2017/09/16 - 2017/09/19
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gyachung kangさん
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8月のうちに夏休みをとったら9月にはシルバーウィークが待っていた。
もうひと欲張りして旅に出たい。
だが今年のシルバーウィークは日巡りが生憎でスケジュールが立てずらい。
さあ、どうしましょうかぁねえ?
思い浮かんだのが利尻島。以前から一度登ってみたかった利尻山、これがある。
9月の半ば3連休利用でチケットを押さえた私は羽田から北海道最果ての地、稚内へ飛び、利尻島に渡ることにした。
意気揚々で日本百名山最北に位置する秀峰利尻山アタックに挑んだ。
が、しかし着いた現地ではまさかの悪夢が待っていたんだよねえ、コレが。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- ホテル
- 4.0
- グルメ
- 4.0
- ショッピング
- 4.5
- 交通
- 3.5
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 3万円 - 5万円
- 交通手段
- 高速・路線バス 船 ANAグループ 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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-
9月17日の日曜日。
朝8時半過ぎ、私は羽田空港に居た。
今から向かう先は北海道は最北の街、稚内市。
旅程は2泊3日。今日利尻島に入り明日の朝から山頂を目指して利尻山に登る予定。従って天候予備日のない一発勝負の挑戦である。 -
ところがです。
この一週間程前に太平洋上で発生した台風18号がノロノロと九州に到達、東京と西日本を結ぶ路線は軒並み欠航表示に切り替わっていく波乱含みの展開に。
空港テレビのニュースではご丁寧にも日本列島を上書きするように北上する見込みとの最新台風情報が流れている。
当初は利尻山と鹿児島の南端、開聞岳を天秤にかけて思案したのだが、9月半ば、九州は天候リスクが高いだろと判断して北方面を選択した私。
とりあえず北海道便に影響は出ておらず、この時点では自分の予見は正しかったと安堵しつつ稚内行きの機内へと向かった。 -
10時半定刻で離陸した飛行機はまるで何事もないかのように北上。
窓の外には台風の不穏な気配など微塵もないオホーツク海と北海道最北端の大地が見えてきた。 -
稚内空港に着陸。
空港建屋を出た左側すぐにフェリーターミナル行きのバスが待っていた。30分程でフェリーターミナルに到着。
フェリーの出航まで少し時間があるので稚内駅方面へ歩いてみる。
ご覧のように道路標識はロシア語併記。
なんてこった、ここはロシア文化圏か?まるで中国におけるハルビンのようである。これには驚いた。 -
稚内駅前で。
当たり前と言えば当たり前だが稚内駅は全JR駅の中で最北端、線路のどん詰まりである。ここより先は海しかない。つまり端っこだ。
私は端っこに弱い。ユーラシア大陸の西の端、ポルトガルのロカ岬に立った時、大西洋を眺めながらウルっときてしまったことがあるが、稚内の街も独特の端っこ感が滲んでいた。 -
数軒しかないお店から一軒を選んで入り昼メシにウニ丼。3700円。東京で食べても同じくらいの値段だと思うが場所の空気には抗えない。そして店のおばちゃんはどことなくロシア人クオーターの雰囲気を醸し出していたっけ。
-
稚内と利尻島を結ぶフェリー路線は一日に3便。私はその最終便で利尻島へ渡った。
-
フェリーは稚内港を離岸。
東京的には晩夏、北海道的には既に秋本番のこの時期、予想していたより多くの客を乗せて利尻島へ航行した。
デッキに出ると洋上には左右対象の秀麗な稜線がくっきり姿を現していた。 -
18時過ぎ、既に陽は落ちて利尻島には薄っすらと灯る街明かり。
-
島への入り口である鴛泊の港に着いた。
下船しターミナル外に出ると予約を入れていた宿の車が待機、そこから僅か5分のホテルへチェックインする。
明日の朝の天気についてフロントの男性に確認してみるがどうやら台風がやって来るのは確定的らしい。
あとは運を天に任せるしかなく、とにかく早朝登山口まで車で送ってもらうことに決める。
テレビのニュースでは刻一刻と変わる最新の台風進路情報が。
これってまさに出たとこ勝負。
神さまお願い!明日の朝、奇跡が起きることを信じて布団をかぶった。 -
9月18日朝4時起床。
約束通りホテルの車で利尻山の登山口である北麓野営場管理棟へ。前夜用意しておいた登山計画書をポストに投函。
この時点で空は嵐の前の静けさの気配、既に小粒の雨が降り始めている。
そして私の他に登山者は……?
