2019/11/01 - 2019/11/01
30位(同エリア206件中)
ひらしまさん
3日目はアンドンのハフェマウルを訪ねた。
ハフェマウルは、豊山柳氏が六百余年暮らしてきた同族村で、韓国の伝統生活文化や古い建築様式がそのままに残る「生きた世界遺産」。
地図で見ると韓国中部に位置するので、キョンジュの次に泊まるつもりだった。ところが、キョンジュ~アンドン間の直通の列車もバスも見つけられなかったことと、わたしの日程ではハフェマウルが日曜日になるけれど紅葉の時期の日曜日は道路が渋滞するという情報もあったため、ハフェマウルにはプサンから日帰りで行くことにした。
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朝7時半に宿を出て、地下鉄1号線でバスターミナルのあるノポに向かう。プサンの中心部を通る路線で通勤時間帯のはずなのに、すいているのが不思議だった。
車両ドアに近い座席の前の床におなかの大きな女性の絵が描かれていて、妊婦のみ対象の優先席と思われる。出生率0.98の韓国の切実さが伝わってきた。
ノポBTでアンドン行きの切符を買う。ほぼ毎時1便。券売機は日本語可なのはもちろんのこと、何時何分の便は何席残っているかまで表示される優れものだった。そのあと昨日もはいったパリスバゲットで、ターミナルを行き交う人々を見ながら朝食。
905発。最前列の席にしたので、稲田やすすき、いちょうの黄葉を楽しみながら高速道路を走り、アンドンBTに1120着。
ここからハフェマウルの入場券売場までタクシーで20分だった。 -
入場券を買ったあと、案内所の日本語担当キムさんが帰りのバスの乗り場に至るまでくわしく案内してくれる。日本に行ったことがないというのが信じられないくらい上手な日本語だ。
ここの名物塩さば定食のハングル表記を書いてもらい、ついでに彼女たちが時々行くという店も教えてもらった。日本だったら立場上特定の店を教えるのはまずいということになりそうだが、立場より人情を優先するのが韓国流かな。
2010年にユネスコ世界文化遺産に指定されてから、火事を防ぐために村の中の食堂はすべて入場券売場の外側にある河回市場に移ったそうだ。教えてもらった食堂に入ると、田舎風のいい感じの店だ。
名物だけあって、そしてお値段も高いだけあって、立派なさばが出てきた。大きくて脂が乗っている。副菜の小皿は8枚。しその味噌漬けがとてもおいしかった。 -
シャトルバスが村の入口まで運んでくれ、村歩きが始まる。
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立派な構えの家が多い。
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一つの村に両班(ヤンバン)がこんなに多かったのか。もっとも、李氏朝鮮の末期には両班の身分を金で買うことが広がり両班がすごくふえたとどこかで読んだが、ここがどうかはわからない。
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軒先に柿を干している家も多く、懐かしい気がする。
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普通の家は藁葺きだ。左手の小屋が美しい。
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藁葺き屋根と土壁にツタの赤が燃えていた。
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まるで学校の講堂のような堂々とした家。
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ほぼ中央の道を進み、川岸に出て村を振り返る。
漢字で河回村と書くのは洛東江が村をぐるっと囲い込むように流れているからだが、チェスキークルムロフ(チェコ)やベルン(スイス)もこういう地形だった。水の便が良い地こそが繁栄の条件だったのだろう。 -
土手沿いに時計回りに歩く。
この赤いのは不倶戴天の唐辛子だな。 -
村の中央方向に戻ってくると、トーテムポールのような人形に出会った。
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樹齢600年を超える欅を三神堂ご神木として祭っている。子宝と子育ての神だそうだ。
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きっと願い事を書いて結んでいくのだろう。
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仮面劇が2時からあるはずで、その劇場は案内所でもらった地図では案内所の近くに描かれていたので、シャトルバスで戻る。しかし、それらしき場所に劇場はなく、近くの人に聞くとシャトルバスに乗れという。
いったいどういうことかとあらためて地図を見直すと、案内所や市場のあるエリアと村とは1kmほど離れているのに、その地図ではくっついて描かれていた。劇場も実は案内所の近くではなく、先ほどまでいた村の入口付近にあったのだ。
