2006/08/06 - 2006/08/15
220位(同エリア467件中)
huwaさん
新潟県の越後妻有郷では、三年に一度のアートの祭典(トリエンナーレ)が行われています。
その名も「大地の芸術祭」。
初めてこの芸術祭の噂を聞いたときには「なんでそんな田舎で現代アートを?」と首をかしげたものでした。でも訪れてみて大いに納得。田舎と現代芸術は実はとっても相性がいい!
田んぼのわきにごろんと転がされたアートのとぼけた味わい。山の中に分け入って行かないと出会えない作品が与えてくれる、宝探しのワクワク感。
時には、苦労してそこまでたどり着いたけど「なんですかこれは??」とはてなマークしか浮かばなかったり、「これって失敗作だよね…」みたいなものもあったりしますが、そんな当たりもハズレも含めてとても楽しい体験ができるのが、この芸術祭の醍醐味なのです。
このトリエンナーレ、第一回目が2000年に行われたときには、
「2003年の第二回までは開催が決まっているが、その後はどうなるかわからない(消滅するかもしれない)」
などと言われていたものです。
第一回目からすっかりこの芸術祭のファンになってしまっていた私は、第二回目以降、2006年の第三回目もありますように!と祈るような気持ちでいたのですが、2004年には中越地震がこの地方を襲い、また冬には豪雪が交通を遮断したというニュースが伝えられ、胸つぶれるような気持ちでした。
冷たいお茶と枝豆で歓待してくれた蓬平集落のおばあさんたちは無事かなあ、とか、心のこもったおもてなしをしてくれた津南町の旅館は大丈夫かなあ、とか、…
紆余曲折はきっとたくさんあったことでしょうが、ともかく無事開催された第三回。これまでにも増して気合いを入れて、アートめぐりの旅に出発しました。楽しさの一部分でも伝えられればいいなあ、と思ってこの旅行記を作ります。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- JR特急
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-
8月7日(月)午前。
車を運転できない私は、とにかく徒歩で行けるエリアからアートめぐりを始めなければなりません。
JRほくほく線の「松代」という駅周辺は、徒歩客のためには一番お手軽なエリアです。
初日の午前はこの駅から歩き始めて、まずはこんな田んぼの中の道を、ずんずん上ってゆきました。 -
するとこんな看板がありました。
「雨天時、雨上がりは歩行禁止です。木道は濡れていると滑ります。また、一部痛んでいるところや、滑りやすいところがあります。晴天時でも、十分ご注意下さい。転倒・ケガには責任を負いかねます。ご注意下さい。責任者」
だって。
どうやら危険だらけの遊歩道のようです。
はーい、気をつけて歩きます。今日は晴天だし雨上がりでもないから大丈夫ですよね。 -
確かに濡れていたら滑って転びそうな遊歩道です…傾いているし…ところどころ腐っていて、誰かが踏み抜いた穴とかあるし…
でも森の中はひんやりとして、空気がおいしい。
歩いていてとても気分のいい散歩道です。 -
こんな作品看板が見えてきました。
橋本真之「雪国の杉の下で」。 -
…あ、何かいる!
ひっそりと息をひそめて、
樹木に寄り添って。。 -
銅の彫刻です。
2000年からここにいて、なんだかすっかりこの森になじんでいます。 -
そして遊歩道はうねうねと続き…
木漏れ日と一緒に蝉の声が降り注ぎ… -
次の作品看板が見えてきました。
小林重予「あたかも時を光合成するように降りてきた〜レッドデーターの物語より」 -
なんか宇宙から来た不思議な生物が、ここを気に入ってここにいる、みたいな風情で…
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作家が知らないうちに増えてたりしてね(笑)…
-
森を抜けるとこんな作品がありました。
マダン・ラル「平和の庭」。
インドの作家が作った、大理石の蓮の花です。
中央に池があるせいか、きれいな赤や黒のトンボがとびかっていて、この蓮の花の上で羽根を休めたりしていました。 -
森と田んぼの間に、真っ赤なお屋根の四阿がありました。
六角形の屋根の下には六つの冷蔵庫。
そのそれぞれに雪だるまが納まっています。
近寄って確かめたらホンモノの雪だるまでした。
芸術祭の間だけホンモノの雪だるまがいて、他の期間は発泡スチロールの雪だるまがいるんだそうです。
スイスの作家・シモン・ビールによる「今を楽しめ」という作品です。
-
田んぼの中にこんな観測所がありました。
中に入るとちょうど両耳の横にヘッドホンのようなものが来ます。
片方で田んぼの音、もう片方で空の音を聞く、とガイドブックに書いてあるので耳をすましてみます。
最初は何も聞こえないのですが、しばらくすると、遠くの電車の音や、空を横切る鳥の声、田んぼを渡る風の音なんかが聞こえてきます。
牛島達治「観測所」でした。 -
誰かいます。真っ赤なかかしです。
近くまで行って裏を見たら、名前が書いてあったのでびっくり。
モデルになった地元の人の名前なんです。 -
こんな親子のかかしもいます。
モデルになった子は大きくなったでしょうね…。 -
ここのあぜ道を歩いていくと、足もとからぽっちゃん、ぽっちゃん、と音たてて、何かが田んぼの水の中に飛び込んでいきます。
小さなカエルたちです。
よーく見ると、お水の中にはたくさんの生き物がいます。
田んぼで泳ぐメダカの群れというのを、生まれて初めてこの目で見ました!