ん、誰もいないね。 -
ここが取り付き口。
標高1719メートル歩行距離12キロ利尻山登山の標準タイムは往復9時間。
ホテルのフロント男性は早い人なら7時間でも可能、11時前に頂上に着ければ台風直撃は避けられるのではとアドバイスしてくれていた。
私の登頂が早いか、台風の上陸が早いか、とんでもなくスリリングな展開になってるじゃんか。先行きは全く不透明の中、とにかくアタック開始! -
登り出して10分、名水と言われる湧き水の甘露泉水が。
だが、名水を楽しんでいる時間はない。1秒もない。
とにかく登山道を進むのみ。 -
時刻は5時過ぎ、雨はまだ小雨。
私の目論見は10時半に登頂し、その後スピード下山、13時半に取り付き口に戻れれば台風の上陸時間は紙一重で避けられるんじゃないか?という希望的観測である。
景色を味わいながらゆっくり登山を楽しむことはもはや断念、登頂→下山することに全力を注ぐことに切り替えていた。
だが、この希望的観測は超がつくほど希望的観測に過ぎなかったことを、この後知ることになった。 -
4合目標識。
このあたりで雨足はさほど変わらず足場に影響は出ていない。 -
だが空を見上げると少しずつ暗さを増してきている。北上中の台風が確実に利尻島接近の気配に。
-
本州より一足早い紅葉シーズンイン。
だが立ち止まって紅葉を愛でる余裕はなくひたすら上へ。 -
徐々に傾斜がキツくなってきた。
雨に打たれて足元の石が濡れてきている。
登山道には足跡は一切なく、私の後から登ってくる後続者の気配もない。
この日の利尻山アタッカーはひょっとしたらマジで私のみかもしれない。
私はにわかに焦り始めた。 -
5合目、雷鳥の道標。
ここで小休止。
いくら急がねば、と言っても休まないことにはカラダが持たない。
焦る気持ちとペース配分の思案のジレンマで私はイラついていた。 -
頂上を目指して再び登り始める。
ところが利尻島の南方向を見渡すと。
やっばい!!
空模様はこの通り。台風18号の足音はそこまで迫り一気に怪しくなっていた。 -
急登を凌いで6合目の第一見晴らし台に到達。取り付き口から500メートル高度を上げた標高700メートル地点になる。
行く手には高木帯が消え利尻山の頂上に繋がる登攀路の全体像が現れた。 -
だが状況は悪化の一途をたどっていた。
雨粒はひときわ大きくなり、下から吹き上げる風はまさに台風の強風そのものに変わっていた。
踏ん張らなければ普通に立つことが出来ない風の強さ、そんな事態になっていた。 -
見晴らし台を後にしてさらに上を目指し再アタックをかけた私。
だが、台風が迫り来る早さは私の希望的観測を無慈悲にも超えていた。
ここから先、風の強さに抗えないことを悟った私は涙をのんでここで登山ストップを決断。
もはや両手で抑えないと帽子が飛ばされる、そんな状況であった。
つーことで登頂断念、利尻山敗退が決定した痛恨の記念写真であります泣 -
今登ってきたばかりの道を大急ぎで引き返す。台風をこんなにも恨めしく思ったことはかつてない。
-
雨に打たれてひときわ色づいたように見える紅葉も慰めにならないまま
-
全力で下山した。
足場は急速に悪化しもはや一刻の猶予も許されない。ここで遭難者になるわけにはいかない。
利尻山、君に罪はない。
また会おう。 -
8時過ぎ、取り付き口まで舞い戻りホテルへ電話。迎えの車に乗りこうして利尻山アタックは終わった。
私が下山した時、管理事務所は当然の如くクローズ、山形から野営してこの日の登山を見送っていた男性が一人。やはりこの日は挑戦者は私だけだったようである。
宿の自室から外を覗くと港周辺は無人の様相。テレビの台風情報は北海道北上を刻々と告げ、10時過ぎ、遂に鴛泊港全体に屋外スピーカーから屋内待機の警報アナウンスが流れた。こうして私はまさかまさかのホテル缶詰めの人と成り果てた。ああ無情。 -
翌朝。
5時半の鴛泊港。台風18号は夜中のうちにオホーツク海に抜けて行った。
利尻山敗退の無念も覚めやらないうちに私にはやるべきことがある。
今日の稚内へのフェリー運航状況の確認である。 -
当日の運航は朝6時のフェリー会社ホームページに発表される。
台風一過、朝6時の天気はピーカンであった。が、しかし一日全三便のうちの第一便は欠航決定の表示。
だい、だい、大ショックである。
この時点で私が搭乗予定の稚内発羽田行きANA便には間に合わないことが確定。
大慌てでANAオフィスに電話、台風理由による搭乗キャンセルを告げフェリー会社からの欠航証明書をファックスで送り翌日の羽田行き便に振り替えてもらう事態となった。皮肉にもこの日ANAの羽田行き便は通常運航を決定していた。
恨めしい。恨めし過ぎる。ねえ?
