クアラルンプール旅行記(ブログ) 一覧に戻る
二週間の旅行もいよいよ終盤、最後の三日間です。<br /><br />クアラルンプールの中心に降り立った<br />二人の目の前に突然現れた奇跡の青い硬貨。<br />時間を操ると言う魔法の硬貨に導かれ<br />時空を飛び越える三日間が始まった。<br /><br /><br />時間を越えたこの旅行は成立するのか?<br />はたして、旅行記の体を成し得るのか?<br />何よりも、二人の感覚が伝えられるのか?<br /><br />前篇からかなり時間が開きましたが<br />最終章、クアラルンプール完結編<br /><br />始まります。

2013年3月 アジア3国 6 マレーシア・クアラルンプール

116いいね!

2013/03/13 - 2013/03/15

89位(同エリア5593件中)

0

34

shique

shiqueさん

二週間の旅行もいよいよ終盤、最後の三日間です。

クアラルンプールの中心に降り立った
二人の目の前に突然現れた奇跡の青い硬貨。
時間を操ると言う魔法の硬貨に導かれ
時空を飛び越える三日間が始まった。


時間を越えたこの旅行は成立するのか?
はたして、旅行記の体を成し得るのか?
何よりも、二人の感覚が伝えられるのか?

前篇からかなり時間が開きましたが
最終章、クアラルンプール完結編

始まります。

旅行の満足度
3.5
同行者
カップル・夫婦
一人あたり費用
5万円 - 10万円
旅行の手配内容
個別手配

PR

  • ◆ 始まりの一枚。<br /><br />すべては相棒の手の平に置かれた<br />一枚の青い硬貨から始まった。<br /><br />僕たちがこれから向かう未来に<br />一体どんなものが待ち受けているのか<br />それを知る唯一の手掛かりが<br />この青い一枚の硬貨。<br /><br />改札機の様な機械にチャージすると<br />量子の粒に分解された空間が<br />未来・過去と言う時間を飛び越え<br />僕たちの目の前を自分の記憶として<br />通り過ぎて行くと聞いた。<br /><br />人はこの現象を、トークンが夢を見ると言う。<br /><br /><br />僕たちは慣れないキャリーを引きずり<br />トークンをかざし、目を閉じた。

    ◆ 始まりの一枚。

    すべては相棒の手の平に置かれた
    一枚の青い硬貨から始まった。

    僕たちがこれから向かう未来に
    一体どんなものが待ち受けているのか
    それを知る唯一の手掛かりが
    この青い一枚の硬貨。

    改札機の様な機械にチャージすると
    量子の粒に分解された空間が
    未来・過去と言う時間を飛び越え
    僕たちの目の前を自分の記憶として
    通り過ぎて行くと聞いた。

    人はこの現象を、トークンが夢を見ると言う。


    僕たちは慣れないキャリーを引きずり
    トークンをかざし、目を閉じた。

  • ◆ チャイナタウン。<br /><br />昨日(2013/3/14)僕たちは<br />KL最後の夕食を求め、<br />電車を幾つか乗継いだ。<br /><br />窓から流れる異国の景色は<br />建設現場の重機と道路工事に伴う大渋滞。<br /><br />冷房の効いた車内は予想外に揺れる以外は<br />水族館の通路の様で現実感が無かった。<br /><br />電車を降りた途端、熱帯の湿った熱気と<br />新興と言う進撃の熱気が体にまとい付いて来た。<br /><br />巻き上げる街の轟音がKLを更に暑くした。<br /><br />駅到着からも炎天下をかなり歩いて<br />ここ、中華街に僕たちは迷い込んだ。<br /><br />

    ◆ チャイナタウン。

    昨日(2013/3/14)僕たちは
    KL最後の夕食を求め、
    電車を幾つか乗継いだ。

    窓から流れる異国の景色は
    建設現場の重機と道路工事に伴う大渋滞。

    冷房の効いた車内は予想外に揺れる以外は
    水族館の通路の様で現実感が無かった。

    電車を降りた途端、熱帯の湿った熱気と
    新興と言う進撃の熱気が体にまとい付いて来た。

    巻き上げる街の轟音がKLを更に暑くした。

    駅到着からも炎天下をかなり歩いて
    ここ、中華街に僕たちは迷い込んだ。

  • 20年前と10年前の記憶だけでも<br />街の位置関係はつかめたが<br />僕たちの中に流れていた時間と<br />この場所で流れていた時間の間には<br />明らかな違いがあった事を痛感した。<br /><br />中華街を取り囲む喧騒や活気は<br />KLの凄まじい拡大と共に分散、<br />発散してしまったようだ。<br /><br />デフレの日常に甘んじていた僕たちには<br />この変化に付いて行くのは<br />所詮無理だったのでしょう。<br /><br />そして震源地のこの場所には<br />猫がのんびり出来る綺麗な床と<br />小ぢんまりとしたマーケットが残っていた。<br />

    20年前と10年前の記憶だけでも
    街の位置関係はつかめたが
    僕たちの中に流れていた時間と
    この場所で流れていた時間の間には
    明らかな違いがあった事を痛感した。

