2011/10/19 - 2011/10/26
1位(同エリア1850件中)
montsaintmichelさん
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- 旅行記373冊
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- フォロワー141人
本編から主人と共同執筆になります。共同作業はウェディングケーキ入刀以来でしょうか???きっかけは、主人からテクニカル・マターをもう少し入れた方がいいとの助言をもらったからです。
第3日目:トゥールを出発して一路憧れのモンサンミッシェル(MSM)を目指します。走行距離は約270km、バス乗車時間は合計4時間。途中、サービスエリアでトイレ休憩。MSMでは3時間滞在しました。対岸ホテルに宿泊し、時々刻々と容姿を変貌させる夕景、夜景と夜明けのMSMを堪能してきました。
さて、MSMを満喫するにはいろいろな情報があると便利です。その一つが潮位です。例えば、MSMが海に囲まれ、海上に聳え立つ天空の城塞となる情景は大潮の日でしか見られません。また、夕景や夜明けのMSMを撮影するには、日の出、日の入りの時刻が必要になります。
潮位=月齢(満月や新月が大潮)、日の出、日の入りの時刻は次のサイトで確認できます。
http://www.sunrisesunsetmap.com/
マップを拡大して目的の地名をクリックするだけです。
MSMの干満時刻は次のサイトで確認できます。
http://www.ot-montsaintmichel.com/en/horaire-marees/mont-saint-michel.htm
当方は、事前に調べてツアーを申し込みましたが、結局催行人数に至らず、日程を変更した経緯があります。すべての条件を満たすの極めて稀だと思います。大潮に当たったら『ラッキー!』くらいでいいのでは?
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 3.5
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 一人あたり費用
- 20万円 - 25万円
- 交通手段
- 観光バス
- 航空会社
- エールフランス
- 旅行の手配内容
- ツアー(添乗員同行あり)
- 利用旅行会社
- JTB
PR
-
ホテル ジロドー。
トゥールでお世話になったホテルです。朝はだいぶ冷え込んでいます。 -
トゥール市庁舎(バス車窓)。
噴水があるジャン・ジョレス広場です。その奥に建つゴシック様式の建物は1905年に建造されたトゥール市庁舎です。 -
トゥール市庁舎(バス車窓)。
朝日に染まってとても神々しいです。 -
ヤドリギ(車窓)。
バスからの車窓は、雄大な農地、モノトーンに纏められた趣きのある集落、あるいは沿道の樹木が主役です。時々、風車群が現れ、原子力発電依存率75%の原発大国の隠れた一面を覗かせてくれます。福島原発事故以降、ニコラ・サルコジ大統領は原子力政策に変更がないことを表明していますが、依存度を下げていく方向は時代の要請で否定していません。電力業界が風力発電に投資をする動きが出ているからです。
沿道の樹木は紅葉が始まっており、色彩豊かで飽きません。すでに落葉した広葉樹もあり、マリモ状のものがくっついた木が目立ちます。一見、鳥の巣のようですが、そこだけ緑が息衝いているのでヤドリギだと分かります。半寄生植物で宿木の栄養をもらって成長する生命力のある木で、子宝(繁栄)、実り、厄除けなどの象徴としてフランスでは縁起物だそうす。クリスマスにはこれを切り取って部屋に飾ります。でも御用心、ヤドリギの実には毒性があります。「縁起物」にあやかって・・・なんて実を食べたりしちゃ駄目ですよ。 -
モンサンミッシェル ジヤンボ・オムレツ。
まずは対岸のレストランで腹ごしらえ。モンサンミッシェル(以後、MSM)と言えば有名なのがジャンボ・オムレツ。大きなオムレツをギャルソンが手際よく切り分けてお皿にのせてくれます。泡だらけでふわふわです。味の方は多くのコメントと同じ意見です。話のネタにどうぞめしあがれ〜。
