チューリッヒ旅行記(ブログ) 一覧に戻る
<br /><br />1988年9月12日、ザルツブルク中央駅を午前10時19分に出る、EC60「マリアテレジア」に乗った。<br />トーマスクック時刻表より、少し遅れて、同日午後5時にチューリッヒ中央駅に到着。<br /><br />駅の観光案内所で相談して、1泊40スイスフラン(3400円)の「ホテルロータス(HOTEL ROTHUS)」を取ってもらう。<br /> 古いホテルだったが、こじんまりとして、いかにもヨーロッパ個人旅行をしているという雰囲気。<br /><br />とても気に入ったが、バックパックを部屋において、すぐにチューリッヒ観光に出る。<br />チューリッヒ湖で白鳥を見て、またチューリッヒ駅へ歩いた。<br /><br />歩きながら考えている。<br />オーストリア、スイスと、鉄道料金が非常に高い(涙)。<br /><br />昼間の列車でも、ちょっと乗っていると、すぐに1万円かかる。<br />もちろん食費も宿泊費も安くはないしなー。<br /><br />ただ、いまのところ、ある程度の金はある。<br />このチャンスに、一気に物価の高いヨーロッパの国々を回っておくのは、悪くない。<br /><br />神が僕に与えた、一生に一度のチャンスだろうね。<br />イギリス、フランス、スペイン、イタリア、ブルガリア、ユーゴスロビア、ハンガリー、オーストリア、スイスと、すでに旅している。<br /><br />これからは、ドイツから北欧へ旅したい。<br />それをやらないと、ヨーロッパに大きな空白を作ることになる。<br /><br />もちろん、できるだけ安く旅をしたいもの。<br />こういうときに「ユーレイルパス(EURAILPASS)」があればなー(涙)。<br /><br />この1988年ごろ、日本の学生諸君の旅先といえば、まずヨーロッパだった。<br /> 卒業前の2月、3月ともなれば、ヨーロッパ中が日本人学生で溢れていたものだ。<br /><br />日本はバブルで、学生は前途にバラ色の未来を描くことができた。<br />まだ海外旅行が一般的ではなかったので、一度会社に勤めたら、長期のヨーロッパ旅行は考えられない。<br /><br />そこで、ヨーロッパ旅行に来た日本人学生は、とにかくユーレイルパスを使って、移動しまくっていたんだよ。<br /> 僕もすでにヨーロッパ、アフリカを一年ほど旅を続けている。<br /><br />旅の途中で出会った日本人の若者は、とんでもなく元気な旅をしていた。<br />この時代、ユーレイルパスで、パスで旅できる国全部に行った、というのはごく普通のこと。<br /><br />中には、パスを使って、夜行列車で寝て、ヨーロッパ旅行中にホテルに泊まったことがない、などという話もあった。<br />もちろん、これが本当にホントなのかどうかは、わからない。<br /><br />でも確かに、やろうと思えば、列車のコンパートメントで寝て、移動することは簡単なんだよ。<br />コンパートメントの座席は、座るところを引き出せば、ベッドになるように作られているしね。<br /><br />例えば僕も、このあとプラハからニュルンベルクへの夜行列車のコンパートメントで、シートを引き出して、ゆったりと寝た。<br />このときは、オープンサロン式の客車は、人で一杯だった。<br /><br />またもちろん、座席で座っているだけでも、、眠ることは可能だ。<br />だって、夜行バスで座ったまま寝ることも、よくある話なのだからね。<br /><br />1980年代のヨーロッパは、日本人の元気のいい若い学生がたくさん旅をしていた。<br />ダイヤモンド社の「地球の歩き方」は、そういう卒業旅行の学生たちのためのガイドブックとして、学生の情報を集めて作られたのだから。<br /><br />絶対に、ホテルに泊まらずに、全部列車で寝たなどという、ムチャな旅をした若者がいたことだろう。<br />ただ、その記録が残ってないってだけなんだろうが。<br /><br />記録に残ってなくても、そういう若者がたくさんいたことを、僕は知っている。<br /> 実際、この時代の若者の旅行自慢というのは、「どれだけ列車に乗り続けたか」という定番ネタがあったわけだしね(笑)。