2015/05/03 - 2015/05/04
1位(同エリア663件中)
エンリケさん
2015年GWのドイツ・アイルランド旅行2日目後半。
乗継地の南ドイツ・ミュンヘンの観光を終え、いよいよアイルランド初上陸。
2時間半のフライトの後、降り立ったアイルランドの首都ダブリンの地は、雨降りだったミュンヘンとは打って変わって晴天。
市内中心部、テンプル・バーの地元料理のレストランではお決まりのギネスビールを味わい、翌日からは本格的にアイルランドの観光開始。
5月のさわやかな気候の中、まずは聖パトリック大聖堂やトリニティ・カレッジなど、英国統治時代の足跡が残る首都ダブリンの街歩きを楽しんでいきます。
<旅程表>
2015年
5月 2日(土) 羽田→ミュンヘン
○5月 3日(日) ミュンヘン→ダブリン
○5月 4日(月) ダブリン→ゴールウェイ
5月 5日(火) ゴールウェイ→アラン諸島(イニシュモア島)→ゴールウェイ
5月 6日(水) ゴールウェイ→アーウィーの洞窟→モハーの断崖→ドゥーラン
→ダンゴーラ城→ゴールウェイ→ダブリン
5月 7日(木) ダブリン→キルケニー→ウィックロウ峠→グレンダーロッホ
→ダブリン
5月 8日(金) ダブリン
5月 9日(土) ダブリン→フランクフルト・アム・マイン→
5月10日(日) →成田
- 旅行の満足度
- 3.0
- 観光
- 3.0
- ホテル
- 3.0
- グルメ
- 3.0
- 交通
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 20万円 - 25万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 徒歩 飛行機
- 航空会社
- ルフトハンザドイツ航空 ANA
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
5月3日(日)
南ドイツ、ミュンヘン。
正午過ぎ、アルテ・ピナコテークでの絵画観賞を終え、次の目的地ダブリンに発つべく、荷物をピックアップしにホテルに戻ります。
美術館の外は相変わらず雨・・・。
これまでは旅の季節の選択がよかったからか、ヨーロッパの旅で朝から雨に降られたことなんて一度もなかったのになあ。 -
ホテルに戻り荷物をピックアップ後、ミュンヘン中央駅で12時43分発のSバーン(S1)に乗車。
切符は自動券売機で購入しましたが(10.8ユーロ=約1,510円)、空港駅と違い、クレジットカードは認識されず使えませんでした・・・。
乗車中は車窓に広がる一面の菜の花畑を眺めたりしながらぼけーっと過ごし・・・。
【菜の花が満開、ドイツ南部(2015年5月10日AFPBB)】
http://www.afpbb.com/articles/-/3047979 -
13時30分、約45分でミュンヘン郊外のフランツ・ヨーゼフ・シュトラウス空港に到着。
ダブリンの便へのチェックインは、前日のミュンヘン到着時にルフトハンザの自動チェックイン機で済ませていたので、後は出発までのんびりと過ごします。 -
そして15時30分、ダブリン行きルフトハンザLH2514便は、定刻通りミュンヘンのフランツ・ヨーゼフ・シュトラウス空港を離陸。
ダブリンまでは2時間半ほどの飛行時間ですが、離陸後30分ほどすると、簡単な機内食が提供されます。
ビールを頼むと瓶で出てくるのがドイツの航空会社らしいところ(笑)。 -
離陸後1時間半ほどすると、眼下に陸地が見えてきました。
イギリス(大ブリテン島)の東岸でしょうか。
ヨーロッパ大陸のさらに先を飛んでいると思うとワクワクしますね。 -
そして16時50分(ドイツとの時差マイナス1時間)、定刻より若干早く、LH2514便はダブリン空港に到着。
天候はずっと雨が降り続いていたミュンヘンとは打って変わって、多少雲はありますが、全体的に青空が広がるいい天気。
窓の外にはこれまで見たことのない緑のアイルランドカラーの機体(アイルランドのフラッグキャリアのAer Lingus)が駐留していて、ヨーロッパの他の国とは違う異国の雰囲気を感じさせます。ダブリン空港 (DUB) 空港
-
入国審査では、ヨーロッパの乗継先ではこれまた珍しい大型のスタンプ(やはり緑色)をなぜかパスポートのいちばん後ろのページに押してもらい、建物の外へ。
アイルランドがシェンゲン協定(欧州の国家間において国境審査なしに国境を越えられる協定)非加盟だったことをこのとき初めて知りました・・・。