ドリンクは名産のシードル(リンゴの発泡酒 アルコール度数3%程)をいただきます。カルト(メニュー)には「cidre」と書かれており、一見、サイダーと勘違いしそうです。ちなみにノルマンディー地方の名産は、シードル、カルヴァドスというリンゴを蒸留したお酒、カマンベールチーズと魚介類。なぜワインがないかと言うと、気候の関係で葡萄が育たないためです。カルヴァドスは、1世紀も酒造庫で寝かせる高価なお酒。しかもアルコール度数も40度と高いですのでご注意を。
エーリッヒ・マリア・レマルク著『凱旋門』の主人公ラヴィックが、明日をも知れぬ流亡の身の憂さを晴らすために飲み続けたのがカルヴァドスです。一昔前までは、値段が安かったので、労働者向けのお酒だったようですが、今では一寸した銘酒の仲間入りをしています。 -
モンサンミッシェル 駐車場の手前で写真タイム。
現在、対岸から島へ延びる約2kmの堤防(車道)が潮流を阻害してヘドロが溜まり、海に浮かぶ孤島となったMSMを見られることは稀のようです。そこで堤防を取り除き、対岸と島を繋ぐ橋を建設することが決まったようです。2012年から本格的な工事に入るとの情報があり、この景色が見られるのも後わずかです。橋は2015年に完成予定でマイカーや観光バスの通行はできなくなり、対岸でリムジンバスなどに乗り換えて島へ移動させる計画のようです。勿論、徒歩でアプローチすることもできるようです。
世界遺産の代名詞とも言えるMSMですが、もう一つ物議を醸しています。風力発電所の建設計画により、ユネスコの世界遺産認定を取り消される危機にさらされています。島から17キロ離れた場所に3本の風力タービンを建てる計画があり、これが景観を損ねると言うものです。ユネスコは、影響を調べた上で措置を検討するとしています。どうなることやら。 -
モンサンミッシェル 大通り門。
15世紀に造られた外郭の城門「大通り門」をくぐっていよいよ幻魔の城へ上陸です。まず、薀蓄を傾けてみます。興味のない方は、スキップしてください。
オベール司教が大天使ミカエルのお告げで「トンブ山」に小さな聖堂を建てると、一夜にして陸続きだったその場所は海に囲まれる孤島になったといいます。708年にMSMは献納され、それ以後、聖地としての歴史が始まったのでした。
14世紀、英仏は百年戦争へと突入します。戦況は二転三転しますが、英仏の間に位置するMSMの修道院は閉鎖され、城塞として利用されることになります。しかし、干満の差と潮流の激しさが助けとなって敵が船で近づくことができず、戦争で大きな被害を受けることなく長い戦いの時代を無事乗り越えてきました。
百年戦争が終結すると戦乱を乗り切ったことで大天使ミカエルへの人々の崇拝は高まり、国王ルイ11世はフランスを勝利に導いた大天使ミカエルを称え「聖ミッシェル勲爵士団」を創設し、有力な貴族を選びました。フランス革命後は、牢獄として使われるなど数奇な運命を辿りました。そして、世が落ち着くと巡礼ブームに拍車がかかり、ヨーロッパ中から沢山の人たちがやってきたのです。しかし、当時の旅は大変なものでした。道中には強盗や疫病、戦争といった沢山の危険が待ち受けており、引き潮を待って砂浜を渡らねばなりませんでした。一気に押し寄せる大波に飲まれて命を落とす者も多数あり、MSMに巡礼する者は遺言書をしたためてから出発したと言い伝えられています。 -
モンサンミッシェル 大通り門 大砲。
英仏間の百年戦争(1337〜1453年)の間は、島全体が英仏海峡に浮かぶ要塞の役目をしていました。大通り門の手前には、イギリス軍が遺棄した大砲が残されています。
煙草をふかして一見悪そうな2人ですが、実はフランスでは喫煙の最低年齢を定める法律がないそうです。ちなみに、飲酒は16歳になると許されます。日本の感覚でこの写真を見ると治安が悪いように錯覚してしまいます。
フランスでは公共の閉じられた空間(駅、飲食店など)での喫煙が全面的に禁止されています(カフェ、レストランでは屋外席なら喫煙可)。違反者には68ユーロの罰金が科せられるそうですので愛煙家の方はご注意を!! -
モンサンミッシェル 王の門。
