1987/08/27 - 1987/08/31
319位(同エリア1652件中)
ころたさん
ほんの48時間前、宇宙の彼方へ21世紀へと飛び立っていったH-1ロケット打ち上げに立ち会った俺が、今は6000年を生きてきた縄文杉と触れ合っている。
なんという感動! なんという奇遇!
悠久の時の流れを自らの目と耳と足と手で思いっきり感じることのできた稀有な旅をすることができた。
旅をしたのはもう30年近くも前。今はもう一大観光地と化してしまい、近くに寄ることさえできない縄文杉の、血流の音さえ感じ取ることができたあの瞬間は、もう二度と帰らない。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 3.0
- グルメ
- 2.5
- 交通
- 1.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- レンタカー
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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世界遺産となった屋久島は、言わずと知れた鹿児島県の離島。旅をした1987年には、まだひっそりとして訪れる人の数もまばらだった。もちろん屋久杉、特に縄文杉は有名だったが、当時からそこにたどり着くのはとても大変、という事になっていたし第一、屋久島に渡ること自体が東京からは遠い道のりだった。
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2日前に種子島宇宙センターからのH−1ロケット2号機の打ち上げに立ち会った俺は、種子島から高速船で屋久島にやってきた。未来を象徴するロケット発射と、縄文杉を一度に体験することで、21世紀と縄文時代を繋ぐ旅にしたかったからだ。
種子島の旅行記は
http://4travel.jp/travelogue/11023034 -
夕方の便で屋久島の宮之浦港に着き、その日の宿を探した。「国民宿舎 ホテル屋久島温泉」、値段も手ごろな温泉を予約でき、タクシーで宿に向かった。
ホテル屋久島温泉は今は名前を変えて、「JRホテル屋久島」になったらしい。 -
当時の屋久島の観光パンフを見ても、今風の観光地ではない素朴さが感じられる。
モデルの娘も昭和テイストだった。 -
とにかく自然が豊かな島なので、リゾートに化ける可能性は十分なのだが、俺は素朴なまんまの方がいいと思うよ。
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明けて8月29日、ひと月に35日雨が降るという通り、煙るような雨が降った。宿の傍でレンタカーを借りて、島内観光をすることにした。
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目的の縄文杉行は天気の回復を待って明日にすることにした。
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ホテル屋久島温泉は島の最南端。海に面した質素なホテルだった。
宿の周りをちょっと歩くだけで、カラフルな亜熱帯の花たちが歓迎してくれる。 -
朝食後、レンタカーをまず西に向けた。なんせ思いつきで出ちゃった旅なので、予備知識が全くない。前述のパンフレットが頼りだ。
好きなんだな、こういう行き当たりばったりの旅。 -
まず立ち寄ったのは「中間ガジュマル」という大きなガジュマルの木。屋久島は何でもでかいんだな・・・
中間ガジュマル 自然・景勝地
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とにかく屋久島はジャングルだらけ。ちょっと山の方に足を踏み入れれば、原始の世界が広がる。
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中間ガジュマルからもう少し車を進めると、大川の滝という斜面を流れ落ちる滝がある。今は日本の滝百選に選ばれているようだが、当時はそんなもん無かったよ。
大川の滝 自然・景勝地
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雨の多い屋久島には多くの川と多くの滝がある。百選では前述の大川の滝を選んだようだが、おれならこっちだな。千尋滝。
千尋の滝 自然・景勝地
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特に雨の後、豊かな水量が豪快に岩盤を駆け落ちる姿がすばらしい。
千尋の滝 自然・景勝地
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その下流には海に直接流れ落ちるトローキの滝がある。ここも今日は水量豊かで豪快だ。
トローキの滝 自然・景勝地
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ここから屋久杉ランドを目指す。屋久島は直径25kmほどの決して大きくはない島だが、九州最高峰の宮之浦岳(1936m)を抱える。海岸線から一気に駆け上り、この道標は標高900m! 「洋上アルプス」の面目躍如だ!