    中華街を取り囲む喧騒や活気は
    KLの凄まじい拡大と共に分散、
    発散してしまったようだ。

    デフレの日常に甘んじていた僕たちには
    この変化に付いて行くのは
    所詮無理だったのでしょう。

    そして震源地のこの場所には
    猫がのんびり出来る綺麗な床と
    小ぢんまりとしたマーケットが残っていた。

  • 竜眼ジュースのブースは<br />愛想の無い店員が忙しく働いていた。<br /><br />何故かしら、飲んでみたいと思った。<br /><br />「チャイナタウンと言えば竜眼、飲もう!」<br />「そうなの?」<br />「飲もうか?て聞いたら、高いから嫌だって言うでしょ。」<br />「うん。」<br /><br />1.5リンギット。<br /><br /><br />やっぱり、とっても甘かった。<br /><br />

    竜眼ジュースのブースは
    愛想の無い店員が忙しく働いていた。

    何故かしら、飲んでみたいと思った。

    「チャイナタウンと言えば竜眼、飲もう!」
    「そうなの?」
    「飲もうか?て聞いたら、高いから嫌だって言うでしょ。」
    「うん。」

    1.5リンギット。


    やっぱり、とっても甘かった。

  • 僕たちの目的は夕食。<br /><br />クレイポットの屋台は<br />いつもの場所にあったが<br />中華街の中のホーカーは<br />活気の無い食堂となっていた。<br /><br />この街に溢れていたギラギラとした熱気は<br />裏路地にある市場の饐えた匂いと伴に<br />古き良き歴史として教科書の1ページに<br />封印されてしまったようだった。<br /><br /><br />結局、夕食は通り沿いで<br />一番人気のあった店でホッケンミー。<br /><br />美味しかった。<br /><br />ほんの少し救われた気がした・・・。<br /><br /><br />・・・気がした?<br /><br />いや、本当はそんな気持ちに<br />耽りたかっただけなのかもしれない・・・。<br />

    僕たちの目的は夕食。

    クレイポットの屋台は
    いつもの場所にあったが
    中華街の中のホーカーは
    活気の無い食堂となっていた。

    この街に溢れていたギラギラとした熱気は
    裏路地にある市場の饐えた匂いと伴に
    古き良き歴史として教科書の1ページに
    封印されてしまったようだった。


    結局、夕食は通り沿いで
    一番人気のあった店でホッケンミー。

    美味しかった。

    ほんの少し救われた気がした・・・。


    ・・・気がした?

    いや、本当はそんな気持ちに
    耽りたかっただけなのかもしれない・・・。

  • ◆ ブキ・ビンタンの絵顔。<br /><br />初めての街は散歩から始まるのが<br />この旅行での僕らの流儀となっていた。<br /><br />バリからKLに到着したのは<br />深夜の0時を回っていたので<br />辺りの様子ははっきりとは解らなかった。<br /><br />しかし、この日は朝から晴れて<br />泊った宿が高層ビル群の一角に<br />ひっそり佇んでいる事も解った。<br /><br />遅めの朝食を宿で済まし<br />蒸かえる都会の真ん中へと<br />僕たちは一歩踏み出した。

    ◆ ブキ・ビンタンの絵顔。

    初めての街は散歩から始まるのが
    この旅行での僕らの流儀となっていた。

    バリからKLに到着したのは
    深夜の0時を回っていたので
    辺りの様子ははっきりとは解らなかった。

    しかし、この日は朝から晴れて
    泊った宿が高層ビル群の一角に
    ひっそり佇んでいる事も解った。

    遅めの朝食を宿で済まし
    蒸かえる都会の真ん中へと
    僕たちは一歩踏み出した。

  • 街の名前はブキ・ビンタン。<br /><br />大きな通りが縦横に走り<br />上空にはモノレールが走る。<br />ショッピングモールやコンプレックスが<br />広大な敷地に何軒も立ち並ぶ大商業地。<br /><br />高層ビルの合間にKLタワーも見える。<br /><br />しかし、僕たちの視線は悲しいかな<br />真っすぐ目の前に向けられる。<br /><br />継ぎ足したスレート屋根の屋台街<br />ビルの側面に張り付くエアコンの室外機の群<br />そして平屋の食堂。<br /><br />僕たちはいつもこんな物ばかり見て来た。<br /><br />そして、こんな物がとても恋しいと思った。

    街の名前はブキ・ビンタン。

    大きな通りが縦横に走り
    上空にはモノレールが走る。
    ショッピングモールやコンプレックスが
    広大な敷地に何軒も立ち並ぶ大商業地。

    高層ビルの合間にKLタワーも見える。

    しかし、僕たちの視線は悲しいかな
    真っすぐ目の前に向けられる。

    継ぎ足したスレート屋根の屋台街
    ビルの側面に張り付くエアコンの室外機の群
    そして平屋の食堂。

    僕たちはいつもこんな物ばかり見て来た。

    そして、こんな物がとても恋しいと思った。

  • 人影の少ない裏通りに小さな祠があった。<br /><br />大きなビルの路地を入って行くと<br />今にも朽ち果てそうな建物や<br />未来と言う合言葉によって更地にされ<br />ポカンと空に向って開けた空間が<br />僕たちの眼に飛び込んで来た。<br /><br />その脇にこの祠を見つけた。<br /><br />目を閉じると華人の熱い思いや<br />信仰に対する深い想いが巡るが<br />果たして20年後この場所に<br />この祠が在るのだろうか?<br /><br />日本の70年代、80年代以上に<br />この街は発展と言う言葉に<br />突き動かされているようだ。<br /><br />僕たちは、毎日お茶をお供えに来るだろう<br />その人の幸せを願い、手を合わせた。<br />

    人影の少ない裏通りに小さな祠があった。

    大きなビルの路地を入って行くと
    今にも朽ち果てそうな建物や
    未来と言う合言葉によって更地にされ
    ポカンと空に向って開けた空間が
    僕たちの眼に飛び込んで来た。

    その脇にこの祠を見つけた。

    目を閉じると華人の熱い思いや
    信仰に対する深い想いが巡るが
    果たして20年後この場所に
    この祠が在るのだろうか?

