インドネシア新首都ヌサンタラを視察 (Visiting new Indonesian capital, Nusantara)

2024/11/13 - 2024/11/16

2年連続でインドネシアを訪れます。2023年は開通したばかりの高速鉄道に乗りましたが、2024年はインドネシアの新首都を視察するためです。成長が著しいインドネシアには大きな国家プロジェクトが複数進んでおり、有望な将来を感じます。インドネシアの新首都ヌサンタラ Nusantara(IKN)はジャカルタから約1200㎞離れたカリマンタン島のジャングルの中に突如現れる人工都市、工事は2022年から始まって2045年に完成予定の20年以上の巨大なプロジェクトです。2024年9月に一部が完成して一般の観光客も視察できる様になったので、一番乗りで見に行きます。

この旅行記の前半では現在の首都ジャカルタ Jakartaに2日間滞在して日本を感じたこと・サッカー日本代表との試合前の雰囲気です。旅行記の後半ではカリマンタン島へ移動して、将来の首都に近いバリクパパン Balikpapanの街並みと新首都ヌサンタラの様子を紹介します。

インドネシアはまだまだ物価が安く、20年前のバンコクの様です。この旅行では良いホテルに泊まったり日本食を食べたり運転手つきハイヤーで移動したりと、贅沢な気分を味わいます。

エリア カリマンタン(インドネシア)

• 旅行の満足度: 4.0

ジャカルタに到着です。まずはエアポートトレインに乗ってBNI駅で降りて西武デパート(Grand Indonesia)へ向かいます。その目的は両替・プリペイドカードの入手・SIMカードの入手・日本食を味わう事です。空港でもできますが、こちらの方がコスパが良いので。

両替します。空港の両替はレートが悪くATMもかなり高額のフィーを引かれるので、ここでまとめて現金から現金の両替をします。9Mルピア(日本円で約9万円)を両替するとご覧の札束、インドネシアの最高紙幣は1000円程度なので、90枚の紙幣でこうなってしまいます。9万円を西武デパートで使えばあっという間になくなりますが、ローカルで使えば12日間で使い切るのが難しいです。1日1万円未満でかなり贅沢な気分を味わえます(主な出費は観光用のハイヤー、飛行機とホテルは別で予約済みです)。

キャッシュレスのためのプリペイドカードも銀行で入手します。日本でいうSUICAみたいに、これ一枚で電車・コンビニ・レストランどこでも支払い可能と聞いていたのですが。。確実に使えるのは電車位でコンビニでは7割くらいレストランで使えたのは1回のみで使い勝手が悪いです。残高を使いきれず失敗でした。

SIMカードはカリマンタン島の僻地ではTELECOMSELの全国版が必要で、空港では320Kルピアと言われますが街中では50Kで買えます。昨年携帯で撮った写真をクラウドにアップロードできなかったのはローミングでIMEIが登録してなかった為だと思っていたのですが、今回SIMを購入してIMEI登録してもできず。。また携帯電話を盗られない様に細心の注意をします。

西武デパートには沢山の日系レストランが。右に吉野家、左には一風堂とペッパーランチがあります。私がアジアを旅行しての楽しみの一つが日本食を安く食べること。私の国ではインフレが激しく外食は気軽には出来ないからです。

日系レストランでも2種類あって現地人の食の好みに合わせてローカライズした店と、日本式をそのまま持ち込む店があります。吉野家は前者で牛丼以外は日本の食とは全く別です。チキンカツは最高にまずく、サンバルは最高に辛いです(チキンナゲットにチリソースをつけると考えればこれでもアリかも)。それでも吉野家の支店は多いので、インドネシア人の味覚に合わせて成功しているのでしょう。

牛角は後者で、日本的文化や味をそのまま持ち込み「いらっしゃいませ」「喜んで」などインドネシア店員がインドネシア人のお客に日本語で叫んでいます。このお客が目の前にいないのに遠くから挨拶を叫ぶのは極めて日本的文化で、私の国の日本料理店ではやりません。インドネシアでは日本のやり方も受け入れられた様です。平日の昼なのに牛角の前には行列ができています。

この牛角の焼肉ランチセットが税込み1150円、とても安い。まあ高級肉ではありませんが、日本の雰囲気を感じられるだけで満足。私にとって人生初めての牛角です。

なおインドネシアのお客のほとんどが安いランチセットではなく、好きなものを選んで高いお金を払っています。皆さんお金持ちの様です。日本でインバウンド丼を食べているのは彼らの様なクラスの人たちでしょう。

