2006/05/08 - 2006/05/19
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ハイペリオンさん
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特に惹きつけられるものもないのだが、とりあえずポッパ山に行くことにした。ヤンゴンの友人Nさんも「行った方がいい」というので、その気になった。ポッパ山はこの国の土俗信仰、すなわちナッ神という精霊の神殿がある山である。この神殿は、トロイデ型の死火山の山腹にできた寄生火山タウンカラッの頂上に建てられていて、まるで城砦のようだ。この寄生火山は、ポッパ山の頂上のクレーターと形と大きさがほぼ同じで、大噴火の際頂上部分がそのまま吹き飛んで現在の場所に落下したとも言われている。
朝8時にアウンヤダナーレストランで昨日のタクシーと待ち合わせた。ほぼ時間どおりに昨日のタクシーが来た。寡黙な運転手だが、それだけに信用できる男だ。ぺらぺらと口数の多い男はどうも信用が置けない。ウィンウィンが「私も行こうか?」と言ったが「いや、一人で行くよ」と断った。店のこともあるだろうから気を遣ったつもりだったが、後から考えると彼女も行きたかったのかもしれない。タクシーで遠出なんてめったにできないことだから。
ニャウンウーからポッパ山までの道路は舗装されている上に交通量も少ないので快適なドライブが楽しめる。周囲も緑が多く、高原地帯を走っているような感じだ。
「昨日さあ、チップくれたじゃない。すごい嬉しかったよ」
唐突にドライバーが口を開いた。そして、問わず語りに自分のことをしゃべりだした。
「この仕事は、1日やってもらえる金は1000か2000ksなんだよね」
ここのタクシーは、車を何台か所有している親方みたいな人が運転手を雇って運営している。給料は歩合ではなく、日当で支払われるらしい。ドライバーの給与レベルは一般の労働者とほとんど同じだ。タクシーに乗るのはほとんどが外国人旅行者だから、各ホテルやゲストハウスに御用聞きのような感じで前日に営業をし、予約を受けるというシステムになっている。
「おれの彼女はポッパ山で茶店をやっているんだ。その子と来年結婚するんだ」
「だったら毎日行きたいんじゃない?」
僕がからかっても、彼は少し笑うだけだった。
「結婚って金がかかるもんだよ」
自分に言い聞かせるように彼はつぶやいた。ミャンマーではこのあと「だからちょっとお金くれない?」という展開になる場合が多いのだが、真っ直ぐ前を見つめてハンドルを握る彼からは、そんな言葉が出てくる雰囲気は全くなかった。
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途中で椰子の木が整然と植えられている場所に立ち寄った。ここが、出発前にウィンウィンが言っていたパームツリーガーデンか。つまり椰子の木園ということか。観光コースになっているからか、ドライバーはごく平然と車を停めた。
道路沿いに掘っ立て小屋があり、中ではジュースや蒸留酒、お菓子を作っていた。写真は蒸留酒を作っているところ。味見をさせてもらったが、かなりきつい。記念にすこし弱い方を一瓶買った。この後、若い男が椰子の木に登って実を取る実演をしてくれた。別にどってことないのだが、とりあえず関心のあるふりをする。好奇心の強い旅行者を演じるのも楽じゃない。 -
1時間あまりで神殿のあるタウンカラッの麓に着いた。ドライバーがつきあっている彼女は、神殿への階段の入り口の隣に小さな茶店を構えていた。ドライバーが旅行者をここへ連れてくる度に彼女の茶店に寄り、親交を深めて行ったのだろうか。当の彼女は女子プロレスラーの北斗晶をふくよかにさせたような感じだった。2人並んで座っているのを見ると、実に仲が良さそうで、微笑ましい印象を受けた。二人の見送りを受け、僕は神殿への長い階段へ向った。
鉄の階段は長く、急で、けっこうきつい。猿があちこちにいて、観光客があげる餌を食べていた。餌は売店で売っていて、新聞紙で筒状に包まれている。当然猿はそれを破って食べるから、あたりは新聞紙の破片だらけだ。猿は日本の観光地にいるような、観光客に暴虐の限りを尽くす不良猿ではなく、餌をくれない人には基本的に無関心だった。参道だから裸足で歩くのだが、周囲に猿の糞が落ちていて汚い。いつ踏んでしまうとも限らず、絶えず足元には注意が必要だ。それにしても、くそ猿どもの糞が落ちているようなところをなぜ人間様が裸足で歩かねばならぬのか。ミャンマーの精霊様は理不尽な業をお課しになるものだ。おまけに糞の臭いが臭いんだよ。当たり前だけど。
参拝者はミャンマー人ばかりで、バガンの寺院とは違って地元の人たちの観光地という感じ。階段の所々に小さな売店があり、どこでも見かけるようなだるまさんやふくろうの置物を売っていた。
写真は、階段への入り口にたむろする売り子たち。 -
「一個二百チャットでけっこうです」...てなわけないけど。
頂上に行くまでにいくつか祠があって、神様が祀らせている。しかし、どれもこれもマネキンっぽくっていっこうに有り難味が湧いてこない。神社仏閣仏様は古ぼけている方が有り難味を感じると、幼い頃から刷り込まれている僕にとって、ミャンマーの神様はおっさんの模型にしか見えないのだ。
このような神様と一緒に仏像も祀られていたりして、どうなってんの? という疑念もふと浮かんできた。後でウィンウィンにこの疑問をぶつけたら、ナッ神と仏教両方の聖地だからという答えが返ってきた。要するに鳥居の奥に仏様がいらっしゃるということになってしまっているのだ。日本人の宗教心もかなりいいかげんだが、ミャンマー人のそれもなかなかだ。確かに精霊信仰とは言っても日本の神道みたく神主さんがいて、格式ばった儀式があるわけではなく、大衆の信仰心がよりどころみたいなものだから、有り難いものは全部一緒に...という気持ちがあっても不思議ではない気もする。 -
頂上からの風景。バガンの周囲は緑が少ないと言われているが、意外とそうでもない。
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神殿からドライバーの彼女がいる茶店へ降りると、二人は並んで座っていた。
「三七のナッ神は見た?」
「いや、見てない」
「この先にあるよ」
ドライバーの指さした方向へ歩くと、みやげものを売る子供たちが付いて来た。しつこくもうるさくもないので放っておいたら、2人が金魚の糞のようにくっついてきた。
三七のナッ神は上で見たのと同様、マネキンが37体安置されているだけだった。
茶店に戻ると、ミルクティーを出してくれた。一人のみやげ物売りの女の子がじっとこちらを窺っている。カメラを向けるとスッとうつぼのように柱の影に身を隠した。
けっこうおいしいミルクティーを飲み終わり、勘定を聞くと、彼女は「ノーノー」と言って取り合わなかった。ありがとう。いいカップルだ。2人で真面目に働く、いい夫婦にになりそうだ。 -
店先で鼻歌を歌いながら仕込みをする女の子たち。
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日本の企業が協力し合って、バガン周辺で植林事業を展開している。韓国の企業も同じことをやっていた。バガン周辺を緑の大地に変えようという壮大な計画だ。ただ、遺跡周辺は小さな仏塔群も良く見えるように、木々を伐採したということを聞いたことがある。
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