「東海道五拾三次」を歩く　　十七、由比 ～ 興津

2014/11/01 - 2014/11/03

歌川広重の浮世絵「東海道五拾三次」に魅せられて、
広重が愛した道を、自分の足で歩いてみたくなった。

と書けば、なんとなく上質の旅行記のように感じるか。
本当のところは、２週間前に某テレビ番組に魅せられて、
ただ思いつきで始めてしまった企画でございます。

エリア 清水(静岡)

• 旅行の満足度: 4.0
• 観光: 4.0
• グルメ: 3.0
• 交通: 2.0

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 1万円 - 3万円
• 交通手段: 新幹線 JRローカル 徒歩

由比で旅を中断してから２週間後、
ボクは再び電車の中にいる。

カボチャ祭り明けの朝、奇々怪々な恰好の若者たち。
夜を存分に楽しんだのだろう、
半ば剥げ落ちたメイクもそのままに、帰宅の途についている。

そして、ここはＪＲ由比駅。
これから３日間、東海道を歩く予定だ。

まだ雨は降っていない。

天気予報によると、今日明日は雨となっている。
雨が降り出す前に、この先の薩た（さった）峠を越えておきたい。

８時２１分、いよいよ旅の再開である。

人家がまばらなこの辺りでは、すれ違う人はいない。

緩やかな上り坂を進めば、やがて海が見える。
あいにく厚い雲に覆われているが、
駿河湾はどこか厳かで、どこか神秘的に感じるからフシギだ。

海辺では、ツーリング族が歓談している。

それにしても、
人家がまばらなクセに、神社が２つも横並び。

そんなに神様に依存したい？

しかし、依存しているのは神様ばかりではない。

この集落では食料品を買うために、
わざわざ八百屋を呼びつけているのである。

なんたることか・・・

そんな他人様の生活に干渉的になっていた８時５２分、
間の宿・西倉沢を歩いていた。

そして、そのまま道なりに進んで行けば、
茶屋「藤屋」の離れ座敷・望嶽亭が見えてくる。

望嶽亭と呼ばれるには訳がある。
ここから見る富士山の眺望が・・・

眺望が・・・

眺望・・・　富士山はドコ？

望嶽亭のところで右へ曲がると、
街道沿いから家々は消え、みかん畑が広がる。

タ、タ、タ・・・　背後から足音が聞こえる。

タ、タ、タ・・・　どんどん近づいてくる。

タ、タ、タ・・・　そして、抜かされる。

通りすがりのランナーよ！
よくもまあ、こんな山道をお走りになる。

そんな自分も、こんな山道をお歩きになっているのだが。

なおも、みかん畑はつづく。
やがて道の先に建物が・・・　峠かな？

・・・ポツリ。

１粒の雨が、頭頂部を濡らす。

・・・ポツリ、ポツリ

雨粒は数を増していき、やがて雨となる。

ラッキーなことに、ちょうど峠の休憩所。
公衆トイレの屋根の下で、とりあえず一休み。

雨が弱まるのを期待しながら、
無人販売所で購入したルビー色のキウイで一服する。

しかし、雨は弱まる素振りも見せない。

仕方ないので歩き始めると、
眼下に、東名高速と国道１号線が交差する絶景。
そして、その先には富士山が・・・

富士山が・・・　晴れていれば見えるはず。

そして道は２つに分岐する。
上へ行く道と、下へ行く道。

よりにもよって、案内板はない。

峠を越えたのだから、上へ行くこともあるまい。

下へ行く道を進むと、森のアーケード街。
人通りもないせいか、お店は１軒もない。

暗く陰気な森を抜けてみると、墓場である。

あまり気分のいい場所ではないが、
先程の２択は、見事正解したようだ。

ホッとしたのも束の間、
手持ちの地図に載ってない道が多数現れる！

どこかで右へ曲がらねばならぬのだが・・・

瑞泉寺に出くわせば、正解。

まっすぐ、そしてまっすぐ。
まっすぐ進みすぎて、老人ホームに突き当たる。

そこで右折をしてみたが、瑞泉寺はない・・・　はずれ。

１つ戻って左折するが、瑞泉寺はない・・・　はずれ。

結局、最初の十字路で曲がってみると、常夜灯が見つかる。
常夜灯があるということは、きっと「あたり」の東海道である。