そういえばミュンヘンでも出国のスタンプを押されて不思議に思っていたっけ。
建物を出たところにはベルファストやゴールウェイ行きなどバス乗り場がたくさんあって、どれに乗ればよいのか迷いましたが、係員から、ダブリンの中心部行きのバスは建物を出てすぐ左にいったところだと教えてもらいます。
そんなこんなで時間を費やしてしまい、17時30分、ダブリン中心部行き2階建てバスのエアリンク(やはり緑色・・・)に乗り込み(切符は自動券売機(現金のみ)で片道6ユーロ=約840円)、ようやく空港を出発です。 -
エアリンクは市内中心部のリフィ川南岸を目指してダブリンの街を南下していきます。
ちなみに席は2階の最前列。
眺めが良くてダブリンの街の概観がつかめますね。 -
20分を過ぎ、ダブリンの中心部に近くなってきました。
こちらは運河にハープの形のオシャレな橋が架かるきれいな街並みです。 -
こちらは赤レンガの四角い建物が並ぶエリア。
ヨーロッパの他の国の街とは微妙に違う感じですね。 -
18時、リフィ川周辺の中心部にやってきました。
歩行者が多く、賑やかな感じですね。
ちなみにこの大通りの名はオコンネル通り(O'Connell St.)。
英国への併合(1801-1922年)下のアイルランドでカトリック教徒に対する差別撤廃を求める大衆運動を展開した活動家、ダニエル・オコンネル(1775-1847年)からとられています。 -
このリフィ川に架かるオコンネル橋を越えたところにあるのがアイルランドの最高学府、トリニティ・カレッジ。
18時5分、トリニティ・カレッジ前の停留所で降り、リフィ川南岸の再開発地区、テンプル・バーに予約しておいた宿を目指します。
ちなみに空港からトリニティ・カレッジまでは特段の交通渋滞もなく、約35分の所要時間でした。 -
この日の宿はトリニティ・カレッジから5分ほど、テンプル・バーの西の端、グラッタン橋(Grattan Bridge)の袂にある“ブリッジ・ハウス・ダブリン”(Bridge House Dublin)。
エクスペディアで予約した1泊45USD(約5,500円、税9%込み、朝食なし)ほどの宿で、日曜の夜だからか、ホテル代が異様に高いダブリンにしては珍しく安く泊まれました。
場所は非常に分かりづらく、グラッタン橋から見てすぐ右側にある建物群のうち、ピッツェリア&レストラン(1階の赤い部分)の向かって右側に2階のホテルへと続く小さな入口があります(エクスペディアや4トラベルの地図は間違っているので注意)。ダブリンのテンプル・バーの西の端に位置する比較的廉価な宿 ブリッジ・ハウス・ダブリン by エンリケさんBridge House ホテル
-
2階にあるレセプションでチェックインを済ませ(受付はやはり学生のアルバイトのような感じ)、さらに上階にある部屋へ案内されます。
部屋はミュンヘンの宿よりも一回り狭い感じですが、この値段でテレビ付きの個室に泊まれるのは、後々の経験(いずれ旅行記で)を考えるとかなりオトクに思えます。 -
トイレ、シャワールームはこんな感じ。
シャワーは温かくなるまでに時間がかかりますが、それほど不便はありません。
マットには日本語の漢字が書かれていて、親日的な様子(笑)。
ただし、アメニティグッズはハンドソープしかないので、石鹸やシャンプー類は持参が必要です(受付に言えばもらえたかもしれませんが)。 -
19時、もう遅い時間ですが、緯度の高いアイルランドはまだまだ明るいので、夕食前の街歩きへ。
テンプル・バーの南にある大通りは、人や車がたくさん行き交っていて賑やかな感じです。
走っている車の車種を見ると、ヨーロッパにしては意外にもベンツやBMWなどのドイツ勢が少なく、トヨタや日産などの日本勢が多い様子。
通りに面している建物は四角いかたちのものが多く、屋上にこれまた四角い煙突がちょこんと出ているのがアイルランドらしいところ。 -
こちらもアイルランドらしい四角い赤レンガの街並み。
-
19時20分、大通りの南にある、とんがり帽子のような尖塔が印象的な聖パトリック大聖堂へやってきました。
大聖堂の手前は公園になっていて、市民が夕暮れ前の平和なひとときを楽しんでいます。
ただ、大聖堂自体はすでに閉館になっていて、入口は堅く扉を閉ざしていたので、また翌日に見学に来ることにしてそそくさとこの場を後にします。 -
大通りに戻ったところにあったのは、一見教会と間違えてしまいそうな壮麗な石造りの建物のダブリニア。
こちらは人形や模型を使ってダブリンの歴史を紹介するテーマパーク型の博物館になっており、やはり閉館時間を過ぎていたので、写真だけ撮ってこの場を去ることにします。 -
