西・中・東部アフリカ10か国を巡る旅－08誇り高き黒い獅子たちの、日本への敬意 (ビザ無しで入国する方法も紹介)

2016/12/26 - 2017/01/07

今回の旅ではルワンダから隣国ウガンダへ移動するのに、敢えてウガンダを通り越して2時間半もかけて、エチオピアを経由してウガンダに向かった。ルワンダからウガンダまでの直行便を、利用すれば僅か45分のフライト。何て効率の悪い移動だと思う人もいるかもしれないが、エチオピア航空の乗り継ぎには大きなメリットが隠されている。

エチオピアへの入国にはビザが必要だが、空港で簡単にアライバルビザが取得できる。とはいえ、シングルエントリーで70ドル(2017年1月)もかかるのはかなりの出費だ。

しかしエチオピア航空には8時間以上24時間以内ルールがあり、アディスアベバをこの「8時間ルール」の間に乗り継ぎするのであれば、エチオピア入国は査証免除となり無料で入国可能。しかも市内のホテルも無料の上、食事つきで宿泊でき、加えて空港とホテルまでの送迎付き。もちろんホテルに缶詰にされるわけではなく、町を歩くこともできるし、観光もできる。以下のエチオピア航空のウェブサイトにも記載されているので参照してほしい。
https://www.ethiopianairlines.com/AA/EN/services/airport/addis-ababa-stopovers

ルワンダからエチオピア迄の所要時間は2時間半もかかる(大阪から上海までのフライト時間くらい)。フライト時間が長いと、せっかくの限られた旅行時間でロスを作ることになる。しかし幸いキガリからアディスアベバまでのフライトは深夜便があり、アディスアベバからウガンダのエンテベ行きのフライトは夕方。エチオピアのアディスアベバでは日中を、フルに利用して行動ができる。ルワンダから殆ど眠ることなく、標高2000メートルのアディスアベバを観光するのはとてつもなくハードではあるが、楽をしようと思えば今回の私みたいにホテルでタクシーをチャーターして回れば良い。一見効率が悪そうな乗り継ぎでも、利用の仕方では逆にとても有用な乗り継ぎとなるのだ。アディスアベバの観光であれば「8時間ルール」を利用して十分に楽しむことができる。


それと最後に一つ。エチオピアではタクシーの運転手やホテルで日本に対する敬意ともとれる言葉を頂き、日本人として誇りに感じることもあった一面、エチオピア人から話を聞くまで日本とエチオピアの繋がりを知らない自分がとても恥ずかしく感じた。これについては写真と一緒に紹介したい。


～～～～～～～～～～～～～～～～～～

コートジボワール；E-VISA ウェブ決済
ナイジェリア；駐日大使館に郵送により手配
ガーナ；駐日大使館に郵送により手配
トーゴ；空港でアライバルビザの取得
ベナン；駐日大使館に郵送により手配
ガボン；E-VISA 空港払い
カメルーン；駐日大使館に郵送により手配
ルワンダ；E-VISA 空港払い
エチオピア；査証無しで入国
ウガンダ；E-VISA 空港払い

～～当初の旅程～～
12/26 KIX23:35 EK317 -
12/27 -DXB5:45 発7:35 EK787 - ABJ(コートジボワール)14:25
グランバッサム迄はタクシーで移動
12/28 ABJ7:30 W3395 - LOS10:00(ナイジェリア)
LOS17:00 W3304 - ACC(ガーナ)17:00

12/30 ACC13:15 2J21 - LFW（トーゴ）12:00
12/31 LFW13:15 2J22 - COO（ベナン）13:40
1/1 COO22:00 SA91 - LBV(ガボン）23:50
1/2 LBV19:20 SA86 - DLA(カメルーン）20:15
1/3 DLA10:25 KQ522 - NBO(ケニア）18:05
1/4　 NBO0:25 KQ478 - KGL(ルワンダ）0:50
1/5 KGL2:00 ET820 - ADD(エチオピア）5:35
1/5 ADD17:00 ET334 - EBB(ウガンダ）19:05
1/6 EBB15:30 EK730 - DXB021:35
1/7 DXB3:00 EK316 - KIX16:50

エリア アディスアベバ(エチオピア)