やがてこの道は、時代に取り残された集落に行き着く。
“昭和”が終わったことに、まだ気づいてないのだろうか・・・

そもそも、この集落からは物音ひとつ聞こえやしない。

そして、時代は“平成”に・・・

“平成”の町を歩き進めると、「揚げたこ」のノボリを見つける。
そういえば、朝からキウイしか食べていない。

迷うことなくスーパーマルソウに入り、上品なオバ様に揚げたこを注文。
すると、上品なオバ様も迷うことなく言った。

「これ、イカですよ。」

もしかして・・・　もしかして・・・
「揚げたて」を「揚げたこ」と読み間違えた？！

そんなつまらないことで軽くナーバスになっていたところ、

「雨は降ってますか？」

上品なオバ様は、上品な笑顔で話しかけてくる。
さ、さ、さっきから雨は降ってますが・・・

「止まない雨はない。」

嗚呼、なんて上品なんだっ！！
しかも、なんていうポジティブ・・・　ステキ♪

しかし、外は雨。
上品なオバ様と談笑している間に、雨は本降りとなっていた。

旅は再開されたばかりだというのに、
この雨・・・

頼りない折り畳み傘で雨をしのぎながら、
１０時５２分、興津宿に到着する。

由比を出発してから２時間３１分後のことである。

興津宿 名所・史跡

この旅行記へのコメント （4）

• 森の番人さん 2015/12/09 15:50:17

  はじめまして。

  おま。さん、こんにちは。
  
  いつも、ご訪問とご投票をありがとうございます。
  
  東海道東海道五拾三次を歩いてって
  すごい企画ですよね。
  
  ＞もしかして・・・　もしかして・・・
  「揚げたて」を「揚げたこ」と読み間違えた？！
  
  思わず、笑ってしまいましたが
  こんなオチだったとは。
  こういう早とちりって、私もよくやります。
  
  私はカナダ在住なので北米の旅行記が多くなりがちですが
  今後とも宜しくお願い致します。
  
  森の番人

  おま。さん からの返信 2015/12/09 17:29:13

  RE: はじめまして。

  特に長距離を歩いていると、早とちりって特にヒドイ。
  だから、道もしょっちゅう間違えちゃうんですね。
  
  それにしても、カナダ在住とはうらやましい。
  リタイアしたら海外ロングステイを夢見てますが、
  まだ先は長い。。。。。
  
  なので、いつも恨めしく・・いやうらやましく
  森の番人さんの旅行記を読ませてもらっておりますよ♪
  
  これからも、どうじょよろしくお願いします。
  
  おま。

• 前日光さん 2015/01/10 00:22:07

  いいね！スーパーのおば様(^_^)v

  おま。さん、こんばんは。
  
  またしても雨にたたられた由比歩き。
  
  森のアーケードの中って、どんなだったんですか？
  
  こわそう〜〜(*_*)
  
  スーパーの上品なおば様、珍しくおま。さんも、一目置いてる感じですね。
  それにしても「揚げたて」を「揚げたこ」と間違えるなんて。。。
  やっぱり朝からキウイだけじゃ駄目ですよ。
  
  東名高速と国道一号線が交錯する所から、晴れていれば富士山が望めるんですか。
  それは出来過ぎですね。
  心の中で富士山に思いを巡らしましょうね。
  
  この時期、天気がよくなかったんですね。
  傘持ってると、写真が撮りにくいのでテンションが下がります。
  
  その鬱積した感じが伝わってきますね。
  ガンバレ！おま。さん!(^^)!
  
  
  前日光

  おま。さん からの返信 2015/01/10 14:10:42

  RE: いいね！スーパーのおば様(^_^)v

  森のアーケードは「秘密基地」って感じだったよ。
  といっても、今どきの人や街育ちの人にはわからないですね。
  
  中学生のころ近くの山に秘密基地を作って、
  そこで友達とよく遊びました。
  何て言えばいいんでしょう・・・？　簡易的な、家？？？
  
  夜歩いたら、間違いなく怖いでしょう。
  
  おま。