2010/11/19 - 2010/11/19
286位(同エリア469件中)
まみさん
国立能楽堂、太っ腹!
開演前や休憩中なら舞台の写真を撮ってもいいなんて@
ふと、能鑑賞にチャレンジしてみたくなりました。
きっかけは他愛ないです。
文楽をよく見るので、今年、国立劇場のあぜくら会員になりましたが、そのおかげで会員誌が毎月届きます。
年に4回の文楽と違って、能は同じ演目を1回ずつしか上演しない代わりか、毎月公演があります。
会誌であらすじを読んでいるうちに、なんだか能に興味が湧いてきたわけです。
もともと仮面劇としての能に惹かれるところがあったからでしょう。
善は急げと早速チケットを予約した一か月前の私は、能の舞台に正面席・中正面席・脇正面席とあって舞台を扇形に囲んでいることも、能と狂言がセットであるのがふつうであることも知りませんでした。
もともと外にあった能の舞台を屋内に取り込んだので、屋内であっても能の舞台には屋根がある、なんてことも。
あんまり素人すぎて退屈して眠くなってしまうのを恐れ、公演までの約一か月、写真の多い読みやすい本で予習をしました。
自分で買ったのが2冊、図書館で借りたのが2冊。
図書館の本で国立能楽堂の舞台の写真を見たとき、屋内にある屋根付きの舞台という異空間にドキドキしました。
この舞台を生身で見るだけでも、行く価値があるのでは、と思ったくらいです。
そんな能舞台は、一か月前までは能のことなど何も知らなかった私にとって、無知の闇からベールを脱いで姿を現したかのように思えました。
そして観劇しおわったあとの感想は。
ある程度、演目をえり好みすると思いますが、でもまた見たいと思います、能も狂言も。
歌舞伎は去年2009年に一度見たっきりで、いまのところまた見ようという気にならないのに。
たぶん、能や狂言の演目が、歌舞伎や文楽よりもずっと私好みだからかもしれません。
それでも文楽はマリオネット劇の要素に惹かれています。
確かに能も狂言もスピーディな現代では考えられないほど、動作もなにもかもゆーっくりゆーっくり進みます。
演者の登場のための調べがあんなに長いなんてびっくりです。
でも、ぎりぎりまで簡素化された動作や舞台装置、そしてストーリィーの中の時間の流れは超現実的で、むしろとても現代的だと思いました。
また、床に足をつけたままの摺り足でゆっくりゆっくり歩く人間離れした様子は、私の大好きなクラシック・バレエの動きに通じるものがあるように思いました。
動きのスピードは全く違いますが、バレエのつま先たちのポワントで細かく歩く動きは人間でないもののような錯覚をさせますが、そこが能の動きが目指すところと究極は同じではないか思ったのです。
国立能楽堂の公式サイト
http://www.ntj.jac.go.jp/nou/index.html
<これまでの劇場シリーズの旅行記(観劇感想付き)>
東京宝塚劇場(有楽町)
2006年3月:宝塚「ベルサイユのバラ<アントワネットとフェルゼン編>」
「手にしたばかりのオモチャに夢中:デジカメ持って宝塚劇場へ(その1)」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10059201/
2006年4月:宝塚「ベルサイユのバラ<オスカルとアンドレ編>」
「手にしたばかりのオモチャに夢中:デジカメ持って宝塚劇場へ(その2)」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10062015/
東京文化会館(上野)
2006年5月:ボリショイ・バレエ団「バヤデール」
「何十回と訪れて、初めてまともに歩いた上野公園その3:もろもろ&最近の上野での過ごし方」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10065823/
新国立劇場(初台)
2007年3月:新国立劇場オペラ「さまよえるオランダ人」
「今宵は初台の新国立劇場へ」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10130385/
新橋演舞場(東銀座)
2007年3月:ミュージカル「阿国」
「今宵は東銀座の新橋演舞場へ」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10131883/
国立劇場・小劇場(半蔵門)
2007年5月:文楽「絵本太閤記」
「国立劇場で文楽を見たよ@」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10150477/
帝国劇場(有楽町)
2007年12月:東宝ミュージカル「モーツアルト」
