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甲州街道(国道20号)大月から分かれ富士五湖に向かう富士道の中核は都留(つる)市で、沿道を走る富士急行線谷村(やむら)町駅から徒歩4分の山麓に戦国時代半独立的ながらも武田氏の一門衆として信玄・勝頼を支えた郡内の雄小山田氏別荘跡に徳川家康家臣である鳥居元忠(とりい・もとただ、1539~1600)開基の禅定山・長安寺(ちょうあんじ、山梨県都留市上谷)という浄土宗の寺院があります。<br /><br />戦国時代初期甲斐武田氏との戦いに明け暮れた後和議を結び武田氏に属するも小山田氏は半独立の郡内領主として谷村を本拠としていましたが、天正10年(1582)国主武田勝頼は織田・徳川連合軍に敗れ武田氏も小山田氏も滅亡に至ります。<br /><br />その後織田信長家臣である川尻秀隆(かわじり・ひでたか、1527?1582)が甲斐国の領主として支配しますが、本能寺の変で信長が明智光秀に倒されこれを機に川尻秀隆の求心力が低下し国侍一揆により殺されます。<br /><br />領主不在となった甲斐国を巡って小田原北条氏と徳川氏とによる覇権争いとなりますが天正壬午(てんしょうじんご)の乱後双方和解が成立し甲斐国は徳川氏の領有となり、郡内統治については甲斐攻略に著しく戦功を挙げた鳥居元忠に与えられ元忠は郡内の拠点である谷村に入部します。<br /><br />さて元忠が谷村に入部して3年目の天正13年(1585)かねてより浄土宗の信者であった元忠は布教の為当地を訪れた生誉感貞(せいよかんてい)和尚と対面し和尚の教えに深く心を打たれ帰依するところとなり、小山田氏別荘跡に寺院を建てて和尚を開山に据えた事で浄土宗寺院が誕生しこれが長安寺となります。<br /><br />天正18年(1590)豊臣秀吉は小田原北条氏攻略に着手、徳川家康を先鋒として出陣を命じ、元忠は小田原北条氏と隣接している郡内の領主で北条氏を知り尽くしている立場から徳川軍の中でも最先鋒を担い岩槻・津久井などで活躍し、ついに小田原北条氏の滅亡に伴い元忠の戦功により家康のみならず秀吉からも高い評価を得ます。<br /><br />小田原北条氏滅亡後の旧領は秀吉命によって徳川家康に与えられそれまでの甲斐を含む東海5ヶ国は放棄することになります。<br /><br />上記により甲斐郡内は豊臣領となり元忠は徳川領の下総矢作藩(現 千葉県香取市)へ領地替えで転出、その後は秀吉の信頼を得た大名が三代に亘り国中(甲府)に入府、郡内にはその家臣がそれぞれ領主(または城代)として支配することになります。<br /><br />慶長5年(1600)関ヶ原の戦い後甲斐国は再び徳川領となり、かつて郡内を支配していた元忠の三男成次(なりつぐ、1570~1631)が再び谷村藩1万8千石を以て入部し更に長男忠房が家督を継承するも徳川秀忠二男の忠長が改易されると忠房も連座により領地を没収され当領地はその後寛永10年(1633)上野国総社藩から秋元氏が谷村に入封してきます。<br /><br /><br />2022年11月16日追記<br /><br />本堂の近くに建てられた説明板には次のような紹介が記されています。<br /><br />『 山梨県指定有形文化財<br />     長 安 寺 本 堂<br /><br />           都留市上谷3丁目6番30号<br />           平成2年12月20日指定<br />           建造物第54号<br /><br />長安寺は、天正13年(1585)に創建され、開基は鳥居元忠、開山は生誉感貞和尚で、歴代領主庇護の名刹である。<br /><br />寺は、正保3年(1646)の火災で焼失し、現在の本堂は享保10年(1725)8月28日に建立されたもので、昭和58年に修復された。<br /><br />本堂は間口10間、奥行9間で、内陣と外陣は段差により明確に区分され、大きな丸柱、大斗、皿斗、肘木、雲肘木、雲斗、桁、頭貫、大虹はり、太瓶束、海老紅はり、木鼻、挿肘木など細工を施した小屋組みは、唐様寺院建築の基本様式を全て有し、欄間をはじめとする彫刻も大胆かつ優美で、当市の現存する寺院本堂中建立年月日が判明しているうち、最古、最大である。 また、県内においても屈指のものである。<br /><br />    平成5年3月<br />              山梨県教育委員会<br />              都留市教育委員会 』<br /><br /><br /><br /><br /><br />

