テーマパーク　THE KYOTO at 愛宕山

2017/03/18 - 2017/03/18

テーマパーク「KYOTO」　火伏せの愛宕山

　愛宕山は深い杉木立に囲まれ京都の山城と丹波を見下ろしている。年に何度か世界中の天狗が一堂に集まるときがあり、峰々は嵐気に包まれ魔界になるという。
　天狗と言えば鞍馬天狗だが、こちらは洛都の北に佇立する鞍馬の山に潜んで源義経に剣術を授けたとされる。ＮＨＫの時代劇で白刃を光らせた主人公のもうひとつの名前でもあった。
　京都の山、というより日本の山々の多くは往古から霊山であり修験の山でそこに住む人々の畏崇の対象であった。　
　京都市内から眺め得る高い山は、北東に最澄が天台宗の道場を開いた比叡山を有し、北西がこの愛宕山（九二四メートル）である。
　山の神さま愛宕大権現は火伏せの霊力も併せ持つ。毎年七月三十一日から翌日まで「千日詣り」が催され、山中は一晩中明かりが灯され夜間も参拝客で賑わう。
　この日に詣でると千日分の防火のご利益があるとか。洛中の料理屋を覗いてみると愛宕の「火迺要慎」の御札が厨房の何処かに貼られているだろう。
　また、赤ちゃんを背負って上るお父さんや子供の手を引いて上る家族がいる。詣でるとその子らは火事の災厄に見舞われないという不思議な力を帯びるらしい。京都の年中行事である。
　ルートは京都市内からだと、男坂と言われる清滝からの正面ルートと比較的なだらかな女坂の月の輪寺ルート。そして亀岡からの明智光秀が登ったとされる明智越えが主なコース。いずれも上りは二時間をみておいた方がいい。帰りは一時間半ほど。ホンモノの登山コースだから靴はしっかりしたものを履いておきたい。
　夕映えが解き放つ朱を背負ってこの山が聳える様は、京都市内の人々に何がしかの荘厳で畏敬の念を抱かせるだろう。山の北東に位置する亀岡の城主だった明智光秀はどう思って眺めただろう。朝日を眩しく清々と光らせて立つ頂きだったか。
　謀叛の前、光秀は山頂の奥の院に参籠した。定まらぬ意志を決すために霊験にすがったのだといわれている。
　そのルートは今「明智越え」と呼ばれている。光秀は近習らと城を出て保津川を渡る。川はそこから溪谷に入り急流になってやがて嵐山にいたる。光秀が渡渉した近辺は流れはまだ緩やかだ。信長を討つか止めて中国へ赴くか。逡巡しながら近習らとともに山道に入ったことだろう。
　山は杉が群れ立ち黒い陰を落としている。片側は厳しい崖である。きつい坂が休まずに山腹を這う。謀叛。主人を殺すのである。胸の内にどのような感情が渦巻いていたのだろうか。感情的なもつれ。積怨の果て。
　数日後、洛中の本能寺に一万の兵らとともに殺到した。あとの運命は周知のとおりである。
　明智越えからだと柚子の里水尾の集落も近い。鳥の水炊きの民宿がある。シーズン中は柚子風呂があり、登山の疲れを癒やしてくれる。

エリア 嵐山・嵯峨野・太秦・桂(京都)

• 旅行の満足度: 4.0

• 交通手段: 私鉄 徒歩

愛宕山社殿。積雪期はスリップします。

鶏の水炊きと柚子風呂の店。つじの家さん。

料理のセット。４人前くらい。雑炊付きでお腹いっぱいになりました。
お一人ビールを飲んで６０００から７０００円程度です。