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国の重要文化財に指定されている「手宮機関車庫3号」の修復工事が終わったので見てきました。<br /><br />明治18年に竣工した国内で現存最古の機関車庫で、明治30年代後半の姿に復元されています。<br /><br />建物の設計者は平井晴二郎。アメリカで西洋建築を学んだ人で、辰野金吾らより一世代前の建築家にあたります。後に北海道庁旧本庁舎の設計を行い、東京駅の新築の際には帝国鉄道庁総裁として関わっていました。<br /><br />小樽市総合博物館の敷地内に蒸気機関車、転車台、その他の鉄道施設などと一緒に展示されており、子供連れで賑わっていました。<br /><br />ここでは今回の修復のポイントなどを踏まえて紹介してみたいと思います。

【小樽建築散歩】手宮機関車庫3号(小樽市総合博物館)

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2010/05/02 - 2010/05/02

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ヌールッディーンさん

国の重要文化財に指定されている「手宮機関車庫3号」の修復工事が終わったので見てきました。

明治18年に竣工した国内で現存最古の機関車庫で、明治30年代後半の姿に復元されています。

建物の設計者は平井晴二郎。アメリカで西洋建築を学んだ人で、辰野金吾らより一世代前の建築家にあたります。後に北海道庁旧本庁舎の設計を行い、東京駅の新築の際には帝国鉄道庁総裁として関わっていました。

小樽市総合博物館の敷地内に蒸気機関車、転車台、その他の鉄道施設などと一緒に展示されており、子供連れで賑わっていました。

ここでは今回の修復のポイントなどを踏まえて紹介してみたいと思います。

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  • 外観上のポイントは、煙突が復元されたこと、入口のアーチが半円形に復元されたこと、越屋根のガラス窓が復元されたことです。

    外観上のポイントは、煙突が復元されたこと、入口のアーチが半円形に復元されたこと、越屋根のガラス窓が復元されたことです。

  • 「フランス積」(これは明治期の誤訳で、正しくは「フランドル積み」)のレンガ。レンガ造にした目的は防火のためです。<br /><br />フランス積を採用した理由の一つはデザインの美しさにもあるようです。実用性を重視する必要があるピットは、強度が高いと言われている「イギリス積」になっています。<br /><br />ちなみに、日本のレンガ建築では明治後半以降はイギリス積が採用されていくので、フランス積の建築はあまり多くは残っていないようです。<br /><br />縦長の窓は上下に開閉するのが特徴です。古い洋風建築の多くがこのスタイルを採用しています。

    「フランス積」(これは明治期の誤訳で、正しくは「フランドル積み」)のレンガ。レンガ造にした目的は防火のためです。

    フランス積を採用した理由の一つはデザインの美しさにもあるようです。実用性を重視する必要があるピットは、強度が高いと言われている「イギリス積」になっています。

    ちなみに、日本のレンガ建築では明治後半以降はイギリス積が採用されていくので、フランス積の建築はあまり多くは残っていないようです。

    縦長の窓は上下に開閉するのが特徴です。古い洋風建築の多くがこのスタイルを採用しています。

  • 煙突が復元されたことにより、蒸気機関車の格納庫としての機能が回復されました。<br /><br />中には、国産第2号の機関車であり、現存する最古の国産蒸気機関車でもある「大勝号」が格納されていました。<br /><br />ちなみに、煙突の復元については、メンテナンスが大変なので復元するかどうか議論があったそうです。

    煙突が復元されたことにより、蒸気機関車の格納庫としての機能が回復されました。

    中には、国産第2号の機関車であり、現存する最古の国産蒸気機関車でもある「大勝号」が格納されていました。

    ちなみに、煙突の復元については、メンテナンスが大変なので復元するかどうか議論があったそうです。

  • 格納された「大勝号」。明治28年(1895年)に手宮工場で製造されました。<br /><br />愛称は、完成時に日本が日清戦争に勝利したことに由来します。<br /><br />国産の蒸気機関車の製造と対外戦争での勝利。当時、日本が国際社会の中で力をつけていたことを、この機関車は象徴していると言えるでしょう。<br /><br />こうしたことは同時に、鉄道が国民国家形成や帝国主義的な進出などとも深く関わっていたテクノロジーであったことなども思い起こさせるものでした。