最も堅固な造りの城門で、王権の下にあることを分からせるために王から勅命を受けた衛兵が詰めていたことからこの名があります。王の門の前は、今では石畳を敷き詰めた広場になっていますが、往時は堀になっていたそうです。その片鱗である跳ね橋が掛けられています。城門の上には石落とし、内部には敵が急襲した時に一瞬で降下する鉄格子ポルタカリスが設けられています。
手前左側にはラ・メール・プーラール(プーラールおばさん)というホテル兼レストランがあり、巨大なフライパンで焼き上げるオムレツが名物になっています。 -
モンサンミッシェル グランド・リュ。
グランド・リュ(大通り)とは名ばかりで、非常に狭い坂道の参道です。ホテルや土産物屋が軒を連ねる修道院の表参道です。お店ではホタテ貝や杖をモチーフにした装飾が沢山見られます。これは中世の巡礼の象徴で、ホタテ貝は平和を意味し、杖は希望を意味するそうです。かつては、巡礼者が聖歌を歌いながら登ったそうです。 -
モンサンミッシェル グランド・リュ。
登り坂ですが、個性豊かな装飾看板たちが声援を送ってくれます。 -
モンサンミッシェル サン・ピエール教会。
岩穴を掘り下げて洞窟内に建てられています。聖ミカエルの信仰がこの地に移って来る以前からあった古い聖域に建てられた教会です。最初に建てられたのは、11世紀で、その後15世紀後半に増築されました。19世紀末、大修道院が廃墟と化すと代わって巡礼者を迎えるようになりました。
入口には百年戦争の最中に大天使ミカエルのお告げを受け、フランス軍を勝利に導いたジャンヌ・ダルク像が佇んでいます。その傍らでは、教会の壁に埋め込まれた聖母子像が沿道を登っていく我々の後姿をやさしく見守ってくれています。 -
モンサンミッシェル 修道院。
手前に見える急勾配の階段を登っていきます。
オンシーズンになると行列して登ることになるそうです。オフシーズンに来て正解でした。 -
モンサンミッシェル 哨兵の門。
長い階段を登り終えると哨兵の門。ようやく修道院の入口にたどり着きました。この階段は、大変急なので、ル・グフ (le Gouffe=奈落)の名が付いており、43段あります。先を急がず、ゆっくり登りましょう。
哨兵の門は14世紀に建てられた2つの小さな塔が見守る門で、塔の外壁にはのぞき穴があります。塔内部にある急な螺旋階段を登った所に警備兵の部屋があったそうです。 -
モンサンミッシェル
大階段グラン・デグレ(Grand Degre)。
階段を上がってすぐの踊り場にMSM版「奇跡の泉」があります。これは大天使ミカエルのお告げで礼拝堂を建てたオベール司教が、MSMが島であるために淡水がないことを憂えて祈った際、大天使ミカエルによって与えられたという伝説から来ています。巡礼者の喉を潤すだけでなく、「ルルドの泉」と同様に病を治癒する効果があると信じられていたそうです。干潮時にしか行けないそうですが、MSMの入口と反対側に聖オベール教会があります。その近くにオベール噴水小屋と言う、かって泉が湧き出していた場所があるそうですので、そこから運び上げて貯水槽に溜めていたのかもしれません。
オベール司教 「大天使ミカエルさま、お言いつけ通り
礼拝堂を建てました。 しかし、ここ
には飲用に適した水がありません」
大天使ミカエル「水…? 蛇口をひねれば出るだろう?」
オベール司教 「!?」
ルルドの泉の話については次を参照してください。
http://4travel.jp/traveler/montsaintmichel/pict/23931001/ -
モンサンミッシェル
大階段グラン・デグレ(Grand Degre)。
最後の階段、90段ありますので焦らず、慌てずに! -
モンサンミッシェル 教会の尖塔。
大階段をゆっくり登っていくと尖塔の大天使ミカエルが労いの表情で出迎えてくれます。
尖塔は海抜150m程あり、頂点には剣を抜いて悪竜を退治している金色に輝く大天使ミカエルの像が聳え立っています。高さは4.5mもあるらしいのですが、余りにも高いところにあるので小さくてよく見えません。 -
モンサンミッシェル ホタテ貝のレリーフ。
ホタテ貝(サン・ジャック)をあしらったレリーフがありました。元々ホタテ貝は聖者ヤコブを表し、MSMの紋章でもあるそうです。
