お恥ずかしい話であるが、この日訪れたクヴェトリンブルク、ゴスラー、ヒルデスハイムの世界遺産の3都市は非常に類似した旧市街を持っており、旅行して1週間も経つと写真を見ても区別が難しくなってしまう。備忘録がわりにせっせと書き留めておかないと、これから先が思いやられる。<br /><br />さて駆け足でクヴェトリンブルクを見終え、ドイツ語教師のインド人とともにDBのディーゼルカーに乗り込んだ。ドイツ政府の招きでドイツ語教師のトレーニングに参加したという彼から、インドにおけるドイツ語教育の話を聞いた。英語圏の国でドイツ語というのは少々違和感があるが、ドイツとインドの経済、文化の関係について興味深い話を聞くことができた。彼とは途中の駅で別れの握手を交わしてまもなく、列車はゴスラーに到着した。<br /><br />ランメルスベルク鉱山のふもとにあるゴスラーは、すでにローマ時代からハルツ地方の主要都市であった。ロンドンで見つかったローマ時代の剣からもランメルスベルク鉱山の金属が含まれていることが確認されており、既にこの頃ゴスラーはヨーロッパ各地と交流があったと言われる。その後クヴェトリンブルクと同じ時期の922年、ゴスラー市の基礎はハインリヒ王により築かれた。11世紀には皇帝色である薄紫色に飾られた皇帝居城がハインリヒ3世により建設された。<br /><br />ゴスラーに近いランメスベルク鉱山は、銀を産出したため皇帝直轄領となり、ゴスラーは神聖ローマ帝国の主要都市として皇帝や王が居留した。1253年からゴスラーは自由都市となり、ハンザ同盟にも加わっている。 19世紀までスウェーデンやフランスに占領され、20世紀にドイツの一部となる。第2次世界大戦のあとはイギリスの管理下に置かれた。1960年以降盛んに採掘が進み町が発展したが、1988年には資源が枯渇し、鉱山は閉山し町は衰退する。しかし、美しい旧市街を訪れる観光客は今も少なくなく、1992年にはゴスラー旧市街とランメルスベルク鉱山はユネスコ世界遺産に登録された。<br /><br />ランメスベルク鉱山はゴスラー駅からバスで25分の距離にあるが、今回は時間に限りがあるため訪れることは断念、旧市街を徒歩で散策した。小さな町で見所は旧市街に集中している。まずはマルクト教会の塔に登ることにした。木製の螺旋階段を登ることに約10分、頂上から霧に霞むゴスラー市を眺めた。そしてクリスマスマーケットの準備で忙しいマルクト広場の周辺で過ごした。<br /><br />この町ではほうきにまたがった魔女の人形を見かける。これはゲーテのファウストにも描かれた「ヴァルプルギスの夜」(4月30日から翌日の夜間)に、ゴスラー近くのブロッケン山に魔女たちが集まって饗宴を開く、という伝説があるからであり、今では魔女がハルツ地方のマスコットキャラクターとなっている。また音楽ファンには、フランスの作曲家ベルリオーズの「幻想交響曲」で、振り向いてくれない彼女を夢の中で殺し、彼女は魔女となって「ヴァルプルギスの夜」の饗宴に現れることを思い出すことだろう。<br /><br />「魔女」について調べると、興味深いヨーロッパの歴史の裏側を垣間見ることができる。魔女とはキリスト教の俗信で、「超自然的な力で人畜に害を及ぼす人間、または妖術を行使する者を指す」という。魔女狩りとは、中世末期から近代にかけてのヨーロッパや北アメリカで見られた。15世紀から18世紀までにかけて、魔女狩りの名の下に全ヨーロッパで最大4万人が処刑された。この町でも1530年から1657年の間に魔女狩りで、少なくとも28人が犠牲になった記録があるという。<br /><br />日が短くなってもう日が沈みかけた。この日にはもう1つの世界遺産の都市、ヒルデスハイムを訪れることにしている。急ぎ足で駅に向かい、列車を捕まえなくてはいけない。

