2011/03/12 - 2011/03/12
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TMBSさん
2011年3月11日の昼下がり、私は翌日の九州新幹線全線開業と初乗車に胸を躍らせつつ、会社で淡々と仕事をこなしていました。そんな14時46分、突然襲ってきた目まいのような揺れが、全てを変えてしまいました。
帰宅後に見た仙台の津波や気仙沼の大火の映像、刻一刻と増える犠牲者、危険な事態を迎えた原子力発電所、電車の不通などで混乱する首都圏…悪夢のような東日本大震災の報道に、一度は出かけるのを止めようかなとも思いました。
しかし、九州新幹線では全線開業の記念式典こそ中止になるものの通常通りの運転が予定されていたこと、向こうに住む友人と会う約束をしていたことなどを鑑み、翌日からの九州新幹線で行く鹿児島一泊旅行については予定通り実施することを決めました。
震災から1年を迎えることを機に、複雑な思いを抱えて乗りこんだ、全線開業初日の九州新幹線「みずほ603号」の様子をお届けします。
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 3万円 - 5万円
- 交通手段
- 高速・路線バス ANAグループ 新幹線 JR特急 JRローカル 私鉄 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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テレビの地震報道を見てから自宅を出発し、JR線を乗り継ぎ新大阪駅へ。
九州からのお客さんを出迎える垂れ幕も、どこか複雑な表情です。 -
土産物屋さんでは、「みずほ」・「さくら」に使用されるN700系をかたどったバームクーヘンが売られていました。
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新大阪駅新幹線ホームの電光掲示板に「みずほ 鹿児島中央」の文字が出るのは今日が初めてです。
もっとも、「鹿児島」の文字自体は、2004年3月まで在来線ホーム発着のブルートレイン「なは」で見ることができたわけで、7年ぶりの復活になります。 -
「みずほ」号の種別はオレンジ色の文字で表示されます。
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前日の東日本大震災で運転を見合わせていた東海道新幹線は、今朝の始発から通常の運転を再開していました。
とはいえ、混乱がまだ残っていたからか、新大阪駅に着いた下り列車は軒並み5分程度遅れての運転でした。 -
みずほ603号の停車駅は、新神戸・岡山・広島・小倉・博多・熊本。
東海道山陽新幹線の速達型「のぞみ」と同じ位置づけの列車で、鹿児島中央までの所要時分を短くするため、停車駅を最低限に絞っています。 -
昨日まで山陽新幹線の主役だった700系8000番台「ひかりレールスター」。
九州新幹線開業後も引き続き活躍しますが、写真の列車は「こだま739号博多行き」これからは「こだま」での運用がメインになります。 -
7時42分、京都方から「みずほ603号」が入線してきました。
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乗客も、見学者も、こぞって写真を撮ります。
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「みずほ603号」の車両はJR西日本所属・N700系7000番台S5編成。
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6号車はグリーン車になっています。
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在来型のN700系に倣ったフルカラーLED式の行先表示。
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私が乗るのは、指定席の5号車です。
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デッキの壁は木目調。
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指定席車の車内。昔の0系新幹線のグリーン車を彷彿とさせるオリーブグリーンのゆったり座席が、通路を挟んで横2列+2列で並びます。
この列車の指定券は、1か月前の発売日に一瞬で売り切れましたが、地震のために旅行を断念した人がいたためか、はたまた途中の新神戸や岡山から乗る人が多いためか、新大阪の時点では若干空席が見られました。 -
イチオシ
指定席車の座席。見るからに高級感が漂うデザインです。
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地震のニュースに打ちひしがれながらの旅立ちでしたが、熊本や鹿児島の文字を見ると感慨も深いものがありました。
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7時50分定刻に新大阪を発車。「いい日旅立ち」のチャイムに続いて案内放送が流れます。
運転士はJR西日本の前田運転士、車掌は島田車掌。 -
本当ならば、3月12日はこの列車の終点鹿児島中央から新青森までが新幹線で結ばれる記念すべき日になるはずでした。
だが前日の震災のため、実際に鹿児島中央から新青森まで新幹線だけで移動できるようになるまでにはさらに1ヶ月以上を要することになりました。 -
今回の旅行で使用した乗車券。
「みずほ603号」の指定券ですが、地元の駅で発売日に早朝から並んで入手しました。ちなみに第1希望は新大阪発鹿児島中央行きの一番列車「みずほ601号」の指定席でしたが、こちらについては残念ながら発売開始後15秒で売り切れたそうです。 -
新幹線開業の明るい話題で埋め尽くされるはずだった電光ニュースも、震災と原発事故の話題ばかりでした。
