1987/09/07 - 1990/05/05
542位(同エリア966件中)
みどくつさん
1988年9月12日、ザルツブルク中央駅を午前10時19分に出る、EC60「マリアテレジア」に乗った。
トーマスクック時刻表より、少し遅れて、同日午後5時にチューリッヒ中央駅に到着。
駅の観光案内所で相談して、1泊40スイスフラン(3400円)の「ホテルロータス(HOTEL ROTHUS)」を取ってもらう。
古いホテルだったが、こじんまりとして、いかにもヨーロッパ個人旅行をしているという雰囲気。
とても気に入ったが、バックパックを部屋において、すぐにチューリッヒ観光に出る。
チューリッヒ湖で白鳥を見て、またチューリッヒ駅へ歩いた。
歩きながら考えている。
オーストリア、スイスと、鉄道料金が非常に高い(涙)。
昼間の列車でも、ちょっと乗っていると、すぐに1万円かかる。
もちろん食費も宿泊費も安くはないしなー。
ただ、いまのところ、ある程度の金はある。
このチャンスに、一気に物価の高いヨーロッパの国々を回っておくのは、悪くない。
神が僕に与えた、一生に一度のチャンスだろうね。
イギリス、フランス、スペイン、イタリア、ブルガリア、ユーゴスロビア、ハンガリー、オーストリア、スイスと、すでに旅している。
これからは、ドイツから北欧へ旅したい。
それをやらないと、ヨーロッパに大きな空白を作ることになる。
もちろん、できるだけ安く旅をしたいもの。
こういうときに「ユーレイルパス(EURAILPASS)」があればなー(涙)。
この1988年ごろ、日本の学生諸君の旅先といえば、まずヨーロッパだった。
卒業前の2月、3月ともなれば、ヨーロッパ中が日本人学生で溢れていたものだ。
日本はバブルで、学生は前途にバラ色の未来を描くことができた。
まだ海外旅行が一般的ではなかったので、一度会社に勤めたら、長期のヨーロッパ旅行は考えられない。
そこで、ヨーロッパ旅行に来た日本人学生は、とにかくユーレイルパスを使って、移動しまくっていたんだよ。
僕もすでにヨーロッパ、アフリカを一年ほど旅を続けている。
旅の途中で出会った日本人の若者は、とんでもなく元気な旅をしていた。
この時代、ユーレイルパスで、パスで旅できる国全部に行った、というのはごく普通のこと。
中には、パスを使って、夜行列車で寝て、ヨーロッパ旅行中にホテルに泊まったことがない、などという話もあった。
もちろん、これが本当にホントなのかどうかは、わからない。
でも確かに、やろうと思えば、列車のコンパートメントで寝て、移動することは簡単なんだよ。
コンパートメントの座席は、座るところを引き出せば、ベッドになるように作られているしね。
例えば僕も、このあとプラハからニュルンベルクへの夜行列車のコンパートメントで、シートを引き出して、ゆったりと寝た。
このときは、オープンサロン式の客車は、人で一杯だった。
またもちろん、座席で座っているだけでも、、眠ることは可能だ。
だって、夜行バスで座ったまま寝ることも、よくある話なのだからね。
1980年代のヨーロッパは、日本人の元気のいい若い学生がたくさん旅をしていた。
ダイヤモンド社の「地球の歩き方」は、そういう卒業旅行の学生たちのためのガイドブックとして、学生の情報を集めて作られたのだから。
絶対に、ホテルに泊まらずに、全部列車で寝たなどという、ムチャな旅をした若者がいたことだろう。
ただ、その記録が残ってないってだけなんだろうが。
記録に残ってなくても、そういう若者がたくさんいたことを、僕は知っている。
実際、この時代の若者の旅行自慢というのは、「どれだけ列車に乗り続けたか」という定番ネタがあったわけだしね(笑)。
だから、逆に若者のユーレイルパス旅行について、批判的な意見も多かった。
僕自身も、(確かここチューリッヒ駅での出来事だと思うが)イギリスから列車にずーっと乗り続けでスイスにやってきた学生に、説教したことがあるんだから。
「ユーレイルパスで列車に乗っているだけでは、そんなものは旅ではないよ」ってね。
でも彼に会ったのが、「ドイツの鉄道パスを買おうかしら」と思った理由だったのかもしれないね。
チューリッヒ中央駅の窓口で、「ドイツレールパス」のことを相談する。
「スイスやドイツは鉄道料金が高いですから、大変です(涙)」と、窓口のスイス人美女と、話をする。
すると、「ユーレイルパスを買ったらいいと思うわ」と、思いがけないことを言われる。
「ヨーロッパに6か月以上滞在してなければ、買えるわよ」とのこと。
駅の窓口で、ドイツレールパスと、ユーレイルパスの、有効期間と料金を教えてもらった。
注意しておきますが、もちろんこれは、1988年9月12日のチューリッヒ鉄道駅の話です。
この時期の両替レートは、1スイスフランを85円と考えてます。
現在の料金は、ご自分で調べてください。
有効日数 ドイツレールパス料金(スイスフラン/円)
4日 140SF(11900円)
9日 210SF(17850円)
16日 285SF(24225円)
ユーレイルパス料金・2等(スイスフラン/円)
15日 470SF(39950円)
21日 580SF(49300円)
ウィーンからチューリッヒまで、昼間列車に乗っていただけで、一万円近くかかっている。
しかし、ユーレイルパスを買えば、たったの5万円で、3週間も列車が乗り放題だよ(笑)。
これは神の導きを感じずにはいられない。
神が「ユーレイルパスを用意しておいたから、これでヨーロッパ中を走り回れ!」と、僕に指し示しているわけだ。
心は決まった。
明日、ユーレイルパスを買って、走り出そう。
でも、今日はまだ、買わない。
なぜって、今夜、ものすごい美女と出会って、運命が大きく変わるかもしれないし。
パスを買うとしたら、明日から使い始めるというバリデーション(使用開始日の登録)もしてしまうことになる。
今日パスを買って、明日また、わざわざバリデーションをするなんて、面倒だからね。
「明日のことは、明日になってから考えればいい(世界旅行主義)」。
これが、すでに一年も旅を続けている僕の方針だ。
ホテルに歩いて戻る途中で、バーに入って、生ビールを頼む。
トルコ人男性が、「日本人か?」と、話しかけてきた。
この時代は、日本人というだけで、世界中で興味を持たれ、話しかけられる存在だった。
トルコ人も、「トルコ人も、日本人と同じ、サムライだ」と、親日的な話をしてくれた。
適当に話を切り上げて、考える。
ユーレイルパスが買えるのはわかったが、それをうまく使いこなせるかどうか、それは別の話だ。
神が僕をチューリッヒに呼び、チューリッヒ駅の美女が僕に「ユーレイルパスが買えますよ」とささやいた。
つまり、僕はユーレイルパスを使う運命があり、そこで、伝説を作る使命があるだろう。
その使命の重大さを考えると、体中に「選ばれしものの恍惚と不安」がみなぎる。
ベッドの横にひざまずいて祈った。
「神よ、私に力を与えてください」
こうして翌日から、「ユーレイルパスを使った21日間ヨーロッパ鉄道旅行」が、始まったわけだ。
- 旅行の満足度
- 5.0
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