2024/08/01 - 2024/08/08
8611位(同エリア8937件中)
サバーイさん
アンコールワットの第一回廊から中央祠堂へ、いよいよ本丸に入っていきます。
-
みなさん、こんにちは。サバーイです。
私はいま、アンコールワットの第一回廊の北西端(地図の矢印)に来ています。 -
ここから第一回廊のレリーフをガイドのコサルさんに案内してもらいながら鑑賞したいと思います。
-
コサルさんは日本語が達者な有資格ガイドで、今回の旅行のコーディネーターでもあります。
この壁面にはインドの古代叙事詩『ラーマーヤナ』のクライマックスが壁一面にびっしりと刻まれています。
なぜアンコールワットにインド古代叙事詩が彫られているのか。コサルさんへの質問はそこから始まりました。 -
アンコール・ワットを創建したスーリヤヴァルマン2世は、ヒンドゥー教の最高神の1人であるヴィシュヌ神を熱心に信仰していました。
当時の王たちは、「自分は神の化身(現世に現れた神そのもの)である」として統治の正当性を人々に示していました。
叙事詩『ラーマーヤナ』の主人公であるラーマ王子は、ヴィシュヌ神の化身とされています。つまり、ラーマ王子の偉大な戦いや勝利の姿を壁画に描くことで、「自分(国王)もラーマ王子のように偉大で聖なる存在である」という王の権威を象徴・誇示する目的がありました。 -
主人公のラーマ王子率いるサルの軍隊と、十の頭を持つ魔王ラーヴァナ率いる悪魔(羅刹)の軍隊が激しく衝突する様子です。
-
右上には、顔が赤茶色に彩色された悪魔の戦士が描かれています。彼は右手に持った武器(剣か棍棒のようなもの)で、足元にいるサルの兵士を力任せに打ち据えようとしています。
-
冠をかぶり、右手に持った巨大な弓を力一杯に引き絞っているのが我らがラーマ王子です。
-
宿敵、悪魔(羅刹)の軍勢を率いる魔王「ラーヴァナ」が描かれた場面です。
その圧倒的な異形と強大さがクメールの彫刻技術で実に見事に表現されています。
ラーヴァナの最大の特徴は、10個の頭を持っていることです。レリーフを見ると、中央の大きな顔の上に、まるでピラミッドのように小さな顔が何段にも積み重なって彫られているのがはっきりと分かります。ちょっとした劇画タッチです。 -
回廊の各辺(壁面)のちょうど中間地点に十字型の出入口(テラス・翼堂)や柱が配置されており、これによってレリーフが描かれた壁面が物理的・視覚的に区切られています。
そのため、歩いていると途中で柱や門の空間に突き当たり、そこを抜けるとまた次のテーマの壁画が始まるという、「絵巻物をめくるような仕切り」を体感できるようになっています。 -
次の絵巻へ誘うのが柱に彫られたデバダー(女神像)です。アンコールワットの中には2000体を超えるデバダー像が彫られているそうです。
優雅な姿勢としなやかな体のライン、細かく彫られた王冠や装飾品、神秘的なほほえみ。これらはそれぞれ特徴が異なり、魅入られてしまいます。クメール寺院を見学する楽しみの一つがデヴァダ鑑賞です。 -
次の壁面の絵巻は古代インドの長編叙事詩『マハーバーラタ』のクライマックスシーンで、ヴィシュヌ神の化身であるクリシュナが英雄アルジュナを導き、正義の勝利をもたらす場面です。これもまた、ジャヤバルマンII世王の権威を象徴・誇示する目的があったと思われます。
-
戦車(馬車)に乗って弓を引く英雄アルジュナ。ヴィシュヌ神の化身であるクリシュナが英雄アルジュナを導き、正義の勝利をもたらします。
-
さらに回廊を反時計回りに回ると、南回廊に「アンコール・ワットを建てたスーリヤヴァルマン2世本人の偉業」を描いた歴史画。
ご本人が他の英雄絵巻の並びで登場することこそが、これらのレリーフが彫られた意味を物語っています。 -
第一回廊の西塔門から、さらに中に入っていきます。
-
第一回廊を抜けたさらに内側、第二回廊へと向かう途中は「十字回廊」によって4区分されています。それぞれが沐浴池だったといいます。
-
参拝に訪れた王や高官、高僧たちが、さらに神聖な中心部(第二回廊・第三回廊)へと進む前に、この池の水で手足を洗い、心身を清めたのだそうです。
-
十字回廊の壁面にはさまざまなデヴァダのレリーフが。
これは「肩を組み、手を取り合う2人のデバター(女神)」のレリーフです。 -