• 旅行の満足度: 4.0
• 観光: 4.5
• ホテル: 1.5
• グルメ: 2.5
• ショッピング: 3.0
• 交通: 3.0

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 15万円 - 20万円
• 交通手段: タクシー 徒歩 飛行機
• 航空会社: エミレーツ航空 エチオピア航空 ケニア航空 南アフリカ航空
• 旅行の手配内容: 個別手配

旅も終盤にはいり、残す目的地はエチオピアとウガンダだけとなった。
地図で見ても分かる通り、ルワンダからウガンダに行く場合に、エチオピアを経由してウガンダに向かうことは距離長く、一見、非効率のように見える。

ルワンダのキガリを夜中２時に出発し、エチオピア航空で、エチオピアの首都、アディスアベバを目指す。フライト時間は約2時間半。とはいえ、エチオピアとルワンダには時差があるので、到着は5時頃になる。

キガリ国際空港 (KGL) 空港

キガリ国際空港ではプライオリティパスが利用できるラウンジがあるので、ここでビールを飲みながらフライトを待つ。

パールラウンジ (キガリ国際空港) 空港ラウンジ

ルワンダのキガリ国際空港を30分のディレイで出発したエチオピア航空。約2時間半のフライトだ。チェックイン時に隣国ウガンダに行くのになぜ時間のかかるエチオピア航空を使うの？？と、怪訝な顔をして言われてしまった。

キガリ国際空港 (KGL) 空港

機内食はチキンを選択した。ゴロンとした、パサパサのムネ肉。。。うーん一番安い部位の一つヤン！

アディスアベバ国際空港には6時前に到着。飛行機は沖止めされ、バスでターミナルへ。ターミナルにはいると、先ずはエチオピア航空のカウンターを探すが、とにかくこの通路が寒い。

ボレ国際空港 (ADD) 空港

エチオピアのビザ免除の手続きをするためには、先ず空港の保安区域内にあるエチオピア航空のカウンターにいかなければならないので、カウンターを探す。

ボレ国際空港 (ADD) 空港

エスカレータを降りるとイミグレーションに向かうが、その二階のエスカレータのりばの奥にエチオピア航空のブースがあった。ここでバウチャー発行の手続きを行う。

ボレ国際空港 (ADD) 空港

ブースでアディスアベバ迄の搭乗券の半券と、アディスアベバからウガンダのエンテベ迄の搭乗券を見せて、乗り継ぎが8時間以上24時間以内の乗り継ぎなのか、確認される。

ルールどおりの乗り継ぎであれば、添付のとおりバウチャーが発行される。バウチャーの左上にあてがわれたホテル名が掲示されている。私の場合はホテルエチオピアだ。そして朝食や夕食にＹとあるので、2食分の食事が付いている！ホテルまでのトランスファーはバス（実際にはハイエース）とあり、ホテルのピックアップ時間も明示されている。

発行された後、ブースの担当には「エスカレータ前で暫く待っていると迎えが来る」と言われたが、結局こなかった。それどころか乗り継ぎ客がどんどん来てブースに行列ができた。発行してもらった人たちは一階へと降りているので、自分も「迎え」を待たず、そのままエスカレータで降りることにした。

ブースには長蛇の列ができるので早めに行こう。

ボレ国際空港 (ADD) 空港

エスカレータを降りた場所にイミグレがある。イミグレはアライバルビザ発行列と、既取得者の列がある。エチオピア航空のバウチャーを持っている人は、何れのレーンでも並ぶことができるので、空いている方を選択すると良い。

　アライバルホールに出ると、エチオピア航空の係員がいるので、バウチャーを見せ、トランスファーが何処にいるのか確認をしよう。

　アライバルホールの出口を出て、一段下がった場所に駐車場があり、何処かにホテルの車が待っているはずだ。

ボレ国際空港 (ADD) 空港

エチオピア航空が指定するホテルはいくつかあるようで、いろんなホテルの送迎車がならんでいる。わからなければ送迎車の運転手に「このホテルの車はどこ？」と、尋ねれば「あそこだよ」と指差しながら教えてくる。