また、往時、ホタテ貝は北スペインの特産物だったそうです。昔日の巡礼者たちはサンチャゴ・デ・コンポステーラへ行った証としてホタテ貝を身に付けたそうです。時が流れ、ホタテ貝そのものが巡礼を象徴するようになりました。また、ホタテ貝には、平和や再生(復興)の暗喩もあるとか。MSMのあちこちでホタテ貝をモチーフにしたレリーフやステンドグラスが見られる由。 -
モンサンミッシェル 西のテラス。
教会正面にある海抜80mの西のオープン・テラス。
テラスに敷かれた石畳には、教会建設に携わった人々のサインが彫り込まれています。
余談ですが、このテラスにはソー・ゴーティエのテラス(Terrasse Saut-Gautier)と言う名前が付いています。ここから飛降り自殺した囚人の名前だそうです。自殺を図った囚人の名前を付けるなんて尋常ではありませんが、何かしら特別の事情があったのでしょう。 -
モンサンミッシェル
西のテラスから対岸方面を望む。
干潮時には広い干潟と緑の湿地が延々と広がります。目の前の大きく蛇行しながら先へ伸びている川はクエノン川と言い、その右手奥に見える小さな集落に対岸ホテルが集まっています。お土産などを調達できるスーパーマーケットもあります。
クエノン川はノルマンディー(左)とブルターニュ(右)の州境になるのだそうです。では、MSMはどちらに属するのか?ノルマンディーだそうです。このテラスから地平線が一望できます。 -
モンサンミッシェル 修道院付属教会。
11世紀に完成した教会は、その後何度か崩壊し、その都度修復が施されて現在の姿を遺しています。手前は12世紀のロマネスク様式で、奥の内陣と後陣は15〜16世紀のゴシック後期のフランボワイヤン様式です。身廊の大きさはノアの方舟と同じとされ、この修道院がアララト山に漂着したノアの方舟に例えられるという学説もあります。袖廊の前に立つと、ほの暗い中に円頭アーチが並ぶロマネスク様式の身廊と光彩を潤沢に浴びた尖頭アーチが華やかに交錯するゴシック様式の内陣との対照の妙に心を奪われます。 -
モンサンミッシェル 修道院付属教会。
シックなステンドグラスですが、淡い緑青系の色彩と緻密なモザイク模様が見る者を惹きつけます。 -
モンサンミッシェル 修道院付属教会。(祭壇)
磨ガラス製のステンドグラスから燦々と優しい陽射が降り注いでいます。 -
モンサンミッシェル 列柱廊。
「ラ・メルヴェイユ」棟最上階の修道士の憩いと瞑想の場です。「ラ・メルヴェイユ」とは「驚嘆」の意味。13世紀前半に建築された修道院の居住空間にある瞑想の回廊で、どことなくアルハンブラ宮殿あるいはドーム型モスクのルーツとされるアヤ・ソフィアに倣う以前の中庭のあるモスクを彷彿させます。石柱は全部で227本あり、「驚異中の驚異」と呼ばれる建築美を構成しています。周囲を歩いていると石柱が無限に続くような錯覚に陥り、方向感覚を失い、時空の狭間に迷い込んだ気分になります。陽射が燦々と降り注ぐ中庭は天国を象徴しており、今日では楚々とした感じの花が植えられています。しかし、往時栽培されていたのは野菜とか薬草という実用的なもので、体調を崩した巡礼者たちを癒していたそうです。 -
モンサンミッシェル 列柱廊。
回廊の屋根は木製で船底のような造りです。船大工が活躍したのでしょうか、当時は屋根を軽くすることも先端技術の一つだったのでしょう。 -
モンサンミッシェル 列柱廊。
石柱のアーチとアーチの間にある白いカー産の石灰石には「エコワンソン」と呼ばれる彫刻装飾が見られ、葡萄やバラなどをあしらったノルマンディー風の彫刻が施されています。石柱はイギリスのパーベック島から取り寄せられた雲母大理石で造られています。 -
モンサンミッシェル 列柱廊。
狭い岩山の頂上近くに人為的に築かれた回廊ですので、石柱もアーチもこじんまりと数を多くして広々とした感じが出るように工夫されています。
石柱は見る方向によって多彩な幾何学模様を呈します。修道士たちは、石柱上部に彫られた「エコワンソン」と共に立ち位置によって刻々と変化する列柱の幾何学模様の意味するところを熟考しながら回廊を廻ったのでしょう。
今風に表現すれば「パワー・スポット」「ヒーリング・スポット」そのものです。 -
モンサンミッシェル 列柱廊。
中庭から食堂を仰ぐ。
