2017/05/11 - 2017/05/13
71位(同エリア299件中)
naoさん
旅の行程
5月11日 椿泊、日和佐浦
5月12日 吉良川、奈半利、土居廓中
5月13日 佐川、いの
高知県室戸市吉良川町は室戸岬の北西に位置する町で、太平洋沿岸を通る国道55号線に並行する土佐浜街道(土佐東街道)周辺には、日常的に風雨が強く、「台風銀座」と形容されるほど台風の襲来の多い土地ならではの工夫が凝らされた町家が連なり、極めて独自性の高い、風土色豊かな町並みを作り出しています。
近世の吉良川を示す資料として、寛政6年(1794年)に書かれたと考えられている「土佐国沿岸絵図」がありますが、この絵図には浜地区と丘地区の二つの地区の様子も描かれており、現在とほとんど変わらない道筋には、建ち並ぶ50数戸の人家や高札場が見られることから、現在の吉良川の町割りは、この頃にはすでに出来上がっていたものと考えられています。
古くから林業が盛んだった吉良川は、豊富な山林資源を活かした木材や薪などの産地として、大阪や京都と盛んに交易が行われていたようで、鎌倉時代の「京都石清水八幡宮文書目録」に吉良川は木材の産地として記されています。
明治時代に入り木炭の需要が増えると、ウバメガシなど製炭に好適な樹木が多かった吉良川では、明治10年(1877年)頃から木炭の生産が始まり、林業は新たな展開を始めますが、この頃の炭の品質はまだまだ低いものにとどまっていました。
しかし、大正元年(1912年)に備長炭で名高い和歌山県田辺町から炭焼き職人を招いてその製法を学ぶと、吉良川の製炭技術は著しく向上し、原料のウバメガシを高温で焼き上げた、「白炭」と呼ばれる火力が強くて長持ちする良質な木炭が生産されるようになり、備長炭の中では最高クラスと珍重されるに至った吉良川炭(土佐備長炭)は日本の代表的な良質炭として名声を得ることになります
やがて、吉良川炭を扱う炭問屋や、それらを海路京阪神へと運ぶ廻船問屋が土佐浜街道沿いに建ち並ぶようになると、廻船交易は隆盛の一途をたどり、逆に京阪神から日用雑貨などの生活文化がもたらされると、吉良川はますます繁栄することとなり、多くの富を築きあげます。
このように、林業により繁栄してきた吉良川には、厚く塗られた土佐漆喰の白壁に、何段にも取り付けられた水切り瓦のある町家が連なる浜地区と、「いしぐろ」と呼ばれる風除けの石積塀で敷地を囲んだ民家が広がる丘地区という、趣きの異なる二つの町並みが共存しています。
台風の強い風雨から壁面を守る方策として発達したのが、糊を使わない土佐漆喰の白壁と、壁面に直接雨がかかるのを防ぐ水切り瓦を組み合わせた独自の工法で、これにより強い風雨を受ける壁面が10年以上も長持ちするようになったと言われています。
そのおかげで、吉良川炭を扱う炭問屋や廻船問屋が集まる浜地区には、往時の姿を今に伝える豪邸が少なくなく、水切り瓦の段数がその家の富を示す象徴でもあるかのように、豪奢な町家には何層もの水切り瓦が取り付けられています。
一方、台風の風当たりがより強い丘地区では、敷地の周囲に「いしぐろ」と呼ばれる石積の塀を巡らせて暴風から建物を守っています。
「いしぐろ」に使われている石は近辺の海岸や川原から運んできた自然石で、大き目の石を布積みにしたり、小さな玉石は半分に割って小口を見せたりと、その積み方は家ごとに創意工夫が凝らされ、丘地区の町並みはまるで展覧会のような様相を呈しています。
ちなみに、昭和36年(1961年)の第二室戸台風の最大瞬間風速は84.5mにまで達しましたが、「いしぐろ」はその役目を立派に果たし、想像を絶するような暴風にも耐えたそうです。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自家用車 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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吉良川にやって来ました。
吉良川には、土佐漆喰の白壁に何段にも取り付けた水切り瓦のある町家が連なる浜地区と、「いしぐろ」と呼ばれる風除けの石積塀を巡らせた民家が広がる丘地区の、二つの特徴的な町並みが共存しています。
では、観光用駐車場に車を停めさせてもらって町歩きを始めます。 -
浜地区の町並みにやって来ました。
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先ずは浜地区の東側から歩きます。
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日常的に風雨が強く、「台風銀座」と呼ばれるほど台風の襲来の多い土地柄から、吉良川の町家には糊を使わない土佐漆喰の白壁と、何層もの水切り瓦を組み合わせたこの土地ならではの独自の工法が用いられています。
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一見しただけでそれと判る特徴的な外壁は、極めて独自性の高い工法により、10年以上も長持ちするようになったと言われています。
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町家の門前に吊られた備長炭の風鈴です。
備長炭の中でも最高クラスの良質な炭を生産してきた吉良川なればこその風物ですね。
この風鈴は、まるで金属のような澄んだ音色を聞かせてくれました。 -
この町家の1階の下屋は、両端を太い柱で、中間部は持ち送りで支えています。
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千本格子といい、玄関の欄間といい、こだわりのデザインを工夫されています。
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もちろん、妻面には何層もの水切り瓦がしつらえられています。
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高知県では、『高知家の家族は、みんながスターやき』をキャッチフレーズに、高知県の魅力を全国に発信していくための活動が行われています。
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太めの格子を嵌めた町家。
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2階の小窓に、土蔵のような銅板の防火扉のある町家。
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正面の出入口や窓の雨戸が完全に閉じられた町家。
建物の側面には脇玄関か勝手口があるんでしょうけど・・・。 -
黒漆喰壁のこちらの町家は、鉄板の防火扉が付いています。
