2017/03/09 - 2017/03/23
1066位(同エリア10342件中)
tadさん
学生時代に読んだ高階秀爾著の「(続)名画を見る眼」を最近半分くらい読み直したが、どう見ても、彼はフランス贔屓だ。日本の美術ファンは、かなり彼の書に影響されているのではないだろか?フランスは少し海外の美術史などを読むとわかるが、美術の後進国だ。同書にでてくる最初のフランス人画家はプーサンだ。ルネサンス美術時代は、イタリアは勿論、北方のドイツやネーデルランドでも大家を輩出したが、フランスは誰も知らない。やっとでてくるのは17世紀になってプーサン、クロード・ロランなどだ。彼らは本場のローマに留学し、クロードは大半をローマで過ごし、プーサンは一度フランス王に呼び戻されるが、すぐにまたローマに行ってしまい、死ぬまでローマにいた。イギリスはもっと奥手だ。高階の本ではターナーしか登場しない。ただ、高階の本では、その後はフランス人の印象派の名前が場所をしめるようになる。ミケランジェロやブリューゲルやクリムトも登場しない。
アメリカや日本はフランス等の印象派ファンが多いようだ。ひとつには、ルネサンス美術などは高価すぎて、20世紀になってやっと絵画が購入できるようになったアメリカや日本が買える金額ではないからだろう。ミケランジェロやボッティチェリなどは、簡単に買えない。つい新しい印象派などになる。大理石像は高くて買えないから、鋳物のロダンなどになる。イタリアのルネサンス美術品などは、イタリア以外ではめったに傑作には出会えないのは仕方ないことだろう。システィナ礼拝堂の天井画や壁画はお金では買い取れない。
フランスはバロック美術の時代になると、プーサン(1594-1665)やクロード・ロラン(1600-1682)がでて、ブーシェやフラゴナールが続き、やっと美術史上に名前が増えてくる。イギリスのターナー(1775―1851)はもっと遅い。
ナショナル・ギャラリーがスタートしたのは1824年。(なんとベートーヴェンが第9交響曲をウィーンで発表した年だ!当時、ロンドンの音楽界は、ベートーヴェンをなんとかロンドンに呼び寄せようとしていたものだ。ベートーヴェンは乗り気だったが、体調が悪くなり実現しなかった。序だが、ロンドンは大陸の文化人に弱い。ヘンデル、ハイドン、モーツァルトなどみんなロンドンに滞在して活躍した。
ターナーはなくなる時に遺言を残し、自作をナショナル・ギャラリーに寄贈し、ここに紹介する2作品をクロードの2作品の間においてくれるよう希望を残した。詳しく理由は語っていないようだが、クロードの影響を受けたことは明白だが、それとの違いも示したかったのだろうか。ナショナル・ギャラリーでは、その両者は15室に今でも並べて展示してある。ただし、ターナーの後年の傑作は前の旅行記で紹介したように、別室の34室に展示してある。http://4travel.jp/travelogue/11228303
美術後進国のフランスとイギリスの両方の画家が影響しあった例だ。ターナーは実は、フランスの印象派たちに大いに影響を与えることになるのだ。印象派が突然、新しい方法をすべて独自で編み出したわけではない。(勿論、ターナーも突然独自の技法を編み出したわけではないだろう。)印象派が活躍するようになった後は、パリが美術のセンターとなってくる。
一枚目はイギリスのターナー Joseph Mallord William Turner
の「カルタゴを建設するディド」Dido building Carthage。
1815年製作。(ターナーとしてはまだまだ初期の作風。太陽と雲は少し後の雰囲気がするが。。。1830年代半ばを過ぎると、もっと彼らしくなる。cf. http://4travel.jp/travelogue/11228303)
(ウィキペディアによると、古代都市カルタゴは、「古代ローマの詩人ウェルギリウスの『アエネイス』によると、テュロスの女王ディードーが兄ピュグマリオーン (Pygmalion of Tyre) から逃れてカルタゴを建設したとされる。」)
- 旅行の満足度
- 5.0
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ターナーTurner(1775―1851):
「Sun rising through Vapour: Fishermen cleaning and selling Fish」
1807年製作(ターナーとしては、初期の作品)ナショナルギャラリー 博物館・美術館・ギャラリー
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クロード・ロランClaud (Lorain)(1600-1682):
Seaport with the Embarkation of the Queen of Sheba
1648年製作
ターナーのカルタゴの絵と比較すると、この絵にターナーが挑戦したことは明らかだ。空の描き方はターナーのほうは、彼のスタイルになり始めている。クロードの空の描き方は当時、定評が既にあった。 -
Claud:
The Mill
1648年製作
以上の2点のクロード(・ロラン)の絵の間にターナーの最初の2点の、絵を置いてくれとの遺言の理由は、推測するしかない。美術後進国で、それぞれ、クロードもターナーも最初期の名声を手に入れた画家なのだが、この二人の影響の受け継ぎとして、次の世代の印象派がターナーから光の扱い方のヒントをもらったことになるのだろうか。 -
二人の絵はこの15番の部屋に並んでいる。
写真にはターナーの二枚が写っているので、この両サイドにクロードの絵があったと思う。 -
隣の29番の部屋にはクロードやプーサンなどのフランス初期の名画が並んでいる。それらのフランス初期の絵画、特にプーサンとクロードを並べる。
これはクロード。 -
クロード
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クロード
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クロード
