2016/09/30 - 2016/10/01
226位(同エリア568件中)
naoさん
うんざりするような異常さで、今にも溶けてしまいそうだった夏の暑さも一息ついたので、「海の京都」を中心に、京都北部をじっくりと巡って来ました。
旅の行程
9月30日 加悦、伊根
10月01日 宮津、黒谷、美山
若狭湾に面する京都府与謝郡伊根町は、江戸時代に伊禰浦と呼ばれていた京都府最北部の丹後半島東岸の町で、直径1kmあまりの小さな伊根湾は、鯨、イルカ、鰤、鮪、鰹、鰡、いか等が豊富に獲れる優れた漁場で、特に鰤漁と鯨漁が盛んに行われていました。
京極氏が宮津藩主だった1622年~1666年には、鰤運上(鰤年貢)が湾外分は55本だったのに対し、湾内分は1000本と、伊根湾内の漁獲量が圧倒的に多かったことが窺われます。
また、江戸時代から明治時代にかけて、18,000頭以上の鯨を捕獲したという記録も残されています。
このように豊かな漁場に恵まれ、東の岬や南向きの湾口中央部にある青島が天然の防波堤となって日本海の荒波を防ぐ波静かな伊根湾は、入り江の背後に迫る山がそのまま海中深く落ち込む5kmに及ぶ海岸線の水際ぎりぎりに、1階に舟庫、2階に居室を備える、狭い土地に生きる人々の知恵が結集された230棟余りの舟屋が集落を形成する、独特の景観を生み出しました。
伊根の漁師さんは「トモブト」と呼ばれる小さな木造の舟で漁に出ておられましたが、この舟は天日にさらすと割れ、海に浮かべておくと腐るという厄介なものだったので、1階に海水を引き込んだ舟庫のある舟屋は、日陰に舟を陸揚げできるうえに、漁具の整備や出漁準備も容易にでき、漁師さんにとって欠かせない空間でした。
伊根湾に沿って延びる町並みは、海側に切妻屋根妻入りの舟屋が、山側に切妻屋根平入りの母屋が向き合う、他に例のないコントラストを見せていますが、これは、かつて舟屋と母屋が庭と細い路地を介して繋がっていたのを、昭和初期にそれぞれを分断する形で道路が拡張整備されたことによるものだそうです。
現在、漁船の大型化とともに舟屋もその役割を失いつつありますが、地元の方が言う『今も昔も変わらぬ姿』がいつまでも残ることを願うばかりです。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自家用車 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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延長5kmに及ぶ伊根湾を取り囲むように、230棟余りの舟屋が集落を形成する、伊根の舟屋の里にやって来ました。
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では、西側の小さな入り江に面した舟屋の里から町歩きを始めます。
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海鳥たちが屋根の上でのんびりと羽を休めています。
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この辺りは舟屋の里の西端だというのに、すでに海側の切妻屋根妻入りの舟屋と・・・
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山側の切妻屋根平入りの母屋が向き合う、舟屋の里独特の構図になっています。
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海側に軒を連ねる・・・
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舟屋群。
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舟屋の里にも秋の気配が漂い始めています。
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煙出しの越屋根と虫籠窓のある主屋を中心に、土蔵と附属屋が中庭を取り囲んでいます。
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落下防止なのか防風対策なのか、ガラス窓を抑えるように横桟が渡されています。
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ここにも秋の気配が・・・。
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ナマコ壁の舟屋がありました。
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ナマコ壁と下見板が良いバランスで配されています。
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舟屋の里の町並み。
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2階の大きなガラス戸の内側に見える格子は紙障子なんでしょうか・・・。
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こちらの2階は、白漆壁に虫籠窓に似た小さな窓が開けられています。
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歩いてきた町並みを振り返って見た光景です。
ここから先は、取りあえず伊根湾の一番奥にある、かつて伊根町役場が建っていた跡地を整備した伊根浦公園まで走って、そこの駐車場に車を停めさせてもらったあと、じっくりと舟屋の里を歩きます。
な~んて、当初は車を停めたあと歩いて廻るつもりでいましたが、幸いに伊根浦公園に無料のレンタサイクルが置いてあったので、これをお借りして廻ることにします。
相当な距離を歩く覚悟でいたので、レンタサイクルをお借りできて大変助かりました。 -
でっ、レンタサイクルで舟屋の里の中心部の西の外れまで戻って来ました。
道路の黒いアスファルト舗装が土色の舗装に変わったところから先が舟屋の里の中心部になります。 -
町並みの外れの隙間から見た伊根湾の遠景です。
右側が湾口の中央部に浮かぶ青島で、その左が東側の岬です。
東側の岬の先端の赤い灯台がかすかに見えています。 -
伊根湾を取り囲むように、東側の岬の突端まで舟屋の里独特の景観が続いています。
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伊根町の排水枡の蓋。
舟屋と伊根湾に浮かぶ漁船がモチーフになっています。 -
舟庫の扉が開いている舟屋があったので、内部を写させていただきました。
天日にさらすと割れ、海に浮かべておくと腐るという木造舟の保管場所として、1階に海水を引き込んだ舟庫は最適なうえに、漁具の整備や出漁準備も容易にできることから、舟屋は漁師さんにとって欠かすことのできない空間だったんですね。 -
こちらの舟屋は、2階を渡り廊下でつないで作業スペースを確保しています。
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伊根湾に沿って延びる町並み。
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発泡スチロールのブイに載って休憩中のカモメさん。
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海側には舟屋・・・
