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1月のサンクトペテルブルク滞在の間に、巨匠テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルクフィルのマーラー「復活」と、ソチオリンピック開会式にも登場し、今や「ロシアの顔」となったゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団のベートーヴェン「第九」という興味深い演奏会を聴いた。<br /><br />楽都サンクトペテルブルクに長期滞在するようになって7年になるが、ロシアの誇る2人のマエストロ、テミルカーノフとゲルギエフ、そして世界でも屈指のサンクトペテルブルクフィルとマリインスキー劇場オケをいつも比較しながら聴けるということは、本当に贅沢なことだ。そして言うまでもないことだが、いずれも常に進化(深化)を続けている。今回は「復活」と「第九」、果たして何が飛び出すのだろうか、ドキドキしながら開演を待った。<br /><br />先ずはサンクトペテルブルクフィルであるが、この日1月16日は日本ツアーに出かける2日前ということで、小生と親しい楽団員も気忙しい状態で、あまりゆっくりお話を伺うことはできなかった。日本でこのコンビの演奏を聴かれた方の印象を是非とも聞きたいところだ。<br /><br />先回ケント・ナガノとブルックナーの演奏会のハプニングについてご紹介したが、 このオケのマーラーは小生は少なくとも初めて聴く。他の欧米のオケほど頻繁には取り上げてはいないことは間違いない。復活の冒頭のコントラバスは、我が親友のチルコフ氏が率いており流石の重低音で、地の底から響いてくるようだ。しかし、テミルカーノフが淡々としたテンポでこの曲を進めるはずはなく、随所で極端なルバートを指示するのだが、残念ながらオケが十分反応しているとは言い難い。乱れ、とは言わないまでも微妙なズレが、良しにつけ悪しきにつけ、オケと聴衆に相当の緊張感を与えていた。といいながら終盤の盛り上がりは凄まじく、かなりの聴衆が興奮してブラヴォーを連呼していた。<br /><br />一方のゲルギエフが「第九」を演奏することも珍しい。日本では年末は第九一色で、ありふれた曲のように思ってしまうが、欧米では特別な機会に演奏される曲であって、演奏頻度は日本ほど多くはない。そして、それほどの傑作である。この日1月28日は「ナチスドイツによるレニングラード封鎖の解放記念日」の翌日で、ゲルギエフは27日の「レニングラード交響曲」に続いて「第九」を取り上げた。ゲルギエフもこの曲を淡々と演奏するはずがないことは容易に予想できる。<br /><br />しかし1楽章は淡々とはじまった。そして2楽章あたりから徐々にゲルギエフの個性が爆発した。我々が欧米のオケの演奏に耳が慣れてしまっているためであるが、ちょっとしたテンポの揺れも極端に聴こえてしまう。特に終楽章でゲネラルパウゼを休みなく続けたり、金打楽器を急激にクレッシェンドしたりする演奏は小生は好まない。極めつけは、コーダの一番最後で急激にブレーキをかける終わり方だ。これほどの急ブレーキは始めて聴いたが、極めてゲルギエフらしい、個性的な演奏である。彼のチャイコフスキーやショスタコーヴィチのように、全面的に素晴らしいとは言いにくいが、現代において稀有な、極めて個性的なベートーヴェンである、ということは断言できる。<br /><br />ところで、1月27日は「ナチスドイツによるレニングラード封鎖の解放記念日」で、マリインスキーでもフィルハーモニアでもショスタコーヴィチの「レニングラード交響曲」が演奏された。残念ながらチケットは完売でコンサートには行けなかったが、この日サンクトペテルブルクの町には花火が上がって、ホテルからも眺めることができた。この花火の写真を掲載しておく。

サンクトフィル・テミルカーノフの「復活」とマリインスキー・ゲルギエフの「第九」

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2014/01/13 - 2014/02/01

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ハンク

ハンクさん

1月のサンクトペテルブルク滞在の間に、巨匠テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルクフィルのマーラー「復活」と、ソチオリンピック開会式にも登場し、今や「ロシアの顔」となったゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団のベートーヴェン「第九」という興味深い演奏会を聴いた。

楽都サンクトペテルブルクに長期滞在するようになって7年になるが、ロシアの誇る2人のマエストロ、テミルカーノフとゲルギエフ、そして世界でも屈指のサンクトペテルブルクフィルとマリインスキー劇場オケをいつも比較しながら聴けるということは、本当に贅沢なことだ。そして言うまでもないことだが、いずれも常に進化(深化)を続けている。今回は「復活」と「第九」、果たして何が飛び出すのだろうか、ドキドキしながら開演を待った。

先ずはサンクトペテルブルクフィルであるが、この日1月16日は日本ツアーに出かける2日前ということで、小生と親しい楽団員も気忙しい状態で、あまりゆっくりお話を伺うことはできなかった。日本でこのコンビの演奏を聴かれた方の印象を是非とも聞きたいところだ。