塔のように天高く突き出たものは煙突で、換気口につながっているそうです。 -
モンサンミッシェル 列柱廊。
中庭から修道院付属教会を仰ぐ。教会内部から見たシックなステンドグラスの裏側になります. -
モンサンミッシェル 食堂。
船底を思わせる丸型天井を採用した食堂です。
59にも及ぶ小窓から美しい光が降り注ぎます。
往時は、人と目が合わないように壁に沿ってテーブルが配置され、聖典を朗読する声に傾聴しながら壁を見つめ、黙々と食事をとっていたそうです。 -
モンサンミッシェル 食堂。
上の写真の反対側にあった食堂内のステンドグラスです。
どことなくミッキーマウスを彷彿させ、かわいらしい感じです。 -
モンサンミッシェル
大天使ミカエルとオベール司教のレリーフ。
修道院の中を散策する道程の途中にあります。このレリーフは大天使ミカエルがオベール司教の頭に指を突き刺し、向かって左奥の丘を指し「かの山に聖堂を建てよ」と伝えている場面を表現したものです。
余談ですが、最近MSM周辺で頭部に穴の開いた頭蓋骨が発見されて大騒ぎとなりました。専門家が色々調べた結果、「骸骨は石器時代の人のもの」と発表されました。「ミカエル伝説の証拠」が立証できなくて関係者はがっかりだったとか・・・。 -
モンサンミッシェル 迎賓の間。
食堂直下にある大広間で、修道院長が位の高い訪問者を歓迎した場所です。身廊が2列あり、天井まで届く大きな暖炉ではイノシシや鹿を焼いていたそうです。中世に於ける最も優美な建築物の一つに数えられています。 -
モンサンミッシェル 聖マルタン礼拝堂。
ホタテ貝をモチーフにしたステンドグラスです。ホタテ貝と対になっている絵柄は、さて何でしょうか? 家?灯台? パッと見、家や灯台にも見えますが、実は壺が正解です。キリストが磔刑にかけられる前にマグダラのマリアがキリストの足に塗ったナルドの香油を入れた壺をモチーフにしているそうです。
南の袖廊の土台となっているロマネスク様式のこの礼拝堂は、1030〜1040年頃に建てられて以来、一度も手を加えられずに現存されている貴重な礼拝堂です。ただ、往時あった装飾は残されておらず、装飾に使われたと思われる痕跡が遺されているだけです。ぶ厚い壁をくり抜いたステンドグラスから、かすかに光が射しています。 -
モンサンミッシェル 大きな車輪のある通路。
車輪の手前は修道士の納骨堂になっています。
大きな車輪は重い荷物や食べ物を下から運び上げるための動力となるもので、駒ねずみのように6人の囚人が入って回したそうです。この車輪は1820年に設置されたもので、中世の工事現場で使われていたもののレプリカです。おそらくMSM建設の際も似たような車輪で花崗岩を引っ張り上げていたと思われます。 -
モンサンミッシェル 荷物を運び上げる急斜面。
大きな車輪で荷物を引き上げていたと言われる急斜面に設けられたレールです。 -
モンサンミッシェル
聖エティエンヌ礼拝堂(ピエタ像)。
この礼拝堂は、1830年まで遺体を安置する場所だったそうです。ピエタ像のイエス・キリストの頭はもぎ取られ、痛々しさが伝わってくるようです。 -
モンサンミッシェル
聖エティエンヌ礼拝堂(祭壇)。
死者を祀るために設置された祭壇の下にはA〜Ω(アルファ〜オメガ、つまり生〜死)を表す文字が刻まれています。19世紀にはハンセン氏病患者がこの場所に収容されたそうです。 -
モンサンミッシェル
聖エティエンヌ礼拝堂(壁画)。
右下には人物が3人描かれていますが、いずれも骸骨のようにやせ衰えた不気味な様態をしています。写真では分かり難いですが、骨壺のようなものも描かれています。ヨーロッパをペストの猛威が席巻し多くの人命を奪い人々に死の恐怖を与えた時代、教会では生と死を諭す目的で「三人の死者と三人の生者」という図像が壁画として多く描かれたそうです。しかし、対になっている生者が見当たらないのが不気味です。日本の鎌倉時代に描かれた「九相図」(九相詩絵巻)とも通じる所があり(係わりがあった訳ではないようです)、次第に腐敗し腐乱し白骨化していく様子は共通点のように思えます。「三人の死者」や「九相図」にしても、また「六道絵」もそうですが3の倍数になっている奇妙な共通項が気になります。九相詩絵巻について興味がある方は次のサイトを参照してください。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~itou/deki/dekixx/acontentX28.htm
