2018/06/02 - 2018/06/02
27位(同エリア142件中)
ちゃんさん
身近な街を見直してみようシリーズ、今回は久留米から約40kmの旧炭都・飯塚を目指してみました。石炭関連の産業遺産はもちろん、旧長崎街道沿いに位置し、歴史的景観も面白い街です。
なのに、もう14年も足が向いていません。不義理を詫びつつ、梅雨の晴れ間を歩きに歩きました。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- 高速・路線バス JRローカル
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久留米から飯塚へは直線距離では40kmにもならないけど、特急バスはずいぶん前になくなりました。最もストレートに結ぶJR原田線も1日9往復しかなく、昼間はすっぽり3時間列車が開く時間帯もあります。
そこで往路は博多まで出て、福北ゆたか線経由で行くことにしました。直方行き快速は、4両のワンマン運転。ホームドアもないのに、安全確認大丈夫なのかな。博多駅 駅
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福北ゆたか線は、2001年の電化開業で面目を一新した、快速電車が1時間に2本走る都市圏路線。篠栗~桂川間は山間部を走り、高い高架橋で新緑の中を突っ切ります。
筑豊から福岡へ通勤している人にとっては日々の風景も、週末の旅人にとっては、お出かけ気分が沸く車窓です。JR篠栗線 乗り物
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博多から40分、飯塚着。飯塚市を代表するっぽい駅名ですが、1964年の市役所移転以降、新飯塚の方が市の玄関口になっています。
かつては関西方面からの寝台特急も迎えた立派なRC造の駅舎も、どこか寂しげ。飯塚駅 駅
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その分国鉄時代の面影が残っていて、「自動きっぷうりば」や「みどりの窓口」の行灯が懐かしいです。
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駅から徒歩10分少々で、内住川へ。あと数百メートル下流で遠賀川と合流し、市街地ながら、豊かな河川環境が身近にある都市です。
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川べりにある、1931年築の「嘉穂劇場」が第一の目的地。炭都につきものだった、娯楽の殿堂の生き残りです。
炭鉱の衰退や2003年の大水害も乗り越え、今も立派に現役の劇場として機能してます。公演日以外は、入場料300円で見学OK。嘉穂劇場 名所・史跡
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扉を開ければ、柱のない大きな空間。炭鉱華やかりし時代に、タイムスリップしたかのようです。
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館内は基本的に写真撮影「可」です。写真映えする空間なので、SNSでの拡散効果も高そう。台湾からの団体客も、いろんな衣装に着替えながら何枚も記念写真を撮っていました。
台湾の団体客は珍しいことではなく、近年は韓国や中国のツアーの行き先としても人気なのだとか。確かに福岡都市圏で「日本らしさ」を味わえる、貴重なスポットの一つかも。 -
舞台袖の階段を下れば…
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奈落に入ることができます。
大がかりな舞台機構も、余すところなく見学OK。説明は6ヶ国語で書かれていました。 -
階段を上がった2階席からの眺めも壮観。見学もいいけど、実際の公演も見てみたい!
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嘉穂劇場公演の、貴重なポスターやチケットの数々も展示されています。
驚くべきは、その演者のすごさ!演歌はともかく、西城秀樹やシブがき隊、近藤真彦も、マス席中心のこの劇場でライブをやったんですね。 -
かと思えば、18歳未満はお断りのような公演も。そうえいば劇場周辺には、歓楽街の名残りが感じられます。景気よく賑わっていた時代が、目に浮かぶようです。
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大正11年(1922年)当時の飯塚の地図もありました。嘉穂劇場の前身である「中座」は今の位置と変わらず、街の中心は大きく動いていないことが分かります。
飯塚駅周辺も市街地を形成している一方、新飯塚駅はまだ「新設用地」と描かれているのみでした。 -
嘉穂劇場前からは、特急バス「でんえもん号」に乗りました。天神から嘉穂劇場、バスターミナル、新飯塚駅を経由して伊藤伝右衛門邸までを結ぶ直行バスで、1日3往復の運行。飯塚市内だけの乗車もOKです。
飯塚観光の足として新設された路線なのに、乗客は2人しかおらず、寂しい限り。しかも観光目的ではなさそうな様子で、新飯塚駅を出ると乗客は僕一人になってしまいました。 -
伊藤伝衛門邸前のバス停は、県道の路上にある変哲もないバス停で、意表を突かれました。
県道から信号機を曲がると、旧長崎街道です。鏝絵も立派な旧家が立ち並びます。 -
その中でもひときわ立派で威厳があるのが、旧伊藤伝右衛門邸の長屋門。筑豊を代表する炭鉱王の一人・伊藤伝右衛門氏の自邸は、入場料300円で見学できます。
旧伊藤伝右衛門邸 名所・史跡
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武家屋敷のような構えの表玄関から、お邪魔します。
