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 専念寺の裏山には新羽小と新羽中がある。新羽小の銅像横の桜の木に注連縄(しめなわ)が張られているではないか?正門のインターホンには副校長名で貼紙がある。要件を伝えると女性が出て来た。副校長なのだろう。「桜の木に注連縄が張られていますが、何か由緒のある桜の木なのですか?」「注連縄ではなく注連引(しめびき)の藁蛇(わらへび)です。」神社のように御神木として注連縄を張ったら日教組の職員が黙ってはおるまい。「私は赴任して2年目などで良くは分からないのですが、新羽中の正門にもあります。」と言って中学校へ案内された。そこには「注連引百万遍保存会」が平成29年(2017年)に設けた看板があった。それによると、新羽郷の中之久保には「注連引(しめびき)百万遍の藁蛇(わらへび)」という行事があるのだという。これは230年前に天明の大飢饉(天明2年(1782年)~天明8年(1788年))が起こり、新羽郷の中之久保に疫病が流行した。ここを通りかかった旅の行者から藁で作った大きな蛇を村の3つの出入口の柊(ひいらぎ)の木に巻き付けて疫病から村を守ることを教わったと伝えられている。<br /> 新羽十字路脇に鎮座する新羽杉山神社の手水舎にも注連引百万遍の藁蛇が巻かれている。注連引百万遍保存会が藁蛇を持って来て4年前から手水舎に巻くようにしているのだという。杉山神社の藁蛇は真新しいものだが、新羽小と新羽中の藁蛇は古く見える。いくら夜露に濡れるといっても秋以降に取り替えたのであれば最新しそうに見えるだろう。しかし、新羽中正門前の看板は平成29年(2017年)に設置されたものであることからも分かるが近年になって藁蛇を作ることが復活したようだ。かつては田圃だったところは道路が真っ直ぐになり町になっている。藁が手に入らなくなってこの行事が途絶えていたようだ。でも最近では小学生も藁蛇作りを行っているのだという。<br /> 横浜市内とはいえ田舎のここ新羽に230年前からの伝統行事が復活したことは喜ばしいことだ。<br /> 蛇足ではあるが、新潟県岩船郡関川村では8月下旬に「大したもん蛇まつり」が行われ、ギネスに載るほどの竹と藁で作った大蛇が練り歩く。これは日本海に注ぐ荒川の支流に女川(おんながわ)があり、この流域は関川村女川地区で、蛇喰(じゃばみ)という集落もある。半世紀余り前には、国道290号線の桃川峠を越えた桃川集落からお嫁に来た祖母から良く昔話を聞かされたものだ。<br /> 「蛇喰という村があり、忠蔵とおりのという夫婦、そしてその娘が住んでいました。忠蔵の仕事は炭焼きで、仕事場の阿古屋谷には大蛇がいるといううわさがありました。<br /> ある日、忠蔵がお昼ごはんのあとにうたた寝をしていると、みょうな物音がしました。見ると、大蛇がそばまで迫ってきています。忠蔵はマサカリをつかみ、大きな口をあけた大蛇と必死の思いでたたかい、なんとかしとめました。忠蔵はその大蛇をみそ漬けにすることに決め、てきとうな大きさに切って家に持ち帰りました。そして樽に入れてみそ漬けにしたのです。樽は合計で13個半になりました。忠蔵はおりのと娘に「樽の中は決して見てはいけないよ」と言いましたが、何日かして、おりのは「少しのぞいて見るだけ」と樽を開けてしまいました。そしてみそ漬けの肉を見て「おいしそう」と思い、1つを食べてしまいました。そのあまりのおいしさにあと1つ、もう1つと次々に食べ続け、しまいにはすべてをたいらげてしまいました。それでのどがかわいたおりのは、女川の水を飲み始めました。そのとたん、おりのは水面にうつる自分の顔を見ておどろきました。なんと、大蛇の姿になっていたのです。…」(http://www.hrr.mlit.go.jp/iide/iide/story03.html)。<br /> 女川も蛇喰もこの昔話に関わる地名であり、この昔話からヒントを得て竹や藁で大蛇を作って練り歩く「大したもん蛇まつり」が生まれたのであろう。<br /> 一方、新羽郷中之久保の「注連引百万遍の藁蛇」には鶴見川を舞台にした大蛇伝説はない。しかし、横浜市戸塚区影取町にも大蛇の伝説が残る影取池があった。<br />(表紙写真は新羽杉山神社の注連引百万遍の藁蛇)

注連引(しめびき)百万遍の藁蛇(わらへび)