先回ケント・ナガノとブルックナーの演奏会のハプニングについてご紹介したが、 このオケのマーラーは小生は少なくとも初めて聴く。他の欧米のオケほど頻繁には取り上げてはいないことは間違いない。復活の冒頭のコントラバスは、我が親友のチルコフ氏が率いており流石の重低音で、地の底から響いてくるようだ。しかし、テミルカーノフが淡々としたテンポでこの曲を進めるはずはなく、随所で極端なルバートを指示するのだが、残念ながらオケが十分反応しているとは言い難い。乱れ、とは言わないまでも微妙なズレが、良しにつけ悪しきにつけ、オケと聴衆に相当の緊張感を与えていた。といいながら終盤の盛り上がりは凄まじく、かなりの聴衆が興奮してブラヴォーを連呼していた。

一方のゲルギエフが「第九」を演奏することも珍しい。日本では年末は第九一色で、ありふれた曲のように思ってしまうが、欧米では特別な機会に演奏される曲であって、演奏頻度は日本ほど多くはない。そして、それほどの傑作である。この日1月28日は「ナチスドイツによるレニングラード封鎖の解放記念日」の翌日で、ゲルギエフは27日の「レニングラード交響曲」に続いて「第九」を取り上げた。ゲルギエフもこの曲を淡々と演奏するはずがないことは容易に予想できる。

しかし1楽章は淡々とはじまった。そして2楽章あたりから徐々にゲルギエフの個性が爆発した。我々が欧米のオケの演奏に耳が慣れてしまっているためであるが、ちょっとしたテンポの揺れも極端に聴こえてしまう。特に終楽章でゲネラルパウゼを休みなく続けたり、金打楽器を急激にクレッシェンドしたりする演奏は小生は好まない。極めつけは、コーダの一番最後で急激にブレーキをかける終わり方だ。これほどの急ブレーキは始めて聴いたが、極めてゲルギエフらしい、個性的な演奏である。彼のチャイコフスキーやショスタコーヴィチのように、全面的に素晴らしいとは言いにくいが、現代において稀有な、極めて個性的なベートーヴェンである、ということは断言できる。

ところで、1月27日は「ナチスドイツによるレニングラード封鎖の解放記念日」で、マリインスキーでもフィルハーモニアでもショスタコーヴィチの「レニングラード交響曲」が演奏された。残念ながらチケットは完売でコンサートには行けなかったが、この日サンクトペテルブルクの町には花火が上がって、ホテルからも眺めることができた。この花火の写真を掲載しておく。

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
ホテル
4.0
グルメ
4.5
交通
4.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
50万円 - 100万円
交通手段
タクシー 徒歩 飛行機
航空会社
ANA
旅行の手配内容
個別手配

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  • 暗闇のフィルハーモニーホール

    暗闇のフィルハーモニーホール

  • 「復活」演奏後のテミルカーノフとサンクトペテルブルクフィル

    「復活」演奏後のテミルカーノフとサンクトペテルブルクフィル

  • 「復活」演奏後のテミルカーノフとサンクトペテルブルクフィル

    「復活」演奏後のテミルカーノフとサンクトペテルブルクフィル

  • 「復活」演奏後聴衆に答えるテミルカーノフとソリストたち

    「復活」演奏後聴衆に答えるテミルカーノフとソリストたち

  • クリスマス飾りの残る芸術家広場

    クリスマス飾りの残る芸術家広場

  • クリスマス飾りの残る芸術家広場

    クリスマス飾りの残る芸術家広場

  • 芸術家広場のプーシキン像

    芸術家広場のプーシキン像

  • クリスマス飾りの残る芸術家広場

    クリスマス飾りの残る芸術家広場

  • 1月27日は「ナチスドイツからのレニングラード封鎖の解放記念日」で花火が打ち上げられた

    1月27日は「ナチスドイツからのレニングラード封鎖の解放記念日」で花火が打ち上げられた

  • マリインスキーコンサートホール

    マリインスキーコンサートホール

  • ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番演奏後聴衆に応えるブロンフマンとゲルギエフ

    ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番演奏後聴衆に応えるブロンフマンとゲルギエフ

  • ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番演奏後聴衆に応えるブロンフマンとゲルギエフ

    ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番演奏後聴衆に応えるブロンフマンとゲルギエフ

  • ブロンフマンは3曲もアンコールを演奏

    ブロンフマンは3曲もアンコールを演奏

  • ベートーヴェン「第九」終演後のマリインスキー劇場管弦楽団とゲルギエフ

    ベートーヴェン「第九」終演後のマリインスキー劇場管弦楽団とゲルギエフ

  • ベートーヴェン「第九」終演後のマリインスキー劇場管弦楽団とゲルギエフ

    ベートーヴェン「第九」終演後のマリインスキー劇場管弦楽団とゲルギエフ

  • ベートーヴェン「第九」終演後聴衆に応えるソリストたち

    ベートーヴェン「第九」終演後聴衆に応えるソリストたち

  • ベートーヴェン「第九」終演後のマリインスキー劇場管弦楽団とゲルギエフ

    ベートーヴェン「第九」終演後のマリインスキー劇場管弦楽団とゲルギエフ

  • 聴衆に応えるソリストたちとゲルギエフ

    聴衆に応えるソリストたちとゲルギエフ

  • この日のコントラバスは6人で少し物足りない、8人は欲しいところだ

    この日のコントラバスは6人で少し物足りない、8人は欲しいところだ

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