付きます。その挙動は、映画『エイリアン』にも採用されています。 -
和菓子屋「扇屋」
江ノ電 江ノ島駅から徒歩5分程、龍口寺の門前にある「扇屋」は、江ノ電をモチーフにした「江ノ電もなか」で知られた和菓子屋です。創業は天保年間(1839~44年)、180年程の歴史を誇る老舗です。NHK『ブラタモリ』でも紹介された有名店です。
外観が特徴的ですので、一度見たら忘れることはありません。一瞬、江ノ電の車庫かと勘違いしそうなほど、ごく自然で違和感がありません。また、方向は90度捻ってありますが、軒にはパンタグラフも取り付けられる程の懲りようです。 -
和菓子屋「扇屋」
江ノ電の旧車両「600形」のフロント部のみのカットモデルで、江ノ電標準の緑色+クリーム色のツートンカラーそのままです。現在、この奥は作業場として使っておられます。これほどまでの「江ノ電愛」に感銘です!
651形は1990年に現役を引退した車両で、1970(昭和45)年に東京急行電鉄から譲り受けた車両です。 -
和菓子屋「扇屋」
ここに立寄った目的は、現役の江ノ電とのツーショットです。
路面電車に当たらない「普通鉄道」は、通常は路上走行は許されていません。しかし、江ノ電は全国で唯一「路面を走る普通鉄道」という肩書きを持ちます。
こうした背景にはそれなりの理由があります。江ノ電は1902(明治35)年に開業し、当初はもっぱら路面電車として営業していました。しかし戦時中、国策として普通鉄道に変更された経緯があります。その際、路面電車として道路と並走していた部分はそのまま残され、現在もそれが使われています。ですから、江ノ電は例外的に路上走行が許された「普通鉄道」なのです。 -
和菓子屋「扇屋」
後方車両は、レトロな「300形」です。
江ノ電が一般道路を走る「併用軌道」は、江ノ島~腰越間の他、七里ヶ浜付近や稲村ヶ崎付近など、合わせて約1kmの区間になります。 -
湘南モノレール
JR大船駅へは「湘南モノレール」を使ってショートカットします。正式には「湘南モノレール 江の島線」と言います。
古都 鎌倉市街を経由せずに湘南江の島~大船駅間を14分で結んでいます。1978年には観光需要が7割を占めましたが、その後、富士見町や湘南町屋両駅界隈が準工業地域、湘南深沢駅界隈が商業・住宅地、西鎌倉~目白山下間の各駅界隈が高級分譲地として再整備されことが奏功し、現在は通勤・通学客の利用が9割を占めます。言わば、地元住民の方々の足として定着しています。 -
湘南モノレール
遮音壁が一切ないため、空中を滑走する際の車窓がダイレクトに愉しめ、また高低差によるアップダウンや結構曲がりくねった路線のため、一寸した「ジェットコースター」気分が味わえます。
湘南江の島駅では、1階から改札のある5階までを結ぶエレベータとエスカレータを設置する工事が着工されています。2020年の東京五輪等のセーリング競技の会場へのアクセスを担うことが期待されているからです。「五輪詣」は、地元住民の方々にははなはだ迷惑なことかもしれませんが…。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。恥も外聞もなく、備忘録も兼ねて徒然に旅行記を認めてしまいました。当方の経験や情報が皆さんの旅行の参考になれば幸甚です。どこか見知らぬ旅先で、見知らぬ貴方とすれ違えることに心ときめかせております。 -
おまけ1 イヌホオズキ(犬鬼灯)
我家のベランダにあるプランターで発芽し、すくすく成長して花を咲かせました。種を蒔いた覚えはなく、初めはミニトマトかと思っていましたが、トマト系は花全体が黄色であり、調べると「イヌホオズキ」だと判りました。
レモンイエローの蕊をツンと伸ばし、星型の白い花びらをカクテルドレスのように広げています。5mm程の小さな楚々とした花です。 -
おまけ2 イヌホオズキ(犬鬼灯)
ナス科ナス属の一年草です。古い時代に雑草として渡来した、史前の帰化植物と推測されています。果実は直径7mm程度と小さく、熟すと紫黒色になります。
名の由来は、草姿などがホオズキに似るも、果実に赤い袋を付けないことから「似て非なるもの」の「非(イナ)」から「イヌ」に転訛したようです。
しばしば「イヌ」は「犬」で、役に立たないことからの命名と説明がなされていますが、犬は古い時代から狩猟や牧羊等など有用動物であったことから、この解釈は正しくないとされています。
「ホオズキ」の名の由来は、江戸時代の本草書などに「ホオ」という虫がよくこの葉を食べることから「ホオツキ」になったとの説明がありますが、定説はないようです。 -
おまけ3 イヌホオズキ
花びらは、表面が細かく毛羽立ち、ビロードを彷彿とさせる質感です。
漢方では「竜葵(りゅうき)」と称し、根と種子を解熱、解毒、消腫に用いるようです。全体にソラニンというアルカロイドを含み、未熟な果実を食べた子供が死亡した例もあるそうです。ソラニンは、ジャガイモの芽と同じ毒成分です。ステロイドアルカロイドのソラニジンを非糖体(アグリコン)する配糖体で、コリンエステラーゼ阻害活性を持ち、腹痛、嘔吐、下痢、痙攣などを引き起こします。
花言葉は、「嘘つき」と「真実」。正反対の言葉が並びますが、「嘘つき」は口の中で鳴らして遊ぶ真赤なホオズキの実と違い、剥き出しの実に毒があることから、「真実」は解熱や利尿など民間薬として役立っていることに因みます。
どうやら世間ではあまり歓迎されていない雑草の様なので、写真に収めた後、伐採することにしました。
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
montsaintmichelさんの関連旅行記
藤沢・江ノ島(神奈川) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
0
64