1,500体以上あるアンコール・ワットのデバターの中でも、最も仲睦まじく、人間味あふれる関係性が描かれた傑作のひとつ、だそうです。(顔面のヒビが痛々しいですが)
-
こちらは保存状態の極めて良い、3人並びの女神像。
-
十字回廊には魅力的なデバター像が多く残っており、どれもフォトジェニックです。
-
こちらも大変保存状態が良く美しい「4人並んだデバター」。
-
ネックレス(胸飾り)や腕輪、アンクレットなどの精緻な彫りが今でもはっきりと目視できます。
-
優雅に植物の枝や蓮の蕾(あるいは一輪の花)をつまんで胸元に掲げています。これは神への捧げ物や、純潔・美の象徴として描かれています。
-
なかにはこのように損傷を受けたものもあります。カンボジア内戦のときの傷跡でもあります。
-
柱や天井の梁の近くに濃く残っている赤色は、かつてこの十字形回廊が数多くの仏像や聖水で満たされていた華やかな時代の色鮮やかな名残です。
この通路の左右(柱の並びの向こう側)には、先ほどの4つの沐浴池(現在は石畳の凹地)が広がっています。 -
奥には数段の階段があり、そこを登った先がさらに神聖な「第二回廊」の入り口へと続いています。
-
柱の最上部、梁との境界付近の天井面に、赤と白で描かれた鮮やかな丸い花の模様(ロータス・蓮のモチーフ)が非常に綺麗な状態で残っています。
また、 梁の側面(写真上部の横に長い部分)には、小さなデバターや神々が横一列にびっしりと並んだ精巧な連続レリーフが刻まれています。 -
柱のひとつに注目。
江戸時代の武士・森本右近太夫一房(もりもとうこんだゆうかずふさ)が寛永9年(1632年)に書き残した、有名な墨書(落書き)の柱です。 黒い墨の部分をよく見ると、うっすらと「日本」「国」「森本右近太夫」といった漢字の筆跡を今でも視認することができます。 -
当時(鎖国直前)、日本人の間ではここがインドにある仏教の聖地「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)」であると本気で信じられていました。右近太夫は、亡くなった母の菩提を弔い、父の後生を願って遥々海を渡り、仏像を奉納した記念としてこの文章を書き残しました。
現代の感覚では文化財への「落書き」ですが、当時の日本とカンボジアの歴史的な大航海・交流の事実を証明する、世界的に極めて一級品の一次史料(歴史的遺物)となっています。 -
十字回廊の内部(沐浴池のすぐ脇)で、カンボジアの僧侶(アチャアと呼ばれる在家信者や聖職者)から聖水を授かる「聖水式」の儀式を行っている様子です。
この十字回廊は、現代でも地元の人々や熱心な参拝者が祈りを捧げる「現役の信仰の場」であることがよく分かります。 -
奥の回廊の柱の間に、いくつかの仏像が並んでいるのが確認できます。このエリアはかつて何百体もの仏像が奉納されていた「千体仏の回廊」と呼ばれていましたが、内戦や盗掘によってその多くが失われ、現在は残された一部の仏像が安置されています。
-
1970年代のポル・ポト政権(クメール・ルージュ)の時代、彼らは宗教を全面的に否定したため、アンコール・ワット内の仏像を意図的に破壊し、「首をはねて」近くの沐浴池へ投げ捨てたりしました。
-
十字回廊の屋根瓦の上をよく見ると、そこにも細かな彫刻が。
-
「仙人(リシ 」の浮き彫り(レリーフ)です。
ヒンドゥー教の伝承における聖者や修行者を表しており、十字回廊の柱や壁面などに数多く彫られています。 -
特徴的な「連子窓(れんじまど / 連子格子)」。
クメール建築の代表的な技法の一つで、まるで木製のろくろ細工のように見えますが、すべて砂岩(石)を削って作られた石の格子です。
強い直射日光を遮りながら、心地よい風と柔らかな光だけを回廊の内部に取り込む、天然のブラインドの役割を果たしていました。 -
十字回廊の階段を抜けると、広場のようなスペースが現れ、目の前に中央祠堂が聳え立つ景色が飛び込んできます。
-
その手前をぐるりと取り囲んでいるのが第二回廊です。
-
第二回廊の壁面に彫られた美しいデバダ象。
-
第三回廊に向かって非常に急な階段が伸びています。これは神の領域へと登るための試練を意味しており、現在は観光客の安全のために、手すりの付いた専用の木製階段から上へと登れるようになっています。