甲斐都留 「天正壬午の乱」の功績により甲斐国郡内の代官を務める徳川家康家臣鳥居元忠が旧小山田氏別荘跡に建立開基の『長安寺』散歩

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2014/06/30 - 2014/06/30

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滝山氏照

滝山氏照さん

甲州街道(国道20号)大月から分かれ富士五湖に向かう富士道の中核は都留(つる)市で、沿道を走る富士急行線谷村(やむら)町駅から徒歩4分の山麓に戦国時代半独立的ながらも武田氏の一門衆として信玄・勝頼を支えた郡内の雄小山田氏別荘跡に徳川家康家臣である鳥居元忠(とりい・もとただ、1539~1600)開基の禅定山・長安寺(ちょうあんじ、山梨県都留市上谷)という浄土宗の寺院があります。

戦国時代初期甲斐武田氏との戦いに明け暮れた後和議を結び武田氏に属するも小山田氏は半独立の郡内領主として谷村を本拠としていましたが、天正10年(1582)国主武田勝頼は織田・徳川連合軍に敗れ武田氏も小山田氏も滅亡に至ります。

その後織田信長家臣である川尻秀隆(かわじり・ひでたか、1527?1582)が甲斐国の領主として支配しますが、本能寺の変で信長が明智光秀に倒されこれを機に川尻秀隆の求心力が低下し国侍一揆により殺されます。

領主不在となった甲斐国を巡って小田原北条氏と徳川氏とによる覇権争いとなりますが天正壬午(てんしょうじんご)の乱後双方和解が成立し甲斐国は徳川氏の領有となり、郡内統治については甲斐攻略に著しく戦功を挙げた鳥居元忠に与えられ元忠は郡内の拠点である谷村に入部します。

さて元忠が谷村に入部して3年目の天正13年(1585)かねてより浄土宗の信者であった元忠は布教の為当地を訪れた生誉感貞(せいよかんてい)和尚と対面し和尚の教えに深く心を打たれ帰依するところとなり、小山田氏別荘跡に寺院を建てて和尚を開山に据えた事で浄土宗寺院が誕生しこれが長安寺となります。

天正18年(1590)豊臣秀吉は小田原北条氏攻略に着手、徳川家康を先鋒として出陣を命じ、元忠は小田原北条氏と隣接している郡内の領主で北条氏を知り尽くしている立場から徳川軍の中でも最先鋒を担い岩槻・津久井などで活躍し、ついに小田原北条氏の滅亡に伴い元忠の戦功により家康のみならず秀吉からも高い評価を得ます。

小田原北条氏滅亡後の旧領は秀吉命によって徳川家康に与えられそれまでの甲斐を含む東海5ヶ国は放棄することになります。

上記により甲斐郡内は豊臣領となり元忠は徳川領の下総矢作藩(現 千葉県香取市)へ領地替えで転出、その後は秀吉の信頼を得た大名が三代に亘り国中(甲府)に入府、郡内にはその家臣がそれぞれ領主(または城代)として支配することになります。

慶長5年(1600)関ヶ原の戦い後甲斐国は再び徳川領となり、かつて郡内を支配していた元忠の三男成次(なりつぐ、1570~1631)が再び谷村藩1万8千石を以て入部し更に長男忠房が家督を継承するも徳川秀忠二男の忠長が改易されると忠房も連座により領地を没収され当領地はその後寛永10年(1633)上野国総社藩から秋元氏が谷村に入封してきます。


2022年11月16日追記

本堂の近くに建てられた説明板には次のような紹介が記されています。

『 山梨県指定有形文化財
     長 安 寺 本 堂

           都留市上谷3丁目6番30号
           平成2年12月20日指定
           建造物第54号

長安寺は、天正13年(1585)に創建され、開基は鳥居元忠、開山は生誉感貞和尚で、歴代領主庇護の名刹である。

寺は、正保3年(1646)の火災で焼失し、現在の本堂は享保10年(1725)8月28日に建立されたもので、昭和58年に修復された。

本堂は間口10間、奥行9間で、内陣と外陣は段差により明確に区分され、大きな丸柱、大斗、皿斗、肘木、雲肘木、雲斗、桁、頭貫、大虹はり、太瓶束、海老紅はり、木鼻、挿肘木など細工を施した小屋組みは、唐様寺院建築の基本様式を全て有し、欄間をはじめとする彫刻も大胆かつ優美で、当市の現存する寺院本堂中建立年月日が判明しているうち、最古、最大である。 また、県内においても屈指のものである。