「帝国劇場でミュージカルを見よう」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10206152/
東京国際フォーラム(有楽町)
2007年12月:国立モスクワ音楽劇場バレエ「白鳥の湖」(ブルメイステル版)
「国際フォーラムでもバレエを見るよ」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10206978/
東京芸術劇場(池袋)
2008年1月:ミュージカル「妊娠させて!」
「池袋の東京芸術劇場、ミュージカル観劇の日は雪でした」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10216358/
劇団四季・自由劇場(浜松)
2008年3月:劇団四季ミュージカル「赤毛のアン」
「劇団四季・自由劇場ときれいになった浜松町駅界隈」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10228045/
新国立劇場(初台)
2008年12月:新国立劇場バレエ「シンデレラ」
「クリスマス色の新国立劇場でバレエ「シンデレラ」を鑑賞」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10296524/
赤坂ACTシアターと赤坂サカス(赤坂)
2008年12月:K-Companyバレエ「くるみ割り人形」
「イルミネーションの赤坂サカスでバレエ「くるみ割り人形」を鑑賞」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10297306/
国立劇場・大劇場(半蔵門)
2009年6月:歌舞伎「歌舞伎のみかた/華果西遊記」
「歌舞伎の西遊記を観に行こう!───国立劇場の大劇場は日本画の宝庫@」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10349807/
マッスルシアター(渋谷)
2009年9月:マッスルミュージカル「祭(MATSURI)」
「残暑厳しい9月の連休にマッスルミュージカルを見に行きました@」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10378257/
劇団四季・海劇場(大井町)
2009年11月:劇団四季ミュージカル「アイーダ」
「ちょっとだけクリスマス・イルミネーションの汐留の四季劇場「海」でミュージカル「アイーダ」を鑑賞」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10401655/
新ビッグトップ(原宿)
2009年12月:シルク・ド・ソレイユ「コルテオ」
「一度は当日公演中止の憂き目にあったシルク・ド・ソレイユの「コルテオ」リベンジ!」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10405973/
新国立劇場(初台)
2010年6月:新国立劇場オペラ「カルメン」
「新国立劇場の3階客席からオペラ「カルメン」を鑑賞」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10469761/
紀尾井ホール(麹町)
2010年7月:ニュー・オペラ・プロダクション「末摘花」
「真夏の夜の紀尾井ホールで女だけのオペラ「末摘花」を観劇」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10484515/
彩の国さいたま芸術劇場(与野本町)
2010年8月:音楽劇「ガラスの仮面〜二人のヘレン」
「なつかしの「ガラスの仮面」を久しぶりの彩の国さいたま芸術劇場で観劇」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10494901/
ゆうぽうと(五反田)
2010年10月:谷桃子バレエ団「レ・ミゼラブル」
「60周年記念公演で花に飾られた五反田ゆうぽうと」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10512012
劇団四季・夏劇場(大井町)
2010年10月:劇団四季ミュージカル「美女と野獣」
「大井町の四季劇場「夏」でこけら落とし公演「美女と野獣」を見に行こう!」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10515432
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国立能楽堂に到着!と思ったけど……?
ずいぶん普通っぽい建物です。まるでうちの地元の公民館のよう!?
