1989/08/04 - 1989/08/08
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おくさん
自転車の旅 本州横断の巻(3)最終回
出発から4日目の8月7日。松本の朝。
今日も早起き、5時に起床。自転車に掛けといたポンチョは風ですっかり乾いているが、靴はビチョビチョのままだった。中に新聞紙を突っ込んで、押入れにあった電気ストーブを当てておくが寝る前にやらなくちゃなぁ。
空は雲でいっぱいだが、切れ間からは青空が見えいている。台風めどっかに行っちまったらしいな。台風一過と言うくらいだから今日は天気は大丈夫だろう。
友達は朝から行くところがあるそうで、6時頃お別れを言いに来てくれる。相変わらず下駄履きで、その上デイパックを背負って自転車移動らしい。中々の出で立ちだ。私としては、とりあえず松本駅に行って朝飯にありつこう。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円 - 3万円
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昨夜迷い狂った道を見てやろうとウロチョロ探したが、可能性のある交差点などひとつもなかった。そこで分かった。駅から城方向に曲がったと思ったのは勘違いで、実は曲がらずに駅前の通りをどんどんそのまま進んでしまったのだ。それなら昨夜の狐につままれたような方角も説明がつく。駅前の道だったら暫く歩いたら左に曲がらないと城方面には行かないのに、駅から城方面に向かっていると思いこんでいたから適当な所で右に曲がってしまったんだ。これじゃぁ城とは間逆に進んでいたことになる。ビール一本くらいじゃ酔わないので、どうも駅周辺の路地裏をグルグルうろついて方向感覚が狂ってしまったらしい。何たる不覚、危ない危ない。と言うことで迷ったルートを作り直してみました。前回作った地図はどうも途中がおかしかったが、今度のはちゃんと理屈に合っていたからこれで間違いないようだ。
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6時半に松本駅に行ったところ、自転車族がうじゃうじゃいる。荷物を山盛りつけた自転車が、そこかしこに20台位はあるようだ。みんなこの駅で夜明かししたのだろうか?同様に、山男山女もうじゃうじゃいる。さすがアルプスの玄関口松本駅だ。なんか頼もしい連中だなー。
3日間走ってきてサイクリストに出会ったのは1回切りだけだったのに、こういう連中は一体何処に散らばっていたんだろう。きっと、上高地や高山方面に行ってたのが集まってきたんだろう。私も昔走ったことのある松本ー高山ルートは、まるでサイクリスト銀座だったからなぁ。出来ればもう一度行ってみたい素晴らしいルートだ。
さて、立ち食いそば屋は?と捜し歩くと、何とこれが駅の2階にあった。ここもまあ早朝から感心するほどごった返している。牛乳と天ぷらそばで朝飯にする。昨日の忘れられないお昼のラーメンから始まって、3食続いての麺類だ。今日のお昼は絶対に米のご飯を食うぞー。
輪行袋を取り付けている革のベルトが切れかかっていることに気づく。自転車が振動する度に重たい輪行袋を何万回も揺らしてるからそりゃぁベルトも傷むだろう。アルミ製のトウクリップ(足をペダルに固定する金具)は今回の旅で切れてしまったのを工面して使っている。両方とも前橋に帰ったら交換しなくては。
サドルの傾きを少し変えてみる。尻が大分楽になった。どうも調子が悪かったのはこのせいだったのか。駅で組み立てた時に高さ調整は問題なかったが、傾きまでは気が付かなかった。今頃の話だが、もっと早くやってれば良かった。 -
松本市街を抜ける頃には空は台風一過の晴天に変わっていった。この様子ならもう雨の心配はないだろう。雨雲はみんな台風が連れ去ってくれたようだ。
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8時過ぎ、有名な碌山美術館に着くが、9時開館なので待つ時間が勿体ないから入口の写真だけ撮って後にする。特に見たい訳じゃなかったので何てことない。有名なので寄りたかっただけ。
本日、風向きは今のところ誠に具合がいい。追い風に乗ってブンブン飛ばす。やっと台風の風が利用できた。痛快だー。
そろそろ一休みしたいと思ってる所へ、郊外型スーパーがあったので寄っていく。ここもまだ開店前なので、人がいなくて丁度良い。昨夜2時間もほっつき歩ったおかげで今日は朝から疲れが出ている。まったくあれは馬鹿を見たもんだ。あんまり眠いので長イスに横になり仮眠を取る。
目が覚めた時、一瞬自分がどこにいて何をしてるのか分からなくなる。次の瞬間、あーそーだ、サイクリングの途中だったんだと気づき、ひどくかったるい気分になるが、すぐに気を取り直す。やっぱり緊張せんことにはやってらんないのだろう。時計を見るとたったの15分しか寝ていない。
10時20分、信濃大町駅につく。ここから日本海までは残すところ74kmだ。駅の洗面所で腕や顔を洗い、サッパリしたところでキオスクで缶ビールを買って待合室のベンチでグビグビ飲む。あぁ至福の瞬間。