19時40分、いよいよ暗くなり始めてきて、大通りは夜を楽しむ人々で賑やかになってきた感じです。
・・・しかし、ドイツもそうでしたが女性は皆ジーンズなどのパンツ姿でスカートの方は一人もいませんね。
欧米人から見れば熱帯でもないのに簡単に肌を露出する日本(や韓国)は異様なのかもしれませんね。 -
そろそろわたしも夕食をと思い、テンプル・バー方面の横道に入って、“オーシェイズ”(O'Shea's)という“地球の歩き方”にも載っているアイルランド料理の店に入ることにしました。
ギネスが飲めるダブリン、テンプル・バー地区のアイルランド料理店 オーシェイズ by エンリケさんオシェイズ 地元の料理
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アイルランドの伝統料理は流行りではないせいか、通りを行く人に比して店内に客は少なく、応対に出てきた若い男性店員に、東洋人の一人客でも拒まれずに奥の席へ案内してもらえました。
店内には懐かしいビートルズの曲がかかっていて、いかにも観光客向けの店という感じ・・・。 -
席に着いてまず頼んだのは、当然ながらギネスビール(5.95ユーロ=約830円)。
“アイルランドに行ってギネスビールを飲む”というのがこの旅の目的のひとつだったので、まずは1ミッション達成。
パイントグラスになみなみと注がれた状態で出てきた日本でもおなじみのこの飲み物は、現地の空気の中で飲むとまた格別の美味しさ。
日本で飲むとだんだん苦くなって途中で飽きてしまうのに、現地で飲むと不思議と最後までぐびぐびいけますね(笑)。
これが旅のパワー。 -
メインはシェフのおすすめということで、サーロインステーキを(15ユーロ=約2,100円)。
有名なアイリッシュビーフの味を期待していましたが、食べてみたところそれほどでもなく、肉はちょっと固くて最後は飽きてしまいました・・・。
これなら日本の牛の肉の方が美味しいかも。
アイルランドで食べるなら肉より魚の方がいいかな?
・・・そんなこんなで多少悔いの残った夕食を終え、20時30分、すっかり暗くなった通りに出てみると、突然のどしゃぶりの雨。
駆け足で急いでホテルに戻り、この日はこれで終了。
早めに休んで翌日のダブリン観光&西海岸のゴールウェイへの移動に備えます。 -
5月4日(月)
起床後の7時30分、宿の周辺を散歩に出かけます。
まずはテンプル・バー地区の北側を西から東に向かって流れるリフィ川沿いを散策。
上空には前夜の雨が嘘のような気持ちのいい青空が広がります。 -
グラッタン橋の上からリフィ川を西に向かってパチリ。
このダブリンも、規模は小さいですがロンドンやパリのように市街地の真ん中を川が貫いていて、人々に安らぎの空間を提供していますね。 -
前夜は賑やかだったテンプル・バー地区は、朝7時台は人影もなく寂しい感じ。
“テンプル・バー”(Temple Bar)とは、“テンプル”があの英国国教会の創始者、イングランド王(兼アイルランド王)ヘンリー8世の修道院解散令(1540年)を受け、ここにあった修道院を解散してこの地を所有した英国人貴族の名前で、“バー”が土砂の堆積地を表す言葉。
1707年に税関が置かれたことに伴い、この地には倉庫や商店、宿が立ち並び、アイルランド経済の中心地として目覚ましい発展を遂げますが、1791年にリフィ川北岸へ税関が移転してしまうと倉庫や商店は閉鎖。この地は活気を失い、徐々にスラム街へと変わっていきます。
そんな寂れた状態が20世紀半ばまで続いた後、この地を買収した交通公社が開発までの間、建物を安く賃貸したことで、小さな店や芸術家たちが次々と入居。
街は次第に活気づき、1990年代には再開発計画が進んでテンプル・バーはダブリンでも最先端のカルチャーエリアに変貌・・・というのがガイドブックなどに書かれているこの地区の解説なのですが、“最先端”とは言い過ぎで、今でも場所によっては空き家が目立って寂れている気がしなくもない感じ。
アイルランドは2008年のリーマン・ショックで不動産バブルが崩壊し、銀行が国有化されるなどの大打撃を受けたそうですが、この地区の現況がそれを物語っているのでしょうかね。 -
朝7時台のテンプル・バー地区の南の大通りの様子。
まだ出勤前だからか、人も車もほとんど見かけませんね。 -
交差点の配電盤のケースにはビートルズのアートが(ビートルズのメンバーのうち、リンゴを除く3人はアイルランド系と言われています。)。
