ワイマール旅行記(ブログ) 一覧に戻る
クヴェトリンブルク、ゴスラー、ヒルデスハイムの3世界遺産の街を訪れた翌日、いよいよ長年の念願だったヴァイマールを訪れた。ドイツの世界遺産27ヶ所目にして、やっとドイツ精神文化の中枢に到達したような気がする。前日はまさに駆け足でとにかく見届けることを目的にしていたが、ここヴァイマールではそういう訳にはいかない。何しろゲーテ、シラー、バッハ、リスト、ニーチェ、クレーなど錚々たる人物が文化の花を咲かせた街である。人口は約7万人の小都市であるが、1999年には欧州文化首都に選ばれており、古典主義の都ヴァイマールがユネスコ世界遺産に登録されたのも当然といえば当然である。なお、ヴァイマールにはもうひとつ、バウハウスの関連遺産群が世界遺産に登録されているので、ヴァイマール後編として別途ご紹介する。<br /><br />6:30発の予定を15分ほど遅れてベルリン中央駅を出たREは、9時ちょうどにヴァイマール中央駅に到着した。小都市であるが上記の偉人たちの足跡を訪ねるだけでも見所は尽きない。神聖ローマ帝国時代にはザクセン=ヴァイマール公国の首都であり、J.S.バッハが宮廷音楽家を務め、またゲーテが宰相として仕えたこともある。ヴァイマールに到着して、まずは市中心部にあるヴァイマール国民劇場を訪れた。月桂冠を持つゲーテとシラーの銅像が誇らしげに我々を迎えてくれる。彼らの自作のオリジナル演劇作品を上演したドイツ古典主義の歴史的劇場であり、現在も現代の演出家により作品が上演されている。<br /><br />ヴァイマール古典主義とは、わずか50年ほどの期間であるがヨーロッパ精神史の輝ける時代と言われる。 当時のヴァイマールが権力や富の中心から遠く離れた、地方の小都市に過ぎなかったにもかかわらず、ザクセン・ヴァイマール・アイゼナハ大公妃アンナ・アマーリアは、数々の作家や思想家たちを招聘し住居と仕事場を提供した。その中でもドイツの誇る2大文豪、ゲーテ(1749 - 1832)とシラー(1759 - 1805) が互いにその才能を競い合い、高め合ったことは稀有のことである。<br /><br />ドイツの文化を語る上でゲーテの存在は際立っている。作家としてはもちろん、政治家、科学者、哲学者としても万能の才能を発揮した。国民劇場から300mほどの場所にあるフラウエンプラン広場に面する場所には、文豪が50年近く住んだ、ゲーテの旧邸宅がほぼ原型のままで保存されており、まるで美術館のようなゲーテ晩年の頃の姿に留められた住居を見学できる。また、“ゲーテの家” の斜向かいにあるホテル兼レストラン “ツム・ヴァイセン・シュヴァン (白鳥亭) ” では、よく文豪がワイングラスを傾けていたという。 「若きヴェルテルの悩み」はともかく、学生の頃にはさっぱり理解できなかった「ファウスト」に多いに共感を覚えるようになってしまったのは年齢のせいだろうか?なお、ゲーテの神格化された最期の言葉「もっと光を (Mehr Licht)」を発して亡くなった寝室もここにあり、撮影もできる。もっとも、この言葉には続きがあり、「もっと光を、格子戸を開けてくれ」であり、決して「全人類にもっと文化の光を」と呟いたものではないようである。<br /><br />これに対してフリードリヒ・シラーの名前は、ベートーヴェンが第九交響曲の終楽章に選んだ「歓喜に寄す」が圧倒的に印象に残っている。この曲を歌うためにドイツ語を学び始めたのは小生だけではないだろう。この都市でシラーとゲーテが創作にいそしんだ11年間は、古典主義の絶頂期と言われる。我々に馴染み深い作品は「ヴィルヘルム・テル」、大学の教材として読まれる「群盗」以外には多くはないが、彼の求めた「自由、フライハイト」はドイツ国民の精神生活に大きな影響を与えたという。シラーが居住し、最期を迎えた “シラーの家” は当時の様式を保ち、オリジナルの家具も一部残る。シラーの死を知ったゲーテは「自分の存在の半分を失った」と嘆いたそうだ。隣接した近代的なシラー博物館の常設展「テューリンゲンのシラー」で、彼の生涯と作品を辿ることができる。 <br /><br />ゲーテやシラーは共にこの街で最期を迎え、共に大公家墓所の地下室の並んだ棺の中に葬られている。驚くべきことにこの棺は公開されており、常に一般市民が献花をすることができ、撮影することもできる。

ドイツの世界遺産No. 27-1: ヴァイマールの古典主義、ゲーテとシラー(改訂版)

22いいね!