写真はこの日早朝に発生した長野県北部の地震に関するニュースが流れている様子です。 -
テーブル裏に書かれていた車内案内図。N700系7000番台・8000番台は最新鋭車両とあり、AEDやパウダールームを備えています。
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携帯サイトで震災のニュースに見入っているうち、「みずほ603号」は岡山駅を発車していました。
ちなみに「みずほ」は、山陽新幹線の姫路〜博多の間では最高時速300キロで走ります。 -
デッキに掲示されていた車内案内。
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山口県内を走行中に、車内販売のコーヒーを買い求め一服します。
周りのお客さんの中には、「さくら」号に因んだ記念弁当を食べている人もいました。
コーヒーをすすっていると、新山口を過ぎたあたりで、熊本や鹿児島中央からの「さくら」、「みずほ」の1番列車とすれ違いました。 -
新山口通過後に、津波警報に伴う九州内の運転見合わせ情報がアナウンスされました。
九州新幹線は平常運転ですが、これから乗る予定の日豊本線や長崎本線は海沿いすれすれを走るためか、運転を見合わせているとのこと。
新関門トンネルを抜け、10時少し前に小倉着。上り線には新下関行きの「さくら号」が停まっていました。 -
次は博多駅。昨日まで事実上山陽新幹線の終着駅(注)でしたが、今日からは名実ともに途中駅です。「博多を出ますと、次は熊本に停まります。」のアナウンスが新鮮でした。
(注)厳密に言うと、九州新幹線が開業する以前から博多駅から先に新幹線の線路が続いており、在来線の「博多南線」として営業していました。しかも一部の列車は山陽新幹線と直通運転。 -
3月初めにオープンしたばかりのJR博多シティを横目に、10時15分博多駅に到着。
駅名標には「しんとす(新鳥栖)」の文字が書き加えられていました。 -
無事博多を発車。昨日まで鹿児島本線の博多〜新八代間で特急「リレーつばめ」として走っていた787系が、在来線の留置線に停まっていました。
今日からは長崎本線の「かもめ」や日豊本線の「にちりん」「きりしま」「ひゅうが」として新たな人生のスタートです。
新大阪から震災に伴う自粛ムード、後ろめたさなどで重苦しいムードだった「みずほ603号」の車内でしたが、新規開業区間に入るとやや明るい雰囲気になってきたような気がしました。 -
九州新幹線に間借りする形の在来線・博多南線の博多南駅付近を通過。
今日からはここから先に行くことができるんです。 -
博多南駅を過ぎると、急な登り勾配で福岡・佐賀県境に横たわる脊振山地に挑みます。
九州新幹線は脊振山地を長い筑紫トンネルで越えます。 -
トンネルを抜けると、間もなく新鳥栖駅。
現時点では佐賀県内唯一の新幹線駅で、長崎本線の特急や普通との接続が図られている駅です。 -
高い防音壁越しに見える筑後川を越えて、再び福岡県内に戻ると次の停車駅久留米が目の前です。
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ただいま久留米駅を通過。
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今回の新規開業区間、九州でもそこそこ規模のある都市が連続する地域を走っているせいか小まめに途中駅が設けられています。
写真は両隣の久留米駅と新大牟田駅から近いため、建設時には議論の的になった筑後船小屋駅。 -
いろいろな意味で話題になった筑後船小屋駅ですが、鹿児島本線との接続があり、駅前には無料駐車場があるなど交通の便が良いこと、近くに温泉があることなどプラスの要素も多いので、今後に期待したいところです。
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地震の悲しいニュースが相次ぎ伝えられる中、ようやく通路上の電光ニュースで九州新幹線の開業についてのニュースが流れました。
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福岡県最後の駅・新大牟田駅を通過。
工業都市・大牟田の市街地からはやや距離があります。 -
熊本県に入って最初の駅は新玉名駅。
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ここも市街地からやや距離があるため、地元自治体の人たちはあの手この手で振興策を練るそうです。
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大阪を発車して間もなく3時間。10時45分過ぎに熊本到着を告げるアナウンスが流れました。
ちなみにJR西日本所属車の車内チャイムは、九州新幹線内でも「いい日旅立ち」のままですが、中国語や韓国語のアナウンス、アテンダントの名前紹介などはJR九州所属車の場合と同じように行われます。 -
熊本駅付近にて。沿線の保育園に九州新幹線全通を祝う垂れ幕が掲げられていたほか、多数の見物人が立っているのを見かけました。
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新規開業区間最大の駅・熊本駅に到着。
ちなみにこの時点で、津波警報のため熊本以南の鹿児島本線と三角線、肥薩おれんじ鉄道はいずれも不通になっていました。 -
上りホームには、新八代〜鹿児島中央間が先行開業していた時代に主役を張っていた800系の「つばめ」号が待っていました。
新大阪から乗ってきた新幹線が、800系とすれ違うなんて、九州新幹線の全線開業を知っていても一瞬信じられない気がしました。 -
民謡「おてもやん」をアレンジした発車メロディーに送られ、「みずほ603号」は熊本駅を発車します。
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い草とメロンの産地である八代平野を通過中。
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昨日まで特急「リレーつばめ」と新幹線「つばめ」が接続を取っていた新八代駅を通過。