こんなアート(ちと古いか・・・)が“時代の最先端をいく”というテンプル・バー地区のあちこちにあるかと思ったら、そうでもありませんでした・・・。
ダブリンにはやはりそういうイメージがあっただけに、期待外れでちょっとがっかりなところも。
実際に、“学生が集う若者の街”というのは道行く人々を見ていて感じましたが、飲み屋の中などアンダーグラウンドなところで終わってしまっているような印象ですね。 -
8時30分、宿をチェックアウトし、レセプションに荷物を預け、夕方のゴールウェイ行きの列車が出るまでの間、ダブリンの観光名所を本格的に見て回ります。
まず訪れたのはテンプル・バー地区の西側、宿からすぐ近くのところにある“クライスト・チャーチ大聖堂”(Christ Church Cathedral)。
英国国教会(アングリカン・チャーチ)系のアイルランド国教会の大主教座で、もともとはカトリックの教会として1038年に建立された(最初は木造で1172年に石造の大聖堂として建替え)、ダブリンで最も古い教会建築となっています。
古い建築物ゆえか、塔は足場が組まれ、維持修復工事が行われている模様・・・。
開館時間は9時からのようで、ひとまず外観だけ眺めてこの場を去ることにします。クライスト チャーチ大聖堂 寺院・教会
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このクライスト・チャーチ大聖堂のすぐ隣に位置するのが、前日の夕方も通りから眺めたテーマパーク型の博物館“ダブリニア”。
こちらも開館時間は10時からのようなので、ひとまず先を進みます。ダブリニア 博物館・美術館・ギャラリー
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9時、クライスト・チャーチ大聖堂から南下し、こちらも前日の夕方に訪れた聖パトリック大聖堂へとやってきました。
とんがり帽子型の尖塔が朝日を浴びてまぶしいくらいに輝いていますね。
開館時間は9時からなので、ちょうど入れるかな・・・。聖パトリック大聖堂 寺院・教会
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聖パトリック大聖堂の入口にある案内板には英語とアイルランド語(ゲール語)両方の言語による解説が。
アイルランドと言うとヘンリー8世(アイルランド王としては在位:1541-47年)以降の英国統治により普及した英語使用が一般的で、民族固有のアイルランド語なんて、今となってはろくに読める人もいないのではと思っていましたが、民族主義の観点からアイルランド語は義務教育課程において必修となっており、公共の場では両言語の併記が進められているのだそうです。
2002年の国勢調査によると、アイルランド語の話者は約40%もいるとのことですが、日常的に話している人となると、コナート州などの西海岸の一部の地域に限られてくるとか。 -
入口で入場料を払い(6ユーロ=約840円)、聖パトリック大聖堂の中へ。
構造はよくあるヨーロッパの大聖堂のスタイルで、もはや感動はないなあ・・・。
床がアーガイル柄っぽい菱形模様なのが珍しいところ。
ちなみにこの日は月曜日ですが、開館時間直後から外国人観光客らしき人々が続々と入ってきました。
パンチ力のある観光スポットがこれといってないダブリンだけに、こんな欧米人にとっては当たり前の大聖堂でもそれなりの観光客が集まるのかもしれません・・・。 -
身廊の奥、大聖堂のいちばん東側には聖母礼拝堂(Lady Chapel)が。
ここは17世紀から19世紀初めにかけて、フランスからユグノー(カルヴァン派の新教徒)がカトリックに弾圧されてダブリンに逃れてきたときに、ユグノーのための礼拝所として貸し出されていたのだそうです。
・・・この聖パトリック大聖堂、アイルランドにカトリックを布教したこの国の守護聖人“聖パトリック”(387?-461年)の名を冠してはいますが、現在はカトリック(旧教)ではなくいわゆる新教の“アイルランド国教会”の大聖堂。
1191年に現在の石造りの大聖堂ができたときは当然ながらカトリックの大聖堂だったのですが、男子の産まれない妻キャサリンとの離婚問題に端を発したヘンリー8世のローマ・カトリックからの分離(1534年の英国国教会の設立)がきっかけで、この大聖堂もカトリックから英国国教会系のアイルランド国教会に宗旨を変えます。
アイルランド一と言われるこの大聖堂が、アイルランド人の大多数(約85%)を占めるカトリックのものではないとは・・・独立後も改められないほど英国統治の根は深かったということでしょうか。