    日本の70年代、80年代以上に
    この街は発展と言う言葉に
    突き動かされているようだ。

    僕たちは、毎日お茶をお供えに来るだろう
    その人の幸せを願い、手を合わせた。

  • 東南アジアは冷房の効いたレストランよりも<br />やはり、簡易椅子が並べられた屋台だと思う。<br /><br />大きなビルが立ち並んだ幹線道路沿いからは<br />想像も付かない様な東南アジアが<br />ブキ・ビンタン界隈にも健在であった。<br /><br />客はほとんどが現地の人達だった。<br /><br />レストランでは無くてこの屋台に<br />慣れ親しんだいつもの味と<br />財布に優しい価格に引かれ<br />毎日、当たり前の事として<br />人々は集まるのでしょう。<br /><br />時間が流れ、形は変わっても<br />屋台の味と習慣は受け継がれるものだと<br />僕は勝手に思ってシャッターを切った。<br />

    東南アジアは冷房の効いたレストランよりも
    やはり、簡易椅子が並べられた屋台だと思う。

    大きなビルが立ち並んだ幹線道路沿いからは
    想像も付かない様な東南アジアが
    ブキ・ビンタン界隈にも健在であった。

    客はほとんどが現地の人達だった。

    レストランでは無くてこの屋台に
    慣れ親しんだいつもの味と
    財布に優しい価格に引かれ
    毎日、当たり前の事として
    人々は集まるのでしょう。

    時間が流れ、形は変わっても
    屋台の味と習慣は受け継がれるものだと
    僕は勝手に思ってシャッターを切った。

  • 12時を回って、僕たちも食事にした。<br /><br />ブキ・ビンタン界隈をぐるぐる回って<br />結局、最初に泊った宿の近く、<br />アロー通りの一本北の通りのある<br />インド系のレストラン前に来た。<br /><br />ロティを目の前でくるくる回す<br />あのテクニックには蜜の香りがした。<br /><br />美味いロティとエステを味わいたい。<br /><br />僕たちは迷わずこの店に入った。<br /><br />

    12時を回って、僕たちも食事にした。

    ブキ・ビンタン界隈をぐるぐる回って
    結局、最初に泊った宿の近く、
    アロー通りの一本北の通りのある
    インド系のレストラン前に来た。

    ロティを目の前でくるくる回す
    あのテクニックには蜜の香りがした。

    美味いロティとエステを味わいたい。

    僕たちは迷わずこの店に入った。

  • 外見よりも店内は清潔で広かった。<br /><br />座席は軽く50席を越え、<br />地元のインド系の人から<br />バックパックの西洋人まで様々で<br />活気があり、結構流行っていた。<br /><br />僕は当然ロティ・チャナイ。<br />相棒は5分以上トレイの前で迷って<br />ツナカリーにインゲンをトッピングした。<br /><br />どちらも美味しかった。<br />カリーの方は特にスパイシーで<br />後からどんどん辛さが口中に広がるが<br />一度食べたら止まらない美味しさだった。<br /><br />この食事にはやはりエステは外せなかった。<br /><br />辛さをエステの甘みが柔らかく包み込み<br />後から鼻に抜ける紅茶の香りが堪らなく<br />幸せな時間を演出してくれた。

    外見よりも店内は清潔で広かった。

    座席は軽く50席を越え、
    地元のインド系の人から
    バックパックの西洋人まで様々で
    活気があり、結構流行っていた。

    僕は当然ロティ・チャナイ。
    相棒は5分以上トレイの前で迷って
    ツナカリーにインゲンをトッピングした。

    どちらも美味しかった。
    カリーの方は特にスパイシーで
    後からどんどん辛さが口中に広がるが
    一度食べたら止まらない美味しさだった。

    この食事にはやはりエステは外せなかった。

    辛さをエステの甘みが柔らかく包み込み
    後から鼻に抜ける紅茶の香りが堪らなく
    幸せな時間を演出してくれた。

  • 美味しかった!<br /><br />ごちそうさまでした。<br /><br /><br />人は満たされた時<br /><br />安堵の表情と伴に見せるのが<br /><br />絵顔。

    美味しかった!

    ごちそうさまでした。


    人は満たされた時

    安堵の表情と伴に見せるのが

    絵顔。

  • ◆ 素顔  スリ・マハ・マリアマン。<br /><br />昨日は夕日が傾いても何故か<br />チャイナタウンでグズグズしていた。<br /><br />街角にあるレトロなカフェで<br />個性の強い華人たちに紛れ込み<br />一杯のコーヒーでまどろむ気にもなれず<br />僕たちは、ただ通りをうろついていた。<br /><br />そして目に飛び込んできたのが<br />写真で良く見たこのヒンドゥ寺院だった。<br /><br />薄暗くなった通りに向けて<br />開かれた扉からきらめく妖艶な光が<br />勢い良く解き放たれていた。<br /><br />僕たちの知らない不思議の国への扉が<br />将に目の前に突然現れたのである。<br /><br />この空間に導かれ吸い込まれる事が<br />運命で在ると分かるまでも無く<br />僕たちの体は当然、光の方へと進んでいた。<br /><br />

