ケルト文化を彷彿させる！モヨロ貝塚訪問記

2023/10/07 - 2023/10/07

かねてから気になっていたモヨロ貝塚に行きました。
「貝塚」といえば「化石化した貝」がある程度の退屈な場所、との印象でしたが、このモヨロ貝塚は、自分が持っていた「固定観念」を破壊する衝撃を持っていました。

モヨロ貝塚はモヨロ人の貝塚です。
モヨロ人は最終的にはアイヌ人と混血し、消えてしまったため、多くの人には知られていない前縄文時代を生きた人々ですが、展示されていた発掘物をみて衝撃を受けました。
非常に美しい工芸品が多く、前縄文時代の文明だった、と言われても、時代感と工芸品の造形が全く一致しませんでした。

扉の写真は「モヨロのビーナス」と呼ばれる牙を用いた彫像ですが、この彫像を見たとき、一番衝撃を受けました。
造形の精緻さもそうですが、実に写実的です。
この女性像が身に着けている服がすごい。
着ている服は「ワンピース」
しかも、「襟」付きです。
しかもこの像、前面に「ボタン」も「合わせ」も無いんです。
背面には「ボタン」や「合わせ」に相当する模様があります。
つまり、この服は「お付きの人が着脱を手助けする」前提、つまり「貴族階級」の服なんです。
先史時代に貴族階級の服が着られていたなんで衝撃でした。

袖にも恐らく刺繍等のなんらかのデザインが施されています。
残念ながら首から上が失われているため、どのような姿だったのか、想像するしかありませんが、王冠を被った頭が付いていて、英国の博物館にあって「ケルト遺跡から出土」などと書かれていても全く違和感ない造形です。
同時代の欧州でもこれほどの造形は少ないのではないでしょうか。
縄文時代というと、遮光土偶に代表されるような抽象的な像を思い浮かべますが、この像はとても写実的です。
牙で作られた像のため、とても小さな像ですが、これだけを見るために赴く価値があると思います。
モヨロ貝塚は流氷で有名な北海道網走市にありますが、流氷だけを見て帰るのはもったいない。
ぜひ、この「モヨロのビーナス」を見に貝塚に足を運んでほしいものです。

エリア 網走(北海道)

• 旅行の満足度: 4.5
• 観光: 2.5
• 交通: 2.5

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 1万円 - 3万円
• 交通手段: 高速・路線バス 徒歩 AIR DO
• 旅行の手配内容: 個別手配

碑文。
モヨロ、とカタカナで書いていますが漢字があったんですね。

モヨロ貝塚全景。
博物館は有料ですが、外の貝塚の見学は無料です。

博物館内に入ります。
墓域がそのまま保存されていました。

墓域。
顔の部分に壺がかぶせられています。
現代の棺桶の代わりとなる意味があったのでしょう

葬送の様子の想像図

墓域から２Fに向かうとき、フクロウのはく製が。

シマリスのはく製もありました

自分が衝撃を受けたモヨロのビーナスの像の正面からの絵

像は回転して見せているのですが、後ろの造形もまた精緻。
これを見ると背中でボタンか紐で服を留める構造であることが分かります。
この構造の服は「自分では脱ぐことも着る事もできない」服であることを意味します。
一般に、この服装は「貴族の女性」しか着ない服です。
どんな社会だったのか、気になるところです

モヨロ人の住居の再現コーナー

住居には加工用の獣の骨が保管されていたようです

土器。
須恵器と縄文土器の中間的なイメージがあります。
くびれ部分、口部分の文様が独特で精緻です

別の土器。
くびれ部分には「縄」があしらわれている様です。

土器のかけらの文様。
前史時代の模様であっても美しい意匠です

骨から作製した食事道具。
スプーンの柄の部分の意匠が精緻です

装身具の数々。
熊の人形など、現代の民芸品といっても違和感のない出来です。

オホーツク文化圏の説明文。
樺太と北海道が一体文化圏であったことが分かります。

モヨロの遺物とアムール文明圏との道具類の共通点を示す説明文

オホーツク文化圏はカムチャッカとの交流もあったようです。
これを見るとベーリング海を渡って北米大陸に渡った人がインディアンになった、という話も説得力を持ちます。

道東において発見された集落跡の図

モヨロ文化のモヨロ人は六角形の住居に住んでいましたが、擦文文化と合わさってトビニタイ文化になった、ことを示す説明文。
住居の形状や竈の位置、数が大きく変わっています。