国学院大学 小池教授によれば、聖エティエンヌ礼拝堂の壁画には「ミツバチの巣」が描かれているとのことです。壁画左上部がこれに相当するのでしょうか?痛みがひどく読み取れません。昔からミツバチは生と死両方のシンボルだそうです。また、ミツバチは古代の神々の象徴であり、古代ギリシャではメリッサ(ミツバチ)はアルテミスの象徴であり、デメテルやその娘のペルセフォネなど女性司祭者の称号でもあります。 -
モンサンミッシェル 騎士の大広間。
回廊の直下にある、修道士たちが手写本や彩色を行っていた仕事部屋です。ルイ11世が聖ミカエル騎士団を創設してから騎士の大広間と呼ばれるようになったそうです。床の中央部にある四角い板を開けると昔のぼっとんトイレになるそうです。
写真の奥にある細い螺旋階段を下ると「ラ・メルヴェイユ」の地上階に降り立ちます。往時の倉庫があり、続いて巡礼者への施し所の跡地が売店になっています。同じ巡礼者でも庶民と身分のある人ではもてなしに相当の差があったようです。勿論、お布施の額もそれ相応だったのでしょう。「地獄の沙汰も金次第」とは洋の東西を問わないようです。
尚、MSMの歴史を示す立体模型も売店の近くに置かれています。 -
モンサンミッシェル
大天使ミカエルのレプリカ。修道院出口付近の売店の先にあります。尖塔の先にあるものとは若干意匠が違うようです。騎士の格好をして剣と楯を持って竜を踏みつけています。少し角度を変え、竜を睨みつけているアングルで撮影してみました。今風に表現すれば「ドヤ顔」と言った所でしょうか!?
大天使聖ミカエルは守護者というイメージがあり、山頂や建物の頂上にその像が置かれています。過去にはキリスト教徒の守護者でしたが、今は警官や救急隊員の守護神となっています。
大天使ミカエルはキリスト教三大天使の一人で、最も神に近い存在とされています。三大天使とはミカエル、ガブリエル、ラファエルを指し、末尾に神を意味する「エル(el)」が付きます。ガブリエル「神の英雄」、ラファエル「神は癒す」、ミカエル「神は誰か」と言う意味があるそうです。ミカエルは、悪の化身の竜やサタンを退治したり、聖少女ジャンヌ・ダルクにフランスを救わせたことで有名です。MSMをはじめとして多くのミカエル聖堂が山の上にあるのは、ミカエルが神の使いとして天と地を往復すると信じられているためです。現在の地球はミカエルの守護年に当たり、23世紀まで続くと言われています。さて、2012年12月22日に地球が滅びるという『マヤの予言』、『ヨハネの黙示録』に記される2043年イスラエルのメギドの丘から始まる「ハルマゲドン」、いずれが正しいのでしょうか?預言=忠告と考えれば、その日に復活すると言われる「契約の聖櫃」に秘められた超絶的フォース=人類の知恵=科学が地球を救うと預言しているのでしょうか?滅亡と言うのはノアの方舟同様に腐敗しきったものを根絶することを意味し、実は人類が”新たな存在”として生まれ変わることなのかもしれませんね。 -
モンサンミッシェル ブークル塔にて。
雲が飛ばされ、教会の尖塔の影が潮が引いた干潟の白砂の上にくっきりと浮き上がりました。
引き潮の時には海岸線が20kmも後退し、土地の人々が「タング」と呼んでいる粘土質石灰質の広い干潟の白砂が出現します。遠方に見えるのはトンブレーヌ小島です。満潮のたびに波に打たれているトンブレーヌ小島は、静寂を求める修道士たちの黙想の場所に使われていたそうです。MSMとトンブレーヌ小島は、ブルターニュ地方のモン・ドルと同じく白粒岩という非常に堅い結晶片岩からできています。2千万年以上前に地中から、湾の地下の片岩を通り抜けて出てきたものだそうです。
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モンサンミッシェル 周遊路から尖塔を望む。
天空の城は見る方向や光の加減によって色々な表情を見せてくれ、飽きることがありません。スタジオ・ジブリの「天空の城ラピュタ」はMSMをモチーフに制作されたと言われています。文豪ヴィクトル・ユゴーは「海上のピラミッド」と賛辞を送っています。 -
