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南仏プロヴァンスと英コッツウォルズをめぐる14日間の旅(4)     5月10日(日)<br /><br /><br />マルセイユ・サン・シャルル駅から在来線で北へ向かうと、エクサン・プロヴァン<br />ス(以下エクス)駅の手前で突然、窓いっぱいにサント・ヴィクトワール山が現れ<br />る。<br /><br />アヴィニョンからエクスへは、TGVを利用すれば20分ほど。ただし、エクスTGV<br />駅は市街から10km以上も離れている。しかも、山とは出逢えない。やはりマルセ<br />イユ経由で2時間、南仏のどこか寂寥とした景色を眺めながら、ゆっくりと旅を楽<br />しみたい。セザンヌが幼いころから目にしていたこの山を30代後半になって、モ<br />チーフとして再発見したのも車窓からだったといわれている。<br /><br />まずは、彼の作品を所蔵しているグラネ美術館をめざす。<br /><br />街はロトンド噴水を起点に東西に伸びるメイン・ストリート──ミラボー通りをは<br />さんで、北側が観光客でにぎわう旧市街。南にはルイ14世の時代に整備された貴<br />族の邸宅街、閑静なたたずまいのマザラン地区が広がる。美術館はこちら側。セザ<br />ンヌの生家もある。<br /><br />エクスの名は、古代ローマの執政官セクスティウスがこの地に冠した「アクアエ・<br />セクスティアエ」(セクスティウスの水──の意)から転じたとされる。その名の<br />通り、いたるところ意匠を凝らした噴水が設えられている。<br /><br />入口で「日本人か?」とたずねられる。「そうだ」と答えると、入館料が無料にな<br />った。・・・? セザンヌより60年ほど早くエクスに生まれた、フランソワ・マリ<br />ウス・グラネの遺贈作品をもとに開館された美術館だ。ところが、19〜20世紀の<br />作品を展示しているフロアはクローズしていた。それでか・・・涙。<br /><br />気をとり直して、セザンヌのアトリエをめざす。<br /><br />旧市街の北端からほぼ一直線に伸びる “セザンヌ通り” を、ひたすら登りつづける。<br />20分あまりでアトリエの前にたどり着く。ほとんど人と出逢うことのない通りと<br />は裏腹に、敷地内は観光客であふれていた。急坂にも関わらず、ご高齢の方の姿が<br />目立つ。<br /><br />サント・ヴィクトワール山を望むにはさらにこの上10分ほどのところ、レ・ロー<br />ヴの丘に登らなければならない。気をとり直すどころか、気合いを入れ直さなけれ<br />ば──。

セザンヌの山に逢いに行く。

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2009/05/07 - 2009/05/20

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四月の旅人

四月の旅人さん

南仏プロヴァンスと英コッツウォルズをめぐる14日間の旅(4)     5月10日(日)


マルセイユ・サン・シャルル駅から在来線で北へ向かうと、エクサン・プロヴァン
ス(以下エクス)駅の手前で突然、窓いっぱいにサント・ヴィクトワール山が現れ
る。

アヴィニョンからエクスへは、TGVを利用すれば20分ほど。ただし、エクスTGV
駅は市街から10km以上も離れている。しかも、山とは出逢えない。やはりマルセ
イユ経由で2時間、南仏のどこか寂寥とした景色を眺めながら、ゆっくりと旅を楽
しみたい。セザンヌが幼いころから目にしていたこの山を30代後半になって、モ
チーフとして再発見したのも車窓からだったといわれている。

まずは、彼の作品を所蔵しているグラネ美術館をめざす。

街はロトンド噴水を起点に東西に伸びるメイン・ストリート──ミラボー通りをは
さんで、北側が観光客でにぎわう旧市街。南にはルイ14世の時代に整備された貴
族の邸宅街、閑静なたたずまいのマザラン地区が広がる。美術館はこちら側。セザ
ンヌの生家もある。

エクスの名は、古代ローマの執政官セクスティウスがこの地に冠した「アクアエ・
セクスティアエ」(セクスティウスの水──の意)から転じたとされる。その名の
通り、いたるところ意匠を凝らした噴水が設えられている。