ボレ国際空港 (ADD) 空港

アライバルホールのエチオピア航空の係員はターミナルを出て、左側の駐車場に止まってると言っていたが、見つからず、駐車場にとまっている他のトランスファーの運転手に尋ね、ようやく見つけることができた。トランスファーは左側ではなく右端だった。どおりで見つからないはずだ。

ある程度の、人数を乗せると出発した。
朝のアディスアベバの気温は2度。めちゃ寒い。ジャンパーを事前に用意していてよかった。

エチオピア航空からは無作為に選ばれてあてがわれるので、いったい何処に連れていかれるのかわからない。とはいえ、観光するならホテルからタクシーをチャーターすればとりだてた問題ない。

アディスアベバは人口約330万人が住む大都会。サハラ以南ではヨハネフブルク、ラゴス、ナイロビに次いで人口を抱える大都市だ。
またAU(アフリカ連合)の本部がアディスアベバに置かれ、いわば「アフリカの首都」でもある。

アディスアベバは建設ラッシュで沢山の建設途上の建物をみかけた。

今回一時的に休憩所として利用できるのが、このエチオピアホテル。幸い市内中心部に位置する。
ホテルには8時頃に到着した。とりあえず、チェックインする。チェックイン時に空港へ向かうトランスファーの時間を確認した。15時に出発するので、7時間ほど部屋の利用が可能だ。
ホテルは3つ星だが、ロビーは薄暗く古めかしさが漂う。

そして部屋はこんな感じ。暖房がなくて洒落にならんほど寒かった。まぁ無料で利用しとるんじゃケー仕方ないわな、と言い聞かせた。一応貴重品を入れることができる金庫があったので、金庫に手持ちの2/3を入れて朝食を食べに行くことに。

空港でバウチャーをもらったとき、「朝食まで付いて至れり尽くせりじゃん！」って思ったけど、朝食は殆ど冷めたもので、正直美味しいとは思えなかった。今まで人生でホテルの朝食が口に合わず食べれなかったことは殆どないが、94年から海外の旅をし始め、94年にロシアのハバロフスクのインツーリストホテルで食した朝食以来、久々に食べ残してしまった。。。
とはいえ、餅米のスープのようなのは意外とおいしくお代わりした。何れにせよ、見ため以上に強烈なインパクトだった。ただ、昼食はそれなりにおいしかった。

食事を食べた後、一時間だけでも横になっていようとシャワーを浴びてベッドに横になったが、あまりの寒さにジャンパーを着たまま毛布にくるまった。何とか保温できて横になれたが、夜中２時に出発するフライトで、夕べは殆ど寝ていなかったので眠くはあったが、寒くて寝てるどころではないので、一時間もたたないうちに外にでることに。

無料で利用しているホテルじゃケー文句は言えんけど、このホテルにはお金を払って迄泊まろうとは絶対におもわんわーー。

写真はホテルの部屋から見た眺め。

ホテルはFree WiFiだったが、これがまた接続が悪い。途切れながらGoogleマップで現在地を確認。ホテルはトラムの停留所もそんなに離れていなかったし、自分で町を回ろうと思えば回れたが、13時にはホテルに戻って昼食や休息を取りたかった。外をみると青色のタクシーは頻繁に走ってるし、ホテル前にはホテルと仲の良いタクシーが止まっていることも見越し、ホテルを出た。すると、直ぐにホテルのドアマンと親しげに話す人が声をかけてきた。

アディスアベバのタクシーは通常は青色のソビエト製のラーダがほとんど。しかし彼の車は白と黄色の二色カラーのトヨタ。値段交渉して彼の車に。四時間観光して100ドル。

早速車に乗り込んで観光を開始。アディスアベバは、キガリほどではないが、アップダウンがそれなりある。何せ大きな町なうえ、観光地が点在しているので足ロスが意外とある。

先ず向かったのは聖ギオルギス教会。アディスアベバを代表する教会の一つだ。

エチオピアは王政が倒され、軍事政権となったが、この時ソビエトに接近した。その名残で今でも多くのソ連製の車が走っているが、タクシーはラーダが多い。

St George's Cathedral(聖ギオルギス教会)、1896年に建立された教会。街の北側、坂道をのぼった丘の上に位置する。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