そんなわけでようやく戻って劇場に入ったときには仮面劇はもう始まっていて、左サイドに空いている場所を見つけて座った。 -
後方で太鼓が打ち鳴らされ、チャルメラなども加わる。その後ろのスクリーンには英・中・日3カ国語の字幕が映される。
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内容は、学者と両班が見栄を張り合うとか、僧が女性の小用を見て興奮し抱きつくとか、上流階級を風刺して楽しむ庶民の娯楽らしい。
小学生が引率されてきていたけどこんなの見てていいのかしらと気になったくらいだが、大人には結構受けていた。 -
劇としては、音楽も含め正直物足りない。
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実は前回の韓国旅でソウルで買ったのがこのハフェの両班の仮面で、その複雑な笑顔に魅せられてずっと居間に飾ってある。だからちょっと両班に肩入れして同情してしまう。
まあ、こんな劇を認めてやらせたところがハフェの両班の偉いところに違いない。 -
3時に劇が終わったあと、もう一度村を歩く。
干し方は違えど、稲穂を田に干す光景が懐かしい。 -
今度は左手のほうに進んでみた。
こちらは藁ぶき屋根の普通の民家が多い。 -
井戸も藁ぶき。
バスに遅れないように、このあたりで引き返そう。 -
干し柿に人が暮らしてる感がある。
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先ほど通った小屋の壁石が夕日を受けて浮かび上がっていた。
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いちょう並木をバス停に戻る。
〈アンドン行きのバスの時刻 720 850 1010 1105 1235 1340 1440 1550 1630 1715 1820 1910〉
3時50分のバスは遅れて現れ、アンドンBTに4時半に着いた。
プサン行きは5時でちょうどいいと思ったけれど、券売機には残り1席のみと表示された。次の6時の便も残り4席しかなく、少し離れた席になってしまった。 -
プサンに帰るのが遅くなるので、BTの食堂で夕食にする。わたしはプルコギ。
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妻は牛肉ときのこの粥。
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こういうところなので全然期待してなかったが結構おいしかった。
プサン行きのバスは走り出すと車内照明が消され、必然的におやすみタイムとなる。途中で夕食買い出し休憩があったにもかかわらず、行きより早い2時間10分で着いた。
■主な支出
ノポBTでの朝食(2人) 14400W
バス プサン~アンドン往復 29400W
アンドンのタクシー 24700W
ハフェマウル 5000W
塩さば定食(2人) 22000W
アンドンBTでの夕食(2人) 13000W
■諸費用込みレート 1ウォン≒0.095円
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この旅行記へのコメント (6)
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- sanaboさん 2020/01/11 17:03:24
- 今年もよろしくお願いいたします。
- ひらしまさん、
寒中お見舞い申し上げます。
本年も宜しくお願いいたします。
生きた世界遺産といわれるハフェマウルは
まるで日本昔話に登場する村の韓国版のように思えました^^
ほのぼのとした藁ぶき屋根の佇まいが何とも良い味わいです。
黄葉の銀杏並木を背景に稲穂を田に干す光景が
新鮮でもあり懐かしくもあり…
藁ぶきの井戸もフォトジェニック☆彡
「国交正常化以降最悪の関係などと言われる今、
庶民レベルで普通の関係を続けることが大事だと思う」との
ひらしまさんのお言葉を拝読し、まさに仰るとおりだと感じました。
今年もお健やかな良い一年を過ごされますよう、
心よりお祈り申し上げます。
sanabo
- ひらしまさん からの返信 2020/01/12 15:21:28
- 今年もよい年でありますように
- sanaboさん、寒中お見舞い申し上げます。
こちらこそ本年もどうぞよろしくお願いします。
ハフェマウルで僕はどちらかというと立派な瓦屋根の家に目が行ってましたが、sanaboさんは藁ぶき屋根の方に注目してくださったんですね。
言われてみればたしかに柔らかなほのぼのとした藁ぶき屋根の佇まいがいい…。
茅葺き屋根が身近にあった子どもの頃には全然いいと思わなかったけれど、今となっては「フォトジェニック」。
旅行記ってほかの人の見方から教わることもあるんだなと改めて思いました。
ありがとうございます。
ちなみに、韓国本土では藁ぶきが、島では茅葺きが多かったそうです。
日本は茅葺きだったかなあ。
そして、sanaboさんの新作の舞台チッピング・カムデンはなんと茅葺き屋根だったんですね。
なんとなくヨーロッパの家は石系の屋根のイメージがあったので、驚きました。
小屋ならともかくあんな立派な家として今も使われているとは。
そして屋根の上の生き生きとした動物たち!