よく見たら、これは国立能楽堂ではあっても、事務所入口の方でした。
えーと、正面ゲートはどこ? -
こっちが国立能楽堂の正面ゲート
それらしくて安心しました。
私はJR千駄ヶ谷駅からアクセスしましたが、どうやら素直に線路沿いに歩いていけばここに出られたようです。
ヘタに近道しようと思って、返って遠回りしてしまいました。 -
国立能楽堂の三本松がある前庭と正面玄関
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和の雰囲気たっぷりの入口
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ちょっと不思議な雰囲気の正面玄関ロビー・その1
おっ、ロッカーがあります。荷物が多いので助かりました。
国立劇場同様、ロッカー代は10円でした。 -
天井が美しい正面玄関ロビー
ここはまだチケットを見せなくてもいられるエリアです。
奥に女性が控えているところからチケットが要ります。 -
ちょっと不思議な雰囲気の正面玄関ロビー・その2
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チケットを提示して入場した直後
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現代アートチックな壁と本日の公演タイムスケジュール
はじめに狂言「鳴子」が40分、そして20分の休憩を挟んで能「俊寛」が75分です。
正式な能・狂言上演は1日がかりになってしまうので、現在の公演はこのように2〜3本だけの略式が大半になりましたが、私にとってもこのくらいの時間が鑑賞していられるぎりぎりだと思います。
これ以上長いとたぶん苦痛。 -
国立能楽堂の案内図とチラシ置き場
なかなか面白い構造をしています。
舞台が正方形に長方形がくっついたひしゃくのような形で、それを見所と呼ばれる客席が扇形に囲んでいます。
なので座席前ロビーが三角形です。 -
夜の中庭
常緑樹ばかりで紅葉する木はなさそうでした。 -
お休処という風情の食堂
うむ、いつもの松屋で大急ぎで夕食をとらずとも、ここで夕食をとってもよかったんでした。
松屋の方が安上がりですけどネ。 -
舞台前ロビーも天井が美しい・その1
売店は小さいけれど3ヶ所ありました。
この写真に写っている右手の売店ではカレンダーやプログラムを販売していました。 -
舞台前ロビーも天井が美しい・その2
この写真の左端の人が集まっているあたりにある売店では、主に能・狂言関連の書籍を販売していました。
でも、もう4冊読んで予習してきたもんね。
どれも写真が大半の易しい本ですけど。
図書館で借りた本
・ポプラ社の図鑑「伝統芸能」
・Shotor Libraryシリーズ 能楽入門①「初めての能・狂言」(小学館)
自分で買った本
・「まんがで楽しむ能・狂言」(漫画=小山賢太郎/文=三浦裕子/檜書店)
・「劇場に行こう」シリーズ「能にアクセス」(井上由理子著/淡交社) -
さて、座席に向かいましょう!
待機していた女性スタッフにダメモトで舞台の写真を撮ってもいいか尋ねたら、上演中以外の開演前や休憩中はノーフラッシュなら構わないとのこと。
やったーっ! -
舞台への入口がある廊下
右手にベンチやトイレがありました。
でもトイレは入ってすぐにある所の方が数が多かったです。 -
私は正面席7列目1番だからこの3番扉から中に入ります!
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イチオシ
どーんとおわしました能舞台@
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中正面席と脇正面席の様子
中正面席は柱で見えにくくなることがあるので安い席です。
でも能の立体感を見るのには良いので、ある意味、通好みの席でもあるようです。
脇正面席は役者をヨコから見られる、これもまた通好みの席です。
一番見やすいのは正面席で、値段も一番高いです。
高いといっても日本のバレエ団や劇団の公演でも1万円前後するバレエやミュージカルに比べたらずっと安いです。
正面席=4,800円、脇正面席=3,100円(学生:2,200円)、中正面席=2,600円(学生:1,800円)です。
あぜくら会員の私は、正面席のチケットを1割引でゲットしました。 -
前の座席のうしろに字幕が出るシステム
飛行機の座席みたいに液晶画面が前の席のうしろについています。
公式サイトによると、このシステムが導入されたのは平成18年11月からだそうです。
公式サイトより国立能楽堂の字幕システムについてのお知らせ
http://www.ntj.jac.go.jp/gekijo/nou/jimaku.html
まああの舞台で、座席が扇型に囲んでいるこの状態で、どこに字幕システムをつけたらよいか、迷いますよね。
この字幕システムでは、単に謡(うたい)=セリフの現代語訳だけでなく、ごく簡単ですが場面や状況の解説も表示されました。 -
私の席から見た能舞台
向かって左の柱は能面をつけた演者の目標となる目付柱といいます。
私の席は正面席であっても1番左端なので、時々この柱のせいで演者が隠れて見えなくなってしまいました。
今度はもう少し真ん中の席をとりたいです。 -
舞台正面と橋掛かり
能の舞台には幕がありません。
左に伸びるのは「橋掛かり」といい、その左手の突き当たりにあるカラフルな幕は「揚幕」です。
揚幕の奥から聞えてくる笛や太鼓の最後の音あわせは「お調べ」といって、いわば開演の合図となる序曲のようなものです。 -
老松が描かれた鏡板のある正面舞台
休憩時間に舞台に近付いて撮影しました。 -
舞台と橋掛かり、それから橋掛かりの両方にある遠近法を駆使した3本の松
松は右から一の松、ニの松、三の松で、順々に小さくなっていて遠近法の効果を出しているそうです。
でも私の席からだと脇正面席の人たちで松が隠れてしまってよく見えず、そのすばらしい効果というのはさっぱり実感できませんでした。 -
演者や囃子方が登場する揚幕
バックミュージックである囃子方(はやしかた)、そしてシテ方(能の主役)やワキ方(能の主役を支える脇役)、狂言方(狂言の役者)といった演者が登場するのは「揚幕」の向こうからで、橋掛かりを通って正面にやってきます。
能の舞台に舞台装置はほとんど使われませんが、時々「作り物」というごく簡単な象徴的な大道具が使われるとすると、演目が始まる前にやはり揚幕から登場して、舞台上でセットされます。
本で予習したとおり、揚幕から道具が登場するときは、揚幕は半開きでした。
囃子方や演者が登場するときには、全開きになりました。
揚幕は手動です。
両脇に2人いて竹竿で上下するのですが、私の席からは竹竿で上下する片方の人が見えました。 -
飛行機のシートのような液晶画面付きの現代の座席と、古式ゆかしい舞台のギャップが面白い@
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イチオシ
舞台正面と橋掛かり
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イチオシ
観客席である見所と舞台
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揚幕の近くから見た橋掛かりと3本の松
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休憩中に売店散策
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ペンケースやティッシュケースや巾着に、おっ、能面!