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まず玄関左には、純和風の外観からは意表をつかれる、洋間の応接室がしつらえてあります。炭鉱王であり政治家でもあった伊藤伝右衛門氏、ここでどんな会話があったのでしょうか。
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その広さに圧倒される本座敷と、畳廊下。欄間は彫刻ではなく、一見するとシンプルに見えますが、よく見れば造形が細かく、手が込んでます。
長押がとんでもない長さの1本モノだったり、床板もすごい面積の1枚モノだったりして、莫大な財力がつぎ込まれていることが分かる建物です。 -
本座敷だけでなく、北を向いた主人居間や東座敷から眺めた庭園も、それぞれ見え方が考えられています。あぁ、一幅の絵のようじゃ。
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かと思えば、2階からの開放的な眺めもまたよし。
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庭は国指定名勝。春はつつじ、秋は紅葉、滅多にない冬の雪景色もいいんだそうです。炭鉱王の暮らしに想い馳せながら、違う季節にも来てみるのも良さそうですね。
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伝右衛門邸からは、路線バスで飯塚バスターミナルへ戻りました。
バスターミナルはJRの駅よりも街中にあります。2015年に改築されたばかりで、壁面緑化された外観がおしゃれ。低層部がバスセンターと医師会関連施設、高層部は西鉄のマンション「サンリヤン」になっています。 -
バス乗り場は屋内型になっていて、待ち時間も快適。吹きさらしの久留米から見れば、うらやましい環境です。
天神方面のバスは、驚異の10~15分間隔。所要時間は1時間かかるものの、回数券を使えば運賃は安く、「JR派」「西鉄派」それぞれ根強いファンがいそうです。 -
バスターミナルの隣は、複合ビル「あいタウン」。スーパーやドラッグストア、公共施設が入ってて、便利そうです。
ターミナル付近を経由する一部のバスは、あいタウン前に発着するので要注意。にしてつバスナビで検索する時は、バスターミナルをランドマークとして指定すれば「あいタウン前」のバスも表示されます。あいタウン ショッピングモール
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バスターミナルの周辺が、かつての宿場町。街道そのものは、アーケード商店街に姿を変えています。
長崎街道 飯塚宿 名所・史跡
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そして商店街そのものが、思ったほど空き店舗が多くなく、中核都市らしい昼間の店が中心の商店街というのも意外でした。写真では寂しく映っちゃいましたが、昼の買い物客も大牟田や久留米より多い感じです。
もちろん飯塚市も郊外型SCの攻勢が強いのですが、平成7年までは人口増が続いていた街。ベッドタウンとしてのポテンシャルを感じます。飯塚本町商店街 市場・商店街
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街道らしい雰囲気は薄い中、福銀はレンガ造の歴史ありげな建築物。福銀の前身となる、十七銀行当時からの建築物だそうです。
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そしてデパートの井筒屋も、1階のみのギフトサロンとして営業中。喫茶店もあって、今も商店街の核を成しています。
ただ老朽化のため、今年10月の閉店がアナウンスされています。借地のため、建物は解体予定。井筒屋と商店街の客層がかなり一致しているだけに、商店街への影響は大きそうです。飯塚 井筒屋サロン スーパー・コンビニ・量販店
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井筒屋横のギャラリーには、巨大椅子のアート。変哲もない木造2階建ての切妻も、飾り方次第です。
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思いのほか賑やかなイメージの飯塚市街地、路地裏も面白いかなと入ってみれば…
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炭鉱町からベッドタウンへと変わることは、夜の街にとって厳しい面があったのかもしれません。
もっとも夜に来たことはない街なので、来れば印象も変わるかも。どこかからの帰り道にでも、また訪ねてみよう。 -
飯塚バスターミナルから急行バスで、新飯塚駅へ移動。福岡からの充実した特急、急行バスは、市内利用もできるので便利です。
こざっぱりした駅舎とマンションが並ぶ駅前風景は、鹿児島本線の博多周辺のそれのよう。近年、飯塚市の人口が減少傾向を見せる中、利用者の増加が続く駅です。新飯塚駅 駅
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福北ゆたか線の快速で桂川に戻り、原田線に乗り換えました。1日9本しかない列車を捕まえるのは大変です。
4割くらいの座席が埋まった単行のディーゼルカーに揺られ10分、筑前内野駅で下車しました。1968年の篠栗線(福北ゆたか線)開業まではメインルートだったことを、使われなくなった長いホームが物語ります。 -
小さなログハウス風の無人駅舎、何もない駅前広場。福岡都市圏とは思えない、静かな駅です。
筑前内野駅 駅