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2018/02/20 - 2018/02/20

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ドクターキムル

ドクターキムルさん

 専念寺の裏山には新羽小と新羽中がある。新羽小の銅像横の桜の木に注連縄(しめなわ)が張られているではないか?正門のインターホンには副校長名で貼紙がある。要件を伝えると女性が出て来た。副校長なのだろう。「桜の木に注連縄が張られていますが、何か由緒のある桜の木なのですか?」「注連縄ではなく注連引(しめびき)の藁蛇(わらへび)です。」神社のように御神木として注連縄を張ったら日教組の職員が黙ってはおるまい。「私は赴任して2年目などで良くは分からないのですが、新羽中の正門にもあります。」と言って中学校へ案内された。そこには「注連引百万遍保存会」が平成29年(2017年)に設けた看板があった。それによると、新羽郷の中之久保には「注連引(しめびき)百万遍の藁蛇(わらへび)」という行事があるのだという。これは230年前に天明の大飢饉(天明2年(1782年)~天明8年(1788年))が起こり、新羽郷の中之久保に疫病が流行した。ここを通りかかった旅の行者から藁で作った大きな蛇を村の3つの出入口の柊(ひいらぎ)の木に巻き付けて疫病から村を守ることを教わったと伝えられている。
 新羽十字路脇に鎮座する新羽杉山神社の手水舎にも注連引百万遍の藁蛇が巻かれている。注連引百万遍保存会が藁蛇を持って来て4年前から手水舎に巻くようにしているのだという。杉山神社の藁蛇は真新しいものだが、新羽小と新羽中の藁蛇は古く見える。いくら夜露に濡れるといっても秋以降に取り替えたのであれば最新しそうに見えるだろう。しかし、新羽中正門前の看板は平成29年(2017年)に設置されたものであることからも分かるが近年になって藁蛇を作ることが復活したようだ。かつては田圃だったところは道路が真っ直ぐになり町になっている。藁が手に入らなくなってこの行事が途絶えていたようだ。でも最近では小学生も藁蛇作りを行っているのだという。
 横浜市内とはいえ田舎のここ新羽に230年前からの伝統行事が復活したことは喜ばしいことだ。
 蛇足ではあるが、新潟県岩船郡関川村では8月下旬に「大したもん蛇まつり」が行われ、ギネスに載るほどの竹と藁で作った大蛇が練り歩く。これは日本海に注ぐ荒川の支流に女川(おんながわ)があり、この流域は関川村女川地区で、蛇喰(じゃばみ)という集落もある。半世紀余り前には、国道290号線の桃川峠を越えた桃川集落からお嫁に来た祖母から良く昔話を聞かされたものだ。
 「蛇喰という村があり、忠蔵とおりのという夫婦、そしてその娘が住んでいました。忠蔵の仕事は炭焼きで、仕事場の阿古屋谷には大蛇がいるといううわさがありました。
 ある日、忠蔵がお昼ごはんのあとにうたた寝をしていると、みょうな物音がしました。見ると、大蛇がそばまで迫ってきています。忠蔵はマサカリをつかみ、大きな口をあけた大蛇と必死の思いでたたかい、なんとかしとめました。忠蔵はその大蛇をみそ漬けにすることに決め、てきとうな大きさに切って家に持ち帰りました。そして樽に入れてみそ漬けにしたのです。樽は合計で13個半になりました。忠蔵はおりのと娘に「樽の中は決して見てはいけないよ」と言いましたが、何日かして、おりのは「少しのぞいて見るだけ」と樽を開けてしまいました。そしてみそ漬けの肉を見て「おいしそう」と思い、1つを食べてしまいました。そのあまりのおいしさにあと1つ、もう1つと次々に食べ続け、しまいにはすべてをたいらげてしまいました。それでのどがかわいたおりのは、女川の水を飲み始めました。そのとたん、おりのは水面にうつる自分の顔を見ておどろきました。なんと、大蛇の姿になっていたのです。…」(http://www.hrr.mlit.go.jp/iide/iide/story03.html)。
 女川も蛇喰もこの昔話に関わる地名であり、この昔話からヒントを得て竹や藁で大蛇を作って練り歩く「大したもん蛇まつり」が生まれたのであろう。
 一方、新羽郷中之久保の「注連引百万遍の藁蛇」には鶴見川を舞台にした大蛇伝説はない。しかし、横浜市戸塚区影取町にも大蛇の伝説が残る影取池があった。
(表紙写真は新羽杉山神社の注連引百万遍の藁蛇)

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  • 新羽小の注連引百万遍の藁蛇。

    新羽小の注連引百万遍の藁蛇。

  • 新羽小。

    新羽小。

  • 新羽小の注連引百万遍の藁蛇。

    新羽小の注連引百万遍の藁蛇。

  • 新羽中正門に建てられた「注連引百万遍の藁蛇」看板。<br />「柊」はふりがながなければ中学生には読めないだろう。

    新羽中正門に建てられた「注連引百万遍の藁蛇」看板。
    「柊」はふりがながなければ中学生には読めないだろう。

  • 新羽中の注連引百万遍の藁蛇。

    新羽中の注連引百万遍の藁蛇。

  • 新羽中の注連引百万遍の藁蛇。

    新羽中の注連引百万遍の藁蛇。

  • 新羽杉山神社の手水舎。

    新羽杉山神社の手水舎。

  • 新羽杉山神社の注連引百万遍の藁蛇。

    新羽杉山神社の注連引百万遍の藁蛇。

  • 新羽杉山神社の注連引百万遍の藁蛇。

    新羽杉山神社の注連引百万遍の藁蛇。

  • 新羽杉山神社の注連引百万遍の藁蛇。

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