大岩オスカール幸男「かかしプロジェクト」でした。 -
天高く赤とんぼもいます。
見るだけでちょっと胸がすくような高さです。
田中信太郎「○△□の塔と赤とんぼ」 -
…それにしても暑いです。雪国だから夏は涼しいのかというとそんなことはなくて、夏の新潟県はけっこうしっかり暑いのです。三年前にはフェーン現象まで来て気絶するほど暑かった。
「君が来ると暑くなる」と言われたこともあります。実は私、超がつくほどの晴れ女なのです。「また猛暑を連れてきたな〜」とか言われそうです。
森の中の道は涼しかったけど、田んぼの中の道は日陰がなくて焼けつくよう。しかもここからは車道です。アスファルトからも熱が立ちのぼってくる…。
ちょっとへばりそうになっていたら、向こうに何やら賑やかな一団が、ずらりと並んで歓迎してくれているのが見えました。
あれは何?…あれもかかしたちです! まあなんて色とりどりな! -
一番先頭で迎えてくれたのは、なんと赤いポストのかかしでした。
これを見た時には私、たっぷり3分間は声をあげて笑い転げてました。
誰もいないのをいいことに(車道だけどほとんど車も通らないし)、日盛りの田んぼの中の道路の真ん中で。
まったくこれだから現代アートはやめられません。時々お腹の底から大笑いをさせてくれて、元気をくれるんですから。 -
次から次へとかかしです。
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こんな有名人もいます。
後ろ姿も似てました(笑)。 -
ピカソである、と名乗っています。
-
実はこのかかしたち、東京深川の商店街恒例「かかしコンクール」のかかしたちなのです。
下町の生まれ育ちなんですね〜。
都会から田んぼの中へやってきて、とっても生き生きはりきっているみたい? -
静かなんです。
人もいないし車も通らない。
ほんとに静かなんですけど、とってもお祭り騒ぎな気分になっちゃいました。
かかしたちのおかげで。 -
でもそこを過ぎたら
心を静めて次の作品へ。
…実はこの作品に会いにここまで上ってきたのです。
トビアス・レーベルガー「フィヒテ(唐檜)」です。
どんな作品かというと… -
この道の先に、図書館があるんです。
-
ほら、見えてきました。
森の図書館です。 -
2003年には、ここで忘れられない絵本に出会いました。
作家がドイツの人なので、ドイツ関係の本ばかりが集められています。
この作品と芸術祭の趣旨を理解して、各出版社がよりすぐりのドイツ関係の本を寄贈してきたのだそうです。
この本棚は施錠されて永久設置されると聞いていましたが、地震にも豪雪にも耐えて、まだちゃんとあってくれて本当に嬉しい。 -
ドイツですから哲学の本もあります。
こんな席で読めばすっと理解できちゃうかも。
-
再び山道を下って、今度はこの作品に再会しに来ました。
「西洋料理店 山猫軒」(白井美穂)という作品です。
緑の中に一枚一枚違う色のドアが立っていて、ちゃんと開け閉めできるようになっています。
順番に開けて進みながら、宮沢賢治の小説『注文の多い料理店』をたどっていけるようになっています。
ドアの色や文字の色も、原作を忠実に反映しているんですよ。
開けても開けてもドアばっかりで、ちっとも客席にたどりつけない料理店…あの小説の中の「山猫軒」そのものです。 -
この日の前半の予定はこれで終了。
お昼をかなり回ってしまいました。
「農舞台」の中で昼食を取ったり展示を見たりして休憩し、午後の予定の松代商店街へ向かうことにします。
(2)につづきます。
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この旅行記へのコメント (2)
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- ぱんぱーすさん 2006/10/12 13:16:16
- こんにちは〜
- huwaさんこんにちは、ぱんぱーす(しゃど)です。
まずはトリエンナーレ(1)を見せていただきました。
何かマザー牧場(地元ネタでスミマセン)のオリエンテーリングを思い出しました(^^)牧場中に散らばったいくつもの番号札を、3時間以内にどれだけ見つけられるか、というゲームです。あぁ、ここも童心に帰れそうな感じでいいですね。
表紙の彫刻、思い切り「もの○け姫」の○ダマを意識したように見えちゃいます。をいをい(^^;芸術って、周辺に溶け込ませるのも芸術なら、作品だけをわざと目立たせるようにするのもまた芸術なんですね。これからじっくり見させてもらいます〜。
- huwaさん からの返信 2006/10/13 01:08:16
- 童心
- ようこそ! ぱんぱーすさん、ご訪問ありがとうございます。
ほんと、オトナがマジメに童心に帰るっていうのが、こういうアートの祭典のお約束なのかもしれません。
一度体験したらはまってしまう理由は、そのへんにもありそうですね。
オリエンテーリングの要素もあるんですよ。
芸術祭パスポートというのを購入して、作品を1つ見るとスタンプを1つ押す、ということになっていますので。
特にこの夏は、子供たちを連れたファミリーが車でアートめぐりしている姿をたくさん見かけましたけど、子供たちは完全にスタンプ集めを目的にしてはりきっていました。
そんなお子たちにせがまれて、パパやママやお祖父ちゃんお祖母ちゃんが一緒に週末毎にアートめぐりしているうちに、なんとはなし目が肥えてアート通になってしまった、ということもあるみたいでした。
「もの○け姫」の○ダマ…(笑)まったくその通りですね。
空気の清涼感、あの静けさ、木洩れ日の輝き…妻有の森は、別になんにもなくても木霊とかいそうな雰囲気なんですけど、その雰囲気を彫刻にして具現化してくれているってなかなか気持ちのいいものでした。
また来て下さいね。
ぱんぱーすさんの「絹の道ひとり旅」の続きも、とても楽しみにしています!
huwaより
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