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最後に小樽を訪れたのは10年以上前のこと。久しぶりの小樽は雰囲気もずいぶん変わっていた。<br />まず運河の存在感が変わったように思う。少しこじんまりとしたような。周りがきれいになったせいで、以前よりもインパクトが薄れたのかもしれない。<br />それから硝子の店がものすごく増えていた。中でも「北一硝子」は、うんと垢抜けていた。<br />小樽にまだ買い物を楽しめる店が少なかった頃、「北一硝子」は既にそこにあって、老舗独特の雰囲気を醸し出していた。看板も地味なものだから、お喋りしながら気づかずに通り過ぎたこともある。<br />やがて少しずつ脚光を浴び始めると、ドライブで小樽に行き北一硝子に立ち寄るのが「お洒落」なこととなった。と言っても当時の私はまだドライブをするような年齢ではなかったが。<br />そんな印象がまだ強く残っているものだから、今回の小樽は別な街のようにも見えた。<br /><br />たくさんの硝子店が立ち並ぶ中、さすがの北一硝子は「調味料用ガラス製品」の専門店まで出していた。ライトをうまく利用したディスプレイは、さながら硝子のイリュージョンを見ているような美しさだ。<br />通りを曲がると、また別の硝子の店が並んでいる。古い建物を利用した昔風の趣きをもつ店。小樽ってこんなに硝子が有名な街だったんだ。<br /><br />小樽は訪れる観光客の数のわりに宿泊客が少ないんだ、と小樽の人が言っていた。どうやら札幌から近いせいで、半日観光ができることが原因のようだ。<br />それでも宿にはけっこう人が入っていた。札幌から近いからこそ、小樽まで脚を伸ばす人もいるのだろう。<br /><br />その夜は、ミシュランで星をもらっている寿司屋を予約しておいた。予約の際に希望した時間は、他のお客と重なるので少しずらしてもらえないか、と女性従業員に言われ、30分早い時間に変更することにした。少ない人数の客に集中して対応したいと言う心意気なのだろうと、それは悪い気がしなかった。<br />小樽を良く知る知り合いは皆「別にミシュランで選ばれなくても、美味しい寿司屋は他にいくらでもある。教えてあげようか」と口を揃えて言った。<br />でも、とりあえずミシュランの店に興味があったから、今回はそれを優先した。<br /><br />店には早めに入ったが、間もなく30分後に来るはずの4人連れの客がやってきた。向こうは30分以上も早い来店だったのだ。せっかく時間をずらしたのだが、6人同時にカウンター席につくこととなった。<br /><br />4人連れは東京から来た中年層のおば様たち。前もって「お任せコース」を頼んであったようだ。この店でいちばん値の張る、大将お任せの握りコースである。<br />かたや我々は二人連れ。私も前もってネットでメニューをチェックしており、食べたいものを決めておいた。自分の好みのネタで2巻づつ出てくるコースだ。<br />高齢の母にはあまり珍しいネタが混ざらないコースを、と思っていた。彼女は年をとってから、食べ慣れない魚介を口にすると体調を崩すようになったからだ。<br />母用に二つのコースを候補に挙げ、ネタの内容を大将に尋ねた。すると「普通のですよ」と言う。更に「“お任せコース”のほうがいいですよ」とも言う。「食べたいコース選んであるので」と断りをいれ、もういちどネタの内容を尋ねると「いや、まぁ普通のです。お任せのほうが良いですよ。色んなネタ握るし」と繰り返す。<br />あぁそうか、4人連れのお客と同じネタを同じペースで握りたいのか、と気づいた。<br />でも、残念ながら私もネタの好き嫌いがあるし、何よりお任せは店でも一番高いコースだ。申し訳ないが、大将の希望には添えない。返ってこない答えに諦めて、仕方なくネタの内容を確認できないままに二人分頼んだ。ただ、「“もしも”いくらが入っているなら、母はアレルギーがあるので他のネタにしてください」とだけ伝えた。<br />人にはそれぞれ事情があるのだ。<br /><br />その店のお寿司は美味しかった。味はキレイだし、握り方も悪くない。いくつかの握りは醤油をつける際に割れてしまったが、私の箸の使い方に問題があるのだろう。<br />ただ、知り合いが言うとおり、他の寿司屋と較べて突出した魅力があったわけではない。美味しい寿司屋の中のひとつという感じだ。それで充分なんだけど。<br />特筆すべきは、すべての器が小樽名物の美しい硝子製品で揃えられているということだ。箸置きもグラスも皿も、どれもとても美しい。<br />ビールとアラカルトを2品ほどつけて、二人分で8000円程度。財布にも優しい値段だ。<br />でも…、食事はメニュー選びから始まる。「ネタの内容」を聞いて「普通ですよ」と言う答えはないだろう。ネタの好き嫌いや食物アレルギーの問題だってある。握る側の便宜のためにいちばん高いコースを押し付ける大将に、客をもてなす「心意気」は感じられない。<br />寿司は美味しかった。でも楽しい思い出にはならなかった。<br /><br />さて、気分を変えて、ゆっくりと歩きながら宿へ戻る。<br />夜8時半、人は殆ど歩いていない。6月だと言うのにやけに寒いせいかもしれない。<br />それでも街灯の灯る運河沿いを歩くのはステキな気分だ。きれいな街だと改めて思う。<br />翌日は宿の朝食をとったあと、駅前の市場へ出かけた。<br />そこは想像していたものよりもずっと小さくて、店の数も少なかった。観光客向けなのかもしれない。お土産用の魚介類を購入し、楽しみにしていた魚介盛り丼を食べた。<br />市場の中の食堂はどこも大混雑だ。昼時は待ちの行列ができる。<br />さて、魚介丼のお味のほうは?というと、正直なところ「新鮮なネタさえあれば、家で清潔な食器を使い、手作りするほうが美味しいかも」という感じだが、それでも市場の食堂で食べるからこその価値もある。<br />店のおばさんたちの混乱振りも大変なものだった。そりゃそうだろう、狭い店内に100席ほどの椅子がほぼ満席。料理もお会計もだいぶ待たされたが、それも仕方がないと思った。ピークシーズンには長い待ち時間を覚悟しなくてはならないだろう。<br /><br />小樽という街は、観光客が欲しているものを上手に取り揃えている。それが広く浅いものだから、どこか中途半端に感じるのも事実。でも、足りない部分は札幌で補えば良いのだろう。<br />歴史と情緒を兼ね備えた街、小樽。10年後にはどんな変化を遂げているのか、楽しみです。<br />

