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ロシア生活 不思議体験(その5) 『国境を超えると世界は変わる』(1)

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1994/09/14 - 1994/12/15

1693位(同エリア1811件中)

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JIC旅行センター

JIC旅行センターさん

 長い期間、海外で生活していると帰国ルートを色々と調べることがある。例えば、料金的に一番安いルートはもちろん、知人宅を訪問してからのルートや最短時間で日本へ行くルートなど。

 僕の場合、留学地がサンクト・ペテルブルグという地理的条件があったからかも知れないが、留学生仲間は北欧出身の学生が多かった。中でもフィンランド人の友人は非常に多かった。フィンエアーのヘルシンキ―成田便は当時週2便であり、フィンランド人の友人や知人宅に数泊してから日本へ帰国できるし、また日本からロシアへ再入国する際もヘルシンキ経由でペテルブルグというルートが早くて一番都合が良かった。それゆえ、僕が最も利用していた航空会社はフィンランド航空だった。

 フィンランド航空は1963年に何かしらの事故があったらしいが、それ以来一度も事故を起こしていない世界で最も安全な航空会社として評価されている上に、ヘルシンキ―成田便には日本人パーサーも搭乗しておりサービスも一流。不愉快な経験は一度もしたことがない。

 家庭の事情で、年末から始まる試験期間の直前に一時帰国しなければならなかったある年の12月半ば。ペテルブルグ・プルコボ空港を定時に出発したフィンエアーは15分の上昇後、水平飛行中にデューティーフリー販売、コーヒーブレイク、飲み終わったカップの回収などを30分以内にキャビンアテンダントが行い、着陸態勢に入って15分後に何の無駄な時間も無くヘルシンキ・ヴァンター空港に定刻に着陸した。

 ヘルシンキ・ヴァンター空港。

 12月の昼過ぎ、この北欧の地はペテルブルグ同様すでに薄暗い。いつもは程良い空港内の照明光度がその日は半分くらいの明るさに抑えられ、ちょっとムーディーな雰囲気だった。

「何かあったのかな?」

僕は何となくいつもと違うヴァンター空港国際ターミナル内を成田便が発着するゲート37に移動していた。直ぐに、いつもよりも照明光度が抑えられている理由が分かった。インフォメーションカウンターの側に柔らかなスポットが当てられたステージが設けられていた。そこでは生演奏によるクリスマスソングがフィンランド語で静かに心地よくそして優しい笑顔で歌われていた。

「忘れていた。世の中はもうクリスマスムードなんだ…」

数時間前にいた留学地の500万人都市では「クリスマスムードって一体何のこと?」と言うほど殺伐とし、街中は単に薄暗いだけだった。普段からスリに注意しながら足早に目的地へと移動する習慣が身についてしまっていることが嘘のように、この北欧の地は平和で穏やかで温かく、僕はクリスマスソングを歌う女性の歌声をただ聴き入ってしまった。ふと我にかえり辺りを見回すと、インフォメーションの女性、デューティーフリーショップ、カフェのスタッフ…、みんな自然な笑顔だった。

笑顔。

そう。この北欧の地には笑顔があるんだ。

「そう言えば…普通に穏やかな気持ちになれるのは何ヶ月ぶりだろう…?」

 僕は自問したが、答えを見つけるのがあまりにもバカバカしくなり心の中でその質問自体をデリートした。『国境を越えれば世界は変わる』と改めて認識した瞬間だった。

 僕はフィンランドというよりもヘルシンキに基本的には数日しか滞在せずにいつも通過するだけ。フィンランド国内で行ったことのある街も、タンペレ、イヴァロ、コトカ、サヴォンリンナ、ラフティ、トゥルク、ロヴァニエミ、ナーンタリ、…ん?そこそこ行っているか。。。それでも今までの滞在日数もトータルで30日位。生活をしていないので、もちろん、その実態は分からないことだらけだが、ヘルシンキに限らずどの街に行っても、すれ違う人々の表情は穏やかで身につけている衣服はカラフルな上にみんな親切。街は清潔だし、行き交う車や路面電車、バスなども手入れが行き届いているのが一目瞭然。何処へ行っても常に印象が良かった。

 一方でヘルシンキから東へ僅か350kmしか離れていない大都市は…。いや。『国境を越えれば世界は変わる』。肝に銘じておかなければ…。比較の対象にしない方が良い。隣の芝は青いものなのだ。絶対にそうに決まっている。完全に自己完結、自己暗示を繰り返す始末になった。

 ムーディーなヘルシンキ・ヴァンター空港のひとときを楽しんでいる中、僕が乗る成田空港行き飛行機の遅延情報が飛び込んできた。

 折り返し成田へ運行されるMD-11型機は、季節外れの強力な低気圧の通過により現地予定離陸時間が2時間遅れたとのこと。必然的にヴァンター空港への到着も2時間遅れることだ。搭乗手続きが遅れるということは心地よいライブ演奏を聴ける時間が長くなるということ。それは僕にとって嬉しいことだった。カフェでサーモンサンドとコーヒーを購入し、僕はインフォメーションカウンターに一番近いベンチに腰掛けて寛ぐことにした。

 それにしても隣の国で同じ状況になっていたらどうなっていたことだろう。恐らく、遅延理由のインフォメーションはなく、客は状況も分からないまま空調が効いていない搭乗ゲート付近でとにかく待つしかない。状況が分からないのでコーヒーも買うことができない。必要なことは「the 忍耐」、「It’s 途方に暮れる」、「what does that mean - “待ちぼうけ”?」を適度にセルフコントロールするだけだ。

 色々な感情が頭の中で生まれては消え、消えては生まれ、宇宙の誕生と世界の終りについて考え始めたころ、MD-11型機が37番ゲートに到着したことを構内アナウンスで知った。僕は機内持ち込みのバックを手に取り搭乗ゲートに足を向けた。

 37番ゲート。

 そこで目撃したものは!!!

 なんと!!!

 ボーディングブリッジを通過してくる疲れた表情の日本人客にサンタクロースがムーミンデザインの小物を一人一人に手渡している姿だった。

 日本人にとっては最高のシチュエーション。フィンランドに到着して最初に接したものが、サンタからのムーミンプレゼント。こんなに素晴らしい演出はフィンランドならでは。言うまでもなく、疲労感を漂わせていたパッセンジャー全員が瞬時に笑顔になり。サンタクロースと一緒に記念撮影が始まった。この段階で旅行者は1000%フィンランド大好き、絶対にフィンランドリピーターになることだろう。傍から見ていても微笑ましい光景だった。

 同じようなシチュエーションを最近社会主義を脱した国に当てはめると…「ジェットマロースとスニェグーラチカがマトリョーシカを配る」ことが予想される。マトリョーシカを受け取る日本人観光客は嬉しく思うが、同時にこの赤い服を着たおじさんと青い服を着た女性は一体誰なの?という「謎かけ」がつきまとうはずだ…。

(つづく)

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