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フランス美術は印象派以後が、日本やアメリカでは人気があるようだが、私にはフランス芸術の絶頂期はフランス革命の前だと思っている。フランス音楽はラモーやクープランなどがバロックやロココ時代の音楽で絶頂期を築いたし、美術もプーサンなどのバロック美術の台頭後、さらに磨かれ洗練されたロココ時代の美術が花開いた。私にとっては、そのトップはフラゴナールであり、その師であったブーシェなどの時代だ。<br /><br />だが、フランス革命とともに、フラゴナールは追放された。フラゴナールはルーブルの美術品の管理などもしていた大物だったが、フランス革命とともにその地位を失い、晩年は失意のうちに亡くなった。その後にくるものは、反動的なものもあったろう。フランスの洗練されたセンスは今も残っているが、それらの内の多くは、バロック、ロココ時代のベルサイユ文化の高みが基本として発展したものではないだろうか。<br /><br />印象派の内、いいものは、その全盛時代のフランス王朝文化の香りを伝えていると思うし、フランス音楽でも、ラベルやドヴュッシーなどのいい作品は、過ぎ去ったフランス文化のいい部分を受け継いでいると私は考える。フランスは王族をギロチンに掛けた国だが、工芸品や料理などにも、当時の華麗なフランス王朝文化のエセンスは残されているように思う。ミシェランの3つ星レストランや世界最高のワイン文化などもあの当時の高みを目ざす精神が生きていなければ、到底到達は不可能だろうと思う。<br /><br />もっとも、彼らのフランス文化の基本は実はすべて、ローマなのだ。料理も美術も音楽も間違いなくローマが原点なのだ。それをさらに進展させた文化であると思う。(イギリスの文化人は、それらをちゃんと鑑賞する能力と財力は持っている。)<br /><br />今回は、とくにフラゴナールに集中する。と言っても、ナショナル・ギャラリーには一点だけ(!)展示されている。彼の有名作品はロンドンのウォレス・コレクションに展示してある。例の「ブランコ」と題された絵だ。<br /><br />実はこのバロック・ロココ時代のフランス絵画はウォレス・コレクションに集めてある。そちらの写真は2014年ごろ初めて撮影可能になったので、その時に撮った写真がかなりあるのだが、いつか紹介したい。今回は「ブランコ」のみ、こちらで掲載する。<br /><br />最近、英語版のWikipediaの充実ぶりを知り、驚いている。このFragonardについても、英語版の解説はすばらしい。参考文献も驚くほど、あがっている。一方、日本語版のフラゴナールは貧弱このうえない!参考文献もまったくない!いい加減だ!日本語版ウィキペディアを利用して学生などがレポートを書くと言って、嘆く先生がたが多いのを知っているが、それは理解できる。<br /><br />しかし、最近、両方を比較して読んでいると、英語版は参考文献として挙げてもおかしくない項目をたくさん見てきた。私自身が退職前は3つの学会で学術論文の審査などしてきた経験からしても、参照文献をきちんとあげて、注釈もつけた立派な論文スタイルだと、Wikipediaを頭ごなしで忌避するのはどうかと思うようになった。日本語版のウィキペディアは含まない!勿論、日本語版にも項目によっては、しっかりしたものがありうるだろうが、最近、このナショナル・ギャラリーの原稿を書く上で、比較しながら読んでいると、英語版のWikipediaの説明は役に立った項目が多いのを認める。<br /><br />英語版のWikipediaに面白い情報があった。フラゴナールの描いた男性の地味な肖像画が一枚、史上最高額のオークション値段で2012年にロンドンで取引されたとある。それ以前の史上最高額の5倍以上で、一枚1700万ポンドを越えたとある!一枚、250億円くらいだから、ゴッホの「ひまわり」などとはまったく比較にならない!要するに、フラゴナールは、今もっとも高額で作品が売れた画家なのだ。写真でみるかぎり、ここらで見るような名作ではないのだが。。<br /><br /><br />最初の写真はフラゴナールの「キューピッドにもらった贈り物を、姉妹に見せるプシケー」<br /><br />次のデータは、ナショナル・ギャラリーのホームページより:<br /><br />Jean-Honoré Fragonard<br /><br />1732 - 1806<br /><br />Psyche showing her Sisters her Gifts from Cupid<br /><br />Date made 1753<br /><br />Oil on canvas<br /><br />168.3 x 192.4 cm

