2012/09/25 - 2012/09/25
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ソフィさん
2012年9月25日(火)
1966年、私が国鉄本社建設局線増課に入ったころは、全国の幹線で複線化工事が花盛りだった。
中央東線では、東京の新宿から山梨の小渕沢辺りまで複線化が完了しており、その先の工事を進めた。
それまでの複線化工事では、線路の性能を決める曲線半径を、各線で決めた規格ギリギリで設計していたのを、私が担当してからは規格ギリギリではなく、なるべく半径を大きくして、将来の高速化に備えるように、考え方を改めた。
その効果が全国でもよく現われている区間の一つが、小渕沢・塩尻間だろうと推測している。
塩尻から中央線と別れ、篠ノ井線に入る。
秋の実りを迎えつつある松本盆地の豊かな田畑が、線路の両脇に広がる。
タクシー運転士は、キビキビと旅行鞄をトランクに積み込んでくれ、気持が良かった。
「私の友人の信州人はみな優秀だが、何故でしょうか?」
私は、タクシーの運転士さんと話すことが好きだ。
ほとんどの運転士さんは話し好きで、私からの質問に喜んで答えてくれ、心を温め合うことが多い。
旅の大きな楽しみの一つである。
私の問いに、運転士は「それは寒さのために違いありません」と答えてくれる。
「厳しい環境が人を育てることは、確かだなァ」と考える。
今晩の宿「界・松本」は、浅間温泉にあった。
最近、と言っても10年くらい前に建てられたのだろうか。
新しく建てられた温泉宿を、しばらくしてから星野リゾートが肩代わりし、つい昨年改名したようだ。
着いたのは14時。チェックインまで一時間あったので、広い前庭に面した入口の前のベンチで一服した。
ベンチに座り、塀の縦縞模様がもたらしている前庭の落着き感に感心していると、タクシードライバーは、私が宿の出迎えを待っていると思ったのだろう。
気をきかせた運転士は、いったん発車しかけたタクシーから降りてきて、わざわざ客の到着を知らせようと、宿のカウンターに走り伝えてくれる。
宿とタクシーのチームワークによって、この地を訪れた客をもてなそうとする心遣いが感じられ、気持がいい。
入口から玄関まで、短い距離だが、ガラス屋根から射しこむ光線の効果もあり、心地良さに満ちた石畳の通路がある。
この狭い空間を通って、突然広々としたレセプションホールに一歩踏み込んだ時、さらに何かしら客の魂を揺り動かすものがある。
広い前庭と広いレセプションホールを、折れ曲がってかつ狭い通路で結ぶことにより、この建物にやって来た人の魂を最初に揺すぶろうとしている設計者の意図に、感心する。
(2012.11.1)
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- JR特急
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