モンサンミッシェル
サン・ピエール教会のステンドグラス。
教会では学生たちが修道女のお話を熱心に聞いている最中でした。ステンドグラスを透過した光が壁を彩っています。ミサの最中ではないようでしたのでカメラに収めました。ちなみに、ミサの最中は入口の扉が閉められているそうです。
大天使ミカエルを祀った礼拝堂には1877年に銀製の大天使ミカエル像が奉納されたそうですが、暗くて何処にあるのか分かりません。 -
モンサンミッシェル
サン・ピエール教会の主祭壇。
主祭壇には祭壇画が掲げれられていますが、その他は金の十字架や金の燭台などであまり目立つたものがありません。それ故に一層厳かな気配が漂います。 -
モンサンミッシェル 狭い階段。
グランド・リュから修道院へ通じる近道(横道)が所々にあります。人同志がすれ違うことができないくらい狭い通路です。オンシーズンでグランド・リュが混雑している時には、ツアー客もこのショート・カットを使って移動時間を節約するそうです。 -
モンサンミッシェル グランド・リュ。
グランド・リュ入口付近にあったクレープ屋さんです。甘いクレープも美味しいですが、ノルマンディーの名物は、現地では黒麦と言われているそば粉を使ったクレープ『ガレット』が一押しです。具にはハムとチーズが入っていて、トマトベースのソースがかかっています。 -
モンサンミッシェル 尖塔の大天使ミカエル。
目一杯望遠してみました。これで光学ズーム限界の焦点距離300mmの望遠です。現在のミカエル像は重さが400kgもあり、ヘリコプターで吊って取り付けられたそうです。 -
モンサンミッシェル 駐車場からのショット。
初冬に近いシーズンですが、青空と沸き立つ白い雲の効果で真夏のような写真に仕上がりました。 -
イチオシ
モンサンミッシェル 夕景。
夕日に染まるMSMです。
17:00過ぎにホテル着。しばらく休憩をとってから、近くのスーパーマーケットへ土産を買い出しに行きました。その後、カミさんとは別行動で18:00に夕景観賞に出発。最初は水門の近くでカメラを構えましたが、物足りなくて駐車場の手前まで接近。徒歩15分程の所で川が大きく蛇行している箇所です。潮はそれほど満ちていませんが、水面にMSMがきれいに映っています。少し前までは水辺まで降りられ、見事な逆さMSMが撮影できたようですが、今は橋の建設準備中で柵が設けられ思いが適いません。ちなみに当日の日の入り時刻は19:00過ぎでした。
日の入りの方位がMSMと90度程ずれている関係で、MSMを覆う空は思ったほど赤く染まりませんでした。それでも見応え十分です。
マイバス・パリツアーなどパリ発 日帰りでMSMを見学するツアーも企画されていますが、早朝7時過ぎに出発し、MSM見学3時間半、バス乗車 往復8時間の慌しい旅になります。また、夕景、夜景といった時々刻々と変化を見せるMSMを拝むことはできません。何度も来られる所ではないので対岸あるいは島内のホテルで一泊されることをお奨めします。パリツアーでも一泊するコースが企画されているようです。 -
モンサンミッシェル 夕景。
暮れなずむ空と孤高の天空の城が織りなす至高のひと時です。 -
モンサンミッシェル 落陽。
何故か旅先で見る落陽は哀愁を帯び、いつまでも心に残ります。 -
モンサンミッシェル 落陽。
日没後のマジック・アワーと言うか、オレンジ色の光彩が雑木林の繊細なレース状のシルエットを浮かび上がらせると共に上空の群青色にやさしく溶け込んで見事なグラデーションを呈しています。左側の川面に映るシルエットは、ホテルの脇にある水門です。旅先で一人黄昏るのは、最高に贅沢な時間です。 -
イチオシ
モンサンミッシェル 夜景。
ライトアップされたモンサンミッシェル。
夕食後は待望の夜景観賞です。MSMが12時頃までライトアップされています。
写真はコンデジの星空撮影モードで60秒間露光したものです。見た目に近いのは下の写真の30秒露光です。手振れ防止のために小型軽量の三脚(KENKO ST-081 435g)を使用し、シャッターを押す時にブレるのでセルフタイマー機能を使いました。よく見ると上空の星もしっかり捕えています。残念ながら満天の綺羅星までは再現できていませんが・・・。