    ◆ 素顔  スリ・マハ・マリアマン。

    昨日は夕日が傾いても何故か
    チャイナタウンでグズグズしていた。

    街角にあるレトロなカフェで
    個性の強い華人たちに紛れ込み
    一杯のコーヒーでまどろむ気にもなれず
    僕たちは、ただ通りをうろついていた。

    そして目に飛び込んできたのが
    写真で良く見たこのヒンドゥ寺院だった。

    薄暗くなった通りに向けて
    開かれた扉からきらめく妖艶な光が
    勢い良く解き放たれていた。

    僕たちの知らない不思議の国への扉が
    将に目の前に突然現れたのである。

    この空間に導かれ吸い込まれる事が
    運命で在ると分かるまでも無く
    僕たちの体は当然、光の方へと進んでいた。

  • 僕たちを招き入れてくれたのは<br />チョッキを着た赤い目のウサギでは無く<br />額に三つ目の赤い目を持った<br />美しい女性たちであった。<br /><br />何の心構えも準備も無い<br />バックパッカー風の旅行者をも<br />最高の笑顔で受け入れる。<br />これがこの国の、この民族の文化なのか?<br /><br />偶然にも、僕たちはまた<br />見えない糸に操られて<br />この国の素顔に出逢えたようだ。

    僕たちを招き入れてくれたのは
    チョッキを着た赤い目のウサギでは無く
    額に三つ目の赤い目を持った
    美しい女性たちであった。

    何の心構えも準備も無い
    バックパッカー風の旅行者をも
    最高の笑顔で受け入れる。
    これがこの国の、この民族の文化なのか?

    偶然にも、僕たちはまた
    見えない糸に操られて
    この国の素顔に出逢えたようだ。

  • 門から足を一歩踏み入れると<br />そこは初めて見る別世界だった。<br /><br />見た事も無い色彩の空間に<br />見た事も無い顔立ちの人々が<br />見た事も無い綺麗な衣装をまとい<br />まるで、映画のワンシーンの様に<br />優雅に立ち振る舞っていた。<br /><br /><br />詳細は分からないまでも<br />祝賀であることはすぐに察した。<br /><br />入場を許可され寺院内に入ったが<br />異国の祝賀に余りにも不似合いな僕たちは<br />この式典を台無しにしない様にと<br />息を潜め、存在を消そうと努めた。<br /><br />僕たちが迷い込んだこの空間は<br />僕たちの全く知らない世界であった。

    門から足を一歩踏み入れると
    そこは初めて見る別世界だった。

    見た事も無い色彩の空間に
    見た事も無い顔立ちの人々が
    見た事も無い綺麗な衣装をまとい
    まるで、映画のワンシーンの様に
    優雅に立ち振る舞っていた。


    詳細は分からないまでも
    祝賀であることはすぐに察した。

    入場を許可され寺院内に入ったが
    異国の祝賀に余りにも不似合いな僕たちは
    この式典を台無しにしない様にと
    息を潜め、存在を消そうと努めた。

    僕たちが迷い込んだこの空間は
    僕たちの全く知らない世界であった。

  • 楽士が一人で演奏を続けていた。<br /><br />オープンエアーのこの空間に<br />周りに建ち並ぶ高層ビルから忍び込む<br />熱帯の湿気を跳ね返すかのように<br />凛とした太鼓の旋律が響き渡っていた。<br /><br />乾いた太鼓の音は<br />寺院の高い天井に反響し<br />人々の体を突き抜けて<br />この式典を遙かデカン高原の<br />聖なる地へと導いていた。<br /><br /><br />とても居心地が良い空間であった。

    楽士が一人で演奏を続けていた。

    オープンエアーのこの空間に
    周りに建ち並ぶ高層ビルから忍び込む
    熱帯の湿気を跳ね返すかのように
    凛とした太鼓の旋律が響き渡っていた。

    乾いた太鼓の音は
    寺院の高い天井に反響し
    人々の体を突き抜けて
    この式典を遙かデカン高原の
    聖なる地へと導いていた。


    とても居心地が良い空間であった。

  • ウエディングセレモニー。<br /><br />僕たちが偶然巡り会ったのは結婚式だった。<br /><br />ヴェールをかぶった新婦に<br />白い衣装のふくよかな司祭。<br /><br />結婚式は坦々と進行している様であった。<br /><br />

    ウエディングセレモニー。

    僕たちが偶然巡り会ったのは結婚式だった。

    ヴェールをかぶった新婦に
    白い衣装のふくよかな司祭。

    結婚式は坦々と進行している様であった。

  • 伏せ目がちに楚々と働く巫女。<br /><br />僕はこの女性を美しいと思った。<br /><br /><br />果たしてこの彫りの深い美しい巫女は<br />どんな妖艶な神楽を奉納するのだろうか?<br /><br />他愛も無い空想が次々と浮かんでは消える<br />夢の様な時間が僕の周りで流れていた。<br />

    伏せ目がちに楚々と働く巫女。

    僕はこの女性を美しいと思った。


    果たしてこの彫りの深い美しい巫女は
    どんな妖艶な神楽を奉納するのだろうか?