19世紀、ヨーロッパ諸国はアフリカ大陸を次々と植民地化していた。
アフリカではこの時、独立国として残されていたのはエチオピア帝国と、1847年にアメリカから奴隷化した黒人が帰還し建国したリベリアしかなかった。

しかしそのエチオピア帝国にもイタリア王国が触手をのばし、植民地化を目論んだ。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

1885年にイタリア王国はエチオピア帝国に侵攻し、エチオピア帝国の領土だったエリトリアに上陸した(エリトリア戦争)。結果、近代兵器を持ち、火力に勝るイタリアが勝利しエリトリアはイタリアの植民地となった。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

イタリアとエチオピアはその後の条約の解釈のこじれから、再び1895年に戦争となった。それが第一次エチオピア戦争だ。この時のエチオピア皇帝のメネリク2世はエリトリア戦争の敗北から学び、兵器をフランスから輸入して近代化をはかっていた。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

そして1896年のアドゥアの戦いでエチオピア軍はイタリア軍に決定的な勝利をおさめ、第一次エチオピア戦争ではエチオピア軍が勝利した。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

エチオピア帝国によるイタリアへの大勝利は、当時白人が黒人を隷属していた時代の唯一の大勝利で、黒人社会に希望をもたらせたのだと言う。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

イタリアへの大勝利を記念して建設したのがこの聖ギオルギス教会だ。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

エチオピア正教はヨーロッパ諸国のキリスト教よりもはるかに歴史があり、350年に国教とされた。これは301年に世界で最初に国教としたアルメニアに次ぎ、現存する国のキリスト教国としては世界で2番目の古い歴史を持つ。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

エチオピアにはイスラム教徒も多く人口の3割を超すムスリムを抱える。エチオピアでのエチオピア正教徒と、ムスリムの間には大きなわだかまりもなく、お互いを尊重しあっているので良好な関係なのだとか。エチオピア人の中にはカリフの一族に嫁いだ皇女もいることから、エチオピアはイスラム教国とも友好的なのだと言う(過激派的な思想のイスラム教とは一線引いている)。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

歴史あるエチオピアではあるがアディスアベバの歴史は浅く、1886年にメネリク2世により建設された。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

エチオピア最後の皇帝、ハイレ・セラシエ1世は、この聖ギオルギス教会で1930年に戴冠式を挙げた。その様子が描かれている。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

この日はちょうどエチオピア正教のクリスマスの前日(1月6日)。ちょうど明日に備えて聖歌の練習が行われていた。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

教会を歩いているときにタクシーの運転手はエチオピアと日本の繋がりを語ってくれた。
エチオピアの憲法は日本の憲法を規範に作られたこと、エチオピアの皇室と日本の皇室の間に縁談の話があったこと、そして第二次世界大戦の時エチオピアがイタリアに占領された時に欧米諸国は全て白人国家のイタリアに味方したのに、日本だけは唯一イタリアに強い非難の声明を出したこと。

多くのエチオピア人はこうした日本との繋がりをエチオピア史で学んでいるので知っており、多くのエチオピア人が日本に敬意を持っているのだと言われた。

元々高校生時代は日本史を勉強していたので、日本の歴史には自信があったが、エチオピアとの繋がりを何一つ知らなかった自分は、とても恥ずかしくも感じた。

聖ギオルギス大聖堂 寺院・教会

聖ギオルギス教会の前には第一次エチオピア戦争でイタリア軍に大勝利を導いた、皇帝のメネリク2世像が建つ。

メネリク広場 広場・公園

聖ギオルギス教会の次に向かったのが三位一体教会。丘の上にある聖ギオルギス教会からまっすぐ下る。

Meyazia 27 Square に建つArat Kiloアラットキロ。エチオピア歴でいえば5月27日を指すが、日常我々が使うグレゴリオ歴でいいば5月5日となる。
広場に建つモニュメントは、最後の皇帝、ハイレ・セラシエ1世が第二次世界大戦での、イタリアへの勝利(第二次エチオピア戦争)を記念して建設したもの。毎年この日にはこの場所で式典があるのだとか。

アラットキロ広場 広場・公園

1941年に建立された三位一体大教会。そのすぐ横に旧王宮で現在は官邸となっている建物のすぐ横に位置する。旧王宮の警備は非常に厳しく、写真撮影も厳禁だ。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