左隣のホームには、津波警報の影響で回送できない「リレーつばめ」の車両が取り残されていました。 -
八代市、芦北町のトンネルが続く区間を越え、新水俣駅を通過します。
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長大トンネルが続く新八代〜鹿児島中央間の先行開業区間ですが、新水俣と出水の間では美しい有明海と天草諸島のパノラマを楽しめる区間もところどころあります。
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冬に飛来する鶴をイメージした駅舎の出水駅を通過。
8年前、ここの武家屋敷街でサイクリングを楽しんだことを思い出しました。 -
出水駅に在来線特急「つばめ」が1時間に1本停車していたのが、遠い昔のようです。
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感慨にふけっているうち、列車は大きな街にさしかかりました。
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鹿児島中央の1駅手前・川内を通過。
鹿児島県第二の都市・薩摩川内市の中心駅で、「みずほ」は通過しますが、「さくら」と「つばめ」は全て停車します。 -
川内を通過した列車はまたまた長いトンネルが続く区間に入ります。
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最後の長いトンネル、薩摩田上トンネルを抜けると車窓から一瞬桜島が見え、11時36分終点鹿児島中央駅に到着です。
新大阪から3時間46分。一昔前までブルートレインで一晩かけて行く場所だった鹿児島が、ぐんと近くなりました。 -
イチオシ
下車する前にもう一度、車内を撮影。
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イチオシ
行先表示はまだ「みずほ603 鹿児島中央」のまま。
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「さくら号」の種別表示はもちろんピンク色。
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昨日までは「(新八代乗り換えの)博多行き」ばかりが発着していた鹿児島中央駅の新幹線ホームに、今日からは「(途中乗り換えなしの)博多行き」と「新大阪行き」が姿を見せるようになりました。
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ギャラリーでごった返す新幹線ホーム。
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鹿児島中央駅新幹線ホームの主役は昨日までの800系からN700系7000番台・8000番台にバトンタッチ。2本並びもざらに見られます。
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イチオシ
新大阪から乗ってきたN700系7000番台S5編成。
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N700系7000番台(JR西日本所属)と8000番台(JR九州所属)の見分け方。
車体裾の車両番号脇に付いているJRマークが青だと7000番台、赤だと8000番台。 -
鹿児島中央駅の新幹線発車時刻表。ほとんどが「さくら号」です。
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N700系があしらわれたホームの自動販売機。
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鹿児島中央で見る「さくら 新大阪」の表示は、長年の悲願の象徴です。
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イチオシ
博多へ向け発車したN700系8000番台の「さくら」
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駅コンコースに出ると、震災の影響で規模は縮小されましたが、地元の人たちが歓迎してくれました。
記念に焼酎のミニボトルまでいただきました。 -
九州新幹線の全線開業を祝うポスターの数々。
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正午の時点ではまだ津波警報が解除されておらず、日豊本線と指宿枕崎線の運転再開のめどが立っていませんでした。
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津波警報による運転見合わせを伝える鹿児島中央駅改札口の掲示板。
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イチオシ
この日の九州新幹線開業に合わせて運転を始めるはずだった指宿枕崎線の特急「指宿のたまて箱」。
未曽有の震災による津波警報でこの日の運転ができなくなった代わりに、車両展示会が催されたので参加しました。 -
みどりの窓口には、九州新幹線全線開業記念式典と指宿のたまて箱運転開始記念式典の中止を伝える掲示が出ていました。
全線開業前日に東日本で死者不明者1万人以上、大津波と原発事故を引き起こす未曽有の大震災が起き、前途多難なスタートとなった九州新幹線でしたが、その後の利用は順調に伸びていると聞きます。この新幹線が、九州から日本を元気にしてくれる存在として、今後さらに活躍することを期待したいばかりです。
あわせて、東日本大震災で亡くなられた方のご冥福をお祈りし、被災された方にお見舞い申し上げるとともに、被災地が1日も早く復興を遂げることを切に願うばかりです。
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