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大きなガラス窓のある町家。
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ここまでの町並みを振り返って見た様子です。
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木の香が香り立つような町家です。
まだ工事中のようですね。 -
水切り瓦のある町家が連なる、吉良川の町並みです。
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ナマコ壁をしつらえた町家では、手作りの鯉のぼりが泳いでいます。
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こちらの町家はカフェです。
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門の中の佇まいです。
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全身に水切り瓦をまとった土蔵の姿は迫力満点で、圧倒されてしまいます。
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浜地区の町並みです。
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手作りの鯉のぼりが泳ぐこちらの町家は、息をのむような素晴らしさです。
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こちらの町家は、土蔵のような防火扉のある窓と、木製の雨戸のある普通の窓が並んでいます。
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この辺りを歩いている時は、この素晴らしい町並みに息をのみっ放しでした。
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こちらの町家は、太い格子の下の腰壁を金属板で覆っておられます。
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こちらの町家には、ばったり床几がしつらえられています。
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雨戸の戸袋を下見板張りでしつらえた町家が・・・
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隣り合っています。
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防火のためか、妻壁に煉瓦を積んだ町家があります。
煉瓦壁は、この町並みを歩いていて、所々の町家で見かけました。 -
浜地区の町並みです。
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こちらの町家の塀の基礎に使われている石積みには、いろんな模様が浮き出ています。
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立派な門構えのお屋敷でも・・・
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手作りの鯉のぼりが泳いでいます。
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全身に水切り瓦をまとったこの土蔵の姿も壮観です。
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前の写真の土蔵横の、脇道の奥から見た光景です。
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「また来てね」って書いてありますが、全然お店には見えないんですけど・・・。
いや待てよ、私のような観光客に言ってるのかも?、ですね。 -
浜地区の町並みです。
なお、右側の町家も・・・ -
妻壁に煉瓦を積んでおられます。
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お隣の町家は、妻壁に水切り瓦をしつらえておられます。
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宿の看板に彩りを添える鯉のぼり。
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頑丈な太い格子が、外観を引き締めるようです。
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妻壁に煉瓦を積んだよく似た町家が・・・
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隣り合っています。
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2階の壁を看板代わりにして、「化粧品」と「文房具」と書かれています。
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浜地区にも「いしぐろ」と呼ばれる風除けの石積塀が使われている町家があります。
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この洋風の建物は、大正15年(1926年)に建てられた旧吉良川郵便局です。
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その後40年間余り、地元に密着した郵便局として活躍しました。
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さて、そろそろ浜地区の町並みも終わりそうなので・・・
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この後丘地区へ向かいます。
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「いしぐろ」と呼ばれる石積の塀が連なる丘地区へやって来ました。
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風当たりの強い丘地区では、敷地の周囲に巡らせた「いしぐろ」が台風の暴風から建物を守っています。
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こちらの町家は「いしぐろ」を建物の外壁に利用しているようです。