こうして私は利尻島に取り残され、この日のうちに帰京不能、これも確定した。
明日朝一番で職場に電話を入れなければならない。
今年の旅の中で格別のとほほ感を味わった。 -
その後フェリー第二便の運航状況が発表、通常運航に戻ることが判明した。
利尻島にいる残り時間が決まったところで早速行動開始。
利尻山本山の麓にあるポン山に登ってみることにした。 -
ポン山は本山と登り口は同じ。
昨日渡ったクリークは台風降雨に見舞われてご覧のような荒れ果てぶり。 -
視界は良好。
道中も場所によっては水が浮いていない。 -
登山口から歩くこと30分、大ポン山の行き当たり展望台に。
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利尻山本山の山頂には分厚い雲がかかっていたが見下ろす海はこの通り。
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分岐点まで戻り小ポン山にも行ってみた。
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小ポン山はちょっとしたアドベンチャー感を味わえる。途中で道が消えかかる。
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ここで行き止まり。
私以外のトレッカーの気配ゼロ。
利尻島にはヒグマはいない。ヒグマがいたらこんな場所には5分といられないと思われる笑 -
小ポン山への行き帰りで見上げたこの時の空。木立ちの合間から仰ぎ見る空は清涼感満点で、昨日の無念を少し取り返した感じ。
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鴛泊港周辺に戻る。
ここには利尻島でも一二を争う名所がある。その名はペシ岬。 -
会津藩士のお墓があって
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こんなスロープを登っていく。
左側は海に切れ落ちる断崖。
風が直撃する稜線なので高所に弱い人にはかなりタフなルートかもしれない。 -
海面からの標高93メートル、
ペシ岬展望台。
ここからの眺めはご馳走ですよ! -
利尻山と鴛泊の港
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オホーツク海側に立つ白亜の灯台
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そしてもう一つの孤島、礼文島が見えている。
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寒いところの海は栄養豊富ではあるが暗く沈んだ色、みたいな勝手なイメージがあるけれどこの日のオホーツク海は目が醒めるようなマリンブルー。
この景色が見れるならペシ岬には必ず登るペシ、あ、べし。 -
ね。
楽しそうな場所でしょう? -
流行りのボルダリングの猛者ならば海面から直登するファイティングスピリットが湧くこと間違いなし。
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利尻山敗退の際の憂さ晴らしは是非ともペシ岬で。ホントに見るだけじゃもったいない場所ですよ。
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ペシ岬を下山しホテルをチェックアウト。フェリーターミナル前の食堂で利尻ラーメンを食べる。ホタテ、エビ、カキ、トロロが入ってメチャ濃厚味。
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利尻島を離れる時間がやってきた。
ずいぶん前になるが礼文島を訪れた時も見た記憶にあるお別れのテープ儀式。
自分とは関係のないお別れの挨拶と分かっていてもこのシーンには不思議とホロリとしてしまう。 -
少し前まであのてっぺんにいたペシ岬が少しずつ遠ざかっていく。
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利尻山も遠ざかる。
山頂は相変わらず雲に覆われているが、昨日この姿のあなたにお目にかかりたかったなあ。