ただただ驚きです。
アイルランドと英国との関係は、卑近な例でいえば韓国と日本との関係のようには単純に解析できないということでしょうか。 -
北翼廊(North transept)の壁には英国の国旗であるユニオンジャックが掲げられています。
これは英国陸軍のアイルランド連隊 (Irish Regiments) の旗で、この場所には第一次世界大戦で命を落とした5万人のアイルランド人兵士の名簿も展示されています。
日本のお隣の国だったら、公共的な空間でこんな展示はできないですよね。
両方とも旧宗主国に対して反感のある国ではあるけれども、戦勝国と敗戦国との違いや、被統治期間の長さにも関係するのかもしれませんね。 -
北翼廊のステンドグラスをズームアップ。
中央にいる青い衣服の人物は聖母マリアでしょうかね。 -
南翼廊には聖パトリックとされる彫像が。
新教と旧教の宗教対立で荒廃していたこの大聖堂の中から1833年に発見されたものだそうで、13世紀の大司教の格好をしていることから、その時代に作られたものと推測されています。
ただ、頭部は17世紀の作とのことで、やはり宗教対立で傷ついてしまったものを後の時代に修復したということなのでしょう。 -
入口近くの土産物屋(国教会らしいいかにも世俗的な大聖堂・・・)の近くには、こんな“ケルト十字”(*)の石版が。
*ラテン十字と十字の交差部分を囲む環からなるシンボル。かつてのケルト人の意匠が込められているとされる。
台座の銘を見ると“St. PATRICK'S WELL”と書かれており、どうやら聖パトリックが改宗者に洗礼を行っていた“聖なる泉”とされる井戸に被せる蓋の役割を果たしていた模様。
この大聖堂が現在の石造りのものに建て替えられる以前、800〜1100年ごろに作られた由緒あるもののようです。 -
以上で聖パトリック大聖堂の見学を終え、外に出ると10時。
アイルランドは天気が変わりやすいことで有名ですが、この時間帯はまだ崩れてはいない模様。
気持ちのよい青空の下、大聖堂の前に広がる緑の公園を通って次の目的地、トリニティ・カレッジへ。セント パトリックス パーク 国立公園
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前日も歩いたテンプル・バー地区の南側の大通りを真っ直ぐ東へ進めばトリニティ・カレッジ。
・・・とその前に、通り沿いにある緑の看板のインフォメーション(“地球の歩き方”は場所が間違っているので注意)で、ゴールウェイからダブリンに戻ってきた後の木曜日のグレンダーロッホ等を巡るバスツアーの予約。
本当は出発前にネットで予約をしたかったのだけれども、メンテナンス中なのかHPが表示されず、結局現地で申し込むことになりました(30ユーロ=約4,200円、カード払い可)。
【WILD ROVER TOUR】
http://www.wildrovertours.com/ -
そして10時30分、トリニティ・カレッジへ。
1592年にイングランド王兼アイルランド王のエリザベス1世(ヘンリー8世の娘)によって創設されたアイルランド最古の大学です。
“トリニティ”とは“三位一体”(父なる神、子なるキリスト、聖霊が一体であること)という意味で、アイルランドの守護聖人、聖パトリックが三つ葉のクローバーを使ってキリストの教えを説いたことに由来する・・・と思っていたら、オックスフォード大学やケンブリッジ大学、トロント大学などにもこの名前のカレッジがあるそうで、どうやらアイルランド固有のものではなく、英語圏で広く使われている名称のようです。
設立当初は当然ながら英国シンパの国教徒にしか入学が認められておらず、カトリック教徒に入学が認められたのは、フランス革命後の1793年になってからだそうです。
【Trinity College Dublin】
http://www.tcd.ie/トリニティー カレッジとケルズの書 史跡・遺跡
-
門をくぐると途中に学生のアルバイト(ボランティア?)らしき係員がいて、順番にツアーで案内するので少し待ってと指示されます。
入場料を払って(12ユーロ=約1,680円)言われたとおり待っていると、すぐに老若男女20人くらいが集まってきて(東洋人はわたしだけ)、学生による案内開始。
最初は中庭で立ち止まり、この大学についての説明が始まりますが、アイリッシュ・イングリッシュは滑らかすぎて、いわゆる“旅行英語”が専門のわたしにはちんぷんかんぷんでした(笑)。
