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熱帯を思わせるつやつやとした濃緑の葉のヤブツバキは、太平洋側では北緯39度の大船渡市や陸前高田市が北限だが、日本海側では男鹿半島の椿山(天然記念物)、五能線の八森町、岩館、へなし岬の椿島から北緯40°40分の深浦町までヤブツバキが自生している。<br />そして、本邦のヤブツバキ自生地の最北限は陸奥湾の真ん中に突き出している夏泊半島(北緯41度)で、ここには天然記念物の椿山と椿神社があるので、旅の時間を割いて訪れました。<br /><br />この椿山は青森駅から“青い森鉄道(旧東北本線)”で約30分の小湊駅の北 約15km、夏泊半島の先端部にあり、バスがないのでタクシーで訪れました。夏泊半島は全域が県立公園で、東側の付け根はハクチョウ渡来地として国指定天然記念物とされ、西側は青森湾と呼ばれ浅虫温泉がある。<br />ここのヤブツバキは太平洋側の岩手県や若狭・山陰・北陸地方におおい高木になる種類で、新潟以北に多い樹高が低く枝がしなやかな亜種のユキツバキではなかった。<br /><br />217年前の1795年3月、菅江真澄は夏泊半島の椿明神に参拝して、椿の伝説を記録している。<br />真澄によれば、むかし材木を西国に運んでいた船頭に、なじみの女が「都の女は椿油を用いるので髪が美しいと聞く。来年来るときには椿の実をもってきてくれ」と頼んだ。翌年、船頭はこなかった。三年後、ようやく船頭が来たときには、女は船頭が心変わりしたと思い入水して塚に葬られていた。<br />船頭は塚に後悔のことばを告げ、約束の椿の実を播いて去った。やがて塚の周りは椿の林となったが、花の咲いた枝を折ると女が現れて恨み言をいうので、里人は椿を神として祀ったという。<br /><br />年を経た椿の魔性についての伝承は各地にあるが、夏泊半島という「化外の地」で椿油を目的としていたということは「闇を払う灯火」にかかわる伝承として面白い。<br />また、北陸地方には遊行の尼が椿の枝を挿して去り、椿が大木になったころに再び訪れて、数百年前の話をして聞かせたという八百比丘尼伝説があり(旅行記「若狭・・・八百比丘尼伝説・・・」女性が椿を運んでいる。 <br />一方「北限の椿」は船乗りの男が運んだとされており、少女の姿のまま八百年を生きたという比丘尼の姿は、北東北など律令制度の外の国には ない。<br /><br />JR五能線の各地では、春を告げるヤブツバキの花を売り歩く風習があったという。雪国の春先に、濃緑の葉に隠れて咲くヤブツバキに託された想いが、かずかずの風習や伝承を生んできたものであろう。<br />その昔、男鹿半島椿山に近い戸賀の宿では、だれとも知れぬ女人が夜伽に訪れて旅の男を慰めてくれたという。<br />目覚めの枕元には、一輪の赤いヤブツバキの花だけが残されていたのかもしれない。<br />

青森・夏泊半島幻想記 :最北限のヤブツバキ

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2012/06/18 - 2012/06/18

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熱帯を思わせるつやつやとした濃緑の葉のヤブツバキは、太平洋側では北緯39度の大船渡市や陸前高田市が北限だが、日本海側では男鹿半島の椿山(天然記念物)、五能線の八森町、岩館、へなし岬の椿島から北緯40°40分の深浦町までヤブツバキが自生している。
そして、本邦のヤブツバキ自生地の最北限は陸奥湾の真ん中に突き出している夏泊半島(北緯41度)で、ここには天然記念物の椿山と椿神社があるので、旅の時間を割いて訪れました。

この椿山は青森駅から“青い森鉄道(旧東北本線)”で約30分の小湊駅の北 約15km、夏泊半島の先端部にあり、バスがないのでタクシーで訪れました。夏泊半島は全域が県立公園で、東側の付け根はハクチョウ渡来地として国指定天然記念物とされ、西側は青森湾と呼ばれ浅虫温泉がある。
ここのヤブツバキは太平洋側の岩手県や若狭・山陰・北陸地方におおい高木になる種類で、新潟以北に多い樹高が低く枝がしなやかな亜種のユキツバキではなかった。

217年前の1795年3月、菅江真澄は夏泊半島の椿明神に参拝して、椿の伝説を記録している。
真澄によれば、むかし材木を西国に運んでいた船頭に、なじみの女が「都の女は椿油を用いるので髪が美しいと聞く。来年来るときには椿の実をもってきてくれ」と頼んだ。翌年、船頭はこなかった。三年後、ようやく船頭が来たときには、女は船頭が心変わりしたと思い入水して塚に葬られていた。
船頭は塚に後悔のことばを告げ、約束の椿の実を播いて去った。やがて塚の周りは椿の林となったが、花の咲いた枝を折ると女が現れて恨み言をいうので、里人は椿を神として祀ったという。

