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 逗子市沼間に鎮座する五霊神社(ごりょうじんじゃ)の創建年代は不詳とされている。天岩屋戸伝説に出てくる天手力男命が祭神である。天手力男命は宮崎の天岩戸神社に祀られているが、伊勢皇太神宮内宮の相殿の神としても祀られている。また、信州戸隠神社の主祭神ともなっている。他に天手力男命を祀る神社は日本全国に50社を超える程度は存在している。<br /> 沼間には源頼朝の父・源義朝の館があり、その鎮守として勧請されたものであると伝えられている。だが、源氏の棟梁の館の鎮守が八幡社でないのは腑に落ちないところだ。おそらくは、鎌倉界隈にある富岡八幡宮(横浜市金沢区)、富塚八幡宮(横浜市戸塚区)などの創建と同じく、源氏の創建として時代を下げているものであろう。しかも、先祖や頼朝のように八幡宮には替えなかった。<br /> 五霊神社は「五霊神社由緒記」に因れば、「新編相模国風土記稿」(天保12年(1841年)編)には、「御霊社、牛頭天王を合祀す」と記され、「御霊社」とも呼ばれ、「田畑其外反別取調野帳」(明治8年(1875年))には「五霊社又は御霊社」とも見える。また、この頃に沼間村には熊野大神、御霊神社、太神宮、諏訪明神の4社があったが、後に3社は五霊神社へ合併し、1社となった(。なお、神武寺薬師堂裏山あたりに山王神社があるとされるが確認できなかった)。すなわち、5社が合祀されているのであるから、祭神には5柱はあってしかるべきだ。しかし、こうした御霊社、牛頭天王、熊野大神、太神宮、諏訪明神の祭神とは別の天岩戸神社に祀られる天手力男命が1柱の祭神として祀られているのだ。これら5社の霊を祀る神社として五霊神社となったのではないことは、明治以降に3社が合併される以前の江戸時代から五霊社とも呼ばれていたことからも明らかである。<br /> 想像を逞しくすれば、古代から天手力男命を祀る神社があり、平安後期に鎌倉界隈に多く鎮座している御霊(五霊)社に改称され、源義朝の館が造営された際に銀杏の木が植えられ、館の鎮守となった。その後、逗子市沼間の義朝館ではなく、鎌倉に入った源頼朝は父に習って鶴岡八幡宮に銀杏の木を植えた(が、近年になって倒れた)。江戸時代以降には牛頭天王を合祀し、明治以降には村内にあった熊野大神、太神宮、諏訪明神をも合併した。沼間の山中にある神武寺の創建は神亀元年(724年)とされるが、神武寺よりも創建が早い神社であるとすれば、大和朝廷に従順する古墳時代あたりに天皇家が祀る天照大神が伊勢に遷座し、式年遷宮が始まった7世紀末(690年)から8世紀初頭には天手力男命を祀る神社としてこの沼間の地に鎮座したのではないか?ちなみに、大和朝廷に従順する時期は長柄桜山古墳が築造される4世紀後半と考えられよう。日本国に組み入れられても如何せん辺境の地東国である。かつての国境の地に鎮座する香取神宮や鹿島神宮のような武神ではなく、それに次ぐ天手力男命を鎌倉郡の外れに祀ったのであろう。<br /> 五霊神社は良くは分からない神社であるが、樹齢800年を超える銀杏の大木が聳え、山中には古刹の神武寺がある由緒ある地であるが故に源氏の棟梁・源義朝が館を構えたのであろう。しかし、開けた交通の要所であったために、源頼朝は父の館がある沼間を捨て、山に囲まれ三方が閉ざされた鎌倉の地を選んだのだ。その故、誰もが知るように、逗子幕府・逗子時代とはならなかったのである。<br />(表紙写真は五霊神社拝殿)

五霊神社(神奈川県逗子市)