屋根葺き職人の遊び心が最高でした。
今年も旦那様と仲よく元気にいっぱい旅して、楽しい旅行記をたくさん読ませてください。
ひらしま
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- ソウルの旅人さん 2019/12/22 20:55:11
- 11月の空の色
- 11月初旬のファフェマウルの空は澄んでいますね。半島とはいえ大陸の一部なのだと実感します。塩鯖の味はどうでした。日本の鯖と同じでしたか?パンチャン(小皿)は全皿食べられましたか?微妙に異なる味付けがあるように感じているのですが・・・。畦にはすすきが揺れ、稲田では刈り取られた稲穂を干す写真や軒先の吊るし柿の写真は大変懐かしいです。懐かしいですが、なんだかチョット違うような気がします。すすき・稲穂・柿と素材は同様ですが、その全体風景はどこかが異なるように思えます。三神堂の欅の御神木を見た時も同様です。神の依代としての大木は我々にも馴染み深いですが、この欅の周囲の雰囲気は日本の神社とはまったく違います。日本と韓国の同質性と相違性を今回の旅行記で再度思い出しました。
- ひらしまさん からの返信 2019/12/23 22:42:23
- Re: 11月の空の色
- ハフェマウル旅行記におたよりをありがとうございます。
あの稲穂同士を立てかける干し方やトーテムポールなどなど、似てるけど日本では見たことない光景は印象的でした。
風景全体は日本に似ているだけに、やはり外国なのだなと感じます。
ただ、考えてみると、日本の中でもそれぞれの地域独特の風習があったりしますから、必ずしも国境線でくっきり分かれているわけではないかもしれませんね。
一方、17年前に訪れた時に比べれば、韓国が経済的にも政治的にも発展して近くなったという感はありました。
ちなみに塩さばの味は日本と同じでしたよ。
- ソウルの旅人さん からの返信 2019/12/25 15:47:50
- Re: 塩鯖の味のこと
- 安東の塩鯖で思いついたことがありますので、再度コメントします。
京都の出町柳は鯖寿司が名物です。その鯖は若狭の小浜から陸路を人力で運ばれてきました。足の速い鯖ですが、大需要地の都に腐る前にいろいろと工夫を凝らして、内陸の京都の名物になり得ています。安東の塩鯖も韓半島の東海岸の漁港に揚がった鯖を需要地の内陸の安東に工夫を凝らして運んだものです。まったく相似です。しかも、その鯖が同じ日本海産であることを思うと、同じ味がするのも当然で、同一の食文化圏にあることを強く感じます。
なお、一言加えますと、小浜から京都への路が「鯖街道」です。現在、この街道沿いにはブームになった焼鯖寿司の店舗が多数あります。
- ひらしまさん からの返信 2019/12/25 21:11:02
- 鯖街道
- 鯖街道、どこかで読んだと思ったらソウルの旅人さんの旅行記で知ったのでした。
奈良に都があったころ山背より若狭のほうが開けていたというお話が印象的でした。
わたしの生まれた長野県の日本海や太平洋に通じる街道は塩の道と呼ばれたりもしますが、塩のような基本的なものでなく鯖という特定の食品の名を冠して呼ばれるに至ったのは、よほど京都では若狭の塩さばの存在が大きかったのですね。
ちなみに、わたしが子どもの頃食べた魚といえばもろみ漬けのような加工品だけでした。
日本海を隔てた両側で、同じ工夫で鯖を運び同じ味を食べていたというのがおもしろいですね。
いつのまにか年の瀬が近づいてきました。
どうぞよい年をお迎えください。
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