    他愛も無い空想が次々と浮かんでは消える
    夢の様な時間が僕の周りで流れていた。

  • 個々が強烈な個性を持って<br />その存在を主張していても<br />ある瞬間、その無数の個性が<br />絶妙なバランスで組み合わされると<br />そこには見た事も無い<br />見事な調和の世界が現れる。<br /><br />長い時間をかけてこの民族は<br />その美に到達したようだ。<br /><br />それは僕たちがチベットで見た色彩や<br />曼荼羅から感じ取る世界観に似ている。<br /><br />

    個々が強烈な個性を持って
    その存在を主張していても
    ある瞬間、その無数の個性が
    絶妙なバランスで組み合わされると
    そこには見た事も無い
    見事な調和の世界が現れる。

    長い時間をかけてこの民族は
    その美に到達したようだ。

    それは僕たちがチベットで見た色彩や
    曼荼羅から感じ取る世界観に似ている。

  • 相棒よ。<br /><br />君はやっぱりそれを2つ貰うのですね。

    相棒よ。

    君はやっぱりそれを2つ貰うのですね。

  • 朝目覚めた時、<br />最初に飛び込んで来た景色が何処なのか<br />いつも見慣れている天井の筈なのに<br />得体の知れない恐怖感に焦りながら<br />必死で想いを巡らす事がたまにある。<br /><br />見なれた筈の風景を記憶と照らし合わせるのに<br />酷く時間が掛かってしまうそんな時は<br />いつも、自分の存在が二次元の世界に<br />張り付けられてしまったような錯覚を覚える。<br /><br />異国の建物の中にはサリーを身に纏った<br />何十人もの女性が一点を見つめている。<br />その中に視線を異にした異邦人が一人<br />僕の瞳には映っている。<br /><br />不思議の国に迷い込んだ僕たちには<br />様々な色や匂いや音が聞こえるが<br />僕たちは本当にこの場に存在しているのだろうか?<br />周りの人達に僕たちは映っているのだろうか?<br /><br />旅行はやはり、<br />夢の世界と現実を繋ぐ秘密の扉を開け<br />僕たちを待ち構えているようだ。<br />

    朝目覚めた時、
    最初に飛び込んで来た景色が何処なのか
    いつも見慣れている天井の筈なのに
    得体の知れない恐怖感に焦りながら
    必死で想いを巡らす事がたまにある。

    見なれた筈の風景を記憶と照らし合わせるのに
    酷く時間が掛かってしまうそんな時は
    いつも、自分の存在が二次元の世界に
    張り付けられてしまったような錯覚を覚える。

    異国の建物の中にはサリーを身に纏った
    何十人もの女性が一点を見つめている。
    その中に視線を異にした異邦人が一人
    僕の瞳には映っている。

    不思議の国に迷い込んだ僕たちには
    様々な色や匂いや音が聞こえるが
    僕たちは本当にこの場に存在しているのだろうか?
    周りの人達に僕たちは映っているのだろうか?

    旅行はやはり、
    夢の世界と現実を繋ぐ秘密の扉を開け
    僕たちを待ち構えているようだ。

  • ◆ インビ・マーケットで朝食を。<br /><br />朝、雲一つ無い晴天。<br />見る見るうちに気温は上昇した。<br /><br />KLに来てまだ行って無い場所はパサール。<br />目的地は即決定、インビ・マーケット。<br />朝食を目指して宿を出発、散歩の始まり。<br /><br />途中、フルーツ屋台で水分補給し<br />地図を頼りに幹線道路から外れると<br />そこには古びたマンション群が現れた。<br /><br />これを過ぎればもうすぐパサールのはず。

    ◆ インビ・マーケットで朝食を。

    朝、雲一つ無い晴天。
    見る見るうちに気温は上昇した。

    KLに来てまだ行って無い場所はパサール。
    目的地は即決定、インビ・マーケット。
    朝食を目指して宿を出発、散歩の始まり。

    途中、フルーツ屋台で水分補給し
    地図を頼りに幹線道路から外れると
    そこには古びたマンション群が現れた。

    これを過ぎればもうすぐパサールのはず。

  • パサールに辿り着いたのは丁度10時だった。<br /><br />朝食のピークはとっくに過ぎ<br />パサール内の屋台ものんびりしていた。<br /><br />寛ぎながらコーヒーを飲み<br />新聞をながめ、世間話をする時間。<br /><br />地元のお年寄りたちがゆっくりと<br />遅めの朝食を取っていた。<br /><br />僕たちはお粥の屋台をあたってみたが<br />もうすでに売り切れだった。<br />屋台の前では、僕たちの代わりに<br />白い猫が粥のおこぼれを貰っていた。

    パサールに辿り着いたのは丁度10時だった。

    朝食のピークはとっくに過ぎ
    パサール内の屋台ものんびりしていた。

    寛ぎながらコーヒーを飲み
    新聞をながめ、世間話をする時間。

    地元のお年寄りたちがゆっくりと
    遅めの朝食を取っていた。

    僕たちはお粥の屋台をあたってみたが
    もうすでに売り切れだった。
    屋台の前では、僕たちの代わりに
    白い猫が粥のおこぼれを貰っていた。

  • マーケットで朝食を食べ損ねた僕たちは<br />その隣に建ち並ぶ古いビルの一階集合屋台で<br />10時過ぎに、やっと朝食に在り付いた。<br /><br />僕の注文はミントが爽やかなラクサ。<br /><br />スープ料理の最高峰の一つである筈だ!<br />と言う狂気的信仰心が僕の心の中に<br />いつ芽生えたのかは定かではないが<br />メニューにその文字を見つけてしまうと<br />この呪縛から逃れる事は出来なくなる。<br /><br />そして今回も、さして美味くも無い<br />ラクサを口に運びながら思った、<br />「今度は違う物を頼む、必ずだ。」<br /><br />この時も僕の頭の中では、progressが流れていた。<br />

