2020/12/08 - 2020/12/09
106位(同エリア863件中)
ひらしまさん
五島列島は九州本島の西に位置し、長崎県の本島部とちょうどハの字形に向き合って南北に連なる百数十の島々だ。
変化に富んだリアス式海岸の美しさと新鮮な魚の魅力に加え、隠れキリシタン以来のキリスト教信仰の歴史はほかの地方にないこの島々の特徴だ。
領主の都合でカトリックに入信させられた人々が、しかしその教えに救いを見出し強く信仰するようになり、逆に領主に命じられてもその信仰を捨てず、過酷な弾圧を逃れるために離島に隠れ、小さな共同体の中で信仰を代々守り続ける。
そうして二百年の時が流れ、ふたたび長崎を訪れた西洋人司祭と隠れキリシタンは感動的な出会いを果たす。しかし、長い時の間に変化していた教義の解釈や儀式は、カトリック教皇庁から見れば異端であり許されるはずもない。
先祖代々が命懸けでつないできた信仰をあくまで守り通すのか、それとも本家カトリックの教会活動に参加していくのか、人々はきびしい選択を迫られ、それは共同体にも亀裂をもたらす。
そんな残酷なこの地の歴史を、わたしはとても受けとめきれない。ただ、心のどこかにそれを置きながら、島の美しい風景を楽しみたいと思った。
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ホテルの食堂が開く6時30分から急いで朝食をとり、タクシーで長崎港へ。福江を経由して中通島の奈良尾に向かう7時40分のジェットフォイルの切符を購入。
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待ち時間に港を散策。観光丸って江戸幕府の船の名前だったと思うけど復元して飾ってるのかと思ったら、調べると港内遊覧船としてちゃんと動いているらしい。
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我々が乗ったジェットフォイル「ぺがさす」。
席は1階左側3人掛けの残念ながら通路側だ。事前予約すれば窓側がとれたのだろう -
長崎港を出た「ぺがさす」は、9時ころ五島列島の南の中心である福江島に寄った。そこから小さな島々の間を北上し、北の中心である中通島まで行く。
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晴れていたらもっとこの景色を楽しめただろうけれど、この日の天気予報は曇り時々雨。そのうえ最大風速8メートルというから体感温度はかなりきびしいものになりそうだ。
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中通島の南東部にある奈良尾港に近づいてきた。
港に出迎えてくれた車でトヨタレンタカーへ。エコノミー24時間保険料等込み有川店返却で7370円。スタッフ2人とも女性なのが印象的だった。 -
ゴーカートのようにうなるヴィッツで島の西側に出て、中ノ浦教会堂へ行く。
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漁村の教会堂ならではの入り江に臨む姿をぜひ見たかった。
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幸い少し晴れ間も出て風も弱い。
小さな入り江の反対側に階段があり、波打ち際まで下りられた。 -
明治初めにも五島崩れとよばれる激しい弾圧を経験した信徒たちの「五島で一番美しい聖堂を造りたい」という願いを形にしたものだと、説明板に記されていた。
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南北三十数キロと細長い中通島の真ん中あたりまで北上し、鯛ノ浦教会堂へやってきた。なによりこの教会堂入り口前に立つ色鮮やかな聖家族像が印象的だ。
イエスと母マリアの2人の像はどこへ行ってもよく目にするが、父ヨセフもはいった3人家族の像というのはわたしは初めて見たように思う。なので、処女懐胎なんてありえないという科学的見地から母だけでなく父も敬おうということだろうか、あるいはまた、男尊女卑の気風の強かった日本、とりわけこの九州においては家長たるヨセフが尊ばれたのだろうか、などと想像をたくましくしたのだった。
後日調べてみると、ヨセフを含めた聖家族というモチーフはキリスト教美術の中にあることはあるようで、また、カトリックの中でもヨセフを守護者として崇敬の対象とするように次第になってきていたらしく、1979年建立の新しい教会堂はその動きを反映していたのかもしれない。 -
左奥には、明治期に建てられた赤煉瓦の塔が美しい旧教会堂がある。今でも十分使えそうな立派なものだ。それでも建て替えたというのは、当時よほど漁業が好調でお金があったんだろうか。
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昼食は青方にあるうどん屋の寿太郎で、海の幸天ぷらうどんを食べる。小さいながらも海老とキスがはいって580円と安い。うどんはどうということもないが、あれが五島うどんだったのかなあ。
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さらに北上し、岬の突端にある矢堅目(やがため)岩をめざした。
ナビには道が表示されないのでどんな険しい道かと思ったら、きれいに舗装された道がずっと続き拍子抜け。小さな駐車場に車を置いて小道を登ると展望台に出た。 -
そびえる岩山が目の前に見える。
空にそそり立つ矢堅目岩は迫力満点だし、青い海に白い波がきれいで、気持ちいい。周囲をぐるっと見渡せ、気分は最高! -
眼下では波が岩に砕ける。
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岬の西岸を見渡してみる。
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北には十数キロかなたの小値賀島が見える。