ロンドンのナショナル・ギャラリー(NO.10) ―フランス・ロココ美術(フラゴナール)-

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2017/03/09 - 2017/03/23

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tad

tadさん

フランス美術は印象派以後が、日本やアメリカでは人気があるようだが、私にはフランス芸術の絶頂期はフランス革命の前だと思っている。フランス音楽はラモーやクープランなどがバロックやロココ時代の音楽で絶頂期を築いたし、美術もプーサンなどのバロック美術の台頭後、さらに磨かれ洗練されたロココ時代の美術が花開いた。私にとっては、そのトップはフラゴナールであり、その師であったブーシェなどの時代だ。

だが、フランス革命とともに、フラゴナールは追放された。フラゴナールはルーブルの美術品の管理などもしていた大物だったが、フランス革命とともにその地位を失い、晩年は失意のうちに亡くなった。その後にくるものは、反動的なものもあったろう。フランスの洗練されたセンスは今も残っているが、それらの内の多くは、バロック、ロココ時代のベルサイユ文化の高みが基本として発展したものではないだろうか。

印象派の内、いいものは、その全盛時代のフランス王朝文化の香りを伝えていると思うし、フランス音楽でも、ラベルやドヴュッシーなどのいい作品は、過ぎ去ったフランス文化のいい部分を受け継いでいると私は考える。フランスは王族をギロチンに掛けた国だが、工芸品や料理などにも、当時の華麗なフランス王朝文化のエセンスは残されているように思う。ミシェランの3つ星レストランや世界最高のワイン文化などもあの当時の高みを目ざす精神が生きていなければ、到底到達は不可能だろうと思う。

もっとも、彼らのフランス文化の基本は実はすべて、ローマなのだ。料理も美術も音楽も間違いなくローマが原点なのだ。それをさらに進展させた文化であると思う。(イギリスの文化人は、それらをちゃんと鑑賞する能力と財力は持っている。)

今回は、とくにフラゴナールに集中する。と言っても、ナショナル・ギャラリーには一点だけ(!)展示されている。彼の有名作品はロンドンのウォレス・コレクションに展示してある。例の「ブランコ」と題された絵だ。

実はこのバロック・ロココ時代のフランス絵画はウォレス・コレクションに集めてある。そちらの写真は2014年ごろ初めて撮影可能になったので、その時に撮った写真がかなりあるのだが、いつか紹介したい。今回は「ブランコ」のみ、こちらで掲載する。

最近、英語版のWikipediaの充実ぶりを知り、驚いている。このFragonardについても、英語版の解説はすばらしい。参考文献も驚くほど、あがっている。一方、日本語版のフラゴナールは貧弱このうえない!参考文献もまったくない!いい加減だ!日本語版ウィキペディアを利用して学生などがレポートを書くと言って、嘆く先生がたが多いのを知っているが、それは理解できる。

しかし、最近、両方を比較して読んでいると、英語版は参考文献として挙げてもおかしくない項目をたくさん見てきた。私自身が退職前は3つの学会で学術論文の審査などしてきた経験からしても、参照文献をきちんとあげて、注釈もつけた立派な論文スタイルだと、Wikipediaを頭ごなしで忌避するのはどうかと思うようになった。日本語版のウィキペディアは含まない!勿論、日本語版にも項目によっては、しっかりしたものがありうるだろうが、最近、このナショナル・ギャラリーの原稿を書く上で、比較しながら読んでいると、英語版のWikipediaの説明は役に立った項目が多いのを認める。

英語版のWikipediaに面白い情報があった。フラゴナールの描いた男性の地味な肖像画が一枚、史上最高額のオークション値段で2012年にロンドンで取引されたとある。それ以前の史上最高額の5倍以上で、一枚1700万ポンドを越えたとある!一枚、250億円くらいだから、ゴッホの「ひまわり」などとはまったく比較にならない!要するに、フラゴナールは、今もっとも高額で作品が売れた画家なのだ。写真でみるかぎり、ここらで見るような名作ではないのだが。。