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美しい娘を表しているはずの「小面(こおもて)」
どの本にも載っていなかったこんなアングルはいかが?
というか、こんなアングルでしか撮れなかったんですけど。 -
下から覗く般若は鼻が大きくて眉が寄っていて、いまにも泣きそうで、ちょっとユーモラス!?
これらの能面は税込みで33万円!
現代作家・松本冬水師の作品で、個展で40万円以上の値がついているそうです。
そこを面袋付きで税込み33万円というなら、かなりお得ということですねっ! -
オリジナル・カレンダーを販売中
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老松が描かれた鏡板と切戸口
奥の、竹が描かれた下にある小さな扉は「切戸口」といいます。
コーラスである地謡(じうたい)や、舞台上でいろんなことをちょこちょこやりながら舞台を支える後見が出入りする入口です。
みなさん、かがんで出入りしていました。 -
イチオシ
終演後に、向かって右手の「地謡」が座る方から撮った能舞台
階(きざはし)と呼ばれる階段と、玉石が敷かれた白洲もよく見えるように撮りました。
白洲は能舞台が屋外にあったときの名残りだそうです。 -
奥の席はSB席と呼ばれる、いわばボックス席かな
さすがにこの席は誰もいなくなった終演後でなければ写真が撮れませんでした。 -
能舞台をあとにする
<狂言「鳴子」の感想>
演者は3人で、主人役と家来の太郎冠者と次郎冠者でした。
家来の2人は主人から、田んぼの稲がよく実って、鳥に狙われているから、鳴子を鳴らして鳥を追い払ってくれと頼まれます。
言いつけどおり鳴子を木にくくりつけて、揺らしてカタカタ鳴らしながら、2人は主人の人柄を褒めたりなど世間話をします。
そこへ、主人がねぎらいにやってきて、酒を差し入れます。
お酒が入った太郎冠者と次郎冠者は、いーい気持ちになってしまい、仕事をさぼって居眠り。
そこへ再び様子を見に来た主人に叱られて、ごめんなさーい、ごめんなさーい!と逃げ出す───と、こういった実に他愛ないけれど、ほのぼのとした内容でした。
3人とも、構えは少し前のめりで傾いていました。
これは能とも共通する、重心を腰に置いて、いつでも動き出せる基本の姿勢で、見えないところに力がみなぎった、緊張感のある構えだそうです。
というのは予習した本からの受け売りで、私には、緊張感どころか、ぬぼーっと立っているように見えてしまいました(苦笑)。
でもそれは狂言だからかもしれないです。
演者たちは、特に主人と太郎冠者は、まるで笑いの面でもつけているみたいに、見ているだけでにんまりと笑いが誘われる楽しそうな表情をしていたんですもの。
この演目では、内容が他愛ないせいもあり、謡(うたい)は聞き取れたので、字幕は見なくても平気でした。
歌うところでも、いちいち細かい意味が分からなくても、古典らしい流れるようなリズムで謡われる美しい日本語をそのまま音で楽しむのは、文楽で慣れているので、それと変わりありませんでした。
もうちょっとひねった内容があるかと思っていたので終わった直後は拍子抜けしましたが、こういう日常のちょっとした場面やエピソードを描くことが多いのが狂言だと思い出したら、他愛ないことを1つの舞踊劇として完成させたことが大変面白く思えました。
<能「俊寛」の感想>
「俊寛」といえば、私にとって芥川龍之介の「俊寛」です。
同じ流刑仲間の3人のうちたった一人恩赦が下りなくて鬼海が島に残されることになり、「おれも都へ連れていってくれー!」と最後まで駄々をこねるように抵抗し、わめき大騒ぎして絶望する俊寛。