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山側には母屋という、舟屋の里独特の町並みです。
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この民家には、さすが舟にまつわる町らしい物を使ったしつらえが施されています。
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壁の一部に舟板塀が使われているんです。
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海に開いた舟庫の光景。
本当に海と直結しています。 -
町並みに連なる舟屋の・・・
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格子戸の隙間を透かして見た舟庫の内部。
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舟屋の里にも路線バスが走っているようで、バス停が見えますね。
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煙出しの越屋根がある民家。
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こちらは、舟屋の里にある創業250年の造り酒屋、向井酒造さんです。
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向井酒造さんの写真を撮っていると、折しも路線バスがやって来ました。
「伊根にも路線バスが走っているんだ~」と思っていたので、なんとも良いタイミングです。 -
向井酒造さんは伊根唯一の造り酒屋さんで、こちらのお嬢さんが杜氏として酒造りに取り組んでおられます。
珍しいところでは、赤米で醸造したお酒も造っておられるそうです。 -
販売所に吊られた、暖簾と杉玉。
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伊根浦公園まで戻って来ました。
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伊根浦公園は、岸壁や桟橋が整備されているので・・・
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沢山の舟屋群を間近に見ることができます。
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伊根浦公園のすぐ横にあるすっきりした外観の民家。
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では、岬の突端の赤い灯台目指して、東側の舟屋の里を廻ります。
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こちらの民家は、ガラス窓のデザインが統一されています。
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白漆喰塗の建物は民宿です。
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秋の気配が近づいているといっても、ススキの見頃はもう少し先のようです。
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伊根浦公園の先の岸壁から見た舟屋群。
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「トモブト」と呼ばれる木造の舟は少なくなったようですが、今も舟庫には舟が収められています。
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岸壁には集魚灯の付いた漁船も停泊しています。
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岸壁から見た伊根湾の全景です。
こうして見ると、東の岬や湾口の真ん中に浮かぶ青島が天然の防波堤として機能しているのがよく判ります。 -
さて、レンタサイクルに乗って、岬の突端の赤い灯台目指して進みます。
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波静かな伊根湾。
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舟屋の里の伝統様式を身にまとった民家。
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舟屋の里の側溝の蓋。
伊根町のマスコットキャラクター「ふなやん」が浮き出ています。 -
浅黄色の外壁にピンクのアクセントを付けた民家。
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東側の岬の町並みまで廻ってきました。
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こちらの浅黄色の民家は、屋根が変な感じで納まっています。
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海に開いた舟庫の様子。
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舟庫に係留された漁船。
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西側の舟屋の里の遠景です。
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難しい読み方の地名に出会いました。
「耳鼻」と書いて「にび」と読むんだそうです。 -
東側の岬の町並みです。
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東側の町並みを海側から見た光景です。
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東側の岬の舟屋群。
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係留されているのは、先ほど見た漁船です。
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この民家は、2階に窓をとるために1階の下屋が段違いになっています。
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そんなこんなで、とうとう岬の突端の赤い灯台に到着しました。
レンタサイクルが借りられて、本当に助かりました。
では、伊根浦公園まで戻ります。 -
改修工事をされたんでしょうか、白漆喰塗の壁が眩しいばかりです。
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手の込んだ袖壁です。
これぞ職人技ですね。 -
せっかくの2階の窓なのに、半分以上板で覆われています。
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この民家は、土蔵の部分が玄関になっているようです。
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「土蔵です!」って、言わずもがなか・・・!!!