ぶらっと小樽旅 硝子の店と美味しい寿司屋の残念な出来事

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2013/06/19 - 2013/06/21

1920位(同エリア2743件中)

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24

kobusakura

kobusakuraさん

最後に小樽を訪れたのは10年以上前のこと。久しぶりの小樽は雰囲気もずいぶん変わっていた。
まず運河の存在感が変わったように思う。少しこじんまりとしたような。周りがきれいになったせいで、以前よりもインパクトが薄れたのかもしれない。
それから硝子の店がものすごく増えていた。中でも「北一硝子」は、うんと垢抜けていた。
小樽にまだ買い物を楽しめる店が少なかった頃、「北一硝子」は既にそこにあって、老舗独特の雰囲気を醸し出していた。看板も地味なものだから、お喋りしながら気づかずに通り過ぎたこともある。
やがて少しずつ脚光を浴び始めると、ドライブで小樽に行き北一硝子に立ち寄るのが「お洒落」なこととなった。と言っても当時の私はまだドライブをするような年齢ではなかったが。
そんな印象がまだ強く残っているものだから、今回の小樽は別な街のようにも見えた。

たくさんの硝子店が立ち並ぶ中、さすがの北一硝子は「調味料用ガラス製品」の専門店まで出していた。ライトをうまく利用したディスプレイは、さながら硝子のイリュージョンを見ているような美しさだ。
通りを曲がると、また別の硝子の店が並んでいる。古い建物を利用した昔風の趣きをもつ店。小樽ってこんなに硝子が有名な街だったんだ。

小樽は訪れる観光客の数のわりに宿泊客が少ないんだ、と小樽の人が言っていた。どうやら札幌から近いせいで、半日観光ができることが原因のようだ。
それでも宿にはけっこう人が入っていた。札幌から近いからこそ、小樽まで脚を伸ばす人もいるのだろう。