    マーケットで朝食を食べ損ねた僕たちは
    その隣に建ち並ぶ古いビルの一階集合屋台で
    10時過ぎに、やっと朝食に在り付いた。

    僕の注文はミントが爽やかなラクサ。

    スープ料理の最高峰の一つである筈だ!
    と言う狂気的信仰心が僕の心の中に
    いつ芽生えたのかは定かではないが
    メニューにその文字を見つけてしまうと
    この呪縛から逃れる事は出来なくなる。

    そして今回も、さして美味くも無い
    ラクサを口に運びながら思った、
    「今度は違う物を頼む、必ずだ。」

    この時も僕の頭の中では、progressが流れていた。

  • いつもの事だがノープランでは<br />不運は連続で訪れるものだ。<br /><br />相棒が悩みに悩んだ末に選んだのが<br />Pork Mee (猪肉粉) 5MR。<br />見た目は結構美味そうに見えるが<br />スープは肉の灰汁を採っていないのか<br />血液自体を溶かし込んでいるのか<br />生臭くて朝食には向かなかった。<br /><br />≪ティファニーで朝食を≫<br />と言う様に、上手く行く筈が無かった。<br /><br />ただ、ここのエステは紅茶の香りが良くて<br />今回一番のアイスティーだった事が<br />唯一の救いとなった。<br /><br />≪インビの屋台でアイスティーを≫

    いつもの事だがノープランでは
    不運は連続で訪れるものだ。

    相棒が悩みに悩んだ末に選んだのが
    Pork Mee (猪肉粉) 5MR。
    見た目は結構美味そうに見えるが
    スープは肉の灰汁を採っていないのか
    血液自体を溶かし込んでいるのか
    生臭くて朝食には向かなかった。

    ≪ティファニーで朝食を≫
    と言う様に、上手く行く筈が無かった。

    ただ、ここのエステは紅茶の香りが良くて
    今回一番のアイスティーだった事が
    唯一の救いとなった。

    ≪インビの屋台でアイスティーを≫

  • ◆ アロー通り。<br /><br />一昨日(2013/3/13)僕たちは<br />バリからエアアジア、バス、モノレールを乗継ぎ<br />深夜の12時を回った頃やっと<br />この街の喧騒に紛れ込む事に成功した。<br /><br />僕たちは疲れていた。<br /><br />モノレールも初めて<br />ブキビンタンも初めて<br />キャリーバックも初めて<br />カード式玄関も初めて<br />初めてが重なるといつの間にか<br />心も体も想いの外、重力を感じ始める。<br /><br />そのせいもあって<br />アロー通りは重苦しい空間に感じた。<br /><br />

    ◆ アロー通り。

    一昨日(2013/3/13)僕たちは
    バリからエアアジア、バス、モノレールを乗継ぎ
    深夜の12時を回った頃やっと
    この街の喧騒に紛れ込む事に成功した。

    僕たちは疲れていた。

    モノレールも初めて
    ブキビンタンも初めて
    キャリーバックも初めて
    カード式玄関も初めて
    初めてが重なるといつの間にか
    心も体も想いの外、重力を感じ始める。

    そのせいもあって
    アロー通りは重苦しい空間に感じた。

  • バリの気分を引きずっていた訳では無いが<br />KLの気候と人いきれには少し閉口していた。<br /><br />アロー通りのテーブルで<br />タイガービールを飲みながら<br />メニューから僕たちが選んだのは<br />二種類の貝料理と麺だった。<br /><br />バリで昼過ぎに食事を取って<br />既に10時間以上が経っているのに<br />食欲がそれ程湧いてこないのは何故か?<br /><br />料理は全て美味しかったが<br />瞼や下半身の重みを吹き飛ばす<br />強烈な刺激は料金だけだった。<br /><br />アロー通りに意気揚々と繰り出す事は<br />これからの人生できっと無いだろう。<br /><br />僕が感じるこの厭世感はきっと<br />個人的な生い立ちによるものでしょうが<br />アロー通りは好きになれなかった。<br /><br />残念。<br /><br />この通りはメディアが作り上げた<br />単なる虚構でしかあり得ないと思った。<br />

    バリの気分を引きずっていた訳では無いが
    KLの気候と人いきれには少し閉口していた。

    アロー通りのテーブルで
    タイガービールを飲みながら
    メニューから僕たちが選んだのは
    二種類の貝料理と麺だった。

    バリで昼過ぎに食事を取って
    既に10時間以上が経っているのに
    食欲がそれ程湧いてこないのは何故か?