九州、四国、本州、北海道の4島全てに上陸、観測史上初となる歴史的な進路をたどった台風18号にしてやられた今回の旅。全旅費を台風18号に請求したいところである。 -
24時間前の暴風高波はまぼろしのように消えた穏やかなオホーツク海を渡り
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稚内港に到着。
無事で何よりか。 -
ターミナルを出て市内へと歩く途中に
えっ?こんな街中に鹿がいるよ~ -
シカもだ、
ご丁寧にも二頭出し、仲の良い夫婦ペアのような佇まいには驚いた。 -
稚内ならではの演出に観光客は大喜び。
いいもん見れた、私もちょっと得した気分。 -
当初2泊3日予定の旅はフェリー欠航のあおりを受け急遽1日延泊に。
幸いにも稚内駅からほど近い場所にあるANA系列ホテルを予約サイトで確保できた。
窓の外はさえぎるものが一切ない6階のオホーツクオーシャンビュー ! -
このまんま部屋に籠るのも惜しくなりタクシーを捕まえて走ること北へ5キロ、夕陽の名所に向かった。
-
ノシャップ岬。
日本本土の最北端は反対方向の宗谷岬になるがこのノシャップ岬は名前からして旅情に誘われる。
まだ6時前だが吹きさらしの風はもうかなり冷たく秋を通り越して初冬の匂い。 -
山全体がスッポリと雲に包まれた利尻島が見えた。
台風の悪夢がなければ私は今頃機上の人、ここに立ち寄ることはなかった。
旅ってやっぱりどこかしらでいいことが転がってくるもんであるよね。 -
翌朝の目覚めもよくゆったり朝食をとったあとはホテル周りを散歩してみる。
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誰の目にも飛び込んでくるのがこの防波堤。名前は北防波堤ドーム。
1936年完成、かつて稚内と樺太を結んだ連絡船の防波を目的として造られた異色の建築物である。 -
アーチ屋根にギリシャ建築の特徴を模した柱。この時代にこんな設計計画が実現していたのは意外。最北の地で驚きの発見であった。
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潮の匂いがする方へ道なりに歩く途中にこのホテル。
ホテルサハリンか。
いいね、泊まってみたい。
案外いいかもしれないぞ。 -
ホテルサハリンの先。
岸に流れ着いた大量の昆布を拾っている朝の仕事風景があった。 -
冷たい海に腰までつかり昆布を集める地元の皆さん。テレビの旅番組で見るようなデジャブな光景だ。
-
どうですか、この見事な昆布。
こりゃあいい昆布ダシが取れるよね。
この後朝採り昆布のイメージが焼き付いたまま東京へ帰京。それ以来、私の料理には昆布の登板回数が格段に増えている。これは本当の話です笑
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この旅行記へのコメント (3)
-
- はなかみno王子さん 2018/07/25 22:15:57
- 利尻富士登山、ぜひリベンジしてください。。
- はじめまして。。
おうじです。。利尻富士、海からすらっと立ちあがたとっても形の良い山ですね。。私も6年位前に登りましたよ。朝四時に宿を出て、宿に戻ったのは16時くらい。。9合目から先に急なガレ場があって苦労した覚えがあります。。でも次回日程に余裕もって挑戦してみてください。
- gyachung kangさん からの返信 2018/07/26 22:37:01
- Re: 利尻富士登山、ぜひリベンジしてください。。
- おうじさま
こんばんは
コメントありがとうございます。
そうなんですよね、
とにかく姿の良い山で惚れて
アタックしたんですが、
あんまりのタイミングでした。
でも登山は退き際の見極めを
誤ると致命的になりますからね。
ガレ場、歩きたかったです。
再挑戦したいですけど、
まさかのヒグマ問題勃発で
問題解決までは仕方なく静観
します。
おうじさまもいい旅を続けてください。
- はなかみno王子さん からの返信 2018/07/29 09:19:33
- RE: Re: 利尻富士登山、ぜひリベンジしてください。。
- gyachung kangさん
おうじの利尻富士登山旅行記、2012年夏でした。
ご参考まで。。
https://4travel.jp/travelogue/10688455
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