カフカスで最も居心地良く感じたアルメニア

1999/02/10 - 1999/02/20

　バルト３国を除く旧ソ連諸国の中で役人が最も一般的な対応だったのがアルメニア。ナゴルノ・カラバフを巡るアゼルバイジャンとの戦争もひとまず終結し落ち着きを取り戻しつつ合ったが、隣国のトルコとアゼルバイジャンとの国境は閉鎖し、資源の乏しいアルメニアは貧しさが滲み出ていた。

　アゼルバイジャンのバクーとアルメニアのイェレバンとお互いの首都を比較すると、先の戦争ではアルメニア側が完勝したとはとても思えぬほど、廃れていた。世界に離散し、アメリカ経済界にも大きな影響力を持つと言われる同胞のアルメニア人達の支援が戦勝の故だと言う事は想像に易い。さもなくばナゴルノ・カラバフはトルコとの結びつきの強いアゼルバイジャン軍に席巻されていただろう。

アルメニアでのアゼルバイジャンの話はタブーだ。知り合ったアルメニア人の家族に旅程を話し、アゼルバイジャンを通過すると言っただけでも、今までにこやかに話し、和やかな雰囲気だったのが一遍、立ち所に笑顔が消え、水を打ったように静まり返った。アルメニアからロシアに行く為にはグルジアとロシアとの関係が悪いから、アゼルバイジャンに行かざるを得ないと、慌てて言い訳し、何とかその場の雰囲気を戻し、ヒヤヒヤしたことがある。またアルメニアではトルコに対しても印象が良くない。アルメニアはトルコに母なる山アララトや古都アニを奪われ、そしてトルコ人により大虐殺を経験している。このオスマン・トルコの大虐殺が世界中へのアルメニア人の離散を招き、アルメニア人が殺され、かれらが立ち去り、無人と化した現在のトルコ東部にクルド人が流入し、トルコでの本格的なクルド人問題が始まる。

　こうした悲劇の歴史を経験したアルメニア人達の絆は強い。資源に恵まれ、トルコの援助もあって圧倒的に有利な筈のアゼルバイジャンに勝利し、（自称）独立国となったナゴルノ・カラバフにアウトバーンを首尾良く建設し、アルメニア人の大地であることへの根拠を固めていった。

　国民の生活が大変貧しいアルメニアだが、居心地の良さはカフカス随一ではないだろうか。役人の統制がしっかりと取れているのか、役人からの強請は全くなかった。そして物怖じせず声をかけてくる明るいアルメニア人気質は、訪れるものを寛容に受け入れてくれるような懐の深さを感じる。また彼らの心の拠り所でもあるアルメニア正教会は、カトリックのような派手さはなく、大変質素な趣だが、教会は大変心が安らぐ不思議な癒しの力をもっている。アルメニアでは精神的に満たすことのできる国ではないだろうか？


私のアルメニアでのお気に入りはこうした心休まる教会と、アルメニアで切り出された、トゥフと呼ばれる石材を使われた建築物。トゥフはこの建物のほか、ハチュカルと呼ばれるアルメニア正教の十字架が刻まれた石材にも用いられ、アルメニアでは一般的だ。このトゥフは茶色や赤茶色の色をしたものがあり、研磨されたものは大変美しく、落ち着きがあ李、気品高差すら感じさせる。イェレバンの中央郵便局の外壁は典型的なトゥフの石材があしらわれた建物だが、アルメニアに訪れたら、是非建物に注目して欲しい。

エリア エレヴァン(アルメニア)

• 交通手段: 鉄道 高速・路線バス タクシー ヒッチハイク
• 航空会社: アエロフロート・ロシア航空

アルメニア文字。全く読めません・・・。

エレブニの要塞から望むエレヴァン市内。

エレヴァンの立派なオペラハウス。

露店のお菓子屋さん。

アルメニアでしか採れないと呼ばれる、トゥフという石でできているのだそうです。良い色してます。

エレヴァンで宿泊したホテルエレブニ。一泊シャワー付きで20ドルでしたが、シャワーは水シャワー。

母なるアルメニア像。像の建つ丘の上からは眺めも抜群です。

モヤに包まれた市場。まるで闇市

エレヴァンの建物。アルメニアはカフカスでもっとも治安も良く、警察も統率がとれて、安心ができます。

地下のマーケット

5世紀に作られたアルメニア文字やその古典の研究や展示が行われているマテナラダン。因みにカーペットと言う言葉はアルメニア語から来ているのだとか。

エレヴァンの中央郵便局。トゥフで外壁を作られた建物は味があります。

エレヴァン郊外の道

バスでグルジアのトビリシへ向かう途中での休憩所にて。バスは国際バスとは思えないほどのボロボロのイカルスバス。暖房もなくバスはとてつもなく寒かったです。

イェレヴァン大学