入口で「日本人か?」とたずねられる。「そうだ」と答えると、入館料が無料にな
った。・・・? セザンヌより60年ほど早くエクスに生まれた、フランソワ・マリ
ウス・グラネの遺贈作品をもとに開館された美術館だ。ところが、19〜20世紀の
作品を展示しているフロアはクローズしていた。それでか・・・涙。

気をとり直して、セザンヌのアトリエをめざす。

旧市街の北端からほぼ一直線に伸びる “セザンヌ通り” を、ひたすら登りつづける。
20分あまりでアトリエの前にたどり着く。ほとんど人と出逢うことのない通りと
は裏腹に、敷地内は観光客であふれていた。急坂にも関わらず、ご高齢の方の姿が
目立つ。

サント・ヴィクトワール山を望むにはさらにこの上10分ほどのところ、レ・ロー
ヴの丘に登らなければならない。気をとり直すどころか、気合いを入れ直さなけれ
ば──。

同行者
カップル・夫婦
交通手段
鉄道 高速・路線バス
  • Montagne Sainte-Victoire<br /><br /><br />サント・ヴィクトワール山は南仏ブーシュ・デュ・ローヌ県と隣接<br />するヴァール県にかけ、18kmにわたって連なる丘陵だ。最も高い<br />ところで1011m。ごつごつとしたライムストーンの山肌は、手前<br />に広がるプロヴァンスの緑あふれる風景とは好対照を見せる。<br /><br />セザンヌがこの山を最初に描いたのは1870年、『サント・ヴィク<br />トワール山と切り通し』だとされている。彼はこのとき31歳。だが、<br />晩年の10年間だけでも100点以上の作品に描いたという、最も愛さ<br />れたモチーフのひとつはここではまだ構図の中心にすらない。<br /><br />日記にも書いたように、ブーシュ・デュ・ローヌ県の県都エクサン<br />・プロヴァンス(以下エクス)に生まれたセザンヌが、ずっと目に<br />してきたこの山を画題として意識したのは30代も後半になってから。<br />たまたま列車の窓から見たときのことだった。<br /><br />パリ生まれ、エクス育ちの作家ゾラとは幼いころからの親友で、の<br />ちに “絶交” 。1902年、ゾラがドレフュス事件の渦中で突然死去し<br />たのと前後して描かれた『レ・ローヴから見たサント・ヴィクトワ<br />ール山』には、どうしても彼のこのときの心情が重なる。生来の気<br />難しさから友人と呼べる人間をほとんど持たなかった彼ゆえに、ゾ<br />ラの死はとり返しがつかない。<br /><br />セザンヌが最晩年に好んだレ・ローヴからのアングルは、“セザンヌ<br />通り” にある彼のアトリエからさらに10分ほど登った左手の丘の上。<br />作品のパネルなども展示され、美しく整備されている。ふり返ると、<br />のちのキュビスムを用意した代表作に描かれているサント・ヴィクト<br />ワール山が、そこにそのまま現れる。

    Montagne Sainte-Victoire


    サント・ヴィクトワール山は南仏ブーシュ・デュ・ローヌ県と隣接
    するヴァール県にかけ、18kmにわたって連なる丘陵だ。最も高い
    ところで1011m。ごつごつとしたライムストーンの山肌は、手前
    に広がるプロヴァンスの緑あふれる風景とは好対照を見せる。

    セザンヌがこの山を最初に描いたのは1870年、『サント・ヴィク
    トワール山と切り通し』だとされている。彼はこのとき31歳。だが、
    晩年の10年間だけでも100点以上の作品に描いたという、最も愛さ
    れたモチーフのひとつはここではまだ構図の中心にすらない。

    日記にも書いたように、ブーシュ・デュ・ローヌ県の県都エクサン
    ・プロヴァンス(以下エクス)に生まれたセザンヌが、ずっと目に
    してきたこの山を画題として意識したのは30代も後半になってから。
    たまたま列車の窓から見たときのことだった。

    パリ生まれ、エクス育ちの作家ゾラとは幼いころからの親友で、の
    ちに “絶交” 。1902年、ゾラがドレフュス事件の渦中で突然死去し
    たのと前後して描かれた『レ・ローヴから見たサント・ヴィクトワ
    ール山』には、どうしても彼のこのときの心情が重なる。生来の気
    難しさから友人と呼べる人間をほとんど持たなかった彼ゆえに、ゾ
    ラの死はとり返しがつかない。