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東は奈摩湾がおだやかなたたずまいをみせている。
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しかし展望台は吹き抜ける風がすごい。体がぐらつく。手と耳が冷たい。手袋を持っててよかった。
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矢堅目岩へは地続きではあるが柵があって行けない。
その昔は海の守りの砦だったので、「矢で固める」意で矢堅目という名がついた。 -
駐車場に戻る途中で東側に進む道があって行ってみたが、風がいよいよ激しくなり大人しく退却した。
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宿のある奈良尾方面に南下する。
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途中、入り組んだ入り江の美しさにたびたび車をとめた。
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山を越えて出た入り江の奥に立つ桐教会堂。
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その先で隠れ家のような小さな入り江を見つけた。
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ずっと眺めていたい静かで美しい場所だった。
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最後に米山展望台に向かった。対向車が来たらすれ違えなさそうな狭く曲がりくねった薄暗い道を、ライトをつけて登ってゆく。あまり車が通ってない様子で、こんな道進んでいいんだろうかと不安が募ってくる。
ようやく視界が開けた。西側の海が見える。 -
もう少し進むと駐車場があってほっとした。
中通島の南端方向を見下ろす。 -
椿の花の落ちている階段を上って展望台に立つと360度の景色が待っていた。
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東に奈良井港を一望する。
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西方向には島々が重なり合って見える。
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太陽が傾いているのが椛島方向か。
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さっきの矢堅目の猛烈な風が嘘のようにおだやかな米山展望台。同じ島の中でずいぶんと違うものだ。
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のどかな多島海の景色に、ここまで上ってきてよかったと思う。
宿へ向かうのには南回りの道を選んだら、こちらは広くて安心して下りられた。 -
宿のマルゲリータ奈良尾はカーナビには出てこないし、案内表示もなかったけれど、勘で行き着く。
玄関前で茶色の囚人服みたいなのを着た一団と会った。従業員かと思ったが雰囲気が違う。別棟にある風呂から館内着で帰ってきた人たちだとあとでわかったけれど、ホテルのしゃれた雰囲気に不格好な館内着は似つかわしくなかった。
ロビーに入っても声がかからなかったり、Go To クーポンや朝食のことなどこちらから聞かないと説明がなかったり、サービスはいいとは言えない。 -
ここは「島ごはん2食付プラン」で予約した。で、マルゲリータというホテル名から勝手にイタリア料理と思い込んでいたら、和食だった。
数十年ぶりに食べた鯨肉がおいしい。 -
刺身はたっぷり鉢盛りで。昆布締めがいい。
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五島牛のカツレツ。
グラスのチリ産赤ワインがとてもおいしかった。600円台というのが信じられないほどだ。
そして、ここはサービスもいい。
離れたテーブルの男性数人組が酔って大声でしゃべるのだけが困ったもんだったけど。
12時近くに寝た時、天井に雨だれが落ちるような小さな音を感じたが、そのまま寝入ってしまった。その雨だれ音で目覚めたのは午前4時過ぎだった。
音はかなり大きくなっていて、気になって眠れない。フロント係を呼んで音を確認してもらい、用意してくれた別の部屋に移った。妻は動きたくないからと残ったが、その後あまり眠れなかったそうだ。 -
4日目。いい天気だ。
朝食はサバ塩焼きが脂がのっておいしい。
Go To の地域共通クーポンで土産の「矢堅目の塩」と昨夜の酒代をまかなう。
しかし、異音のために真夜中に部屋を移らざるをえなかったことに対し、ホテルから改めての詫びの一言がなかったのにはがっかりした。 -
きょうは中通島の中ほどにある有川港からフェリーで佐世保に渡るので、トヨタレンタカーの有川店に10時までに車を返す。
途中の中ノ浦教会堂は朝なぎの海面に映っていた。 -
車で少し走ると次の入り江があり、教会堂がある。宗教が身近にある中通島。
日本の辺境といっていい漁村の風景の中に、ヨーロッパの象徴のようなキリスト教会が突然に現れる。その意外性が部外者のわたしには魅力的な五島だった。
トヨタさんに送ってもらった有川港で、昼食用の菓子パンとともに五島名物かんころ餅を買った。サツマイモを薄く切って日干ししたものを混ぜたそうで、素朴でいい味だ。 -
フェリーは長崎からのジェットフォイルと違ってとても空いていた。この広々した空間で2時間半ゆったり過ごして、佐世保に着いた。
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