    平成5年3月
              山梨県教育委員会
              都留市教育委員会 』





旅行の満足度
3.5
交通手段
JRローカル 徒歩
  • 富士急行線谷村(やむら)町駅舎<br /><br />

    富士急行線谷村(やむら)町駅舎

  • 谷村駅前周辺案内地図<br /><br />駅舎広場前に建っている周辺歴史地図には東山麓には南北に社寺仏閣が建立されているのが判ります。

    谷村駅前周辺案内地図

    駅舎広場前に建っている周辺歴史地図には東山麓には南北に社寺仏閣が建立されているのが判ります。

  • ミュージアム都留<br /><br />郷土歴史博物館ですが訪問時は月曜のため休館です。

    ミュージアム都留

    郷土歴史博物館ですが訪問時は月曜のため休館です。

  • 長安寺【県有形文化財】<br /><br />開基は家康家臣で鳥居元忠、甲斐が家康領となったため天正壬午の乱(小田原北条氏と徳川氏との戦い)で功績を認められ当地を支配します。<br /><br />

    長安寺【県有形文化財】

    開基は家康家臣で鳥居元忠、甲斐が家康領となったため天正壬午の乱(小田原北条氏と徳川氏との戦い)で功績を認められ当地を支配します。

  • 長安寺正門

    長安寺正門

  • 小山田氏別荘跡石標<br /><br />入口階段左側に「都留郡主小山田氏別荘跡」と刻された石標が建っています。<br />

    小山田氏別荘跡石標

    入口階段左側に「都留郡主小山田氏別荘跡」と刻された石標が建っています。

  • 長安寺・山門(唐仕様)<br /><br />上部に掲示された扁額には山号である「禅定山」と書かれています。

    長安寺・山門(唐仕様)

    上部に掲示された扁額には山号である「禅定山」と書かれています。

  • 長安寺・本堂(全景)<br /><br />山号を禅定山とする長安寺のご本尊は阿弥陀如来で、正保3年(1646)の火災で伽藍すべて焼失、その後本堂は享保10年(1725)年に再建されています。

    イチオシ

    長安寺・本堂(全景)

    山号を禅定山とする長安寺のご本尊は阿弥陀如来で、正保3年(1646)の火災で伽藍すべて焼失、その後本堂は享保10年(1725)年に再建されています。

  • 長安寺・鐘楼堂

    長安寺・鐘楼堂

  • 長安寺・手水舎

    長安寺・手水舎

  • 長安寺・本堂扁額<br /><br />「長安寺」と刻された寺額が掲載されています。<br /><br />

    長安寺・本堂扁額

    「長安寺」と刻された寺額が掲載されています。

  • 長安寺説明板

    長安寺説明板

  • 長安寺・境内<br /><br />例によって本堂から境内を振り返ります。

    長安寺・境内

    例によって本堂から境内を振り返ります。

  • 長安寺・歴代住職墓<br /><br />長安寺を開山した感貞和尚を始めとして歴代の住職の名が記載されています。

    長安寺・歴代住職墓

    長安寺を開山した感貞和尚を始めとして歴代の住職の名が記載されています。

  • 長安寺・納骨堂

    長安寺・納骨堂

  • 長安寺・納骨堂扉家紋<br /><br />墓地の入口に寺中縁と家紋二つが刻された扉が見えます。家紋の左側三鱗(みつうろこ)は開山僧の出身小田原北条氏の家紋、右側家紋は当地を支配した鳥居氏でも秋元氏でもなく不明で当寺に貢献した人物の家紋と思われます。

    長安寺・納骨堂扉家紋

    墓地の入口に寺中縁と家紋二つが刻された扉が見えます。家紋の左側三鱗(みつうろこ)は開山僧の出身小田原北条氏の家紋、右側家紋は当地を支配した鳥居氏でも秋元氏でもなく不明で当寺に貢献した人物の家紋と思われます。

  • 墓と家紋

    墓と家紋

  • 長安寺・本堂と墓地

    長安寺・本堂と墓地

  • 長安寺・宿坊

    長安寺・宿坊

  • 長安寺・観音堂

    長安寺・観音堂

  • 都留市商家資料館【市有形文化財】<br /><br />大正時代の絹問屋跡を資料館としています。訪問時は休館でした。

    都留市商家資料館【市有形文化財】

    大正時代の絹問屋跡を資料館としています。訪問時は休館でした。

  • 都留商家資料館・柱標<br /><br />かつて都留市が織物の街として栄えた頃の絹問屋の一つで震災や戦火を免れた貴重な建物です。

    都留商家資料館・柱標

    かつて都留市が織物の街として栄えた頃の絹問屋の一つで震災や戦火を免れた貴重な建物です。

  • 都留市商家資料館・説明板

    都留市商家資料館・説明板

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