    料理は全て美味しかったが
    瞼や下半身の重みを吹き飛ばす
    強烈な刺激は料金だけだった。

    アロー通りに意気揚々と繰り出す事は
    これからの人生できっと無いだろう。

    僕が感じるこの厭世感はきっと
    個人的な生い立ちによるものでしょうが
    アロー通りは好きになれなかった。

    残念。

    この通りはメディアが作り上げた
    単なる虚構でしかあり得ないと思った。

  • ◆ 食事<br /><br />ロティー・チャナイ。<br /><br />朝食と言えばお粥。<br />今までお粥が何度僕の体を<br />癒してくれたことだろうか。<br /><br />日本で食べた梅干しの粥。<br />バリで食べたブブール・アヤム。<br />今回ルアンパバーンで食べた粥。<br />マレーシアにもタイにも<br />美味しいお粥はたくさんあった。<br /><br />しかし、ロティーを食べてから<br />僕の朝食に関する固定観念は変わった。<br /><br />暑い熱帯の地域では朝食はロティー。<br />ロティーと甘いアイスティー<br />この組み合わせは最強。<br /><br />これを食べるだけに飛行機に乗る事は在りだ。<br />

    ◆ 食事

    ロティー・チャナイ。

    朝食と言えばお粥。
    今までお粥が何度僕の体を
    癒してくれたことだろうか。

    日本で食べた梅干しの粥。
    バリで食べたブブール・アヤム。
    今回ルアンパバーンで食べた粥。
    マレーシアにもタイにも
    美味しいお粥はたくさんあった。

    しかし、ロティーを食べてから
    僕の朝食に関する固定観念は変わった。

    暑い熱帯の地域では朝食はロティー。
    ロティーと甘いアイスティー
    この組み合わせは最強。

    これを食べるだけに飛行機に乗る事は在りだ。

  • バクテー。<br /><br />微妙な味わいだと思う。<br />美味しいと言う人も居るだろうし<br />薬臭いと言う人もいるだろうし<br />肉臭いと言う人も居るだろう。<br /><br />本物は薬と考えた方が良いと思う。<br /><br />ただし、独特の味が癖になる。<br />更に店によって味が全然違うのも<br />たいへん困ったところだ。<br /><br />僕たちが食べた中華街のバクテーは<br />イマイチではあった。

    バクテー。

    微妙な味わいだと思う。
    美味しいと言う人も居るだろうし
    薬臭いと言う人もいるだろうし
    肉臭いと言う人も居るだろう。

    本物は薬と考えた方が良いと思う。

    ただし、独特の味が癖になる。
    更に店によって味が全然違うのも
    たいへん困ったところだ。

    僕たちが食べた中華街のバクテーは
    イマイチではあった。

  • ホッケンミー。<br /><br />お好み焼きのおたふくソースに<br />ビックリする以上にこの焼そばの<br />ソースや味付けにはビックリする。<br /><br />味は円やか、場合によっては薄味。<br />ソースギトギトのイメージでいると<br />主張の無さにビックリする。<br /><br />思った以上に薄味の中華ならではの一品。

    ホッケンミー。

    お好み焼きのおたふくソースに
    ビックリする以上にこの焼そばの
    ソースや味付けにはビックリする。

    味は円やか、場合によっては薄味。
    ソースギトギトのイメージでいると
    主張の無さにビックリする。

    思った以上に薄味の中華ならではの一品。

  • ◆ 旅人。<br /><br />Sunbowホテルのカウンターで<br />宿泊の値引き交渉をするも<br />agodaの値段までは下がらなかった。<br />空室が在り、目の前に客が居るのに<br />値引きに応じず、ネット予約を待つ姿勢には<br />疑問は残るが、仕方無い。<br /><br />「あら、日本の方なのね。日本語が聞こえたものだから。」<br />僕たちが帰ろうとしたその時<br />初老の女性が声をかけて下さった。<br />事態を簡単に説明すると<br />「このホテルは奇麗で良いわよ。どう、私の部屋見てみる?」<br />「・・良いんですか?・・・」<br />「どうぞどうぞ、遠慮なさらずに。散らかっていますけどね。」<br />

    ◆ 旅人。

    Sunbowホテルのカウンターで
    宿泊の値引き交渉をするも
    agodaの値段までは下がらなかった。
    空室が在り、目の前に客が居るのに
    値引きに応じず、ネット予約を待つ姿勢には
    疑問は残るが、仕方無い。

    「あら、日本の方なのね。日本語が聞こえたものだから。」
    僕たちが帰ろうとしたその時
    初老の女性が声をかけて下さった。
    事態を簡単に説明すると
    「このホテルは奇麗で良いわよ。どう、私の部屋見てみる?」
    「・・良いんですか?・・・」
    「どうぞどうぞ、遠慮なさらずに。散らかっていますけどね。」

  • カウンターに居たスタッフからの<br />「Good salesman!」と言う掛け声に<br />はにかむご婦人の後に付いて<br />僕たちは廊下を進んだ。<br /><br />彼女はブキビンタン周辺にもう1ヶ月ほど<br />一人で滞在しているらしい。<br />大きめのコットン生地の上下から覗く<br />少し焼けた肌がとても印象的であった。<br /><br />彼女が何故この異国に一人で居るのか?<br /><br />その言葉が僕たちの口から出て<br />エアコンの効いた彼女の部屋の空気を<br />僅かでも振るわす事は、当然無かった。<br /><br />世の中にはやはり言うまでも無く<br />色々な人生が在るようだ。<br /><br />僕たちは今夜帰国便に乗り込むが<br />彼女はいつこの地を出るのだろうか?

    カウンターに居たスタッフからの
    「Good salesman!」と言う掛け声に
    はにかむご婦人の後に付いて
    僕たちは廊下を進んだ。

    彼女はブキビンタン周辺にもう1ヶ月ほど
    一人で滞在しているらしい。
    大きめのコットン生地の上下から覗く
    少し焼けた肌がとても印象的であった。

    彼女が何故この異国に一人で居るのか?