ドイツの世界遺産No. 25：ゴスラーの旧市街のクリスマスマーケット（改訂版）

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2013/11/23 - 2013/11/24

21位(同エリア115件中)

#世界遺産

ハンクさん

お恥ずかしい話であるが、この日訪れたクヴェトリンブルク、ゴスラー、ヒルデスハイムの世界遺産の3都市は非常に類似した旧市街を持っており、旅行して1週間も経つと写真を見ても区別が難しくなってしまう。備忘録がわりにせっせと書き留めておかないと、これから先が思いやられる。

さて駆け足でクヴェトリンブルクを見終え、ドイツ語教師のインド人とともにDBのディーゼルカーに乗り込んだ。ドイツ政府の招きでドイツ語教師のトレーニングに参加したという彼から、インドにおけるドイツ語教育の話を聞いた。英語圏の国でドイツ語というのは少々違和感があるが、ドイツとインドの経済、文化の関係について興味深い話を聞くことができた。彼とは途中の駅で別れの握手を交わしてまもなく、列車はゴスラーに到着した。

ランメルスベルク鉱山のふもとにあるゴスラーは、すでにローマ時代からハルツ地方の主要都市であった。ロンドンで見つかったローマ時代の剣からもランメルスベルク鉱山の金属が含まれていることが確認されており、既にこの頃ゴスラーはヨーロッパ各地と交流があったと言われる。その後クヴェトリンブルクと同じ時期の922年、ゴスラー市の基礎はハインリヒ王により築かれた。11世紀には皇帝色である薄紫色に飾られた皇帝居城がハインリヒ3世により建設された。

ゴスラーに近いランメスベルク鉱山は、銀を産出したため皇帝直轄領となり、ゴスラーは神聖ローマ帝国の主要都市として皇帝や王が居留した。1253年からゴスラーは自由都市となり、ハンザ同盟にも加わっている。 19世紀までスウェーデンやフランスに占領され、20世紀にドイツの一部となる。第2次世界大戦のあとはイギリスの管理下に置かれた。1960年以降盛んに採掘が進み町が発展したが、1988年には資源が枯渇し、鉱山は閉山し町は衰退する。しかし、美しい旧市街を訪れる観光客は今も少なくなく、1992年にはゴスラー旧市街とランメルスベルク鉱山はユネスコ世界遺産に登録された。

ランメスベルク鉱山はゴスラー駅からバスで25分の距離にあるが、今回は時間に限りがあるため訪れることは断念、旧市街を徒歩で散策した。小さな町で見所は旧市街に集中している。まずはマルクト教会の塔に登ることにした。木製の螺旋階段を登ることに約10分、頂上から霧に霞むゴスラー市を眺めた。そしてクリスマスマーケットの準備で忙しいマルクト広場の周辺で過ごした。

この町ではほうきにまたがった魔女の人形を見かける。これはゲーテのファウストにも描かれた「ヴァルプルギスの夜」(4月30日から翌日の夜間)に、ゴスラー近くのブロッケン山に魔女たちが集まって饗宴を開く、という伝説があるからであり、今では魔女がハルツ地方のマスコットキャラクターとなっている。また音楽ファンには、フランスの作曲家ベルリオーズの「幻想交響曲」で、振り向いてくれない彼女を夢の中で殺し、彼女は魔女となって「ヴァルプルギスの夜」の饗宴に現れることを思い出すことだろう。

「魔女」について調べると、興味深いヨーロッパの歴史の裏側を垣間見ることができる。魔女とはキリスト教の俗信で、「超自然的な力で人畜に害を及ぼす人間、または妖術を行使する者を指す」という。魔女狩りとは、中世末期から近代にかけてのヨーロッパや北アメリカで見られた。15世紀から18世紀までにかけて、魔女狩りの名の下に全ヨーロッパで最大4万人が処刑された。この町でも1530年から1657年の間に魔女狩りで、少なくとも28人が犠牲になった記録があるという。

日が短くなってもう日が沈みかけた。この日にはもう1つの世界遺産の都市、ヒルデスハイムを訪れることにしている。急ぎ足で駅に向かい、列車を捕まえなくてはいけない。