よく“自分は英語しか知らないから英語圏じゃない国に行くのは不安だ”とかいう方がいらっしゃいますが、わたしにとっては英語圏の国々の方がしゃべりが早すぎてよく聴き取れないことの方が多いですね。 -
中庭の次はいよいよあの有名な“ケルズの書”(The Book of Kells)が展示されているオールド・ライブラリーに案内されるのかと思ったら、もうひとつ門をくぐった先のこんな歯車と球が合体したような奇妙なオブジェの前に来たところで解散。
どうやらツアーでは大学の概要だけ説明し、オールド・ライブラリーは個々人のペースで観賞してくださいということのようです。 -
ということで一人になって“ケルズの書”を収めるオールド・ライブラリーへ。
もう11時と昼近くなり、ちょっとした行列ができていましたが、列が進んで中に入ると、クネクネした迷路のような展示スペースが設置されていて、壁一面にはいくつもの拡大されたケルズの書の装飾が(すべて撮影禁止)。
“ケルズの書”とは、9世紀初め、ヴァイキングの襲来によりスコットランド西方のアイオナ島からダブリンの北西部に位置するケルズの地に避難してきた修道僧によって製作された4つの福音書(マタイ伝、マルコ伝、ルカ伝、ヨハネ伝)のこと。
挿絵などにケルト特有の渦巻き模様や人、動物などが描かれており、芸術的価値が高いことから、アイルランドの国宝となっているところです。
このオールド・ライブラリーでは本物の一枚一枚が展示されていてじかに見られるのかと思ったら、ほとんどの展示はそれらをパネルや映像にして拡大したもので、本物(らしきもの?)は展示スペースの一角に決まったページが開かれてささやかに置かれているだけでした・・・。
うーん、拡大されて見やすいのはいいのですが、“いわゆるニセモノ”をそんなたくさん見せられても・・・。
ちょっと期待外れだったかも。
それでも、欧米人の観光客たちは意外にもパネル展示を食い入るような目で真剣に見ているのが印象的でした・・・。
【Trinity College Dublin〜THE BOOK OF KELLS】
http://www.tcd.ie/visitors/book-of-kells/ -
首をかしげたくなるような展示の仕方に不満を覚えつつも、気を取り直して2階へ。
階段を昇った先には、ガイドブックにも掲載されている、アーチ状の天井の下、棚いっぱいに古書の並ぶ壮麗な図書館の姿が。
オールド・ライブラリーの建物の中でもメインの図書室であるこの部屋は、長さが65mにも及ぶその名も“ロングルーム”。
一見、地味な施設にも見えますが、知的好奇心いっぱいの観光客たちから見ればすごく興味を惹かれる空間で、皆熱心に展示されている図書や古書の棚、建物の構造などに見入っていました。
【Trinity College Dublin〜The Old Library and the Book of Kells】
https://www.tcd.ie/Library/bookofkells/ -
古書の収められている書棚の手前には、“プラトン”(Plato)などと刻まれているこんな白亜の彫像がズラリ。
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通路の中央に置かれているガラスケースの中にはオールド・ライブラリーの蔵書の中でもユニークな部類のものが展示されており、観光客たちは興味津津でそれらを眺めています。
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例えばこちらは“神話と児童文学”(Myth and Children's Literature)と題された展示図書。
左下にはなんと“漫画”が展示されていると思ったら、これは、このオールド・ライブラリーをモデルに“ジェダイ・アーカイヴ”の場面の撮影を行ったという、あの“スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃”の漫画版。
単にこの図書館をモデルとしたのみならず、スター・ウォーズ・シリーズは、監督のジョージ・ルーカスが神話学の専門家ジョセフ・キャンベルの英雄譚に影響を受けて製作されたというエピソードがあることから、“神話”の一形態としてこの場所に展示されているようです。
そのすぐ右隣には、メソポタミア文明の神話と言ってよい、紀元前2千年紀のバビロニア(現在のイラク南部)で書かれたという、“ウルクの王ギルガメシュの叙事詩”の現代語版(児童版?)がありますね。 -