その夜は、ミシュランで星をもらっている寿司屋を予約しておいた。予約の際に希望した時間は、他のお客と重なるので少しずらしてもらえないか、と女性従業員に言われ、30分早い時間に変更することにした。少ない人数の客に集中して対応したいと言う心意気なのだろうと、それは悪い気がしなかった。
小樽を良く知る知り合いは皆「別にミシュランで選ばれなくても、美味しい寿司屋は他にいくらでもある。教えてあげようか」と口を揃えて言った。
でも、とりあえずミシュランの店に興味があったから、今回はそれを優先した。

店には早めに入ったが、間もなく30分後に来るはずの4人連れの客がやってきた。向こうは30分以上も早い来店だったのだ。せっかく時間をずらしたのだが、6人同時にカウンター席につくこととなった。

4人連れは東京から来た中年層のおば様たち。前もって「お任せコース」を頼んであったようだ。この店でいちばん値の張る、大将お任せの握りコースである。
かたや我々は二人連れ。私も前もってネットでメニューをチェックしており、食べたいものを決めておいた。自分の好みのネタで2巻づつ出てくるコースだ。
高齢の母にはあまり珍しいネタが混ざらないコースを、と思っていた。彼女は年をとってから、食べ慣れない魚介を口にすると体調を崩すようになったからだ。
母用に二つのコースを候補に挙げ、ネタの内容を大将に尋ねた。すると「普通のですよ」と言う。更に「“お任せコース”のほうがいいですよ」とも言う。「食べたいコース選んであるので」と断りをいれ、もういちどネタの内容を尋ねると「いや、まぁ普通のです。お任せのほうが良いですよ。色んなネタ握るし」と繰り返す。
あぁそうか、4人連れのお客と同じネタを同じペースで握りたいのか、と気づいた。
でも、残念ながら私もネタの好き嫌いがあるし、何よりお任せは店でも一番高いコースだ。申し訳ないが、大将の希望には添えない。返ってこない答えに諦めて、仕方なくネタの内容を確認できないままに二人分頼んだ。ただ、「“もしも”いくらが入っているなら、母はアレルギーがあるので他のネタにしてください」とだけ伝えた。
人にはそれぞれ事情があるのだ。

その店のお寿司は美味しかった。味はキレイだし、握り方も悪くない。いくつかの握りは醤油をつける際に割れてしまったが、私の箸の使い方に問題があるのだろう。
ただ、知り合いが言うとおり、他の寿司屋と較べて突出した魅力があったわけではない。美味しい寿司屋の中のひとつという感じだ。それで充分なんだけど。
特筆すべきは、すべての器が小樽名物の美しい硝子製品で揃えられているということだ。箸置きもグラスも皿も、どれもとても美しい。
ビールとアラカルトを2品ほどつけて、二人分で8000円程度。財布にも優しい値段だ。
でも…、食事はメニュー選びから始まる。「ネタの内容」を聞いて「普通ですよ」と言う答えはないだろう。ネタの好き嫌いや食物アレルギーの問題だってある。握る側の便宜のためにいちばん高いコースを押し付ける大将に、客をもてなす「心意気」は感じられない。
寿司は美味しかった。でも楽しい思い出にはならなかった。

さて、気分を変えて、ゆっくりと歩きながら宿へ戻る。
夜8時半、人は殆ど歩いていない。6月だと言うのにやけに寒いせいかもしれない。
それでも街灯の灯る運河沿いを歩くのはステキな気分だ。きれいな街だと改めて思う。
翌日は宿の朝食をとったあと、駅前の市場へ出かけた。
そこは想像していたものよりもずっと小さくて、店の数も少なかった。観光客向けなのかもしれない。お土産用の魚介類を購入し、楽しみにしていた魚介盛り丼を食べた。
市場の中の食堂はどこも大混雑だ。昼時は待ちの行列ができる。
さて、魚介丼のお味のほうは?というと、正直なところ「新鮮なネタさえあれば、家で清潔な食器を使い、手作りするほうが美味しいかも」という感じだが、それでも市場の食堂で食べるからこその価値もある。
店のおばさんたちの混乱振りも大変なものだった。そりゃそうだろう、狭い店内に100席ほどの椅子がほぼ満席。料理もお会計もだいぶ待たされたが、それも仕方がないと思った。ピークシーズンには長い待ち時間を覚悟しなくてはならないだろう。