ローカル経営の日本料理店なら定食が300円ほどです。私の国と比較すると値段が1/10と格安。日本在住の日本人がジャカルタでなんちゃって日本料理を食べる理由はありませんが、私にはこの偽物具合が丁度よいです。

昨年と同じくコブラに挑戦します。マンガブサールの屋台街に2件あります。左下のケージには生きたコブラがいます。今年はコブラの口の周りに黒いテープが巻かれており、安全性は高まった？日本で言えばフグと同じ感覚で、高級でも毒のリスクがある食事です。

コブラのサテが1000円、牛角の焼肉ランチセットとほぼ同じ値段。牛角と同じ価値があるかは人それぞれの判断でしょう。コブラのサテ肉と血のデラックスセットで2000円と昨年の1500円より値上がりしています。今回はコブラの血は飲まなかったです。相変わらず客はおらず、地元民にもマニアックな料理なのでしょう。

宿泊したホテル、この広さとある程度の豪華さもありますが1泊わずか5000円程度。日本では値上がりしてカプセルホテルにも泊まれない値段ですが、ジャカルタはまだまだ安いです。20年前のバンコクの感覚です。

市内の移動は主に電車です。JRの古い車両が輸入されて今でも使われているのは鉄道ファンにはお馴染みですね。左が千代田線で右が中央線。私が20年くらい前に東京で乗っていた電車なんで懐かしいです。

スタジアムへ。ここで明日の夜に日本対インドネシアのサッカー国際試合が開催されて80000人の熱狂ファンが集結するそうです。インドネシア人とはよくサッカーの話になりました。熱狂的サッカーファンが80000人も集まるスタジアムでアウェイ観戦は私には怖くて無理です。

ジャカルタはサッカー一色ではないですが、ご覧のような代表グッズを売る店はあちこちにあります。またバスの側面広告に代表選手を多く見かけて彼らは国民的スターなのでしょう。

スタジアムの隣には野球場もあり子供が野球の練習しています。インドネシア人は野球しないし子供の整然とした動きから日本人でしょうか。

隣のビルにはJKT48の会場が。インドネシア人は日本の文化が大好きで、日本文化が多く輸入されています。日本人にとってはなんちゃって日本文化かも知れませんが、私にはジャカルタで日本を感じることが多いです。

日系スーパー。ここでも顔を合わせない「いらっしゃいませ」の掛け声があり、店の雰囲気もまるで日本です。お客は日本人よりインドネシア人の富裕層のほうが多そうです。寿司や弁当が夜8時を過ぎると30％引き、9時以降は50％引と日本の値引きシステムも導入されています。

2日間のジャカルタ滞在では、特に観光することもなく日本に関連したものを発見して、サッカー試合前の雰囲気を感じました。

翌朝、カリマンタン島へと出発です。スカルノハッタT3は新しい建物で、T2の20年前の雰囲気とは全く違います。

CITILINKでカリマンタン島に到着します。カリマンタン島を上空から見ると一面ジャングルです。CITILINKはインドネシア国内線では比較的信頼できて、往復とも時間通りでした。

スルターン アジ ムハンマド スレイマン空港 (BPN) 空港

カリマンタン島の主要都市バリクパパン Balikpapanへようこそ。

バリクパパン、ほとんど知られていない街だと思うので、少し紹介します。カリマンタン島の南東部にあり人口70万人です。石油がとれるので裕福であるようで、空港はとても立派です。

カリマンタン先住民のダヤック族の服装をした人たちが音楽を披露しています。しかし足を止める人は他に誰もおらず。。

ダヤック族の戦士たちに迎えられます。バリクパパンは観光地でもなく見た限り観光客は全くいないのですが、観光に力を入れたいのでしょう。

ちなみに空港以外でダヤック族に会うのは難しく、最も近くてバスで3時間離れたサマリンダの郊外まで行く必要があります。その様子は次回紹介します。

バリクパパンで宿泊したホテル。市内で最も高い建物のひとつのオーシャンビューで1泊僅か6000円位。コスパは世界一良いかと思います。世界にはもっと貧しい国がありますが、そういう国は独占企業が支配したり治安が悪く安全に大金が要ったりと、貧困国だから安いとは限りません。