こうやって駅の待合室で旅行者の行き交う風景を見ながら飲むビールは、また格別なものがある。あんたも旅人わたしも旅人、皆それぞれに色んな思いでこの構内をウロウロしている。この大町駅は、アルプスの基地的な駅だから、山の格好をしている人が圧倒的に多い。この人もあの人も少ない休みを最大限に使って来ているのだろう。電車から降り立つ人は、これから休みが始まるのだろう。嬉々とした顔にはハッキリそう書いてあるようだ。一方、電車を待っている人たちの顔には疲れが見える。時折タクシーで駅に乗り付けてくるグループは、例外なく男も女も小汚い格好だ。山の中を思いっきり遊び歩って来たのだろう。彼らにはあの汚さが勲章なのだろう。
「山の駅 小汚い形(なり)に 清清しさ」字余り。
まだお昼には早いが、駅の2階にある食堂でカレーの大盛りを食べることにする。今朝、昼はご飯(米の飯)を食べるぞと心に決めたが、カレーもごはんには違いない。出てきたカレーは、さすが登山者の駅だけあって実力のある大盛りで感激もんだった。
ボトルに水を補給して、さて出発と5m走った所でパンクに気づく。ツーリングでのパンクは何年振りだろう。もっとも最近は子供が何人も生まれたのでサイクリングも良いけど子供と遊ぶのも楽しくなってしまったので、すっかりマイホームパパだから年に1回しかツーリングに出なくなってしまった。
15分ほどで直し、乗り出すとまた空気が抜ける。同じガラス片がチューブの反対側も突き刺していたのだ。パンク修理の時にタイヤの中に異物が残っていないかチェックしなかったので失敗した。それも直したのに今度は空気がサッパリ入らない。こうなると嫌気がさしてくるが、直さないことには走り出せないので面倒でもやるっきゃない。そしたら今度のはバルブの虫ゴムが千切れていた。これでは空気が入らない筈だ。スペアの虫ゴムと交換したら、3度目の正直で今度こそ大丈夫になった。一安心。結局、12時近くまで大町駅にいてしまった。
暫く走っている内、後輪がコトンコトンと規則的に尻に響くのに気づく。あれー、どうしたんだろう?考えた所ではチューブの表と裏面の同じ所に2つもパンク貼りしたので、そこだけがチューブが十分膨らまずに、くびれた状態になってるんだと気づく。どうも調子が悪いが、チューブのスペアは持ってこなかったので我慢することにする。結局、このコトンコトンの状態のまま、ゴールの直江津まで残り100km以上を走りつづけることになってしまう。 -
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木崎湖、青木湖までやって来たので見物しに寄っていく。どちらも観光地なのでこういう所に寄ると気分が華やいでいい。でもひとりぼっちなので賑やかな所を自転車で流すだけで、それ以上のことは何もない。
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白馬の駅に到着。さすが有名な町なので、駅は人でごった返している。ここだけ東京の町が引っ越してきたようだ。しばらく人込みを眺めて過ごす。人間ウォッチングは暇つぶしには持ってこい。
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走り出すと山の斜面に有名な大雪渓が見えだした。遠すぎてここからは見えないが、あそこで夏スキーをする人がいるのだろうか。やっぱりああいう風景はその中に入っていかなくては感動はないのだろうな。こっから見ても真夏に雪があって珍しいというだけだ。
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珍しくトンネルがあった。トンネルの中を自転車で通過したことのある人なら分かるだろうが、歩道が付属してないトンネルほど怖いものはない。後ろから迫ってくる車の轟音が何しろ恐ろしい。後ろから踏みつぶされそうな錯覚に陥る。トンネルに入ったら一目散にペダルを漕ぐことしか考えられない。
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行く手に通せんぼしてるように大きな山が現れた。私が走っている道路はあの山へ続いているので、あそこのどっか低くなっている所を越えて行くのだと想像しながらペダルを漕ぐ。川には四国にある沈下橋みたいのが細長く掛かっているので、この辺りは時期になると大量の雪解け水が出るのかも知れないと想像する。地方によって色んな発見があって楽しい。
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最後の峠のくずは峠を越え、いよいよ新潟県に入る。だんだん日本海が近くなってきた感じがする。山の形も何となく今までの山々とした形ではなく、海沿いの低い山の形に見えてくる。今回、コースの中にこれといった盛り上がりがなくて、ぬぺっとした感じだったけど、ここに来て少しだけ山場を迎えたような気分がしてきて気分が高揚する。それはもちろん、今回のテーマが「本州横断」だからですがな。