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「いしぐろ」には、近辺の海岸や川原から運んできた自然石が使われています。
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大きい石は布積みにしたり、小さな玉石は半分に割って小口を見せたりと・・・
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その積み方は家ごとに創意工夫が凝らされています。
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こちらの町家も、石の積み方に創意工夫が見られます。
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四角く加工された切り石を基礎に使い・・・
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より小さな玉石はそのままの姿で最上段に積み、それより大き目の玉石は割って小口を見せています。
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こちらの町家は、大きな石だけを積み上げています。
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丘地区の町並みです。
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鮮やかな紫色の暖簾が掛かったお店にも・・・
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鯉のぼりが泳いでいます。
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新しく建て替えた町家も、「いしぐろ」をそのまま残しておられます。
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こちらの「いしぐろ」は、若干ニュアンスの違う積み方をされています。
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端部は、角を出すためそれなりに規則正しく積まれていますが・・・
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他の部分は、大小に関わらず入り乱れて積んでおられます。
では、ここから「まちなみ館」の方へ行ってみます。 -
突き当たりのT字路は浜地区の町並みになります。
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向かい合う水切り瓦。
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趣きのある脇道を抜けて・・・
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「まちなみ館」へ通じる通りに出ます。
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水切り瓦のディティール。
瓦の継ぎ目の漆喰処理も入念な仕事がされています。 -
この辺りには、「まちなみ館」に関連した町家が並んでいます。
なお、正面に見える鳥居は御田八幡宮のものです。 -
こちらの「まちなみ館」では、吉良川の町並みに関する資料の展示や、町並みのパンフレットが置かれています。
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こちらは、「まちなみ館」と庭続きになっている「べっぴんさんの家」です。
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「べっぴんさんの家」はカフェスペースになっていて、ゆっくり休憩できるようになっています。
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こちらは、「おまつり館」です。
鎌倉時代の田楽能や猿楽能を今に伝える御田八幡宮の「御田祭」の際には、「おまつり館」にお茶席が設けられ、振袖姿のお嬢さんがお茶の接待をしてくれるそうです。 -
ここから、「まちなみ館」の先の丘地区の町並みを歩きます。
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この辺りの町並みにも、「いしぐろ」のある町家が並んでいます。
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手前の2軒の町家は・・・
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瓦屋根のない「いしぐろ」が向い合っています。
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その奥の町家には、創意工夫が凝らされた「いしぐろ」が設けられています。
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四角く加工された切り石を基礎に使い、小さな玉石は割って小口を見せるように積んでおられます。
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お隣のお宅との間にも「いしぐろ」を設けて、境界が明確に判るようにされています。
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では、吉良川はこの辺りで切り上げて、駐車場へ戻ります。
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「おまつり館」まで戻って来ました。
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「まちなみ館」や御田八幡宮の方を振り返って見たところです。
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土佐漆喰の白壁に何段にも取り付けられた水切り瓦のある町家や、「いしぐろ」と呼ばれる風除けの石積塀で敷地を囲んだ民家と言う、趣きの異なる二つの町並みが共存する吉良川は、「台風銀座」と形容されるほど台風の襲来の多い土地ならではの工夫が凝らされた、極めて独自性の高い、風土色豊かな町並みを見せてくれました。
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再訪したい町が、また一つ増えました。
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