スイス ベルホテル バリクパパン ホテル

オーシャンビューですが、リゾート感あふれる綺麗な海ではなく、、目の前には素敵な廃墟。写真では見えにくいですが海上には石油を採る船が何十隻と並んでいます。

カリマンタン島にビーチリゾートは少なく、ここから更に北上したマレーシア国境近くにしかありません。

海沿いには比較的高級なレストランが並んでいますが、人も少なく寂しい感じです。石油で裕福な街を想像していたので期待外れ。石油で得たお金はこの街には残らないようです。アルコールもほぼ売っていないので、ジャカルタから持ち込むのが良いです。

石油でお金持ちのブルネイやドバイのモスクは豪華絢爛です。バリクパパン最大のモスク Masjid Agung At Taqwaへ行きますが、正直今一歩。インドネシアにしては豪華かなという感じです。バリクパパンは観光向けではないですが、次回の旅行記で数少ない観光地を紹介します。

この日の夜はサッカーの日本対インドネシア、テレビを見るとどの局も試合前の予想や見どころを解説しています。私はインドネシア語が分かりませんが、日本に勝てる希望はあると盛り上げている雰囲気です。

ホテルを出て、試合前の現地の様子を観察します。カフェには多くの地元民が集まっています。インドネシアでも各家庭にテレビはありますし、携帯でも見れます。それでも皆で集まって観戦したいようです。

試合開始。インドネシア人の僅かな希望も叶わず、試合は日本が4-0で勝利。これは日本が2点目を入れた瞬間、みな全く反応がなく呆然としています。

翌朝、バリクパパンからインドネシア新首都ヌサンタラへ向かいます。バスやツアーは見つからなかったので、運転手付きのハイヤーで向かいます。観光地としてのインドネシアは未発達(バリ島やジョグジャカルタなど一部を除く)で、ジャカルタを含めて郊外の観光地へ現地ツアーは殆どなくプライベートツアーになります。

2日間運転手付きハイヤーを借りましたが、1日目は110㎞走行で総額9000円、2日目のヌサンタラ行きは200㎞走行で総額14500円です。運転手付きレンタカーと考えると先進国の感覚では安いですが、途上国での観光ではかなり高いです。他の東南アジアのグループツアーなら1日せいぜい5000円程度でしょうから。ちなみにTravelokaという英語のウェブサイト経由でSunJayaという現地で大手の輸送会社を選びます。WhatsAppでその後も英語で会話できたので多少高くても不満はないですが。。

まずはカリマンタン島で初の高速道路を走ります。2024年現在バリクパパンから新首都ヌサンタラまで片道100㎞・車で2時間半かかります。高速道路を延長して直接ヌサンタラまで行ける様になれば1時間未満だそうです。

現在の道は峠を越えます。ご覧のような未開発の森の中を進みます。道路は完全舗装されて車のすれ違いも問題ないですが、山道なのでカーブが多く時間がかかります。ハイヤーの車は小型車の方が良かったかも、パワーのある大型車だと運転手が無理な追い越しをかけて生きた心地がしないです。

ヌサンタラ北側の最寄りの町。新たな首都計画で周辺の町にも開発の恩恵があるのかと予想しましたが、典型的なインドネシアの田舎です。住民にとっては交通量が増えただけで何も恩恵がないのでしょう。

そんな田舎の町を車で走ると、突如として高層アパートが出現します。いよいよ新首都ヌサンタラに入ったのでしょう。

ヌサンタラ訪問の拠点となるのはRest Area Nusantara。ここに大きな駐車場があり車を停めて、右の専用バスでヌサンタラ内部を訪問します。現地に着くと昨日のハイヤーのドライバーと会います。この日彼はグループツアーのバス運転手として来たようです。SunJayaにグループツアーがあるなら教えてほしかった。

Rest Areaは新首都のイメージに合わない簡易的で古い建物です。バスに並ぶ行列は長く混雑しています。この日は土曜日の週末だからかも知れません。12時半からの予約ですが、12時前には並びます。

Rest Areaで食事できます。ヌサンタラ内にも店はいくつかありますが、出発前に食事を済ませた方が良さそうです。なおヌサンタラはインドネシア語で「諸島」を意味します。新首都の名前と間違えやすいので現地人はIKNと呼んでいます。