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2012/12/09 - 2012/12/09

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ドクターキムル

ドクターキムルさん

 逗子市沼間に鎮座する五霊神社(ごりょうじんじゃ)の創建年代は不詳とされている。天岩屋戸伝説に出てくる天手力男命が祭神である。天手力男命は宮崎の天岩戸神社に祀られているが、伊勢皇太神宮内宮の相殿の神としても祀られている。また、信州戸隠神社の主祭神ともなっている。他に天手力男命を祀る神社は日本全国に50社を超える程度は存在している。
 沼間には源頼朝の父・源義朝の館があり、その鎮守として勧請されたものであると伝えられている。だが、源氏の棟梁の館の鎮守が八幡社でないのは腑に落ちないところだ。おそらくは、鎌倉界隈にある富岡八幡宮(横浜市金沢区)、富塚八幡宮(横浜市戸塚区)などの創建と同じく、源氏の創建として時代を下げているものであろう。しかも、先祖や頼朝のように八幡宮には替えなかった。
 五霊神社は「五霊神社由緒記」に因れば、「新編相模国風土記稿」(天保12年(1841年)編)には、「御霊社、牛頭天王を合祀す」と記され、「御霊社」とも呼ばれ、「田畑其外反別取調野帳」(明治8年(1875年))には「五霊社又は御霊社」とも見える。また、この頃に沼間村には熊野大神、御霊神社、太神宮、諏訪明神の4社があったが、後に3社は五霊神社へ合併し、1社となった(。なお、神武寺薬師堂裏山あたりに山王神社があるとされるが確認できなかった)。すなわち、5社が合祀されているのであるから、祭神には5柱はあってしかるべきだ。しかし、こうした御霊社、牛頭天王、熊野大神、太神宮、諏訪明神の祭神とは別の天岩戸神社に祀られる天手力男命が1柱の祭神として祀られているのだ。これら5社の霊を祀る神社として五霊神社となったのではないことは、明治以降に3社が合併される以前の江戸時代から五霊社とも呼ばれていたことからも明らかである。
 想像を逞しくすれば、古代から天手力男命を祀る神社があり、平安後期に鎌倉界隈に多く鎮座している御霊(五霊)社に改称され、源義朝の館が造営された際に銀杏の木が植えられ、館の鎮守となった。その後、逗子市沼間の義朝館ではなく、鎌倉に入った源頼朝は父に習って鶴岡八幡宮に銀杏の木を植えた(が、近年になって倒れた)。江戸時代以降には牛頭天王を合祀し、明治以降には村内にあった熊野大神、太神宮、諏訪明神をも合併した。沼間の山中にある神武寺の創建は神亀元年(724年)とされるが、神武寺よりも創建が早い神社であるとすれば、大和朝廷に従順する古墳時代あたりに天皇家が祀る天照大神が伊勢に遷座し、式年遷宮が始まった7世紀末(690年)から8世紀初頭には天手力男命を祀る神社としてこの沼間の地に鎮座したのではないか?ちなみに、大和朝廷に従順する時期は長柄桜山古墳が築造される4世紀後半と考えられよう。日本国に組み入れられても如何せん辺境の地東国である。かつての国境の地に鎮座する香取神宮や鹿島神宮のような武神ではなく、それに次ぐ天手力男命を鎌倉郡の外れに祀ったのであろう。
 五霊神社は良くは分からない神社であるが、樹齢800年を超える銀杏の大木が聳え、山中には古刹の神武寺がある由緒ある地であるが故に源氏の棟梁・源義朝が館を構えたのであろう。しかし、開けた交通の要所であったために、源頼朝は父の館がある沼間を捨て、山に囲まれ三方が閉ざされた鎌倉の地を選んだのだ。その故、誰もが知るように、逗子幕府・逗子時代とはならなかったのである。
(表紙写真は五霊神社拝殿)

  • 宮の前踏切。

    宮の前踏切。

  • 五霊神社の掲示板。

    五霊神社の掲示板。

  • 「神奈川県指定天然記念物 五霊神社の大イチョウとその周辺の樹木」看板。

    「神奈川県指定天然記念物 五霊神社の大イチョウとその周辺の樹木」看板。

  • 五霊神社の鳥居。

    五霊神社の鳥居。

  • 五霊神社の社号標石。

    五霊神社の社号標石。

  • 五霊神社の掲示板。御際神は天手力男命とある。<br />横浜市戸塚区にも五霊神社があるが、祭神は平良文以下鎌倉権五郎までの5代の霊を祭っている。

    五霊神社の掲示板。御際神は天手力男命とある。
    横浜市戸塚区にも五霊神社があるが、祭神は平良文以下鎌倉権五郎までの5代の霊を祭っている。

  • 五霊神社の手水舎。

    五霊神社の手水舎。

  • 五霊神社の神輿倉。

    五霊神社の神輿倉。

  • 五霊神社の樹木。

    五霊神社の樹木。

  • 五霊神社の鳥居。

    五霊神社の鳥居。

  • 五霊神社境内。

    五霊神社境内。

  • 社務所。

    社務所。

  • 五霊神社の石燈籠と社殿。

    五霊神社の石燈籠と社殿。

  • 狛犬。

    狛犬。

  • 狛犬。

    狛犬。

  • 五霊神社の大銀杏。

    五霊神社の大銀杏。

  • 五霊神社の大銀杏。

    五霊神社の大銀杏。

  • 五霊神社の大銀杏。

    五霊神社の大銀杏。

  • 「かながわの名木100選 五霊神社の大イチョウ」プレート

    「かながわの名木100選 五霊神社の大イチョウ」プレート

  • 「保存樹木指定標識」看板。

    「保存樹木指定標識」看板。

  • 五霊神社拝殿

    五霊神社拝殿

  • 五霊神社拝殿の屋根に上がる浪の飾り瓦。大きい。

    五霊神社拝殿の屋根に上がる浪の飾り瓦。大きい。

  • 五霊神社拝殿の屋根に上がる浪の飾り瓦。大きい。

    五霊神社拝殿の屋根に上がる浪の飾り瓦。大きい。

  • 五霊神社拝殿に貼られた「神霊パワースポット」と「祭神・天手力男命」。

    五霊神社拝殿に貼られた「神霊パワースポット」と「祭神・天手力男命」。

  • 向拝の海老虹梁。

    向拝の海老虹梁。

  • 鈴。

    鈴。

  • 拝殿の龍の彫刻。

    拝殿の龍の彫刻。

  • 拝殿向拝の木鼻。

    拝殿向拝の木鼻。

  • 拝殿向拝の木鼻。

    拝殿向拝の木鼻。

  • 拝殿の木鼻。

    拝殿の木鼻。

  • 拝殿の木鼻。

    拝殿の木鼻。

  • 拝殿。

    拝殿。

  • 拝殿。

    拝殿。

  • 拝殿屋根。

    拝殿屋根。

  • 拝殿向拝。

    拝殿向拝。

  • 本殿。

    本殿。

  • 本殿。

    本殿。

  • 本殿と拝殿。

    本殿と拝殿。

  • 境内社か神輿倉?

    境内社か神輿倉?

  • 拝殿横の榊。

    拝殿横の榊。

  • 沼間児童園地。

    沼間児童園地。

  • 稲荷社が祭ってある。

    稲荷社が祭ってある。

  • 沼間児童園地のジャングルジム。

    沼間児童園地のジャングルジム。

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