<br /><br />だから、逆に若者のユーレイルパス旅行について、批判的な意見も多かった。<br /> 僕自身も、(確かここチューリッヒ駅での出来事だと思うが)イギリスから列車にずーっと乗り続けでスイスにやってきた学生に、説教したことがあるんだから。<br /><br />「ユーレイルパスで列車に乗っているだけでは、そんなものは旅ではないよ」ってね。<br />でも彼に会ったのが、「ドイツの鉄道パスを買おうかしら」と思った理由だったのかもしれないね。<br /><br />チューリッヒ中央駅の窓口で、「ドイツレールパス」のことを相談する。<br /> 「スイスやドイツは鉄道料金が高いですから、大変です(涙)」と、窓口のスイス人美女と、話をする。<br /><br />すると、「ユーレイルパスを買ったらいいと思うわ」と、思いがけないことを言われる。<br /> 「ヨーロッパに6か月以上滞在してなければ、買えるわよ」とのこと。<br /><br />駅の窓口で、ドイツレールパスと、ユーレイルパスの、有効期間と料金を教えてもらった。<br /> 注意しておきますが、もちろんこれは、1988年9月12日のチューリッヒ鉄道駅の話です。<br /><br />この時期の両替レートは、1スイスフランを85円と考えてます。<br /> 現在の料金は、ご自分で調べてください。<br /><br /><br /><br />有効日数 ドイツレールパス料金(スイスフラン/円) <br />4日 140SF(11900円)  <br />9日 210SF(17850円)<br />16日 285SF(24225円)  <br /><br />ユーレイルパス料金・2等(スイスフラン/円) <br /><br />15日  470SF(39950円) <br />21日  580SF(49300円) <br /><br />ウィーンからチューリッヒまで、昼間列車に乗っていただけで、一万円近くかかっている。<br />しかし、ユーレイルパスを買えば、たったの5万円で、3週間も列車が乗り放題だよ(笑)。<br /><br />これは神の導きを感じずにはいられない。<br /> 神が「ユーレイルパスを用意しておいたから、これでヨーロッパ中を走り回れ!」と、僕に指し示しているわけだ。<br /><br />心は決まった。<br /> 明日、ユーレイルパスを買って、走り出そう。<br /><br />でも、今日はまだ、買わない。<br />なぜって、今夜、ものすごい美女と出会って、運命が大きく変わるかもしれないし。<br /><br />パスを買うとしたら、明日から使い始めるというバリデーション(使用開始日の登録)もしてしまうことになる。<br /> 今日パスを買って、明日また、わざわざバリデーションをするなんて、面倒だからね。<br /><br />「明日のことは、明日になってから考えればいい(世界旅行主義)」。<br />これが、すでに一年も旅を続けている僕の方針だ。<br /><br />ホテルに歩いて戻る途中で、バーに入って、生ビールを頼む。<br />トルコ人男性が、「日本人か?」と、話しかけてきた。<br /><br />この時代は、日本人というだけで、世界中で興味を持たれ、話しかけられる存在だった。<br />トルコ人も、「トルコ人も、日本人と同じ、サムライだ」と、親日的な話をしてくれた。<br /><br />適当に話を切り上げて、考える。<br />ユーレイルパスが買えるのはわかったが、それをうまく使いこなせるかどうか、それは別の話だ。<br /><br />神が僕をチューリッヒに呼び、チューリッヒ駅の美女が僕に「ユーレイルパスが買えますよ」とささやいた。<br />つまり、僕はユーレイルパスを使う運命があり、そこで、伝説を作る使命があるだろう。<br /><br />その使命の重大さを考えると、体中に「選ばれしものの恍惚と不安」がみなぎる。<br />ベッドの横にひざまずいて祈った。<br /><br />「神よ、私に力を与えてください」<br /><br />こうして翌日から、「ユーレイルパスを使った21日間ヨーロッパ鉄道旅行」が、始まったわけだ。<br /><br /><br /> <br /><br /><br /><br />