小樽という街は、観光客が欲しているものを上手に取り揃えている。それが広く浅いものだから、どこか中途半端に感じるのも事実。でも、足りない部分は札幌で補えば良いのだろう。
歴史と情緒を兼ね備えた街、小樽。10年後にはどんな変化を遂げているのか、楽しみです。

旅行の満足度
4.0
観光
4.0
ホテル
4.5
グルメ
3.0
ショッピング
4.5
同行者
家族旅行
一人あたり費用
1万円 - 3万円
交通手段
JR特急
旅行の手配内容
個別手配
  • ヴェネチア美術館。ゴージャスな内装にゴージャスな商品。見ているだけでも楽しいです。

    ヴェネチア美術館。ゴージャスな内装にゴージャスな商品。見ているだけでも楽しいです。

  • 着てみたい?クラシックなドレス

    着てみたい?クラシックなドレス

  • ヴェネチアとは硝子つながりでしょうか?ムラノ硝子?

    ヴェネチアとは硝子つながりでしょうか?ムラノ硝子?

  • すてきなティーカップ。色が独特です。

    すてきなティーカップ。色が独特です。

  • あ、ここも北一硝子の系列なんですね。知らなかった

    あ、ここも北一硝子の系列なんですね。知らなかった

  • ここは北一硝子、調味料入れ専門店です。混んでました!

    ここは北一硝子、調味料入れ専門店です。混んでました!

  • 可愛い調味料入れや日本酒セットが色々あって、とってもほしくなりました。でも高くて買えなかった。。。残念!

    可愛い調味料入れや日本酒セットが色々あって、とってもほしくなりました。でも高くて買えなかった。。。残念!

  • ライトの当て方がキレイですね。家でもライト当てながら使いたい

    ライトの当て方がキレイですね。家でもライト当てながら使いたい

  • 古い建物を使った硝子店。昔からあったのでしょうか?

    古い建物を使った硝子店。昔からあったのでしょうか?

  • 表通りから一歩中道に入ったところにあります

    表通りから一歩中道に入ったところにあります

  • 蔦が絡まっていい感じ でもこの時既に、硝子見すぎて頭がボーっとしてました

    蔦が絡まっていい感じ でもこの時既に、硝子見すぎて頭がボーっとしてました

  • ここは安いガラス製品を売っているお店。箸置きが売りのようです

    ここは安いガラス製品を売っているお店。箸置きが売りのようです

  • だから買いました、4季を描いた箸置き4つ。お土産にも喜ばれそう

    だから買いました、4季を描いた箸置き4つ。お土産にも喜ばれそう

  • 櫓です。あの上に上がって景色を見ることもできるようですよ。

    櫓です。あの上に上がって景色を見ることもできるようですよ。

  • 小路です。始めてみたような機がするけど、昔からある小路をリニューアルしたのだとか。小さいお店がいっぱい入ってました。

    小路です。始めてみたような機がするけど、昔からある小路をリニューアルしたのだとか。小さいお店がいっぱい入ってました。

  • 小樽にも人力車があるんですね。乗りたいです!

    小樽にも人力車があるんですね。乗りたいです!

  • 小樽市指定の歴史的建造物だそうです

    小樽市指定の歴史的建造物だそうです

  • この飾り、ちょっと昔風の趣があります。馬を繋いでおくのかな、それともただの飾りかな

    この飾り、ちょっと昔風の趣があります。馬を繋いでおくのかな、それともただの飾りかな

  • イカのお刺身はまずビールと一緒に

    イカのお刺身はまずビールと一緒に

  • 器は美しい小樽硝子。お寿司が映えますね

    器は美しい小樽硝子。お寿司が映えますね

  • ウニとイクラ、別に握ってもらいました

    ウニとイクラ、別に握ってもらいました

  • ノリのお味噌汁。これはとっても美味しかった!

    ノリのお味噌汁。これはとっても美味しかった!

  • 良い店と出会い、美味しい食事をすること。これが旅の醍醐味です

    良い店と出会い、美味しい食事をすること。これが旅の醍醐味です

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