2023/05/14 - 2023/05/14
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mom Kさん
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八幡浜に向かう途中だった。休憩に「大洲 まちの駅あさもや」に駐車し、案内所に入った。小さなカウンターの向こうの青年と目があった。大洲観光地図を示しながら、「お城はここで、臥龍山荘はここです。どちらに行かれますか。」と案内してくれる。私は、この町に一時間程度のつもりだが、心が動いた。初めて耳にするいきなりの名ざし、「臥龍山荘」に行ってみよう。
・・・それは、ひれ伏す建築だった。
駐車場に戻る時、彼にお礼と報告を伝えた。大洲が感じられる人だった。
あの日から、7年。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
- 交通手段
- 高速・路線バス 船 JR特急 JRローカル 私鉄 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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大洲は、お城のある旧市街は、臥龍山荘の麓までぐるり武家屋敷塀デザインの堤防壁で囲まれている。ヨーロピアンの旅人にはこの方が親しみを感じさせるかもしれない。
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初めて大洲に泊まる。駅の案内所で地図をもらった。「たる井」さんでお膳を待つ間、作戦を立てた。中江藤樹邸跡”至徳堂”。臥龍山荘と反対側に位置するのも好都合。川を右手に下流から上流に、町を上っていく道程になる。
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大洲小学校を曲がったら、高校生の一群に会えた。彼らから、「こんにちは!」の挨拶。全員、顔つきの爽やかなこと。「至徳堂に行きたいのですが・・・」と尋ねてみると、女学生の一人が、「ああ、ここを真っ直ぐ行きますが、少し坂ですよ。」と、教えてくれた。
結局、その屋敷は、大洲高校の敷地内のようなので、訪れるのを控えた。
途中、青色発光ダイオードの中村氏の業績をたたえる碑に遭遇。顔写真が表面に大きくあり、どきっとする。 -
本町、中町が並行して通っているのが、古い商店街エリア。昔からの生業が見えるお店がひっそり並んでいた。和菓子に呉服、鮎を燻して、乾燥させたものも見える。
通りの終わりを右に曲がり、肱川に沿うように歩いて、最後に臥龍山荘。 -
玄関に続く石の形もさまざま。
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美に浸る極上のひととき
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当主は完成後住むことができたのは、とても短期間。
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一枚板の廊下に敢えて溝を彫る。その時の棟梁の姿を想う。
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私は、この隅っこに居場所を決めて、心ゆくまで座っていることにした。
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今日は、不老庵のお茶席も待つ人が多い。見学者も並んでいる。
何も知らずに訪れたあの日。見学中ほぼ私一人。受付の女性が母屋を説明をしてくれたあと、「もうすぐ台湾からの観光客の人たちがきて、少し騒がしくなりますが申し訳ありません。」と断りをされる。20人ほどのグループが来訪するが、皆さん静かに見学され、目が合うとにっこりされる。台湾びいきの私は、ここで彼らと共有できていることが嬉しかった。
また一人に戻り、不老庵に移った。見事な網代船底天井を眺め、開け放した三方からの景色。何というところに出会ったのだろうと信じられぬ思いだった。
お茶をお願いした。お茶碗もお菓子も臥龍山荘にふさわしいものだった。
もうあのような贅沢には、二度と出会えないだろう。 -
今日は上がらず、庵の裏に回って「捨て柱」を眺め確かめる。
この槇がどうして成長せずに生き続けるか不思議でならないし、この意匠をほどこした人に思いが行く。 -
よくこれだけで支えられること。新建材は一切ない。
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二度目は、秋だった。秋祭りに合わせて、意気揚々とここを訪れた。
そんな折でも観光客の姿が少なく、心ゆくまで滞在させてもらった。
対岸の河原には仮設舞台がしつらえられ、子ども歌舞伎が演じられている。市の渡し船がひっきりなしに人々を運んでいた。何本もの「○○村保存会」の幟がはためき、長いベンチが並ぶ客席には、近郷近在の人たちが、お弁当持参で座っている。演目は、「三番叟」。黒衣の大人たちの動きにも目が行き、演じるこどもたちも順繰りであとを継いでいくのだろうと想像する。大阪や東京から離れていることが幸いだなあと思わずにはいられなかった。
普段何もない河原。大雨が降った後は川底になるようなところから街並みと山々が眺められた。 -
そんなことを思いだしながら、川を見下ろして突っ立っていたら、受付の女性が通りかかり、
♀「もう少しこちらに来てください。ここから欄干だけ残っているのが見えますよ。向こうとの橋があった跡なんですが、人が渡る橋でもなかったんです。」とだけ告げて、向こうに行かれた。 -
上り口は、すれ違いも難しい狭いエリア。今日は、来園者は途切れることがない。
人が画面に入らない瞬間は、ごくわずか。ガイド氏が呼びかけ促すツアー客もあり、こんなに一度に大勢で押しかけて、建物が傷みはしないかと心配になる。 -
先ほどの女性が追い越しざまに、また私に教えてくださった。
♀「これは、流れ積みと言うんですよ。川の流れを表しています。」 -
♀「この丸い石は、月を表し、
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あちらは、船ですね。」と言って、スタスタ石段を下りていかれた。
私は、足元だけを見て、そろりそろり下っている時だった。 -
中州に築山をしたようなところに渡ってみる。
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こちら側の欄干。人が渡る橋ではなかったということは、景色を愛でる贅の一つでしたか。はあああーーー。
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臥龍山荘は、見えない。
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左手向こうに不老庵。
私は、とても贅沢をしている。
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この旅行記へのコメント (2)
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- pedaruさん 2023/06/04 05:40:44
- 臥龍山荘
- mom Kさん おはようございます。
臥龍山荘、聞いたことある名前だな、と思って拝見したら、思い出しました。
初めて四国に行ったとき、車で回りましたが、この風雅な建物は川のほとりにあって、
車でそろそろ狭い坂を走り、行ったところです。
Kさんの琴線に触れたのでしょうね、文学者が書くような素敵な文章で綴られ、雰囲気を伝えています。
西洋の美意識とは真逆な感覚、高度な文化だなぁ、と感心いたしました。
pedaru
- mom Kさん からの返信 2023/06/04 06:27:42
- Re: 臥龍山荘
- pedaruさん、おはようございます。遠い日に行かれていたのですね。お人が少なかったのではありませんか。今回は、時折おすなおすなの盛況ぶりで、驚きました。帰りの石段で、少し先を一人の女性が転びかけました。私と同じ方向なので、自然とどちらからともなく挨拶。北海道からの一人旅の方でした。
私には衝撃的な出会い、その興奮が冷めなくて、翌年建築家の友人をせっついての再訪。その時も二人だけの独占鑑賞。「ここでお能をねえ~」畳を上げれば、能舞台。床下にその響きをよくするために甕が敷き詰められていると聞いて。
京都からの選りすぐりの職人、伊予の杣人、近在の腕ある大工衆、石工衆が、ここに集まったのですよ!施主のように名を残さない彼らの一世一代の意気込みも見えるようで。もうこのような建物は、二度と生まれない時代になりました。
pedaruさん、共有共感してくださって、とてもうれしいです。
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