『チューリッヒ駅で、きれいな女性と相談して、ユーレイルパスを買おうと心に決めるが、まだ買わない』@チューリッヒ/スイス

6いいね!

1987/09/07 - 1990/05/05

542位(同エリア966件中)

0

0

みどくつ

みどくつさん



1988年9月12日、ザルツブルク中央駅を午前10時19分に出る、EC60「マリアテレジア」に乗った。
トーマスクック時刻表より、少し遅れて、同日午後5時にチューリッヒ中央駅に到着。

駅の観光案内所で相談して、1泊40スイスフラン(3400円)の「ホテルロータス(HOTEL ROTHUS)」を取ってもらう。
古いホテルだったが、こじんまりとして、いかにもヨーロッパ個人旅行をしているという雰囲気。

とても気に入ったが、バックパックを部屋において、すぐにチューリッヒ観光に出る。
チューリッヒ湖で白鳥を見て、またチューリッヒ駅へ歩いた。

歩きながら考えている。
オーストリア、スイスと、鉄道料金が非常に高い(涙)。

昼間の列車でも、ちょっと乗っていると、すぐに1万円かかる。
もちろん食費も宿泊費も安くはないしなー。

ただ、いまのところ、ある程度の金はある。
このチャンスに、一気に物価の高いヨーロッパの国々を回っておくのは、悪くない。

神が僕に与えた、一生に一度のチャンスだろうね。
イギリス、フランス、スペイン、イタリア、ブルガリア、ユーゴスロビア、ハンガリー、オーストリア、スイスと、すでに旅している。

これからは、ドイツから北欧へ旅したい。
それをやらないと、ヨーロッパに大きな空白を作ることになる。

もちろん、できるだけ安く旅をしたいもの。
こういうときに「ユーレイルパス(EURAILPASS)」があればなー(涙)。

この1988年ごろ、日本の学生諸君の旅先といえば、まずヨーロッパだった。
卒業前の2月、3月ともなれば、ヨーロッパ中が日本人学生で溢れていたものだ。

日本はバブルで、学生は前途にバラ色の未来を描くことができた。
まだ海外旅行が一般的ではなかったので、一度会社に勤めたら、長期のヨーロッパ旅行は考えられない。

そこで、ヨーロッパ旅行に来た日本人学生は、とにかくユーレイルパスを使って、移動しまくっていたんだよ。
僕もすでにヨーロッパ、アフリカを一年ほど旅を続けている。

旅の途中で出会った日本人の若者は、とんでもなく元気な旅をしていた。
この時代、ユーレイルパスで、パスで旅できる国全部に行った、というのはごく普通のこと。

中には、パスを使って、夜行列車で寝て、ヨーロッパ旅行中にホテルに泊まったことがない、などという話もあった。
もちろん、これが本当にホントなのかどうかは、わからない。

でも確かに、やろうと思えば、列車のコンパートメントで寝て、移動することは簡単なんだよ。
コンパートメントの座席は、座るところを引き出せば、ベッドになるように作られているしね。

例えば僕も、このあとプラハからニュルンベルクへの夜行列車のコンパートメントで、シートを引き出して、ゆったりと寝た。
このときは、オープンサロン式の客車は、人で一杯だった。

またもちろん、座席で座っているだけでも、、眠ることは可能だ。
だって、夜行バスで座ったまま寝ることも、よくある話なのだからね。

1980年代のヨーロッパは、日本人の元気のいい若い学生がたくさん旅をしていた。
ダイヤモンド社の「地球の歩き方」は、そういう卒業旅行の学生たちのためのガイドブックとして、学生の情報を集めて作られたのだから。

絶対に、ホテルに泊まらずに、全部列車で寝たなどという、ムチャな旅をした若者がいたことだろう。
ただ、その記録が残ってないってだけなんだろうが。

記録に残ってなくても、そういう若者がたくさんいたことを、僕は知っている。
実際、この時代の若者の旅行自慢というのは、「どれだけ列車に乗り続けたか」という定番ネタがあったわけだしね(笑)。