-
約70度の角度を上から眺めたところ。下には第二回廊と第一回廊が見えます。
-
大階段を登りきった先にある最聖所、「第三回廊(中央祠堂)」の内部にある神聖な中庭です。この場所はかつて王や高位の僧侶だけが立ち入ることができた特別な空間でした。
-
奥では僧侶による祈祷が行われています。
-
アンコール・ワットの最上階(第三回廊)の中央には東西南北を向いた4つの礼拝所があり、かつてはヒンドゥー教の神が祀られていましたが、仏教寺院となった現在はそれぞれに仏像が安置され、今も熱心な信仰の対象となっています。
-
右手を頭の下に敷き、北を頭にして西を向いて横たわっています。これはお釈迦様がすべての煩悩を消滅させて入滅(亡くなる)する瞬間の、最も安らかな姿を表現しています。
-
祠堂の壁面に美しく彫り込まれたデヴァター(女神・天女)のレリーフ。
-
アンコール・ワットの最上階は、四角い回廊の中にさらに十字の回廊が交差しており、それによって仕切られた4つの小さな中庭(かつての沐浴池)が存在します。
-
そして4隅には祠堂が、中央には最も高い中央祠堂が配置されます。
コーナーに配置された祠堂のひとつです。クメール建築の象徴である、トウモロコシの蕾(つぼみ)のような独特のフォルムが美しい砂岩の積石によって形作られています。 -
目の前にそびえ立つ「中央祠堂(もっとも高い中心の塔)」の最上部。巨大な塔の壁面をよーく見ると、かなり高い位置(何メートルも上の段)にまで、一体ずつのデヴァター(女神像)が隙間なく彫り込まれているのが確認できます。
-
中央祠堂の最上部。塔の中断辺りにもディバダ像が彫られていることが分かります。これほどの高さで精緻な作業がどうして可能だったのでしょうか。
-
中央の角柱の壁面には、しっかりと立体的に浮き上がった優美なデヴァター像が2体彫られていることが分かります。
-
デヴァターたちの姿が上の写真と比べて明らかに平面的で、シルエットの輪郭だけが浮き出ているような状態(線彫りの段階)で止まっています。
さらにその上部の飾り縁(蓮の花のような連続文様)をよく見ると、左側はきれいに凹凸が彫り込まれているのに対し、右側に向かうにつれて彫りが浅くなっているのが確認できます。
王の死去やその後の他国(チャンパ王国)からの侵略、さらにはヒンドゥー教から仏教への宗教的な変遷などによって、一部の装飾が完全に完成する前に建築作業そのものが打ち切られてしまったと考えられています。 -
第三回廊にも保存状態の良いデヴァダ像が残されています。
雨期特有の曇り空(オーバーキャスト)は天然の巨大なソフトボックス(ディフューザー)の役割を果たします。光が均一に柔らかく回るため、デヴァター(女神)の表情や衣装の細かな文様、レリーフの絶妙な立体感が影に邪魔されず、最も美しく肉眼で観察でき、写真にも綺麗に収めることができます。 -
第三回廊から東の方角を眺めたところ。朝日はこの方角から差し込みます。
-
第二回廊のさらに奥には、地平線まで続くかのような深い緑の木々が広がっています。アンコール・ワットが広大な熱帯の森に囲まれた巨大な伽藍であることが一目で実感できる、最上階ならではの絶景です。
-
入り口とは反対の南東面の回廊。
雨期の水分をたっぷりと含んだ森の「濃いグリーン」と、うっすらと広がる曇り空の柔らかい光が、遺跡の持つ神秘的な雰囲気をより一層引き立てています。 -
この奥には僧院があるのでしょう。幼い僧侶たちが戯れている姿が見えました。
-
赤い大地にオレンジの袈裟を着た幼僧。なぜか目が合ったかのような錯覚。
-
第三回廊の柱、梁、壁面の精緻な彫刻に目が奪われました。
-
長方形の枠が同心円状に幾重にも小さくなっていくこのデザインは、もともとクメールの伝統的な「木造建築の天井」に見られた格天井の技法を、そのまま硬い砂岩(石)をくり抜いて再現したものです。
それぞれの枠の縁をよく見ると、立体的な蓮の花びらや複雑な植物の蔓(つる)の幾何学模様が、途方もない細かさでびっしりと敷き詰められるように彫り込まれています。 -
-