2013/11/23 - 2013/11/24

17位(同エリア96件中)

1

32

ハンク

ハンクさん

クヴェトリンブルク、ゴスラー、ヒルデスハイムの3世界遺産の街を訪れた翌日、いよいよ長年の念願だったヴァイマールを訪れた。ドイツの世界遺産27ヶ所目にして、やっとドイツ精神文化の中枢に到達したような気がする。前日はまさに駆け足でとにかく見届けることを目的にしていたが、ここヴァイマールではそういう訳にはいかない。何しろゲーテ、シラー、バッハ、リスト、ニーチェ、クレーなど錚々たる人物が文化の花を咲かせた街である。人口は約7万人の小都市であるが、1999年には欧州文化首都に選ばれており、古典主義の都ヴァイマールがユネスコ世界遺産に登録されたのも当然といえば当然である。なお、ヴァイマールにはもうひとつ、バウハウスの関連遺産群が世界遺産に登録されているので、ヴァイマール後編として別途ご紹介する。

6:30発の予定を15分ほど遅れてベルリン中央駅を出たREは、9時ちょうどにヴァイマール中央駅に到着した。小都市であるが上記の偉人たちの足跡を訪ねるだけでも見所は尽きない。神聖ローマ帝国時代にはザクセン=ヴァイマール公国の首都であり、J.S.バッハが宮廷音楽家を務め、またゲーテが宰相として仕えたこともある。ヴァイマールに到着して、まずは市中心部にあるヴァイマール国民劇場を訪れた。月桂冠を持つゲーテとシラーの銅像が誇らしげに我々を迎えてくれる。彼らの自作のオリジナル演劇作品を上演したドイツ古典主義の歴史的劇場であり、現在も現代の演出家により作品が上演されている。

ヴァイマール古典主義とは、わずか50年ほどの期間であるがヨーロッパ精神史の輝ける時代と言われる。 当時のヴァイマールが権力や富の中心から遠く離れた、地方の小都市に過ぎなかったにもかかわらず、ザクセン・ヴァイマール・アイゼナハ大公妃アンナ・アマーリアは、数々の作家や思想家たちを招聘し住居と仕事場を提供した。その中でもドイツの誇る2大文豪、ゲーテ(1749 - 1832)とシラー(1759 - 1805) が互いにその才能を競い合い、高め合ったことは稀有のことである。

ドイツの文化を語る上でゲーテの存在は際立っている。作家としてはもちろん、政治家、科学者、哲学者としても万能の才能を発揮した。国民劇場から300mほどの場所にあるフラウエンプラン広場に面する場所には、文豪が50年近く住んだ、ゲーテの旧邸宅がほぼ原型のままで保存されており、まるで美術館のようなゲーテ晩年の頃の姿に留められた住居を見学できる。また、“ゲーテの家” の斜向かいにあるホテル兼レストラン “ツム・ヴァイセン・シュヴァン (白鳥亭) ” では、よく文豪がワイングラスを傾けていたという。 「若きヴェルテルの悩み」はともかく、学生の頃にはさっぱり理解できなかった「ファウスト」に多いに共感を覚えるようになってしまったのは年齢のせいだろうか?なお、ゲーテの神格化された最期の言葉「もっと光を (Mehr Licht)」を発して亡くなった寝室もここにあり、撮影もできる。もっとも、この言葉には続きがあり、「もっと光を、格子戸を開けてくれ」であり、決して「全人類にもっと文化の光を」と呟いたものではないようである。

これに対してフリードリヒ・シラーの名前は、ベートーヴェンが第九交響曲の終楽章に選んだ「歓喜に寄す」が圧倒的に印象に残っている。この曲を歌うためにドイツ語を学び始めたのは小生だけではないだろう。この都市でシラーとゲーテが創作にいそしんだ11年間は、古典主義の絶頂期と言われる。我々に馴染み深い作品は「ヴィルヘルム・テル」、大学の教材として読まれる「群盗」以外には多くはないが、彼の求めた「自由、フライハイト」はドイツ国民の精神生活に大きな影響を与えたという。シラーが居住し、最期を迎えた “シラーの家” は当時の様式を保ち、オリジナルの家具も一部残る。シラーの死を知ったゲーテは「自分の存在の半分を失った」と嘆いたそうだ。隣接した近代的なシラー博物館の常設展「テューリンゲンのシラー」で、彼の生涯と作品を辿ることができる。

ゲーテやシラーは共にこの街で最期を迎え、共に大公家墓所の地下室の並んだ棺の中に葬られている。驚くべきことにこの棺は公開されており、常に一般市民が献花をすることができ、撮影することもできる。