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クロード
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ここからプーサン。高階秀爾の「名画を見る眼」にでる最初のフランス人画家。
Nicolas Poussinニコラ・プーサン
(1594 - 1665)
(プサン、プッサンのいづれも日本では使われている。)
私の知る限りでは、プーサンの絵は、絵の具の質が悪いのか、どこで見てもくすんでいるという記憶が多い。 -
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以上がプーサン。
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29番の部屋は長い。。このあたりにプーサンやクロードや他のフランスの17世紀の画家が並んでいる。
以上の絵のなかには、最初期の風景画ともとれるものがあるが、実際には当時は、まだ純粋な風景画はなくて、神話の世界などの舞台として風景が描かれている。単に風景だけを描く絵はなかったようだ。
なお、個人的には、フランス絵画はこの二人の後に登場するブーシェやフラゴナールのほうに、バロック趣味、ロココ趣味が加わってきて、私の好きなバロック音楽の名作の世界と歩調が取れてくるように思う。
その時代の絵画は、実はロンドンにあるウォレス・コレクションに佳品がたくさん揃っている。3年前の訪問の際、写真が許可されて、大量に撮影しているが、まだ旅行記は書いていない。今回のフランス絵画の初期の時代以降の紹介になるので、いつかまとめてみたい。
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この旅行記へのコメント (4)
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- Keiさん 2017/08/26 09:07:47
- やはり行かねば
- tadさん、おはようございます
また少しずつ拝読させていただきます。
以前のtadさんのコメントで他国の美術館と違い、印象派前までの絵画だけで独立していて、他の時代の作品は他の博物館等に分散されている。というのがありました。
tadさんの仰っていますが、休みも殆ど無く、(コストも膨大に掛かるだろうに)無料で見学ができるところにイギリスの懐の深さを感じずにはいられませんね。
イギリスはオヤジにとっては未踏の地ですが、やはりここを目当てにロンドン経由でイタリア行を考えねばなりません。
Kei
- tadさん からの返信 2017/08/26 10:44:16
- RE: やはり行かねば
- おはようございます。
お忙しいところ、たくさんのコメント有難うございます。
Keiさんはイタリア美術の本場を幾度となく訪問されていますので、こういうちょこちょこと集めた美術館は、あまり関心が向かないかもしれませんね。私も本当は元気さと資金があれば、イタリアをKeiさんのように、具に見て歩きたいとも思いますが、無尽蔵すぎて、どこから手を付けていいのか、わからない感じもします。だから、つい、フィレンツェとローマに戻るだけになりがちですが。。もっと挑戦しないといけませんね。
イギリスの懐の深さは信じがたいほどです。どうしてあれだけの館員を入場料なしで、ナショナル・ギャラリーは雇えるのか不思議ですね。ロンドンではクラシック音楽も、格安で聞けます。ピアノのポリーニが数千円で聞ける国はないと思いますね。オーケストラとオペラも高い水準ですが、安いチケットが必ず用意してあります。直前に空いているとシニア割引でさらに安くなります。文化教育の垣根が非常に低いのです。
大英博物館と大英図書館とナショナル・ギャラリは、ぜひロンドンにいらしたら、回ってください。安い宿さえ見つければ、後は問題ありません。交通も便利で、一日最大使用額が確か千円以下で、Oyster Cardだと、バスも地下鉄も課金しなくなります。
Waitroseなどのレベルの高いスーパーで食料品、温食もゲットできますし。。イギリスの宿は湯沸かしポットが多分常備されている点も有難いです。(大陸はポットがないでしょう?)慣れると、外食は時々しかしません。たまに付き合いで行く時は、評判のいい、ちゃんとしたところに行きますので、まずいと思ったことは殆どありません。
ロンドンの勧めになりました!
- Keiさん からの返信 2017/08/26 12:03:58
- RE: RE: やはり行かねば
- tadさん、こんにちは
普通の美術館は「折角来たのだから」と疲れているのにあれもこれもと見なきゃならんところが残念ですが(自分の貧乏性が原因です)、イギリスの場合は日程に余裕さえあれば、出直せば良いのですから、秀逸な作品をじっくり鑑賞できるところも素晴らしいですね。
以前tadさんとのやり取りの中で「イタリア観光局の営業みたい」と言われたことを思い出しました。
イギリスのプロであるtadさんこそ、「イギリス観光局の営業部長」のようです(笑)
いつか訪れるつもりですので、その際はアドバイスをお願いいたします。
Kei
- tadさん からの返信 2017/08/26 18:34:11
- RE: RE: RE: やはり行かねば
- 再度のコメント有難うございます。
「「イタリア観光局の営業みたい」と言われたことを思い出しました。」
え!?そんな失礼なことかきましたっけ? ま、でも、間違っていないとは、思いますが。。あれだけイタリアに愛情を込めて精密な旅行記が書ける方は、まず、いないでしょうから。。
私も確かに相当、ロンドンには入れ込んでいますので、食事が不味いなどという、決して間違ってはいない意見を読んだりすると、それでも、ムッとして、ちゃんと選べよ!といいたくなりますから、多少は「「イギリス観光局の営業部長」のようです」と言われても仕方ない部分もあるでしょう。。
ロンドン、いらっしゃるときは、お知らせください。
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