エチオピアが第二次世界大戦時に史上初めて一時的に他国(イタリア)に占領されたものの、それを打ち負かし独立を再び獲得した事を記念して建設された。教会の歴史は浅いが、エチオピアでは最も崇拝されている教会の一つだ。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

1896年にアフリカの国として白人国家に唯一の歴史的な勝利を挙げ、アフリカ内でリベリアと並び独立を維持したエチオピアは、その後近代化を計っていく一方で、第一次エチオピア戦争の大敗のリベンジに燃えるイタリアの魔の手が再び忍び寄ってくる。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

1896年にイタリアに対して決定的な勝利を挙げた皇帝、メネリク2世は1913年に逝去し、メネリク2世の縁者のイヤス5世が後継者となるが、彼は敬虔なイスラム教徒でエチオピア正教を抑圧したため、1916年にクーデターが起こり、メネリク2世の娘、ザウディトゥが女帝となった。彼女を支えたのが1974年にクーデターで殺されてしまう、最後の皇帝、ハイレ・セラシエ1世だ。彼は摂政兼皇太子として政治をすすめた。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

ハイレ・セラシエ1世はザウディトゥが1930年に逝去するまで彼女を支え続けた。エチオピアはイタリアを退けたものの、欧州列強の侵略に脅かされていたので、ハイレ・セラシエ1世はアメリカと日本に着目し接近した。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

当時日本は1905年に日露戦争でロシアに勝利し、エチオピア同様に、アジア諸国の中で初めて白人国家に勝利し、セラシエ1世も日本に共鳴していたことが考えられる。更に日本とエチオピアの皇室の歴史は世界で最も古い系統であることも、日本とエチオピアが接近した要因の一つだとも言われている。

エチオピアと日本は1927年、通商友好条約に調印している。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

1930年にハイレ・セラシエ1世が即位すると、エチオピアを近代化するため、1931年にエチオピア初の成文憲法を制定した。エチオピアの憲法は大日本帝国憲法を規範において作られたものだ。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

1930年代初頭にはエチオピア皇室に日本の皇室の輿入れの話も持ち上がるほど、両国は接近していた。しかしこの話はイタリアのムッソリーニが強く圧力をかけ、破談に終わる。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

エチオピアと日本は急速に接近していたが、エチオピアは1935年にイタリアによる侵攻を受け、占領された。1936年にはイタリアは毒ガスを使用し、大量殺戮を行うなど残虐を極めた。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

1936年、ハイレ・セラシエ1世は国際連盟で自ら演説し、イタリアを告発した。しかし列強の反応は鈍く、イタリアに対する制裁は形式的なもので、どこの国も腰をあげることはなかった。タクシーの運転手の話では、史上初めての黒人社会からの白人社会への告発に対し、白人中心の列強は「黒人国家だからどこも動かなかった」と多くのエチオピア人は認識し、欧米に失望したのだという。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

そんな失意の中、エチオピアを擁護しイタリアに対し厳しい非難を浴びせたのが日本だったのだそうだ。当時日本はドイツと防共協定を結んではいたものの、イタリアとは結んでおらず、中国の支配やエチオピアとの通商においてイタリアと対立していた背景があった。

写真は三位一体教会のステンドグラスだが、これはとても特徴的で、入って左側は旧約聖書の伝説が、右側が新約聖書の伝説が描かれている。こちらはアダムとイヴのシーンで旧約聖書だ。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

世界のどこの国もエチオピアの味方にならなかったが、日本だけがエチオピアの味方になったことがエチオピア人の希望となったそうだ。

写真のステンドグラスは右側の新約聖書。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

しかし翌年の1937年に日独伊三国防共協定が成立後、日本のエチオピアに対する擁護はトーンダウンした。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

三位一体教会には最後の皇帝セラシエ1世と皇妃が眠る棺。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

ハイレ・セラシエ1世家族は三位一体教会のミサに毎週参加し、皇帝と皇妃の椅子。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

皇帝の子供たちはここに座ってミサに参加していた。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

エチオピアではイタリア軍に対し、「黒い獅子たち」等によりレジスタンス運動が展開された。そしてイギリス軍もエチオピアでの戦いに加わり、1941年にようやくエチオピアは解放される。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