最初の写真はフラゴナールの「キューピッドにもらった贈り物を、姉妹に見せるプシケー」

次のデータは、ナショナル・ギャラリーのホームページより:

Jean-Honoré Fragonard

1732 - 1806

Psyche showing her Sisters her Gifts from Cupid

Date made 1753

Oil on canvas

168.3 x 192.4 cm

旅行の満足度
5.0
  • 最初の絵の館内の解説。<br /><br />1753年の作品。因みに、音楽では、クープランは亡くなり、ラモーが活躍していた時代だ。ラモーの最後の傑作オペラ「レ・ボレアデ」が作曲されるのは少し後の1764年だ。

    最初の絵の館内の解説。

    1753年の作品。因みに、音楽では、クープランは亡くなり、ラモーが活躍していた時代だ。ラモーの最後の傑作オペラ「レ・ボレアデ」が作曲されるのは少し後の1764年だ。

  • 上の一部分。

    上の一部分。

  • 角度を買えて部分撮影すると光の質が微妙に変化する。。。

    角度を買えて部分撮影すると光の質が微妙に変化する。。。

  • ウォレス・コレクションにあるフラゴナールの傑作「ブランコ」。<br /><br />1768年の作品。これは2014年3月に撮影したもの。照明が暗いし、カメラもよくない。リコーの2万円くらいのデジカメ。<br />

    ウォレス・コレクションにあるフラゴナールの傑作「ブランコ」。

    1768年の作品。これは2014年3月に撮影したもの。照明が暗いし、カメラもよくない。リコーの2万円くらいのデジカメ。

    ウォーレス コレクション 博物館・美術館・ギャラリー

  • 下の半分。

    下の半分。

  • 上の半分。

    上の半分。

  • 別の角度から。<br /><br />フラゴナールはまだここにはたくさんある。

    別の角度から。

    フラゴナールはまだここにはたくさんある。

  • もう一度、ナショナル・ギャラリーに戻って、同じフランス絵画の部屋から、フラゴナールの師であるブーシェの作品をあげておく。

    もう一度、ナショナル・ギャラリーに戻って、同じフランス絵画の部屋から、フラゴナールの師であるブーシェの作品をあげておく。

    ナショナルギャラリー 博物館・美術館・ギャラリー

  • さらにフランス絵画のこの時代の名品をあげる。<br /><br />Nattierナティエの作。<br /><br />Jean-Marc Nattier<br /><br />Artist dates 1685 - 1766 <br /><br />Manon Balletti<br /><br />Date made1757<br /><br />Oil on canvas<br /><br />54 x 47.5 cm

    さらにフランス絵画のこの時代の名品をあげる。

    Nattierナティエの作。

    Jean-Marc Nattier

    Artist dates 1685 - 1766 

    Manon Balletti

    Date made1757

    Oil on canvas

    54 x 47.5 cm

  • ドルーエの名品。特に衣服の描写に注目。マダム・ポンパドゥールを描いた名作。

    ドルーエの名品。特に衣服の描写に注目。マダム・ポンパドゥールを描いた名作。

  • François-Hubert Drouais<br /><br />Artist dates 1727 - 1775<br /><br />Madame de Pompadour at her Tambour Frame<br /><br />Date made 1763-4<br /><br />Oil on canvas<br /><br />217 x 156.8 cm<br /><br />マダム・ポンパドゥールのサロンが偲ばれる。サロン文化の原点だ。

    François-Hubert Drouais

    Artist dates 1727 - 1775

    Madame de Pompadour at her Tambour Frame

    Date made 1763-4

    Oil on canvas

    217 x 156.8 cm

    マダム・ポンパドゥールのサロンが偲ばれる。サロン文化の原点だ。

  • 部分撮影で、もっと凄さがわかる。

    部分撮影で、もっと凄さがわかる。

  • 別の角度から。<br /><br />今回は、フランス美術の黄金期であるバロック・ロココ時代とくにロココ風<br />の名作を取り上げた。<br /><br />フランスの最高のワインと料理が似合う組み合わせだと思う。

    別の角度から。

    今回は、フランス美術の黄金期であるバロック・ロココ時代とくにロココ風
    の名作を取り上げた。

    フランスの最高のワインと料理が似合う組み合わせだと思う。

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