
2023/12/17 - 2023/12/17
49位(同エリア770件中)
琉球熱さん
2023年12月は3週連続で丹沢に足を運んだのだが、そのうちの1回は西丹沢ビジターセンター主催の登山教室「山岳事故検証講座」
《神奈川県警山岳救助隊と共に実際に事故の起きた現場をめぐり、なぜ事故が起きたのかを検証する》というもの。
丹沢は私の好きなエリアで、そこそこ歩いて来たという自負もある。
ただそれだけに、“狎れ”や“慢心”がちょいちょい顔を出し、それが原因で小さなミスを犯してるのも事実。
気軽に行けるエリアとは言え、毎年遭難が発生している丹沢。
救助隊のお世話にならないためにも、ここらで初心に還ろう。
・・・とかなり気合いを入れて当日を迎えたのだが、思いもよらない事態が待っていた
西丹沢ビジターセンターのサイト
https://www.kanagawa-park.or.jp/tanzawavc/shisetsu2.html
当日の講座の様子(センターブログ)
https://nishitanzawashizenkyoushitsu.blogspot.com/2023/12/1220.html
【付記】本来、没にする予定のものでしたが、年初から「命」を意識せざるを得ない報道が続き、次元の異なる話題ではありますが、なぜか自分の中でシンクロしたため、レポートすることにしました。
コメント多めです。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 高速・路線バス 私鉄
-
講座の申込み開始の朝一番で予約
定員わずか10名だからと、これまた意気込んで電話
実施要領が公表されておらず、集合時間や準備等々を聞いてみると、朝8時半に集合して檜洞丸に普通に登るという。下山しながら遭難現場に向かうというスケジュール。
朝8時半にビジターセンター(以下「VC」)ということは新松田駅始発バスの一択である
これで前泊決定
小田急線新松田周辺で安宿を探して発見したホテルは「開成」という聞いたこともない駅が最寄り(れっきとした小田急線で、新松田の隣)
ところがこの宿が大当たり
駅から近い、駅前に24H大型スーパー、客室キレイ、フロントにウォーターサーバー、コーヒーマシン(無料)、WIFI良好
新松田までわずか3分、おかげで始発バスに余裕で間に合ったホテルとざんコンフォート開成 宿・ホテル
-
新松田7:15発のバスは終点VCに定刻8:26到着
天気も良く、すでに登山者もチラホラで、明らかに私と同じ目的と思われる人たちも
いつもと違うのは警察車両が数台・・・講習のためだろうと思ったが、それにしちゃ台数が多い
山装備の警官も歩き回ってるし、何よりパトライトを点灯させたままだ西丹沢ビジターセンター 美術館・博物館
-
腹をゆすりながら忙し気に駆けずり回っている人がいる
VC職員のN氏だ
「すみません、昨日遭難があって、きょうは“続き”の作業があるので救助隊の人たちが出払ってしまっています。
プログラムを急遽変更して、座学のみになりました。」
警察車両が多かったのは、そのせいだったか -
予想外の出来事でプログラムは大幅変更となったとはいえ、受講者側は普段接する機会もない救助隊の方から生の話を聞けるとあって、落胆する風の人は一人もおらず
むしろ気の毒だったのは急遽講師役にアサインされた隊長だろう。
講師の神奈川県警松田警察署山岳救助隊長 相田警部補
彼も「突然のことなので、話すことは特に考えていませんでした」
そりゃそうだろう、それでもここ数年の丹沢エリアの遭難件数や傾向を語り始める。
※既にVCの公式ブログでモザイクなしの写真が使用されているので、ここでもモザイクはしません。 -
事故の傾向としては、転倒や道迷いが多く、道迷いからの滑落がそれに続く。
残念ながら死亡事故も年に数件。沢の多い丹沢では溺死もあるという。
年代では60歳以上の高齢者が最も多い。
このあたりは全国の傾向と同じだ。 -
話は、自分の情報をいかに救助隊に届けるかに移って行く。
ここでもやはり強調されたのが「登山届」の提出だった。
これは松田署管内の登山口等に用意されている書式。
私はいつも事前に県警宛にメールで送っているので、登山口の登山届ポストを利用したことがなく、この書式を見るのは初めて。
松田署管内に置かれているとはいえ、丹沢全域(大山除く)が記載されていて、実に記入しやすい。