    セザンヌが最晩年に好んだレ・ローヴからのアングルは、“セザンヌ
    通り” にある彼のアトリエからさらに10分ほど登った左手の丘の上。
    作品のパネルなども展示され、美しく整備されている。ふり返ると、
    のちのキュビスムを用意した代表作に描かれているサント・ヴィクト
    ワール山が、そこにそのまま現れる。

  • Les Deux gar&#231;ons<br /><br /><br />エクサン・プロヴァンスのクール・ミラボー(Cours Mirabeau ミ<br />ラボー通り)は、ヨーロッパで最も美しい通りだとされている。プ<br />ラタナスの並木がつくる木陰では、この日アンティーク市が開かれ<br />ていた。<br /><br />起点となるド・ゴール将軍広場には3体の白亜の彫像が睥睨するよ<br />うに立つ、ひときわ大きなロトンド噴水がある。この噴水から数え<br />て3つ目の噴水の先、左手にカフェ「レ・ドゥー・ギャルソン」は<br />ある。<br /><br />創業1792年、当時のままのインテリアが見事だ。サー・ウィンス<br />トン・チャーチル、パブロ・ピカソ、ジャン・コクトー、アンドレ<br />・マルロー、エディット・ピアフ、ジャン=ポール・ベルモンド、<br />アラン・ドロン──数多くの著名人がここに集った。若きポール・<br />セザンヌはエミール・ゾラらリセの友人たちと、夕食前の3時間を<br />ここで過ごしたという。<br /><br />現在のホスピタリティは・・・「カフェ・ヴァン・ゴッホ」と比較<br />すれば、ずっと洗練されている。レ・ローヴからの帰り道、ビール<br />(ハイネケン 400&#13206;)とグラスワイン(白)でひと息つくのもよい。<br />いずれも5ユーロ。

    Les Deux garçons


    エクサン・プロヴァンスのクール・ミラボー(Cours Mirabeau ミ
    ラボー通り)は、ヨーロッパで最も美しい通りだとされている。プ
    ラタナスの並木がつくる木陰では、この日アンティーク市が開かれ
    ていた。

    起点となるド・ゴール将軍広場には3体の白亜の彫像が睥睨するよ
    うに立つ、ひときわ大きなロトンド噴水がある。この噴水から数え
    て3つ目の噴水の先、左手にカフェ「レ・ドゥー・ギャルソン」は
    ある。

    創業1792年、当時のままのインテリアが見事だ。サー・ウィンス
    トン・チャーチル、パブロ・ピカソ、ジャン・コクトー、アンドレ
    ・マルロー、エディット・ピアフ、ジャン=ポール・ベルモンド、
    アラン・ドロン──数多くの著名人がここに集った。若きポール・
    セザンヌはエミール・ゾラらリセの友人たちと、夕食前の3時間を
    ここで過ごしたという。

    現在のホスピタリティは・・・「カフェ・ヴァン・ゴッホ」と比較
    すれば、ずっと洗練されている。レ・ローヴからの帰り道、ビール
    (ハイネケン 400㎖)とグラスワイン(白)でひと息つくのもよい。
    いずれも5ユーロ。

  • Gare Aix-en-Provence

    Gare Aix-en-Provence

  • La Rotonde @ Place du G&#233;n&#233;ral de Gaulle

    La Rotonde @ Place du Général de Gaulle

  • Cours Mirabeau

    Cours Mirabeau

  • Maison Natale de C&#233;zanne

    Maison Natale de Cézanne

  • Mus&#233;e Atelier de Paul C&#233;zanne

    Musée Atelier de Paul Cézanne

  • Chemin de Lauve

    Chemin de Lauve

  • Eglise St-Jean de Malte

    Eglise St-Jean de Malte

  • Mus&#233;e Granet

    Musée Granet

  • Cath&#233;drale St-Sauveur

    Cathédrale St-Sauveur

  • Place de l&#39;H&#244;tel de Ville

    Place de l'Hôtel de Ville

  • Gare Marseille St Charles

    Gare Marseille St Charles

  • Quai des Belges

    Quai des Belges

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