    その言葉が僕たちの口から出て
    エアコンの効いた彼女の部屋の空気を
    僅かでも振るわす事は、当然無かった。

    世の中にはやはり言うまでも無く
    色々な人生が在るようだ。

    僕たちは今夜帰国便に乗り込むが
    彼女はいつこの地を出るのだろうか?

  • ◆ 螺旋の誘惑。<br /><br />エアコンが効いた地上10階の<br />見晴らしの良いホテルの一室で<br />書きかけの小遣い帳の隅に<br />ぐるぐると渦巻きの落書きを描いた。<br /><br />それはアンモナイトの渦の様に<br />少しずつ外に行くにしたがって広がっている。<br />僕はその渦の一番外側にボールペンで印を付けた。<br /><br />「今はここか・・・。」<br />僕が呟く。<br /><br />「ねぇ、あそこには行けないの?」<br />相棒が窓の外を指さした。<br /><br /><br />・・少しの時間が流れた。<br /><br />「そうだ!行けるさ、こうすれば・・・ね!」<br /><br />僕はさっき描いた渦巻きの<br />中途半端な終点に線を2本書き加え<br />大きな矢印にして、ノートを閉じた。<br /><br />窓の外の景色を眺めながら<br />ゆっくり息を吸い込むと<br />鼻空の奥に微かな紅茶の香りを感じた。<br /><br />これがKLか・・・。

    ◆ 螺旋の誘惑。

    エアコンが効いた地上10階の
    見晴らしの良いホテルの一室で
    書きかけの小遣い帳の隅に
    ぐるぐると渦巻きの落書きを描いた。

    それはアンモナイトの渦の様に
    少しずつ外に行くにしたがって広がっている。
    僕はその渦の一番外側にボールペンで印を付けた。

    「今はここか・・・。」
    僕が呟く。

    「ねぇ、あそこには行けないの?」
    相棒が窓の外を指さした。


    ・・少しの時間が流れた。

    「そうだ!行けるさ、こうすれば・・・ね!」

    僕はさっき描いた渦巻きの
    中途半端な終点に線を2本書き加え
    大きな矢印にして、ノートを閉じた。

    窓の外の景色を眺めながら
    ゆっくり息を吸い込むと
    鼻空の奥に微かな紅茶の香りを感じた。

    これがKLか・・・。

  • ◆ 始まりの終わり。<br /><br />青い魔法のコインによって<br />曲げられた時間の螺旋から<br />脱出する方法は偶然にも見つけたが<br />時間は当然流れ3日が過ぎていた。<br /><br />そして今日、僕たちは日本に向けて<br />バスや飛行機を乗り継ぐ日だ。<br /><br />KLでも偶然に色々な物に出逢って来たが<br />僕の中にはセレンディピティなる物は<br />やはり無かったようだ。<br /><br />しかし、たくさんの思い出は<br />グレゴリーに詰め込めたと思う。<br />日本に帰って思い出の荷解きは<br />時間が掛かりそうだが、きっと楽しいだろう。<br /><br />さて、腹が減っては戦が出来ぬ、日本は遠い。<br />まずはLoh Meeで腹ごしらえして出発だ。<br /><br />あ、そうそう、皆さん。<br />青い硬貨には気を付けて!<br /><br /><br />                −完ー<br /><br /><br />今回も2週間の旅行が無事に完了しました。<br />旅行先々での色々な人々のお世話により<br />私達の旅行は成り立っている事を<br />今回もまた痛感しました。<br />ラオス、バリ、KLで出逢った方々<br />本当にありがとうございました。<br /><br />また、今回の変てこな旅行記にも<br />最後までお付き合い下さった読者の皆様<br />本当にありがとうございました。<br /><br />解き放たれた未来を差す矢印、<br />その先に何があるのかは分かりませんが<br />旅行は楽しくて止められません。<br /><br />                 shique

    ◆ 始まりの終わり。

    青い魔法のコインによって
    曲げられた時間の螺旋から
    脱出する方法は偶然にも見つけたが
    時間は当然流れ3日が過ぎていた。

    そして今日、僕たちは日本に向けて
    バスや飛行機を乗り継ぐ日だ。

    KLでも偶然に色々な物に出逢って来たが
    僕の中にはセレンディピティなる物は
    やはり無かったようだ。

    しかし、たくさんの思い出は
    グレゴリーに詰め込めたと思う。
    日本に帰って思い出の荷解きは
    時間が掛かりそうだが、きっと楽しいだろう。

    さて、腹が減っては戦が出来ぬ、日本は遠い。
    まずはLoh Meeで腹ごしらえして出発だ。

    あ、そうそう、皆さん。
    青い硬貨には気を付けて!


                    −完ー


    今回も2週間の旅行が無事に完了しました。
    旅行先々での色々な人々のお世話により
    私達の旅行は成り立っている事を
    今回もまた痛感しました。
    ラオス、バリ、KLで出逢った方々
    本当にありがとうございました。

    また、今回の変てこな旅行記にも
    最後までお付き合い下さった読者の皆様
    本当にありがとうございました。

    解き放たれた未来を差す矢印、
    その先に何があるのかは分かりませんが
    旅行は楽しくて止められません。

                     shique

この旅行記のタグ

116いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

マレーシアで使うWi-Fiはレンタルしましたか?

フォートラベル GLOBAL WiFiなら
マレーシア最安 85円/日~

  • 空港で受取・返却可能
  • お得なポイントがたまる

マレーシアの料金プランを見る

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

PAGE TOP