第二次世界大戦後も日本とエチオピアの関係は再び取り戻され、セラシエ1世はその後二度も訪日し、日本からは1960年に皇太子と美智子さまがエチオピアを訪問している。
しかしエチオピアはセラシエ1世による封建的な政治が続けられ経済は遅れ、エチオピアでは腐敗政治が進み、国民の不満が高まっていた。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

三位一体教会におかれたエチオピアの、伝統的な太鼓。和太鼓のような音がする。

ホーリー トリニティ大聖堂 寺院・教会

1970年代には大飢饉が発生し、餓死者が発生するほどだった。そして1974年に軍によるクーデターが発生し、セラシエ1世は廃位され、その直後に射殺された。その後軍はソビエトに近づき、ソ連の準衛星国となり、日本とエチオピアの関係は冷めていった。

1973年に生まれた自分自身のエチオピアの印象と言えば、1980年代にユニセフのＣＭでエチオピアの大飢饉の映像が流れ、お腹を空かせたような小さな子供たちの姿の印象が強烈で、今でもよく覚えている。
この時にはエチオピアがこれほど日本とのつながりが深く、歴史ある国だなんて知る由もない。

タクシーの運転手の話では、エチオピア人は自らを「黒い獅子」と呼ぶことがあるのだという。これはエチオピア王室のシンボルがライオンにあることによる事、そしてレジスタンスの「黒い獅子たち」の名から採っているのだろう。

三位一体教会に訪れた後、エントット山を目指す。エントット山はアディスアベバの郊外に位置する。ここもエチオピアにとって非常に重要な場所だ。

エチオピアではこうした日本とのつながりを歴史で学んでいるので、多くのエチオピア人が日本に対して敬意を払っているのだという。アディスアベバではわたしが日本人だと分ると、態度が一変しとても親近感を持って話をしてくるのもよく理解できた。

山から木材を運ぶロバ。ロバが運んでいるのはまだいろんな国でもよく見かけたが、更に驚かされたことがある。

ヤギと散歩。

女性たちが前かがみになりながら、山からこんなに多くの木材を一人で抱えて降りてきているのだ。こんな重労働を女性が担っているのには、衝撃を受けた。タクシーの運転手も彼女たちにはとても凄いと感嘆していた。彼女たちの旦那はいったいどうしているのか？たいてい市内の建築現場で働いていたり、出稼ぎでどこか別な国で働いているのだという。写真ではわかりにくいが、坂道のきつさはかなりのものだ。

過積載か！

エントット自然公園 広場・公園

エントット山に1876年に建設されたマリアム教会。この地はエチオピアにとって非常に重要な場所だ。

エントット マリアム教会 寺院・教会

メネリク2世はアディスアベバに都を遷都した時にはこの地に王宮をつくり居住した。いわばアディスアベバの歴史の原点が、この場所だ。

エントット マリアム教会 寺院・教会

マリアム教会の裏手に広がる旧王宮。メネリク2世はアディスアベバに遷都した後、現在も残るこれらの建物に居住した。

メネリク2世の宮殿 建造物

タクシーの運転手にはエントット山に訪れる前に旧王宮があると聞いていたのでどんなに華やかなものが残っているのかと、かなり期待していた。

メネリク2世の宮殿 建造物

しかし訪れてみるととても王宮とは思えないほど、貧しい民家のような建物が残り、その一部は孤児院としても利用されていた。

メネリク2世の宮殿 建造物

教会に埋葬された人たち。おそらくこの四角で囲った場所に遺体が安置されていくのだろう。

アディスアベバ最初の王宮に建つエチオピア十字。小さくて分かりにくいが、十字架の先が大きく膨らんでおり、とても特徴的で、ヨーロッパの十字架と大きく異なる。

メネリク2世の宮殿 建造物

宮殿内部。ここが何とダイニングルームだ。皇帝とはいえ、ヨーロッパや日本の皇室と比べるとはるかに質素な生活をしていたのだろう。

メネリク2世の宮殿 建造物

メネリク2世の寝室があった建物。エチオピアの元首がこんな建物に住んでいるのを目の当たりにすると、1896年にあのイタリア軍によく完勝したと思ってしまう。イタリアって戦争に弱いイメージが強かったが、なんかますますそう感じてしまった。