夕食にはエイひれの縁側の部位をいただきました。食べ慣れないせいか、食が進みませんでした。
夜景観賞の注意点:
堤防には全く灯りがありませんので懐中電灯は必携です。満月であれば月明りで何とかなるかもしれませんが、雲で陰った場合には身動きがとれず危険です。当日は三日月でしたが、懐中電灯を切ると、辺りは漆黒の闇に変貌します。更に歩道は石ころだらけで歩き難いです。灯りを持たずに車道を歩くのは狂気の沙汰です。ただし、ホテル近くの水門辺りであれば懐中電灯なしでも支障ないと思います。橋には段差があるので注意してください。
10月下旬でしたが、海辺ということもあり夜は風が出て体感温度が下がります。手袋、マフラーと帽子があれば重宝します。当方は携帯カイロまで準備して臨みましたが、これは使わずにすみました。脚力に自信があればMSMに再上陸して間近で夜景を鑑賞するもの乙です。対岸にある水門から25分程、2kmの距離です。距離の割りに時間がかかるのは歩道が整備されていないためです。 -
モンサンミッシェル 夜景。(30秒露光)
ライトアップされたモンサンミッシェル。 -
モンサンミッシェル
対岸ホテル Digue(ディグー)。
お世話になったホテルです。右側がホテル別棟のレストランです。レストランの一部の席からは窓越しにMSMが望めますが、取り立てて騒ぐほどのものではありません。対岸にしても島内にしてもホテルの数が少なく、競合意識が薄いので設備やサービス等にはあまり期待されない方が賢明かと思います。
小さなホテルばかりですので、宿泊客が一斉にバスタブにお湯を張るとぬるま湯になってしまうこともあると添乗員さんが警告されていました。当方は、夜景鑑賞後、時間をずらしてゆっくり温まりました。今回の宿泊先はいずれもバスタブ、ドライヤー完備でした。フランスではバスタブのないホテルも多いようです。冷蔵庫はプルマン シャトー(ベルサイユ)以外は付いていませんでした。冷房機器のないホテルも多いそうです(扇風機のみ)。夏でも涼しいのでしょうね。 -
モンサンミッシェル 夜明け前
明るくなるのを待つ間に満天の綺羅星を撮影します。中央下方に見えるのが、ご存知のオリオン座です。オリオン座と言えば冬の代名詞ですが、明け方に西南の方向に見えるというのは冬のはじまりということになります。オリオン座の三ツ星の下方に煌めく色とりどりの星雲がM42(オリオン大星雲)です。また、オリオン座の左肩に当たるベテルギウス星から左、そして下へと展開するのが、「冬の大三角形」。左上:プロキオン星、下:シリウス星。シリウス星の下にはM41星雲が煌めいています。この写真のもっと下になります。オリオン座を中心に据えたつもりでしたが、モニターではどこを捉えているのか分かり難く、星空撮影は結構難しいことだと学びました。 -
イチオシ
モンサンミッシェル 夜明け前
ブルーモーメントと呼ぶにはまだ暗く、静寂が支配する空間は荘厳・神聖な雰囲気が漂っています。MSMの麓はかすかに海霧で靄り、幻想的かつスフマート画法風の柔らかな輪郭に包まれ、女神的な神秘さの中で聳え立っています。どちらかと言うと雄々しいイメージが先行するMSMですが、意外に女性的な一面を目の当たりにし、得した気分です。うっすらと紫がかる天空が次第に明るくなって行く光景は何とも神秘的で、天使たちが降りてきているような錯覚に陥ります。
日の出時刻は8:30頃でバス出発は8:00です。出発ぎりぎりまで近くの水門で粘りましたが、なかなか明るくなってくれませんでした。日の出の計算が甘かったということになります。
11月初旬のツアーに参加すれば日の出は8:00頃になりますが、サラリーマンですので諦めが肝心です。なぜ11月になると日の出の時刻が早くなるのか分かりますか?それは、10月最終日曜日にサマータイムが終わるためです。つまり、昨日は8:00の日の出が、今日は7:00になるというものです。3月の最終日曜日はこの逆になります。旅先でサマータイムをうまく活用するもの面白い発想だと思います。
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