だから、逆に若者のユーレイルパス旅行について、批判的な意見も多かった。
僕自身も、(確かここチューリッヒ駅での出来事だと思うが)イギリスから列車にずーっと乗り続けでスイスにやってきた学生に、説教したことがあるんだから。

「ユーレイルパスで列車に乗っているだけでは、そんなものは旅ではないよ」ってね。
でも彼に会ったのが、「ドイツの鉄道パスを買おうかしら」と思った理由だったのかもしれないね。

チューリッヒ中央駅の窓口で、「ドイツレールパス」のことを相談する。
「スイスやドイツは鉄道料金が高いですから、大変です(涙)」と、窓口のスイス人美女と、話をする。

すると、「ユーレイルパスを買ったらいいと思うわ」と、思いがけないことを言われる。
「ヨーロッパに6か月以上滞在してなければ、買えるわよ」とのこと。

駅の窓口で、ドイツレールパスと、ユーレイルパスの、有効期間と料金を教えてもらった。
注意しておきますが、もちろんこれは、1988年9月12日のチューリッヒ鉄道駅の話です。

この時期の両替レートは、1スイスフランを85円と考えてます。
現在の料金は、ご自分で調べてください。



有効日数 ドイツレールパス料金(スイスフラン/円)
4日 140SF(11900円)
9日 210SF(17850円)
16日 285SF(24225円)

ユーレイルパス料金・2等(スイスフラン/円)

15日 470SF(39950円)
21日 580SF(49300円)

ウィーンからチューリッヒまで、昼間列車に乗っていただけで、一万円近くかかっている。
しかし、ユーレイルパスを買えば、たったの5万円で、3週間も列車が乗り放題だよ(笑)。

これは神の導きを感じずにはいられない。
神が「ユーレイルパスを用意しておいたから、これでヨーロッパ中を走り回れ!」と、僕に指し示しているわけだ。

心は決まった。
明日、ユーレイルパスを買って、走り出そう。

でも、今日はまだ、買わない。
なぜって、今夜、ものすごい美女と出会って、運命が大きく変わるかもしれないし。

パスを買うとしたら、明日から使い始めるというバリデーション(使用開始日の登録)もしてしまうことになる。
今日パスを買って、明日また、わざわざバリデーションをするなんて、面倒だからね。

「明日のことは、明日になってから考えればいい(世界旅行主義)」。
これが、すでに一年も旅を続けている僕の方針だ。

ホテルに歩いて戻る途中で、バーに入って、生ビールを頼む。
トルコ人男性が、「日本人か?」と、話しかけてきた。

この時代は、日本人というだけで、世界中で興味を持たれ、話しかけられる存在だった。
トルコ人も、「トルコ人も、日本人と同じ、サムライだ」と、親日的な話をしてくれた。

適当に話を切り上げて、考える。
ユーレイルパスが買えるのはわかったが、それをうまく使いこなせるかどうか、それは別の話だ。

神が僕をチューリッヒに呼び、チューリッヒ駅の美女が僕に「ユーレイルパスが買えますよ」とささやいた。
つまり、僕はユーレイルパスを使う運命があり、そこで、伝説を作る使命があるだろう。

その使命の重大さを考えると、体中に「選ばれしものの恍惚と不安」がみなぎる。
ベッドの横にひざまずいて祈った。

「神よ、私に力を与えてください」

こうして翌日から、「ユーレイルパスを使った21日間ヨーロッパ鉄道旅行」が、始まったわけだ。






旅行の満足度
5.0

PR

この旅行記のタグ

6いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

みどくつさんの関連旅行記

みどくつさんの旅行記一覧

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

スイスで使うWi-Fiはレンタルしましたか?

フォートラベル GLOBAL WiFiなら
スイス最安 437円/日~

  • 空港で受取・返却可能
  • お得なポイントがたまる

スイスの料金プランを見る

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

タグから海外旅行記(ブログ)を探す

PAGE TOP