メネリク2世の宮殿 建造物

この建物は王宮の客室だ。日本の奈良時代の皇室の方がもっとよい建物に住んでいたのではないかと思ってしまう。これでも19世紀後半までは使用されていたのだ。

メネリク2世の宮殿 建造物

旧王宮の敷地内。そりゃ国家元首がこんなところに住んでいるところを見れば、イタリア軍も余裕で勝つことができると思ってしまうかもしれない。

メネリク2世の宮殿 建造物

王宮の敷地に残る建物。一部は20世紀に建てられたようなものがある。

エチオピアは紀元前1000年より前から続く世界で最も古い国であり、イスラム教のカリフの妻も輩出しており、エチオピア正教とイスラム教が融合した国だ。そしてアフリカで唯一独立を維持し、アフリカで史上初めて白人社会に大勝利を収めた国でもある。

エントット マリアム教会 寺院・教会

また、現在アフリカ連合（ＡＵ）の本部もアディスアベバにおかれ、エチオピアは「アフリカの首都」でもある。こうしたことをエチオピア人は大変誇りに思っており、これまで訪れたアフリカ諸国と比べると自国に対する思いがまったく異なる。

エントット マリアム教会 寺院・教会

エントット山の峠からエチオピア市内を望む。眺めはとてもよい。

エントット自然公園 広場・公園

2014年安倍首相はＡＵ本部でエチオピアの名前を何度も連呼し、エチオピアを意識したアフリカ政策のスピーチを行っている。こうした親日の国を日本も大切にしてほしい。

エントット自然公園 広場・公園

日本に帰国後、実家のある広島に帰省することがあり、母親にエチオピアでの事を話した。すると母親は祖母が親戚の娘に「エチオピアのお姫さんのような可愛い子じゃ。」とよく話をしていた事を聞いた。母親はなぜ祖母がエチオピアの事を知ってて、親戚のこどもに「エチオピアのお姫さん」とつけていたのか、ずっと不思議だったそうだが、祖母はこうしたエチオピアと日本との歴史的な関係の中でニュースか何かで情報を得て、そのように言っていたのだろうということが分かり、母親は数十年経過して一つの謎がとけたそうだ。

エントット自然公園 広場・公園

エントット山を下りホテルへ戻る。

エントット自然公園 広場・公園

かつてセラシエ1世大学と呼ばれていたが、現在はアディスアベバ大学と名前が変わった。

国立博物館。本当はここにも立ち寄る予定だったが、時間が過ぎてしまったため、残念ながら立ち寄ることができなかった。

エチオピア国立博物館 博物館・美術館・ギャラリー

市内中心部には多くの高層建築が立ち並ぶ

親ソ時代の名残のオベリスクだと思われる。

中国が作ったアフリカ連合ＡＵの建物。

AU本部ビル (アフリカ連合本部ビル) 建造物

13時過ぎに、エチオピアホテルに戻ってきた。タクシーの運転手にはたくさん教えてもらったのでチップを渡し、ホテルまで別れた。

ホテルに戻ったら昼食が用意されていた。朝食と比べずいぶん種類も豊富でフリッターなど美味しそうなものも多かった。
ところで朝食にあったものでとても気になるものがある。それは写真左端におかれた汚れたお手拭のようなもの。

最初は自分は汚れたお手拭が山盛りされているのかと思っていたが、実はクレープのような食べ物。どうしても美味しそうに見えず手を付けなかったが、せっかくなので昼食はとってみた。
味はとても酸っぱく、美味しいものではなかった。ただそのほかの料理はそれなりに食べることができた。

15時にホテルを出発し、トランスファーの車でアディスアベバ国際空港に戻ってきた。チェックインカウンターに行く必要もないので、直接出国審査に行き、そこでパスポートとボーディングパスを見せるだけ。「8時間ルール」を適用して入国した場合はパスポートにスタンプを押されることはない。