しかし月曜日の午前中なのにこの“ロングルーム”には人が多い・・・。
一般の図書館のように市民の方もいくらか混ざっているのでしょうかね。 -
こちらはアイルランドの国章、はたまたギネスビールのロゴマーク(先の写真のビールのグラスにも描かれています。)ともなっている、現存するアイルランド最古のハープ、“ブライアン・ボル・ハープ”(Brian Boru Harp)。
ヤナギとオークの木(willow and oak)からできていて、15世紀に作られたものと言われています。
このハープの名前にもなっている“ブライアン・ボル”とは、イングランドの侵入前、10世紀後半から11世紀初めにかけてヴァイキングを撃退するなどの活躍が伝えられているアイルランドの王のこと。
ただ、この王は、ハープが製作される400年以上前の1014年に亡くなっていることから、イングランドに支配される前の時代を国の起源としたいアイルランド人の願望が“ブライアン・ボル王の持っていたハープ”という伝説を作りだしたものと推測されます。
なにやらどこぞの隣国のファンタジー歴史のようでもありますね・・・。 -
最後にこちらの古書は、“聖アンブロージオ(アンブロジウス)の六日物語(ヘキサメロン)”(St. Ambrose、Hexameron)。
塩野七生氏の“ローマ人の物語”にも登場する、その後の中世キリスト教の教義に大きな影響を与えたという第13代ミラノ大司教、聖アンブロージオ(338-397年)の著書で、天地創造の6日間の物語を記したもの。
書かれている言語はラテン語で、当然ながら原本ではなく、1446年のミラノ人の筆記者による写本。
それでも、15世紀に書かれたものが残っているのは原本でなくとも十分に貴重なもので、2008年のサザビーズのオークションでトリニティ・カレッジが落札したとの入手にいたる経緯が説明されていました。 -
・・・ということで、じっくり見ようと思えばハマってしまいそうなオールド・ライブラリーのロングルームをそろそろ後にします。
時刻はいつの間にか12時10分。
午後はアイルランド西海岸、コナート州のゴールウェイに発つ前に、ダブリンの名所をもうひと巡りしてきます!
(ドイツ・アイルランド旅行3日目後半〜引き続きダブリン観光に続く。)
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この旅行記へのコメント (7)
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- moonさん 2015/10/25 23:40:14
- こんばんわ。
- エンリケさんへ
moonと申します。
初めましてではないですが、掲示板に書き込みさせていただくのは初めてかも??
寒いけど、来年の4月にアイルランド一人旅をするので参考にさせてもらいます。
目的は本場でギネスビールを飲むことと、おのぼりさん観光です。
続きが出来上がりましたら、また読ませていただきます。
moonより
- エンリケさん からの返信 2015/11/03 17:49:36
- 本場で飲むギネスは格別です!
- moonさん
こんばんは。ダブリン旅行記にご訪問ありがとうございます。
これまでもmoonさんには何度がコメントをいただいていましたね。
またまたコメントいただきましてありがとうございます。
来年の4月にアイルランド一人旅ですか。
本場で飲むギネスはやっぱり美味しいですよ!
ビール好きならダブリンの中心部から少し西に行ったところにある“ギネス・ストアハウス”はおすすめです。
今回のアイルランド旅行記でもどこかで出てくるのでよかったらまたのぞいてみてください!
-
- kochanさん 2015/10/25 11:19:01
- 読みでがあり利巧になりました。
- 確かオックスフォードにトリニティ カレッジがあったはずだが、よく分かりました。
アイルランドは800年イギリスの植民地、お隣の国は35年。数年前アイルランド首相が初めてイギリスを公式訪問した際の発言、「過去を言ってもなんの益にもならない、共に将来に向かって進もう」民度がちがいますね!
イギリス、キャメロン首相の記者会見、記者が過去の植民地経営について質問、キャメロン首相「オレが生まれる前のことなんか知るものか!」
「私は英語しかできないから英語圏、、、」かなりの達人なのでしょう!英語圏でない国の人の英語のほうが分かりやすい。
世界の共通語はイングリッシュではなくブロークンイングリッシュ?