    格納された「大勝号」。明治28年(1895年)に手宮工場で製造されました。

    愛称は、完成時に日本が日清戦争に勝利したことに由来します。

    国産の蒸気機関車の製造と対外戦争での勝利。当時、日本が国際社会の中で力をつけていたことを、この機関車は象徴していると言えるでしょう。

    こうしたことは同時に、鉄道が国民国家形成や帝国主義的な進出などとも深く関わっていたテクノロジーであったことなども思い起こさせるものでした。

  • 今回の復元によって発見された「ピット」。復元前は床の下に埋められていました。機関車の下にもぐりこんでメンテナンスするための溝です。

    今回の復元によって発見された「ピット」。復元前は床の下に埋められていました。機関車の下にもぐりこんでメンテナンスするための溝です。

  • 内部は耐震補強のために鉄骨の柱が付け加えられています。建物内部の見通しは悪くなってしまっており、少し残念ですが、こうして見える場所で補強をすることによって、後日、取り除くこともできるため、こうした方法が取られたそうです。(柱や壁の中に埋め込むと、後日取り除くのが難しくなる。)<br /><br />また、越屋根のガラス窓は採光用の窓(当時は電灯などなかった)として機能しています。機関車庫として使われなくなった時期は板で塞がれていました。<br /><br /><br />ちなみに、壁の漆喰も塗りなおしたそうです。建物完成当時はレンガがむき出しになっていたのですが、完成後半年ほどしてからペンキ代わりに漆喰が薄く塗られていたことがわかったそうで、それを模して塗りなおされています。<br /><br />なお、入口上部のアーチの裏側を見ると、漆喰が(ペンキ代わりに)薄く塗られている様子がよくわかります。

    内部は耐震補強のために鉄骨の柱が付け加えられています。建物内部の見通しは悪くなってしまっており、少し残念ですが、こうして見える場所で補強をすることによって、後日、取り除くこともできるため、こうした方法が取られたそうです。(柱や壁の中に埋め込むと、後日取り除くのが難しくなる。)

    また、越屋根のガラス窓は採光用の窓(当時は電灯などなかった)として機能しています。機関車庫として使われなくなった時期は板で塞がれていました。


    ちなみに、壁の漆喰も塗りなおしたそうです。建物完成当時はレンガがむき出しになっていたのですが、完成後半年ほどしてからペンキ代わりに漆喰が薄く塗られていたことがわかったそうで、それを模して塗りなおされています。

    なお、入口上部のアーチの裏側を見ると、漆喰が(ペンキ代わりに)薄く塗られている様子がよくわかります。

  • 転車台と機関車庫1号(左)と機関車庫3号(右)<br /><br />転車台は(確か)大正時代のもので、当初のものではありませんが、実際に動くところを見ることができます。<br /><br />機関車庫1号は明治41年頃の建築で、もともと5つあった入口は、昭和初期に2つに減らされましたが、平成8年(1996年)に復元したものです。(左側3つが復元されたもの。)<br /><br />ちなみに、機関車庫2号は1号と3号の間に木造の仮設的な建築物として設置されており、明治後期から昭和初期頃まで存在していたようです。<br /><br />これらの他にも鉄道の車両や蒸気機関車・アイアンホース号にも乗車することができるなど、この博物館は予想以上に面白かったです。<br /><br />今回はあまり時間がなかったので、今度はじっくり見てこようと思います。

    転車台と機関車庫1号(左)と機関車庫3号(右)

    転車台は(確か)大正時代のもので、当初のものではありませんが、実際に動くところを見ることができます。

    機関車庫1号は明治41年頃の建築で、もともと5つあった入口は、昭和初期に2つに減らされましたが、平成8年(1996年)に復元したものです。(左側3つが復元されたもの。)

    ちなみに、機関車庫2号は1号と3号の間に木造の仮設的な建築物として設置されており、明治後期から昭和初期頃まで存在していたようです。

    これらの他にも鉄道の車両や蒸気機関車・アイアンホース号にも乗車することができるなど、この博物館は予想以上に面白かったです。

    今回はあまり時間がなかったので、今度はじっくり見てこようと思います。

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