1994/09/15 - 1994/09/15
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20年前、僕はロシアに留学していた。
同じ学部で同じ学科の友人が学生結婚した。賢いジーマと、なかなか美人のイーラ。お似合いだった。
彼の両親が持っていたクバルチーラ(アパート)を城として新しい生活が始まる。何とも羨ましい。
「落ち着いたら、小さいけどパーティーをやるんだ。お前も招待するから必ず来いな」ジーマは僕に新居のメモを手渡し、慌ただしく走り去った。
メモには日時と電話番号のみで住所は記入されていなかった。「まぁ、後で訊けばいいか」ノートの切れ端に書かれたメモを見ながら僕は言った。
ジーマの住所を訊くのをすっかり忘れていたパーティー前日の金曜日。机の隅に置いておいた彼のメモを取り電話した。
「もしもし?」電話口に出たのは声から察するに年配の女性だった。きっと彼か彼女のお母様だろうと思った。
「ジーマの友達で、日本人のヒデと申します。彼とお話できますか?」なるたけ丁寧に言った。
「本当にジーマのお友達ですか?」一呼吸おいて電話口のマダムは静かに言った。
「はい。同じ大学の同じ学部です」
「そうなのね。残念だけど、今ジーマは夢の中なの」
「…そうなんですね。では、イーラに替わって頂けますか?」ちょっと考えてから、気を取り直して僕は続けた。
「あらあら。イーラはまだ帰ってないのよ」相変わらずマダムはやさしい口調で言った。
「そうですか…。それなら、日本人のヒデから電話があったことをお伝えください」
「でもね、貴方は知らないかもしれないけど、イーラは5歳でジーマはまだ2歳なのよ。私が知る限りで彼らに日本人のお友達はいないと思うんだけど。。。」外国人の僕にゆっくりと分かりやすいロシア語でマダムは言った。
「……」
「ちょっと驚いたかしら?貴方のこと、本当に良く解るわ」
「……」
「彼らが大きくなったら友達になってね」
「はい。必ず友達になります。ありがとう。失礼しました」僕は正直な気持ちで言った。
「そうね。あなたにもありがとうって言うわ。さようなら。頑張ってね」僕は受話器を数秒間眺めてから、丁寧に置いた。
数分が経った。もう一度、電話番号を確かめながら電話した。「もしもし?」さっきのマダムだった。僕は間髪入れずに受話器を置いた。番号は間違えていないと確信したが、頭クエスチョンマークが僕の論理思考形式を覆い隠した。それ以来、何かがひっかかり僕は一人で悩んだ。
数日後、大学でジーマとイーラに会った。
「どうして来なかった?すっごく楽しかったのに!」
「ごめん。ちょっと急な用事ができて…」
「イーラの友達で日本贔屓の美人さんが来てたんだぜ!」
「本当?残念だったなぁ…」
「その娘もイーラだけどね」
「……」僕はしばらく遠くを見て深呼吸をした。
「どうした?」
「いや。なんでもない」
きっと世界中には同じ名前の人が星の数ほどいるんだろう…。再び頭の中に靄がかかってた…。
あれから20年以上経つ。友達だったジーマとイーラとは連絡もとっていないが、小さかったジーマとイーラはどうしているだろう。時々思い出す。
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