年を経た椿の魔性についての伝承は各地にあるが、夏泊半島という「化外の地」で椿油を目的としていたということは「闇を払う灯火」にかかわる伝承として面白い。
また、北陸地方には遊行の尼が椿の枝を挿して去り、椿が大木になったころに再び訪れて、数百年前の話をして聞かせたという八百比丘尼伝説があり(旅行記「若狭・・・八百比丘尼伝説・・・」女性が椿を運んでいる。
一方「北限の椿」は船乗りの男が運んだとされており、少女の姿のまま八百年を生きたという比丘尼の姿は、北東北など律令制度の外の国には ない。

JR五能線の各地では、春を告げるヤブツバキの花を売り歩く風習があったという。雪国の春先に、濃緑の葉に隠れて咲くヤブツバキに託された想いが、かずかずの風習や伝承を生んできたものであろう。
その昔、男鹿半島椿山に近い戸賀の宿では、だれとも知れぬ女人が夜伽に訪れて旅の男を慰めてくれたという。
目覚めの枕元には、一輪の赤いヤブツバキの花だけが残されていたのかもしれない。

同行者
一人旅
交通手段
タクシー 新幹線 JRローカル
利用旅行会社
個別手配

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  • 小湊駅は昔の東北本線ですが 今は「青い森鉄道」です。<br />シンボルマークと マスコットキャラクターです。

    小湊駅は昔の東北本線ですが 今は「青い森鉄道」です。
    シンボルマークと マスコットキャラクターです。

  • 小湊駅<br /><br />ここからタクシーです。往復7000円から8000円くらい。<br />写真を撮るときの待ち時間はサービスしてくれました。

    小湊駅

    ここからタクシーです。往復7000円から8000円くらい。
    写真を撮るときの待ち時間はサービスしてくれました。

  • 小湊駅前の様子。ちなみに町の名前は平内(ひらない)町で、豪雪で有名です。

    小湊駅前の様子。ちなみに町の名前は平内(ひらない)町で、豪雪で有名です。

  • いろんな所に椿が描かれ、掲示されていますが<br />これは少し遠いけれど道路わきの柵に描かれた椿。<br /><br />斜めに見ると椿の花ですが正面から見ると何だか判らない。

    いろんな所に椿が描かれ、掲示されていますが
    これは少し遠いけれど道路わきの柵に描かれた椿。

    斜めに見ると椿の花ですが正面から見ると何だか判らない。

  • 道路標識にも「椿山」

    道路標識にも「椿山」

  • 椿山のヤブツバキです。樹高は3メートルくらい。<br />花のシーズンは5月上旬で「つばき祭り」がある。

    椿山のヤブツバキです。樹高は3メートルくらい。
    花のシーズンは5月上旬で「つばき祭り」がある。

  • 太い椿が倒れていた。<br /><br />雪のせいか幹の太さのわりに背が低い。

    太い椿が倒れていた。

    雪のせいか幹の太さのわりに背が低い。

  • 6月18日、一本だけ残りの花がついていた。<br />つぼまって咲く典型的なヤブツバキです。

    6月18日、一本だけ残りの花がついていた。
    つぼまって咲く典型的なヤブツバキです。

  • 椿山を通り越すと椿神社の入り口、鳥居です。<br /><br />手前の平地の左側には大きな駐車場があって何軒もの土産屋が軒を連ねていました。<br />花季をすぎていたせいか、閉まっていました。

    椿山を通り越すと椿神社の入り口、鳥居です。

    手前の平地の左側には大きな駐車場があって何軒もの土産屋が軒を連ねていました。
    花季をすぎていたせいか、閉まっていました。

  • 神社は階段の上です。<br /><br />1185年ころには椿伝説にまつわる祠があったとされている。<br />1698年に、椿宮女人を神霊として建立した。 と由緒が記されていた。

    神社は階段の上です。

    1185年ころには椿伝説にまつわる祠があったとされている。
    1698年に、椿宮女人を神霊として建立した。 と由緒が記されていた。

  • 社殿は想像してたより大きくて立派でした。<br />賽銭箱がない。<br />ガラスに開いた穴に手を入れて百円を投げた。<br />乾いた音がした。<br />

    社殿は想像してたより大きくて立派でした。
    賽銭箱がない。
    ガラスに開いた穴に手を入れて百円を投げた。
    乾いた音がした。

  • 椿神社の掲額<br /><br />社前の階段に腰掛けて潮の香の空気を深呼吸した。<br />小さな半島の先端で、伝説の夢に抱かれた小さな幸福感を味わった。

    椿神社の掲額

    社前の階段に腰掛けて潮の香の空気を深呼吸した。
    小さな半島の先端で、伝説の夢に抱かれた小さな幸福感を味わった。

  • 椿神社の由緒。<br /><br />宮司がいないのでここに書かれた悲恋物語のなかみを聞くことが<br />できませんでした。

    椿神社の由緒。

    宮司がいないのでここに書かれた悲恋物語のなかみを聞くことが
    できませんでした。

  • 近くのごく平凡な海岸は「日本のなぎさ百選」の地だそうです。<br /><br />税金の使い道を いろいろと考える人がいますね!

    近くのごく平凡な海岸は「日本のなぎさ百選」の地だそうです。

    税金の使い道を いろいろと考える人がいますね!

  • 白い花のハマナスが咲いていました。<br />県内の各地で見ました。

    白い花のハマナスが咲いていました。
    県内の各地で見ました。

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