ボレ国際空港 (ADD) 空港

アディスアベバで驚くことは中国の進出が目覚ましい事。空港のイミグレにおいても中国人専用レーンのようなものがあるくらいだ。免税店にも中国が出した免税店もある。

ボレ国際空港 (ADD) 空港

空港が非常に残念なのは、プライオリティパスが使えないこともさることながらWiFiが利用できるエリアが限られているうえ、接続が非常に悪い。

ボレ国際空港 (ADD) 空港

空港は増築中だ。

ボレ国際空港 (ADD) 空港

エンテベ行きは滑走路に向け走り始めたが、何と途中で駐機場に引き返してきた。何とエンジントラブルで出発が遅れるとのこと。

結局1時間エンジンの整備をしたのちに出発しテイクオフ。エンジントラブルとアナウンスされると、フライトをとても怖く感じてしまう。。

眼下にアディスアベバ市内をおさめる。

左に旋回する時にまるで市内中心部に不時着するのではないかと思うほどよく見えた。

続いて右に旋回しエンテベへ向かう。

空港が市内から近い場所にあるので、離着陸の時には市内がとてもよく見えるので、アディスアベバから出発するときは窓側の席がおすすめ！

エチオピアを南下しウガンダへと向かう。

窓の外は不思議な光景が広がる。

すごい火山。火口ががっぽり開いている。

ウガンダのエンテベまでのフライトで配膳された、エチオピア航空の機内食。トマトソースベースのイタリア料理風の食事だったが、これが激マズ。久しぶりに完食することができなかった。

口直しにビールを飲む。

食後のコーヒー。見ての通りとても味が濃い。普段の生活では、自分は紅茶が主流だが、日本で飲むそこがうっすらと見えてしまうような薄いコーヒーよりもはるかに美味しい。こんなコーヒーなら毎日飲みたいわ。

この旅行記へのコメント （4）

• 砂布巾さん 2017/05/01 21:07:51

  Worldspanさん、本当にお久しぶりです

  　先日は「いいね！」ありがとうございました。
  　そしてアフリカでも変わらずエネルギッシュで探求心旺盛な旅をしていらっしゃる。歴史も自分よく調べておられますね。なにもかも羨ましい。
  
  　そうなんです。２泊４日の弾丸ながら、ベラルーシに行ってきました。２月から５日以内ビザ不要になったので、本当に助かりました。
  　以前の旅行記を読ませていただき、印象にも残っていました。（いいね！はしていませんでしたが）幸い昨年デノミがあったおかげで、札束の山は免れることが出来ました。
  　きっとまた広島にも帰られるのでしょう。
  　今後も素晴らしい旅行記、期待しています。

  worldspanさん からの返信 2017/05/02 17:11:23

  RE: Worldspanさん、本当にお久しぶりです

  こんにちはー。
  ベラルーシが5日以内の滞在がビザなしになってたなんて、衝撃的なおはなしですよね！昔のベラルーシを知っている自分にはかなりのショッキングな話です。5日もあればミンスク以外の町も回れるし。。。冬の旅はセネガルなどの西アフリカに照準を合わせようとしましたが、砂布巾さんの情報を聞くと、
  気持ちが揺らいでしまいます(笑)。ベラルーシに訪れたのは何せ22年前に乗り継ぎを利用した滞在のみ。再び行ってみたくなりました。
  worldspan

• ラムロールちゃんさん 2017/02/21 20:56:32

  エチオピアのお姫さん♪

  worldspanさん、こんばんは。
  
  エチオピアと日本とのこと、全然知りませんでした！
  そんな歴史があったとは。
  
  昔の日本人は気骨があったのですね。
  その後の流れは残念ですが…。
  
  …けど、歴史って、簡単に埋もれてしまうものなんだなと驚きです。
  こんなに日本人がエチオピアとのことを知らないなんて。
  縄文時代や弥生時代もいいですが、現在につながる歴史を教えてほしいな、なんて思いました。
  
  ラムロール

  worldspanさん からの返信 2017/02/21 23:24:16

  RE: エチオピアのお姫さん♪

  こんばんはー。
  エチオピアと日本の関係をエチオピア人に教えてもらった一方で自分は日本とエチオピアの関係を何一つ知っていないなんて、ホンマに恥ずかしい限りです。そんなことを言われると、もう一度行きたくなりますよね！
  ラムロールちゃんさんの言うとおり、もっと日本が世界に貢献してきたことを学校で教えるべきだと思いますよね！
  
  😃