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現在は飯塚市の一部となった、旧筑穂町の内野。長崎街道の宿場町として栄えた街の一つです。
都会に近く、駅から歩ける距離の街けれど、列車の本数は少ない。便利なような不便なような街を、歩いてみます。 -
駅前から集落に歩いていくと、宿場町に似合わない今風の建物が姿を現しました。自由な曲線を描き、ガラスを大胆に使った建築物の正体は…
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筑穂高齢者生活福祉センター+内野児童館。旧筑穂町が整備した公共施設で、看板を見る限り、しっかり飯塚市に引き継がれています。
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しかし実際は荒れ放題で、入口はベンチで塞がれていました。
帰って調べてみれば、設計は葉祥栄。建築雑誌にも掲載された「作品」でした。飯塚市への合併で、持て余してしまっているのかな…。なんとももったいないです。 -
小学校を右に折れた道が、旧長崎街道。早い時期に国道が集落を迂回するようにできたおかげで、古いままの街並みが残されています。
内野宿 名所・史跡
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冷水峠の麓だけあって、水は清らか。折しも今日はホタル祭りの開催日で、あちこちで準備に勤しむ街の人の姿が見られました。
日田彦山線の筑前岩屋駅に列車が来なくなってしまった今、福岡近郊では貴重な、JR沿線のホタル名所。今日は帰らなきゃいけないけど、来年は列車に乗って見にくるのもいいなあ。 -
街道沿いには江戸から明治にかけての家々が並び、もとは宿だったり酒蔵だったりの立派なものばかりです。
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ひとつひとつ説明版が掲げてあるので、宿場町だった頃の姿を頭の中で追うことができます。
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どこから見てもJA支所だけど、どうやら統廃合された模様。空き店舗?を利用して、自転車専門店と茶屋になってました。
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ガラスで中がよく見える自転車屋さんはともかくとして、うちの茶屋の入口はどうみても事務室のそれ。勇気を出して扉を開ければ…
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質素でシンプルなお茶屋さんで、奥の台所では地元のおばちゃんたちが頑張ってます。穂波牛のカレーをはじめいろいろメニューはあるのだけど、祭りの準備で作っている唐揚げ+いなりをそれとなく勧められたので、素直に従いました。
下手に手の込んだメニューを頼んで、祭りを邪魔しても悪いし… -
素朴な手作りの味、うまかった。200円×2の400円でした。
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旧肥前屋は、内野宿展示館として活用。内野の紹介ビデオを見せてもらいました。
内野宿展示館 美術館・博物館
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お向かいの長崎屋も、休憩所として開放。今日のお祭りでも、ほたる籠の製作体験と、「うちのたまご」の卵かけご飯を提供するそうです。お庭がいい雰囲気。
内野宿 長崎屋 美術館・博物館
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こんな部屋でお茶するのも、気持ちいいでしょうね。
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「冷蔵庫に入っているお茶は、ご自由にお飲み下さい」
内野の人々からのおもてなしスペースでした。 -
老松宮には、記念碑がいっぱい。名士を輩出してきた街なんですね。
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碑を覆うように咲き誇るアジサイ。暑さで忘れていたけど、もう梅雨入りしたんだっけ…
昨年も当初はカラ梅雨で、水不足を心配してた中で襲われたのが九州北部豪雨でした。今年は、バランスよく梅雨らしい梅雨であってほしいものと願います。 -
街道筋から右に折れ、JRの線路をまたいだ先には内野のシンボル・大イチョウがそびえます。
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お地蔵様が並び、まさにご神木。
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国鉄長原線…今の筑豊本線(原田線)の、開通記念アルバムにも写っているんだとか。1928年だから、もう90年前。原田線の栄枯盛衰をも見守ってきた大イチョウです。
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旧街道らしい道は街並みと共に途切れ、太い4車線の国道に飲み込まれました。内野の集落に国道が通っていたら、街並みは跡形もなく消え去ったことだろうと思います。
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2時間後の列車で原田に抜けて、小さな旅はおしまい。夕方で大混雑の鹿児島本線の快速に乗れば、内野での時間が幻だったような気さえしてくるのでした。
原田駅 (福岡県) 駅
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