なにぶん読んだのは随分昔なので、確かこういうかんじではなかったかな、という印象しかいまは覚えていませんが、俊寛の激しい絶望ぶりに圧倒されたものです。
でも、能はガラッと違っていました。
嘆く俊寛のしぐさは、本で予習していなかったら、顔を洗っているようにしか見えなかったと思えるくらい、おとなしかったです。
俊寛以外は、都の使いも船のこぎ手も、許されて都に帰る流刑仲間の2人も、みな面をつけず、素顔を面とみなす、直面(ひためん)でした。
シテ(主役)以外の演者はあまり面をつけないことも本で予習して知っていたのでがっかりしませんでしたが、俊寛は面をつけて登場したのでほっとしました。
私は能の面に興味があるので、全員が直面だったらやっぱりがっかりしてしまったでしょう。
もっとも、直面も、素顔が面のように見えるか、じーつくり眺めてしまいました(笑)。
都の使いの役の演者さんは、なかなかいい男ぶりでした@
少し年輩の人たちも、まぶたとセリフをしゃべるときの口元しか動かない顔を見ているうちに、老人の絵を描いた名画から伝わる美しさと人生の深みのようなものが感じられてきました。
逆説的かもしれませんが、面で顔の表情が動かないからこそ、感情がより豊かに伝わってくる気がしました。
きっと、人物に感情移入することで、想像力で無意識に補ってしまうのでしょう。
考えてみたら、それは、文楽の人形を見るときも同じです。
こういう脳内変換の楽しさが、歌舞伎よりも文楽や能が私好みの理由かもしれません。
この演目では、能の音楽を担う囃子方は笛と小鼓・大鼓が登場しました。
太鼓がいないので、囃子方としてはフル登場ではありませんでした。
適度な湿り気が必要な小鼓は、本で予習したとおり、小鼓の打ち手が何度も皮に息をふきかけて、湿度を保っている姿が見られました。
そんな風に、本で予習したことが、実際にそうなんだ、と確認するのも、初めての鑑賞なのでなかなか面白かったです。
ただ、小鼓・大鼓の打ち手は、掛け声も大事とは知っていましたが、時々、シテ役やワキ役などの演者の声までかき消されぎみに思えてしまいました。
地謡は、いわゆるバックコーラスですが、10数名ほどいました。
とっても渋い声で、重厚な雰囲気を舞台に添えるので、とても気に入りました。
時々、たたんだままの扇を上げ下げしていたのは意味が分からなかったですが、みんな一糸乱れず、そろって上げ下げしていました。
演者の登場を予告するような音楽と、演者が橋掛かりをゆっくりゆっくり、まるで自ら動いているのではなく、別の見えない何かに引っ張られているように登場する間はとっても長く感じられて、まるで時間が止まっているように思えてしまいました。
なのに、ゆったりと流れていると思ったわりには、ストーリィーから余分なものがそぎ落とされて極限まで詰められたのか、展開が速くてびっくりです。
能鑑賞初デビューの私にとって、不思議な時間感覚でした。
能も狂言も、ひょっとしたら退屈してしまって、二度と見たいと思わなくなるかもしれないと自分で自分のことながら予測がつかなかったのですが、その心配はありませんでした。
どちらも、また見たいと思います。
でも、気に入ったからといって、能や狂言は、テレビ放映やビデオなどでは、間延びする時間が耐えられなくて、とても見ていられない気がします。
照明が落とされない明るい客席の中で、他の観客の中に身を置きながら、演者と同じ空間と時間を共有して鑑賞してやっと、その良さが分かると思いました。
というより、ド素人の私には、その臨場感がないと、良さはわからないと思いました。
おわり
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