特別展「春日大社　千年の至宝」

2017/01/17 - 2017/01/17

　上野にある東京国立博物館（東博）で開催される特別展「春日大社　千年の至宝」の初日に訪れた。午後にもなると会場は空いていて、ゆったりと展示物を鑑賞できる。東博の平成館2Fでは何年振りのことであろうか。
　会場は空いているとはいえ、多くの国宝が並び、目が釘付けになる。また、撮影スポットが設定されており、灯籠が吊り下げられている。これらは江戸時代以降の時代が下がるもので歴史上有名な人が奉納したものはないようだ。春日大社の回廊で見るのとは余りにも違いすぎようか。
　春日大社と言えば、武勇の神を祀っているのであるから、刀剣や甲冑が多い。しかし、これまでに何度か国宝殿を訪れてはいるが、これまでに一度も弓矢を見掛けなかったが、今回の展示では9張も展示されている。これだけでも国内の神社では最も多くの弓矢が奉納され、残っていることになろう。鎌倉鶴岡八幡宮では鎌倉時代初頭に弓矢が奉納されているが、今回展示されているのは全て平安時代に奉納されたものばかりである。鎌倉鶴岡八幡宮と同じ漆塗の蒔絵弓が2張あるが、梓弓と槻弓がそれぞれ3張づつと雑木弓が1張展示されている。しかし、雑木弓には驚いてしまった。神話の時代から適材適所で木材は使い分けられて来たはずなのに、国宝指定時には何の木か分からず、「雑木」とされたのだという。蒔絵弓には平安時代を感じられるが、丸木弓はあたかも縄文遺跡から出土するそれの感じを強く受けた。平安時代に春日大社に奉納された弓はその時代の様式のものばかりではなく、それ以前の太古の様式のものが奉納されたのかも知れない。
　会場を出ると神職姿の人がいたので、「春日大社の人ですか？」と確認して質問した。今日は春日大社から2人来ており、この人は武具を担当しているのだという。「国宝館では刃毀れのある刀剣が展示されていたと思いましたが…」。「春日大社には使用された痕跡のある刀は奉納されてはいません。刃が錆びて研いだ跡がそう見えたのではありませんか？」「弓矢が相当数展示されていて、これだけでも春日大社は国内では一番多くの弓を所蔵しています。しかし、これまでに何度か国宝館を訪れましたが、弓矢は展示されてはいませんでしたよ。」「刀剣や甲冑については質問されるのですが、弓矢について質問されたのはあなたが初めてです。」短弓が世界のデファクトなのに、国内では弥生時代から長弓が使われているが、私は縄文時代に長弓を発明し、獣に気配を悟られてしまう距離からでないと射れない短弓に対し、長弓では33間（60m余り）離れた場所から獣に気配を悟られないで矢を射ることが出来、そのために獣を取り尽くして人口が減少したと考えていることを話し、鎌倉時代以降は弓矢は神社に奉納されなくなってしまったが、民族的には地鎮祭で柱で弓矢を作ったり、相撲の弓取式、千秋楽では三役の勝者に矢と弓の弦が渡され、初詣では破摩矢を買い求め、この一年の災いを祓ったりしていることに疑問を持っていることを話した。
　しかし、春日大社では南北朝時代にも弓矢が奉納され、豊臣秀頼も弓矢を奉納しているのだという。また、桂昌院（5代将軍徳川綱吉生母）が平安時代の弓矢のレプリカ（大安寺宝物模造）を奉納しているという。
　春日大社関連でも、「春日若宮おん祭」で演じられる「弓矢立合（ゆみやのたちあい）」が金春、金剛の２流によって奉納されたとかの記事もあった。
　古代から中世の武具としては弓矢は殆んど忘れ去られた状態になっているが、唯一、国内（とブラジル奥地のアマゾン川流域の部族）だけが長弓を使い、民衆には弓矢に対する信仰が残っているのに、神社に奉納されることが殆んどなくなってしまった不思議な弓矢。東博の研究員ではなく、春日大社の人が来ていてくれたので知りえない情報が得られた。感謝、感謝。
（表紙写真は灯籠が吊り下げられた撮影スポット）

エリア 上野・御徒町(東京)

噴水の向こうに東博。

噴水。

噴水。

東博正門。

東博正門横の特別展「春日大社　千年の至宝」のポスター。

本館。

表慶館。

特別展「春日大社　千年の至宝」のポスター。

本館。

東洋館。

本館。

平成館。

池のプレート。

平成館の特別展「春日大社　千年の至宝」のポスター。

特別展「春日大社　千年の至宝」入口。

灯籠が吊り下げられた撮影スポット。

灯籠。

灯籠。

写真。

写真。

特別展「春日大社　千年の至宝」のポスター。

特別展「春日大社　千年の至宝」のポスター。

特別展「春日大社　千年の至宝」の図録。

図録に付いている参拝記念 ステンド風藤巴紋根付。