2024年11月現在、ヌサンタラ訪問は予約制となっており1日300名限定です。予約には専用アプリIKNOWが必要ですが、このアプリはインドネシア語オンリー、インドネシア国内からのみダウンロード可能です。海外から翻訳アプリとVPNを使って何とかなります。

この時点でヌサンタラ訪問は大人気で予約が困難です。ジャカルタ時間で2日前の朝9時ごろから予約が開始されますが、1時間後には満席となります。予約開始時間にスタンバイして予め調べた予約手順で必要な情報を素早く入れます。特に入力困難な項目はなく、インドネシア国民IDは外国のパスポート番号でOKです。予約は無料です。

専用バスは混雑しており立った乗客も含めると1台50人位を運びます。ヌサンタラまでの数キロの道は混雑しており、工事用の車両で埃だらけです。

ここがヌサンタラの入口、この先は専用バスか工事用の車両しか進めません。

道沿いに工事中の建物が並びます。

これはRumah Sakitという病院、病院は優先度高いでしょう。

専用バスは内部を2㎞ほど走りますが、ここが終点の様です。こんな場所で降ろされても工事中以外何も見どころは無さそうですが。。インドネシア語で説明を受けますが、私には何も分かりません。

これが乗ってきた専用バス。ヒュンダイ製の電気バスで静かで快適ですが、周りにはディーゼルの工事用車両が溢れており、環境には何も貢献していません。

とりあえず他の人々が進む方向へ歩きます。

左折すると目的の建物が見えてきます。まず見えるのは Taman Kusuma Bangsa。インドネシアの象徴ガルーダの翼で包むようなデザインです。

そしてインドネシアの新首都の象徴的なガルーダ宮殿 Lapangan Upacaraの建物が遠くに見えます。インドネシア象徴のガルーダの翼の形をしています。

ガルーダ宮殿 Lapangan Upacaraに近づいて正面から眺めます。形は違っても私の住む国の首都キャンベラに雰囲気が似ています。キャンベラも1920年代に建設された人工都市です。

周辺には工事中のアパートメントが並びます。このあたりは外装は仕上がっていてもう完成まじかです。

インドネシアなので大量の労働者を送り込んで一気に建てる、を予想していましたが、意外と労働者は少ないです。20年のプロジェクトなのでそんなに急いでいないか予算不足かは不明ですが。

ビジターセンターでは何故かBUMTという最長60㎞のボルネオ・ウルトラ・マラソン・トレイルの受付をしています。ヌサラントラを訪れるのは99%インドネシア人ですが、このマラソンの参加者には外国人がいて英語が聞こえてきます。

少し遠くから見たガルーダ宮殿 Lapangan Upacara。きれいに整備された芝生で、これを見るともう工事は完了している様に見えますが、完了しているごく一部の地域のみを公開しているだけです。95%はまだ工事中です。

反対側のTaman Kusuma Bangsaを正面から見ます。

一番近くから寄って正面から写真を撮ります。何か微妙に翼の向きがずれていますが、私の写真の腕が悪いのではなく設計ミスなのでしょう。

バス停に戻ってバスで帰路につきます。2時間ほど見学してヌサンタラを後にします。これはバスから見たBank Indonesia、銀行も優先度高いでしょう。

1周5㎞ほどの周回道路ですが、これもまだ完成しておらず、出口付近のラウンドアバウトはまだ未舗装。まだまだ発展途上のインドネシアの新首都ヌサンタラを誰よりも早く訪れる事が出来ました。あと20年でどれだけ発展するのか、想像するだけで未来への期待が高まります。

しかしここまで来るのに結構高くつきました。ヌサンタラ訪問自体は予約の競争はありますが無料です。問題はヌサンタラまで来る交通手段です。私は色々調べましたが公共交通はなく結局運転手つきハイヤーで訪れます。1日200km走行で総額約15000円、ヌサンタラにこれだけ払えるかは個人の価値観で、私も一番乗りでなければ躊躇します。

現地に来て気が付いたのですが、SunJaya社がグループツアーも催行しており、また公共バスDAMNIで来た女性にも会います(ヌサンタラからバリクパパンへの帰りは17時発と言っていました)。もっと調べれば安く行くこともできたでしょうが、インドネシアの地方の情報収集は難しかったです。次に行く方は参考にしてください。