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「水」と「寶」の、土蔵の兄弟です。
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1階が全面格子になっている、珍しい民家です。
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この民家は、1階の戸袋に職人技が光ります。
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浅黄色の壁だけでは物足りなかったんでしょうか、2階を太い横桟のような板材で化粧した民家。
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こちらは、伊根の皆さんが作った資料館です。
漁具や民芸品などの資料は2階に展示されていて、1階は「おちゃやのかか」という店名で郷土料理や海鮮料理のお店になっています。 -
さて、伊根浦公園までもうひと踏ん張り・・・。
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右手の民家は、先ほど見た浅黄色の外壁にピンクのアクセントを付けた民家です。
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落ち着いた町並みに・・・
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菱形の小窓がお茶目です。
高台にある道の駅「舟屋の里 伊根」から良い眺めが楽しめそうなので、この後行ってみます。 -
道の駅にやってきました。
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道の駅には伊根浦を一望できる展望台が設けられていて・・・
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ご覧のようなパノラマが満喫できます。
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人々の知恵が結集された230棟余りの舟屋が、延長5kmに及ぶ伊根湾を取り囲むあり様は他に類を見ない貴重なもので、地元の方が言う『今も昔も変わらぬ姿』がいつまでも残ることを願うばかりです。
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この旅行記へのコメント (3)
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- わんぱく大将さん 2017/07/09 09:48:54
- 拝見させていただきました
- naoさん
わんぱく大将と言います。 毎年1回は夏休みをとって日本に帰っております。その時に
高齢の母と旅行をするのですが、今年は丹後が候補に挙がっているので、情報収集に覗かせていただきました。 解説、お詳しいですね。 勉強させていただきました。
伊根はやはり自転車を借りるほうがいいようですね。 歩いて(私のみ)みようかなと考えておりました。 こちらでも歩ける所は歩いて、歩くと、とにかくどこが被写体になるかわかりませんし、いろいろな発見ができるのですが、ちょっときついかな?と。
大将
- naoさん からの返信 2017/07/09 11:36:58
- レンタサイクルがお勧めです。
- わんぱく大将さん、はじめまして。
伊根の旅行記に投票いただいてありがとうございます。
日本に帰るたびにお母さん孝行されるのはいいことですね。
『親孝行 したい時には 親はなし』ですから・・・。
歩いていると、いろんなものが被写体として目に飛び込んでくるので、基本的に私も歩き派です。
伊根は地図を見ただけでも相当距離があるのが判るので、きついな〜と思っていましたが、アプローチ側の入り江から遥か彼方の岬を見たときには本当に覚悟しました。
なので、伊根浦公園で無料のレンタサイクルを見つけた時には、「これ幸い」と飛びついてしまいました。
私も大いに助かったので、レンタサイクルを借りるのをお勧めします。
わんぱく大将さんも、遥か彼方の岬を見ればそう感じると思いますよ。
nao
- わんぱく大将さん からの返信 2017/07/13 10:11:45
- RE: レンタサイクルがお勧めです。
- > わんぱく大将さん、はじめまして。
>
> 伊根の旅行記に投票いただいてありがとうございます。
>
> 日本に帰るたびにお母さん孝行されるのはいいことですね。
> 『親孝行 したい時には 親はなし』ですから・・・。
>
> 歩いていると、いろんなものが被写体として目に飛び込んでくるので、基本的に私も歩き派です。
>
> 伊根は地図を見ただけでも相当距離があるのが判るので、きついな〜と思っていましたが、アプローチ側の入り江から遥か彼方の岬を見たときには本当に覚悟しました。
>
> なので、伊根浦公園で無料のレンタサイクルを見つけた時には、「これ幸い」と飛びついてしまいました。
> 私も大いに助かったので、レンタサイクルを借りるのをお勧めします。
>
> わんぱく大将さんも、遥か彼方の岬を見ればそう感じると思いますよ。
>
> nao
naoさん
又、アドバイスを有難うございました。 大将
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