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そして屋久猿。こいつらはどこにでもいたなぁ。次の日、縄文杉まで登った時にも、屋久猿と屋久鹿には何度となく会うことができた。でも、かまわないように。
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海岸沿いの安房の集落から30分ほどで屋久杉ランドに着いた。
屋久杉ランドって? テーマパークかと思っていた。ヤクスギランド 自然・景勝地
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いやいや、そうじゃない。屋久杉の立ち並ぶ森林を整備した自然公園だった。子供やお年寄りは、なめてかかると回れないかも。まあ木道が整備されていて、アップダウンもあまり無い様になっているので、ゆっくり回るにはいい。
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動植物から昆虫まで多くの固有種を持つ屋久島。でも残念ながら素人には本土の種と見分けが付かない。
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園内の遊歩道沿いにいくつもの巨大な屋久杉が立ち並んでいる。特に大きな杉には名前が付いている。
ヤクスギランド 自然・景勝地
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苔むした倒木が霧雨に濡れる。
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幽玄と呼ぶべきか、荘厳と呼ぶべきか。
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などという難しい漢字には似つかわしくない自撮り写真を1枚。
俺、若かったなぁ。 -
ガジュマルの大木の根。
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宿り木さえも豪快なこと。本土では見られない形相になっている。
ヤクスギランド 自然・景勝地
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屋久杉の森には雨が似合うけれど、明日はきっと晴れるはず。
いざ、縄文杉の森へ! -
そして翌日、雨はきれいに上がった。
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目指す縄文杉は車で行ける荒川登山口から入り、往復10時間。片道11km、高低差700mのハードな行程だ。
図は「あるっく屋久島 登山ガイド」から
http://alkyaku.sakura.ne.jp/yaku1-1-1B.htm -
朝7時に荒川登山口を出発。登山口からしばらくは緩やかなトロッコ軌道を歩く。
なんだ、楽勝じゃん! -
トロッコ道を2時間も行くと、次第に傾斜もきつくなる。
Gパンに履き替えて気合を入れ直す。ここまで人っ子一人見ない。 -
さあ、いよいよ本格登山だ。
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この辺から登山道の傾斜も、山の様相も一変する。
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おどろおどろしい・・・、そんな表現が似合う。
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それにしても、上り坂のきついこと。
階段と言うよりも梯子に近いよね。 -
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ウィルソン株はすぐそこのはず。
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おぉ〜、これか。
巨大な屋久杉の切り株の中に、祠が祀ってある。株の中に入ると上が抜けていて、空が覗く。
今も中に入れるのかな?ウィルソン株 自然・景勝地
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ウィルソン株から30分ほどで、翁杉に出る。
どっしりとした見事な屋久杉だ。翁杉 自然・景勝地
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ようやく山の頂が見えてきた。まあ洋上アルプス 屋久島の山のごく一部なんだろうが。
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登山道を縫うように、いくつもの沢が流れる。
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そうそう、登山道のそこここに極上の湧水があって、給水はそこで済ませた。きつい登山道を登り汗みずくになった喉に、その清水のうまかったこと!
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縄文杉に劣らない威容を誇ると聞いていた大王杉に到着。
逞しく太い幹、空を目指して伸びた枝。確かにすばらしい貫禄だった。大王杉 自然・景勝地
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ここまですでに4時間以上。縄文杉まであと一息のはずだ。
それにしても、何と言う風景か・・・ -
そして突然、あまりにも突然、彼は姿を現した。
縄文杉 自然・景勝地
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6000年を生き抜いてきたという彼は、幹の周囲 16m、樹高 30mを誇る。
だが彼の「大きさ」はそんな数字では表せないだろう。縄文杉 自然・景勝地
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多くの寄生植物を抱え、周囲を圧倒する存在感をまき散らしながら、強大な生命観を発している。
人でも動物でも、長く生きている者たち特有のオーラを感じさせるが、縄文杉はその最たるものだろう。縄文杉 自然・景勝地
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発見されたのは1966年。ほんの50年前だ。この巨木がそれまでさんざん屋久杉を利用してきた人間達に発見されなかったのは、奇跡と言ってもいい。
縄文杉 自然・景勝地
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縄文杉に圧倒されて、腑抜けのように漂っていると、後から東京の専門学校生のグループが登ってきた。今日出会った俺以外の初めての人類。
彼らはこれから、白谷雲水峡に抜ける1泊2日コースをたどるとのこと。無事を祈って別れた。縄文杉 自然・景勝地
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イチオシ
その後もしばらく縄文杉と二人だけの時間を過ごした。彼の幹に耳を付けると、まさに豪流のような音が聞こえる。昨日降った雨を樹上へと吸い上げているのだ。
今はもう遠く離れたデッキからしか見ることができない縄文杉。思えば幸せな1日だったんだな。縄文杉 自然・景勝地
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気が付けばもう1時を回ってしまった。帰り道を考えれば、もう下山しなければならない。
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とにかく思った以上にハードな登山だった。印象としては、富士にご来光を拝みに行った時に、勝るとも劣らないかな。今は当時よりもいろいろな面で整備されているのだろうが、皆にお勧めしたいような、そっとしておいてほしいような・・・
きつい道程を克服できた人だけがたどり着ける場所、そんな場所であってほしい。
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