前週、大倉から入山した際、たまたま大倉のレストハウスにあるポストに寄ってみたのだが、そこに置かれている書式は記載エリアが狭く、使いにくい印象を受けた。
大倉で見たものと違うことを尋ねると、どうやら所轄署ごとの独自様式らしい。
いやいや、そこは同じ「県警」なのだから統一してくれよ
隊長さんには申し訳ないので言わなかったが、何とかしてほしいものだ。
デジタルと紙とどちらがありがたいのか?と聞いてみると、どちらでも良いと。デジタルはメールでも良いし、YAMAPでもCOMPASSでも良いとのことだったが、現地のポストにも出しておいてほしいとも。やはり「紙」、これが本音なのだろう。
すると、丹沢で登山ガイドをしているという受講者から、COMPASSがベストではないかという意見が出た。曰く全国共通であり、登山届提出、下山報告が緊急連絡先に自動送信されて安否確認が複数同時に可能となるから。
ふむ、確かにCOMPASSのメリットは私も認めるが、自己記録としてのデータ蓄積という観点で、少々躊躇うものがあるんだよなぁ
それより、この講座に山のプロまで参加していたとは驚きだ。 -
必要な装備の話題では、日帰りでもツェルトは携行してほしい、すべきだと。
不本意にもビバークしなければならなくなった時のためだということは百も承知だが、正直なところ日帰りでは持って行かない。
う~む、やっぱり携行すべきか・・・
そして「笛」
助けを呼ぶ時、笛の音は非常に通りやすいので有効だそうだ。
そんな中、受講者の視線を感じたのか
相田隊長
「私が普段使っているザックの中、見てみますか?」
見なくてもいい、なんて人がいるわけない(笑) -
その前に、担いでみる
背後から支えられながら担ぐ
「(手を)離しますよ」
よろける(笑) -
ならば私も、と今度は男性
これは重いです、何kgくらいですか?
その時によって違うけど、大体40kgくらいかな?
「・・・」
当然、私も
手を離された瞬間、体が後ろに持って行かれる
お、重い!!
こんなの担いで急峻な山道を駆け、健脚のさらに上を行くスピードで現場に向かうわけだ
雨でも雪でもと考えると、その体力の凄さを思い知る -
ではなぜこんなに重いのかってワケで
これは人を担ぐ道具 -
コンパクトにたためるのに、広げれば立派な背負子
-
出るわ出るわ、ごつい道具の数々
目立つのはロープ、カラビナ
ロープは太さが違うものを数種類、長さは最低でも10mだという
ロープも10mとなると、重量も相当だ(懸垂下降が必要だと、30~40mは当たり前)
そして重量の大きな割合を占めると思われるのが、カラビナ、
ハーケン、クリフハンガー、ハンマーなどなどの金属ツール類
これらがガチャガチャととてつもなく重い
岩の状況やハーケンの有無など現場は千差万別なので、様々なタイプのツールが必要になるようだ
実際はここに水と食料が追加されるので、さらに重くなる -
私の隣に座っていた男性が口を開く
実はこの地で遭難し正にきょうの講師、相田隊長に救助されたのだという。
畦ヶ丸から大滝橋へ下山中、一軒屋避難小屋を過ぎたあたりで同伴者が浮石に足を取られ転倒、骨折。自力下山が不可能となった。すぐに救助を要請したいが携帯が入らない。なんとか同伴者を避難小屋まで連れて戻り、自分は電波が通じる地点まで大滝橋方面へ下る。電波が通じる地点まで、なんと30分も下ることになったそうだ。
救助要請後、彼は再び避難小屋に戻る。そして2人で救助隊の到着を待ち、無事救出されたと言うことだった。
骨折した同伴者も実は隣に座っていて、彼らが語ったことは
2人でいたからこそ助かった。平日だったため、事故発生から救助隊到着まで、通りかかった登山者ゼロ。
発生時刻は13時前後で、かつ避難小屋まで戻れたのは、幸運でしかない。ツェルトもヘッドランプも携行しておらず、あの装備では一晩過ごすのは厳しかったと思う。(ヘッドランプ不携行は隊長に厳しく叱られたとか)
救助隊とともに下山できた頃にはすでに暗くなり始めており、そこから病院へ搬送、手当てを受け、帰宅できたのは深夜だった。
救助後の実に長い時間を耐える気力も必要。
彼等の歩いた畦ヶ丸周回ルートは極めて標準的なもので、入山時刻も妥当なものだった。それでも、なのだ。 -
さて今回の遭難だが、発生は昨日。
きょうは「続き」の作業、つまり遺体収容だという。