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
グルメ
4.5
交通
4.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
鉄道 高速・路線バス 徒歩 飛行機
旅行の手配内容
個別手配

PR

  • ヴァイマール中央駅に到着したRE

    ヴァイマール中央駅に到着したRE

  • ルーシッシャーホフ ホテル

    ルーシッシャーホフ ホテル

  • ヴァイマル国民劇場前の月桂冠を持つゲーテとシラーの銅像

    イチオシ

    ヴァイマル国民劇場前の月桂冠を持つゲーテとシラーの銅像

  • ヴァイマル国民劇場前の月桂冠を持つゲーテとシラーの銅像

    ヴァイマル国民劇場前の月桂冠を持つゲーテとシラーの銅像

  • &quot;ゲーテの家” と斜向かいにあるホテル兼レストラン “ツム・ヴァイセン・シュヴァン (白鳥亭) ”

    "ゲーテの家” と斜向かいにあるホテル兼レストラン “ツム・ヴァイセン・シュヴァン (白鳥亭) ”

  • ゲーテの家に隣接するゲーテ博物館

    ゲーテの家に隣接するゲーテ博物館

  • 有名なゲーテの肖像画

    有名なゲーテの肖像画

  • ゲーテとシラーの胸像

    ゲーテとシラーの胸像

  • なぜかミロのヴィーナスの復元像がある

    なぜかミロのヴィーナスの復元像がある

  • 有名なゲーテの肖像画

    有名なゲーテの肖像画

  • 若き日から壮年期のゲーテの胸像

    若き日から壮年期のゲーテの胸像

  • ゲーテの家の入り口

    ゲーテの家の入り口

  • 美術館のようなゲーテの家の内部

    美術館のようなゲーテの家の内部

  • 美術館のようなゲーテの家の内部

    美術館のようなゲーテの家の内部

  • 美術館のようなゲーテの家の内部

    美術館のようなゲーテの家の内部

  • ゲーテの神格化された最期の言葉「もっと光を、Mehr Licht」を発して亡くなった寝室。もっとも、この言葉には続きがあり、「もっと光を、格子戸を開けてくれ」であり、決して「全人類にもっと文化の光を」と呟いたものではないそうである。

    ゲーテの神格化された最期の言葉「もっと光を、Mehr Licht」を発して亡くなった寝室。もっとも、この言葉には続きがあり、「もっと光を、格子戸を開けてくれ」であり、決して「全人類にもっと文化の光を」と呟いたものではないそうである。

  • ゲーテの家の中庭

    ゲーテの家の中庭

  • シラーの家

    シラーの家

  • シラー博物館のロビー

    シラー博物館のロビー

  • シラーの家の入り口

    シラーの家の入り口

  • シラーの家はゲーテの家に比べ質素である

    シラーの家はゲーテの家に比べ質素である

  • FREIHEIT (自由)、ドイツ国民の精神生活に大きな影響を与えた

    FREIHEIT (自由)、ドイツ国民の精神生活に大きな影響を与えた

  • シラーの死

    シラーの死

  • シラーの家の内部

    シラーの家の内部

  • シラーの胸像

    シラーの胸像

  • シラーの家のファサード

    シラーの家のファサード

  • シラー博物館のファサード

    シラー博物館のファサード

  • 大公家墓所に続く道

    大公家墓所に続く道

  • 大公家墓所のファサード

    大公家墓所のファサード

  • 大公家墓所の内部

    大公家墓所の内部

  • 大公家墓所の地下室

    大公家墓所の地下室

  • 大公家墓所の地下室に並んだゲーテとシラーの棺

    大公家墓所の地下室に並んだゲーテとシラーの棺

この旅行記のタグ

22いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

この旅行記へのコメント (1)

開く

閉じる

  • さなぁさん 2014/01/05 20:41:59
    シラーの家があるのは知りませんでした
    ヴァイマールにシラーの家も残され博物館になっているのは知りませんでした!またヴァイマールに行く理由ができて嬉しいです。
    ハンクさん、ゲーテの家の馬車はご覧になりましたか??敷地内の外れにあったのですが、これでゲーテがイタリアに行ったのかと思いめぐらせていると、感慨深いです。

    歴史も一緒に知ることができ、ハンクさんの旅行記はいつも勉強になります!!

ハンクさんのトラベラーページ

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

ドイツで使うWi-Fiはレンタルしましたか?

フォートラベル GLOBAL WiFiなら
ドイツ最安 257円/日~

  • 空港で受取・返却可能
  • お得なポイントがたまる

ドイツの料金プランを見る

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

タグから海外旅行記(ブログ)を探す

この旅行記の地図

拡大する

PAGE TOP