- エンリケさん からの返信 2015/11/03 17:36:23
- アイルランドを旅行しているといろいろと考えさせられます。
- kochanさん
こんばんは。ダブリン旅行記にご訪問ありがとうございます。
アイルランドを旅行していると、隣国に植民地支配された歴史から、どうしても我が国の隣国とも比較してしまいますね。
“言語も変えられてしまうほど長く支配された方が、短期間支配されるよりも恨みが小さい”というのはなんとも皮肉なものです。
世界のいろいろな国々を旅してみると、未だに70年から100年も前のことで散々いちゃもんをつけてくる我が国の隣国がなんだか馬鹿らしく思えてきますね。
- kochanさん からの返信 2015/11/03 19:51:52
- RE: アイルランドを旅行しているといろいろと考えさせられます。
- > kochanさん
>
> こんばんは。ダブリン旅行記にご訪問ありがとうございます。
>
> アイルランドを旅行していると、隣国に植民地支配された歴史から、どうしても我が国の隣国とも比較してしまいますね。
>
> “言語も変えられてしまうほど長く支配された方が、短期間支配されるよりも恨みが小さい”というのはなんとも皮肉なものです。
>
> 世界のいろいろな国々を旅してみると、未だに70年から100年も前のことで散々いちゃもんをつけてくる我が国の隣国がなんだか馬鹿らしく思えてきますね。
ご返事ありがとうございます。
アイルランドは少なからず興味があります。
飢え死にするかアメリカに移民するかの二者択一だったのですね。
タイタニック号は半分は移民船。
しかし彼らは新天地アメリカで力強く生きていると思います。
マクドナルド、マックドナルド、ドナルドの息子、マッカァサー、アーサーの息子。
-
- 川岸 町子さん 2015/10/16 21:56:26
- 知的な雰囲気の街ですね!
- エンリケさん、おばんでした☆
ダブリンは、まず治安が良さそうな街ですね。
落ち着きがあって、整然としている雰囲気が伝わります。
街の中心に運河や川があり、生活に密接しているのでしょうか。
バスの2階席最前列からの眺めはさすがに良いですね(笑)
こちらまで同じ視線で待ちを眺めることができました。
通りを渡っている人々の姿を少し高い所から眺めるって、楽しそうです(^^♪
そして目を惹くのがオールドライブラリーです(@^▽^@)
アカデミックで、知的なイメージですね。
これほどの古書があるので、古本の匂いがするのでしょうか。
プラトンなどの彫刻が、さらに知的さを醸し出すようです。
ヨーロッパの人は、本が好きだなと、旅していて感じます。
おしゃれな書店が多いし
トルコには図書館の遺跡があるし
古本市もひらかれるし
読書が生活の一部なのかな?
さて、さすがのギネス、おいしそう〜(笑)
日本には様々な国のビールが売られているけど、やはりその国で飲むのが一番なんですね!(^^)!
これからもどんなビールが出てくるか楽しみです!
町子
- エンリケさん からの返信 2015/10/17 17:38:05
- ビールは旅を思い出深いものにしてくれますね。
- 川岸 町子さん
こんばんは。いつもご訪問ありがとうございます!
ダブリンの中心部は深夜でも女性が一人でぶらぶらしていたりして、非常に治安のいい街だと感じました。
英語を勉強したい女性や、一人旅をしたい女性にもおすすめしたい街なのですが、宿の値段が異様に高いのが難点ですね・・・。
> そして目を惹くのがオールドライブラリーです(@^▽^@)
> アカデミックで、知的なイメージですね。
おかげさまでフォートラベルのfacebookにも採用してもらえました(笑)。
> これほどの古書があるので、古本の匂いがするのでしょうか。
オールドライブラリーはそんなに古本臭い感じがしなかったですね。
日本と違って高温多湿の気候ではないので、古書の保存もしやすいのでしょう。
> ヨーロッパの人は、本が好きだなと、旅していて感じます。
最近日本では電車でも喫茶店でも若者は皆スマホをいじっていて、本を読んでいる人を見かけなくなりましたね。
これからどういう社会になってしまうのかなと少し不安に思うところもありますね。
> さて、さすがのギネス、おいしそう〜(笑)
> 日本には様々な国のビールが売られているけど、やはりその国で飲むのが一番なんですね!(^^)!
まさにそれが旅のいちばんの楽しみですね!
ラオスに行けばビアラオを飲み、スリランカに行けばライオンビールを飲む。これだけで旅の一日が思い出深いものになります(笑)。
あの司馬遼太郎も“愛蘭土紀行”の中で、
私はとくに酒が好きというわけではない。ただ旅先では、一日がおわると、一日の経験を酒に溶かしこんで飲んでおかねば、後日、わすれるような気がしてならない。
アイルランド特産ともいうべきギネスのビールはうまい。とくにミルク・コーヒー色の泡がやわらかくて、アイルランドの心にふれたような気がする。
とまで言っています。
本当に共感できる文章ですね。
> これからもどんなビールが出てくるか楽しみです!
いつか世界のビールだけを集めた旅行記をつくってみたいですね。
それまではもう少し、旅を続ける必要があるかな・・・。
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