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日本海日本海と思って走っていると、中々日本海に着かない。周りはもうすっかり海岸地帯の風景になってきてるんだけどなー。それでも5時10分、とうとう日本海にたどり着く。どっしりとした防波堤でしっかり道路はガードされているので、波打ち際へは降りられないが、出発するときの太平洋だって触ってきた訳じゃないから気にすることでもないだろう。日本海をバックに自転車の写真を撮って北へ向かって走り出す。
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今夜の宿を探しながら走っていると、和風レストランを一緒に経営している「銭形」という民宿が道端にあらわれる。普通、こういう二束のワラジの民宿は敬遠するんだけど、今日は日本横断祝いに素泊まりだったらチョットいつもより豪華に食べようと思ってたから入ってみることにする。この店は構えがいいから、普通の民宿より少しくらい値段が高くても旨いものを出すかも知れない。
店の中に入って聞いてみる。食事はいつもナシで、素泊まり3000円。つまり、夕飯は店内で食べてってことのようだ。今回の私としたら持ってこいだ。私は変な魚料理を有無を言わさず出されるより、好きな物を選んで食べられるから丁度いい。ここんちに決める。
早速風呂、脱衣場に全自動洗濯機と洗剤が置いてある。まさか泊り客のためじゃなかろうが、渡りに船だから使わない手はない。昨日と今日の分を入れてスイッチオン。これだとゆっくり風呂に入ることができるから最高だ。どこもこんなんだと誠に助かるけど、こんな幸運は滅多にあることじゃないだろう。一昨日泊まった八幡館なんか「風呂で洗濯しないで」なんて張り紙があったし。 -
風呂から上がって店のほうへ食事をしに行く。ここまで来てトンカツ定食もないもんだから、普段は絶対注文しない刺身定食を頼み、ビールを2本飲む。今日は豪華だーっ。と言っても、私の豪華はこのくらいだ。
今日もよく走った一日だった。でも、パンク直しや観光もしたから能率良く走ったとは言えないかも。ま、遊びに来てるんだから、むしろこの方が有意義なんだろう。割合いい一日だったと言うわけだ。
いよいよ糸魚川が近づいてくると、海までが長かったぁー。あんまり長いもんだから、さすがに日本横断の瞬間を待ちわびた感覚になってしまった。一人旅の悲しさで、着いてしまえば誰と喜びを分かち合うでもないし、何てことないのだが。
部屋に戻ると布団とシーツ、ねまきがまとめて積んであった。さすがにこの辺りは「民宿は素人なんですよね」って主張が読み取れる。ここんちの人は宿に泊まったことがない?てことは無い筈なんだが。
この部屋は、小宴会用の小部屋らしく、客を泊めるためのものではないようだ。壁にはお品書きや舟盛りの写真が掛けてあり、テーブルにはレストラン用の調味料が置いてある。反面、ポットやお茶道具は置いてないので、喉が渇くと隣の脱衣場へ行って水道から直接水を飲む。モチロン、ハンガーやタオル掛けなんか無いから、洗濯したのはテーブルや積んだ座布団に掛けて干しておくっきゃない。テレビは只だから見てやる。まだ7時過ぎ「100人に聞きました」をやっている。何はともあれ、クーラーのあるのが一番ありがたい。一晩中掛けっ放しで、厚い布団を掛けてゴージャスに寝る。
出発から5日目の8月8日。今日は長女の誕生日だ。今晩には前橋まで帰れるので誕生祝ができるだろう。そのための日程ではないが、丁度良かった。 -
空はどんよりと曇ってはいるが、降りそうな気配は無い。テレビをつけて天気予報を見てみる。昨日、日本海北部へ抜けた台風は、今朝3時に熱帯低気圧に変わったそうだ。この辺りは曇りと晴れの一日らしい。今日は帰る日だからどっちでもいいやと思っても、やっぱり晴れのほうがいいに決まっている。
今回は台風が2個も迫っているところを承知で出てきたが、雨風はあっても取り返しの付かないほどのアクシデントは無かったので良かった。まぁ走れない程の台風の中ならどっか家の中でやり過ごせばいいやと思ってたので、それほど心配はしてなかったが、案ずるより産むが易しだった。
6時過ぎても店の人は誰も起きてこない。ポットもないから朝茶も飲めないで持参のガムを噛んでいる。ホント、ここんちは風呂に入れて寝られるだけの民宿だね。前日、夕食代と一緒に宿泊代も貰いたがるはずだよ。ま、3年前のあのすんげぇ別館から比べりゃはるかにマシな宿だったけどね。
結局、出発する時でさえ店の人とは顔を合わさず仕舞い。なんちゅー宿だろ。同じ部屋に内緒で数人入れても分からないだろな。 -
さわやかに晴れ上がった空の下、海沿いの国道8号を直江津目指して走り出す。今日はこれからどっかで朝定食でも食べて、最終地点の直江津駅までの40kmを走るだけだ。その後はまた、ドンコーで前橋まで座ってるだけの単調な旅が待っている。今年もまた何とか無事ツーリングをやらせてもらった。ありがたいことです。
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おわり
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