公式ブログに「遭難」ではなく「遭難対応」が発生したためとあるのは、そのためだ。
発生した場所を地図で見てみよう。
これは山登りをする者なら誰でも知っている昭文社の「山と高原地図」だ。
事故現場は地図には載っていない「バリエーション・ルート」 -
事故は権現山からの下山中に発生。
県内の山岳会メンバー18人による地図読みトレーニングの行程で発生した。
ルートはVCをスタート、善六のタワ~畦ヶ丸~大滝峠~一軒屋避難小屋、そしてこの付近から権現山に向かう。なにせ地図にないルートなので、入山口はわからない。作業道らしきものはあるらしい。
そして権現山山頂~分岐~VCという計画だったそうだ。
地図上の赤い破線がそれ。もっとも一軒屋避難小屋から権現山へのルートは地図に記載されていないので、等高線をもとに私が想像で記入したもの。
問題はこの権現山。
VCから行くと、下棚の滝の手前で現れる。
その分岐となる地点は、10月にも通過したばかりだ。
https://4travel.jp/travelogue/11863594 -
これがその「分岐」
ちょうどベンチとテーブルがあるので、休憩するにも良い場所ではある。
現に10月に滝見物に来た際、復路でコーヒーを飲みながら大休止した場所だ。
しかし・・・ -
道標の奥の茂みを見ると、立て看板がある。
以前は「ここから先は作業道だから、一般の登山者は立入禁止」的なことが書かれていた記憶がある。
以来、私自身は行く気すらなかったのだが、今回の遭難グループはここを下って来る途中でメンバーの一人が滑落、死亡した。
100m近く落ちたらしく、昨日の時点で死亡が確認され、きょうは朝から「遺体収容」が決まっていたのだそうだ。
この道標に「権現山登山口」の文字があるのも問題だと思うんだが・・・
VC職員のN氏曰く
入山時のルートを聞いて「今日は午後から天気が崩れるので、下山ルートに権現山を経由するのは避けた方が良い」と進言したらしい。
まがりなりにも「山岳会」の看板を掲げた団体。
現地を熟知した職員のアドバイスを素直に受け入れることこそが「プロ」だと思うが・・・ -
さて、今回の事故とは別の話。
相田隊長によると、VCから多くの人が目指す檜洞丸
そのルート上にある「ゴーラ沢出合」も遭難が多いポイントだという。
ここを知っている人なら、「え、なぜ?」と思うはず -
これがその「ゴーラ沢出合」
広く開けた河原といった風情
※2019.11.05撮影 -
河原を横切るような形で進めば登山口に辿り着くのだが、小川の流れに沿って、この堰堤の脇を登って行ってしまう人が少なからずいるらしい。
当然、道はない。
この写真の右手の茂みのさらに右に
※2019.11.05撮影 -
これこのように登山口を示す道標がある。
決して見つけにくい場所ではないのだが、それは知っている者の感覚なのだろう。
つまり思い込みがいかに危ないかと言うことだ
2022年の1月に仏果山でやらかした道間違いも、正に思い込み
山頂出発前に地図を眺めれば、または道標を確認すれば、絶対犯さなかったミスだった
※2019.11.05撮影 -
さて、無事講習も終わり、参加者にはVC50周年記念バッジが配られた
事故の現地を訪れて・・・ということは叶わなかったが、救助側さらに予想外の当事者の生の声を聴くことができ、非常に意義のある時間を過ごせた。
VCの所長はじめ職員は恐縮していたが、なんのなんのである。
さて、それにしても時間が余り過ぎ
次のバスまで3時間半だ(涙)
クルマで来た人たちが多く、三々五々帰って行く
バスで来た人は、途中まで散歩してくるという
どうするか・・・ -
ぼーっとしているところに声をかけてくれたのがVC職員のN氏
そして参加者の一人に交渉してクルマで送ってもらえることになった
なんという神対応!
そして同乗を快諾してくれたK氏は、公園管理(といってもメインは自然公園の整備)のボランティアをしているという
この西丹沢VCの常連でもあり、県内の山事情にも精通している人だった
駅までの車中でも興味深い話が聞くことができ、最後まで充実の一日となった
基本的なスキルは当然必要だが、やはり無理や慢心はリスクが伴う
体力的にも精神的にも、余裕をもって臨むこと
当たり前だが、自然をなめちゃいけないのだ
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