「メダリオン(円形浮き彫り)の連続文様」と呼ばれる、非常に高位の空間にしか施されない格式高い建築意匠です。遠目にはただの丸い幾何学模様に見えますが、近づいてよく見ると、直径わずか数センチ~十数センチの円一つひとつに、驚くほど緻密な世界が彫り込まれています。
-
乾期の強い直射日光の下では、細かすぎる凹凸が強烈な影で潰れてしまい、ただの「ざらざらした質感」に見えてしまいます。しかし、雨期の柔らかい光(曇天)の下では、小さな円の中の仙人の指先や、周囲を囲む蓮の花びらの文様一本一本に均一に光が回り、まるで浮き上がってくるかのような立体感を味わうことができます。
-
連子窓の格子の隙間から、はるか遠くへ向かってまっすぐ一本の道が伸びているのが見えます。
-
これが、すべての観光客が最初に歩いて遺跡へと入場してくる全長約540メートルの「西参道」*す。ここから見下ろすと、自分がどれほど高い聖域に登ってきたのかが改めて実感できます。
-
第二回廊広場北側の図書館とよばれる一角は、日本の「上智大学アンコール遺跡調査団」が中心となり、長年にわたって石材の一体解体・石組みの組み直しという大がかりな修復工事を行ってきた場所です。
-
第一回廊(東側)まで降りてきました。
-
第二回廊と第一回廊の間の中庭です。
-
第一回廊の東面は、アンコールワットのレリーフの中でももっとも有名で、かつクメール文化の重要な基盤となる『乳海攪拌』がテーマです。
-
『乳海攪拌』とはヒンドゥー教の天地創造神話にでてくる、壮大な「綱引き」のことです。
-
神々と阿修羅が不老不死の霊薬「アムリタ」を得るために、大蛇を綱引きのようにお互いに引っ張り合い、1000年もの間、海の底をかき混ぜ続けたという壮大な物語がこの壁一面に描かれています。
-
画面の中央に大きく彫られているのが、4本の腕を持つヴィシュヌ神です。彼は神々と阿修羅の激しい綱引きのバランスを取り、天地創造の指揮を執っています。
ヴィシュヌ神の足元(画面下部)を見ると、大きな「亀の甲羅」のような形が彫られているのが分かります。これはヴィシュヌ神が変身した大亀クーrmaで、大蛇を巻き付けて回転させる大山(マンダラ山)が海の底に沈まないよう、自ら土台となって支えている健気な姿です。 -
ヴィシュヌ神の頭上には、海がかき混ぜられたことによって泡から次々と生まれ出た、無数の美しい天女(アプサラ)たちが空を舞う様子が小さくたくさん彫られています。
-
-
ヴィシュヌ神の左右では、何十体もの軍勢(左が神々、右が阿修羅)が、大蛇の胴体をラグビーのスクラムのように力一杯に引っ張り合っています。
-
手や衣服の輪郭(外枠)は四角く削り出されていますが、顔の細かなパーツや装飾は施されておらず、まさに「粗彫りから仕上げに移行する直前」で時間が止まっています。
-
アンコール・ワットの建設は、1113年に即位したスーリヤヴァルマン2世の命によって始まりました。約30年以上の歳月をかけて国家を挙げた大プロジェクトが進められましたが、1150年頃に王が急逝してしまいます。
-
クメール建築は「石を積み終えてから上から下へ彫る」という手順をとっていたため、王が亡くなった時点でまだノミが入れられていなかった東面や北東の一部の壁面は、作業が完全にストップしてしまいました。
-
さて、アンコールワットの見学もそろそろ終盤です。
緑深き森と石の遺跡のコントラスト。優しい光が作る医師の質感。それに何よりも観光客が少なく、ゆっくり時間をかけてみて回れること。
アンコールワットは雨期がよい、と実感した次第です。 -
アンコールワットのすばらしさをたっぷり堪能しましたところで、ディバター像が手を振って見送ってくれています。
-
ではまた近々、シェムリアップの遺跡でお会いしましょう。
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
シェムリアップ(カンボジア) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
シェムリアップ(カンボジア) の人気ホテル
カンボジアで使うWi-Fiはレンタルしましたか?
フォートラベル GLOBAL WiFiなら
カンボジア最安
112円/日~
- 空港で受取・返却可能
- お得なポイントがたまる
0
80